忍殺TRPGソロリプレイ【ミステリー・イン・ザ・ダスト・マウンテン】

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかながかつて遊んだニンジャスレイヤーTRPGのソロシナリオをテキストカラテナイズしたリプレイとなります。気軽に読める。

 今回……と言っても、実際に挑戦したのは去年の10月になってしまうのだが……挑戦するソロシナリオは海中劣=サンの【ニンジャの引っ越し手伝い】だ。

 そして挑戦するのはディスグレイス。昨日更新した間話を見てくださったかたなら覚えているかもしれないが、あえて前回ミッションで獲得した余暇を消費せずに挑む。ので、ステータスは以下のままだ。

ニンジャ名:ディスグレイス
【カラテ】:5
【ニューロン】:5
【ワザマエ】:4
【ジツ】:3(カナシバリ・ジツ)
【体力】:6
【精神力】:4
【脚力】:3
【万札】:5
【名声】:5
【余暇】:3
持ち物など:
オーガニック・スシ
▲バイオサイバネ腕(片腕)
▽吸血バイオ器官
○信心深い

 ではやってみよう。よろしくおねがいします。



◇プロローグな◇


 トコロザワ・ピラーの休憩スペース。その片隅で、チャブ・テーブルの上に乗せたハンドベルトUNIXを睨む改造ミコー装束の女あり。そのバストは豊満である。左手で器用に画面をタップし、ザッピングを続けている。隻腕なのだ。

 低く唸り、画面をタップ。彼女の名はディスグレイス。こう見えてネオサイタマを牛耳るヤクザ組織、ソウカイヤの一員であり……ニンジャだ。そんな彼女が今何をしているか? はっきりと言おう。仕事探しだ。

 ニンジャといえどカネがなくては生活できぬ。まして彼女のように自費でマンションの一室を購入し、各所で誑かし……もとい、拾い上げてきた少女たちとルームシェアを行っているようなニンジャにとっては。切実な問題だ。なのでこうして、ソウカイ・ネットを駆使してミッションを探している。

(ミッション完了後で懐が潤っている時期とはいえ、稼げるときには稼いでおかなければ)

 不穏な異分子が混ざってしまったとはいえ、今の生活は彼女にとって相当に快適なものだ。それを維持するためにはやはりカネがいる。ルームメイトたちからカネを徴収するつもりなどさらさらない。彼女が集めたのはあくまで愛玩用のオイランであり、カネを貢がせるための舎弟ではないのだ。

「……うん?」

 ふと、ある求人に目が止まる。内容が破格、もしくは依頼人が知り合い。そうした要因ではない。文面のためだ。


引っ越し手伝ってください。おカネあげます


 これだけだ。なんとこれで全文なのである。具体的な報酬はおろか、依頼人の名前や連絡先すら書いていない。思わずディスグレイスは眉根を寄せた。もし自分がこの依頼人の研修担当であれば到底許せぬ類の文面!

「……ついに、まともに依頼一つ出せないニンジャすらスカウトするようになったのですかね。まったく嘆かわしい」

 溜息とともにその依頼をスキップし、他の依頼をチェックする。……目ぼしい依頼がないことを確認し、自宅に戻るときにはもはやその依頼のことなど忘れていた。

 それで終わる一幕……かと思われた。


◇◆◇


 ところが翌日。トコロザワ・ピラーの休憩スペースにて。


引っ越し手伝って! おカネたくさんあげます!


 ソウカイ・ネットをサーフしていたディスグレイスは、またもその依頼に直面したのである。彼女は眉をひそめた。先日見かけたときより文面にやや切迫さが増している気がする。

 しかし、連絡先すら書いていないようではどうしようもない。今日帰ったら依頼を行う際のフォーマットの重要性についてあの子達にも話しておこう。深く溜息をついてから、彼女は別の依頼をチェックしはじめた。


◇◆◇


 ……そのさらに翌日! トコロザワ・ピラーの休憩スペースにて! ディスグレイスはまたもその依頼を目にすることとなる。が、その中身は激変していた。こうだ。


引っ越し作業の手伝いをしてくださる方を募集します。内容:部屋の掃除、荷物の運搬。報酬【万札】:5。日程:都合のいい日時をご連絡ください。場所:「たにつぼ、44合室」……


「やればできるじゃないですか!」

 思わずそんな言葉が漏れていた。これならば手伝ってもいいと思わせる。依頼人の名は……ブラインド。聞いたことのない相手。ハンドベルトUNIXをタップし、スカウト部門のデスクワーク手伝いをしている知り合いをコール。

『……モシモシ』

「ドーモ。アベレージ=サン。ディスグレイスです」

『ドーモ。何の用だ? ミッションの件ならすまんが後にしてくれ。今立て込んでいてな……』

「1分もかからずに終わる用件です。ブラインド=サンというニンジャに心当たりは?」

『……アー』

 少しの沈黙。きっかり5秒後に続きが帰ってきた。

『知っている。最近腕を上げ始めたニンジャだ。俺も顔を合わせたことがある……それはお前にとってどうでもいいか。女ニンジャだよ。知りたいのはこうだな?』

「ええ。アリガトゴザイマス。今度なにか奢りますよ」

『そうか。この間、いいラーメン・バーを見つけたんだ。美味いんだが少しお高くてな』

「わたくしもご相伴に預かりますからね。では、オタッシャデ」

 通話終了。ディスグレイスは心うきうきとしながら、引っ越し手伝いの依頼受注メールを作成するのだった。



◇本編な◇


 ……依頼受注の翌日! ディスグレイスはマンション「たにつぼ」の44号室に到着したというわけだ。こうした仕事は早く終わらせ、ひとまずそのブラインドなる女ニンジャを見定めたい。見込みがありそうならば、まずジョシ・カイに誘ってみるか。

 ビーッ! チャイムを鳴らし、少し待つ。音沙汰なし。ビーッ! チャイムを鳴らす。ビーッ! チャイムを鳴らす。ビーッ! ビーッ! ビーッ

「外出中? なんと間の悪い」

 ディスグレイスは眉をひそめた。何気なくドアノブを捻り……「あら」おもわず声を漏らす。鍵が開いているのだ。

「不用心な」

 呟きつつも用心深く扉を開ける。ここの住人はニンジャだ。最近はニンジャ殺しの狂人の噂も聞く。キールバックも襲われたのだとか……最悪の事態を想定する必要があろう。

「……ウワッ」

 そして目に飛び込んできた中の惨状に嫌悪の悲鳴。ブラッドバス? 否。むしろそれならどれだけマシだったことだろう。ディスグレイスを出迎えたのは、玄関先まであふれ出したゴミの山だ。飛び交うバイオハエと異臭に思わず顔をしかめる。到底人間の住む場所ではない。

 と。

フゴー……フゴー……

 そのゴミ山の向こうからイビキ。ディスグレイスは思わず耳を疑った。まさか? 土足で上がり込んだ彼女は(本来はシツレイな行為だが、ディスグレイスはこのゴミの上を素足で歩く気にはなれなかった)リビング……と思われるゴミ山の中心まで侵入。そこに寝ている女を見つけ出した。身につけているのはアイマスクめいたメンポとジャージめいたニンジャ装束。

 唖然と女を見下ろしていたディスグレイスは、数分の後にようやく気を取り直した。女の元に近づき、頬を左手で軽く叩く。「フゴー……ムニャ」変化するイビキのパターン。目を覚ましたのだろう。

「ンー……? 知らない人がいる」

 あまりにも呑気にすぎる反応。もし自分がアサシンであれば、おそらく三度は殺せているだろう。そんな思考を笑顔で隠し、ディスグレイスはアイサツした。

「ドーモ。ブラインド=サン。ソウカイヤのディスグレイスです」

「アー……ウン。ドーモ。ブラインドです。もしかして求人見て来てくれた人?」

 ディスグレイスは首肯。ブラインドは締まりのない笑みを浮かべた。

「そっか! アリガト! チキンハート君に求人書いてもらったらすぐ来たなあ」

 難儀そうに身を起こすブラインドを、ディスグレイスは憮然と見下ろしていた。同時に納得する。成る程、どうやら最後の依頼は代筆だったらしい。よくもまあこんな女に力を貸したものだ。よほどの物好きか、お人好しか。

「なんでもいいです。早くこのゴミ溜めを……」

「んじゃ、お掃除お願いね!」

「は?」

 呆気に取られるディスグレイスの前で、ブラインドはばたりと横になり「フゴー……フゴー……」再びイビキをかきはじめた。

「……は?」

 ディスグレイスは目を見開く。しばらくしてから彼女のニューロンはようやく事態の把握を終えた。あろうことかこの女、このゴミ山の処理を自分一人に任せるつもりなのだ!

 ディスグレイスは……微笑した。そのこめかみに青筋が浮かぶ。虚しくはためいていたと見えた右袖から、ぞろりと複数のバイオ触手が姿を現した。申し遅れたが彼女は右腕をバイオ触手に置換した恐るべきニンジャであり、その触手で相手を束縛、辱めることを好む危険な性的指向の持ち主なのだ!

「そちらがそのつもりならばいいでしょう。手間賃は体で払ってもらいますからね……!」

 触手がブラインドの体に巻き付いていく。彼女のバストは平坦であった。ナムアミダブツ! このまま白昼にお見せできない有様となってしまうのか!?

 だが待て、陽光よ、聞くがいい! 「フゴー……」アトモスフィアの欠片もないブラインドのイビキを! 部屋中を飛び回るバイオハエの羽音を! そして見よ! 彼女らを取り巻くゴミの山を! そして嗅げ! 部屋中に満ちたこの異臭を!

 この中で前後じみた秘密行為を満喫できるものがいるだろうか!?

「グヌ……グヌヌ……」

 ジャージめいたニンジャ装束の中に触手を潜り込ませようとしていたディスグレイスがふと止まる。その口元がピクピクと引きつった。カサカサカサ……ゴミ山の陰から微かな物音とともに小さな茶色の影が「イヤーッ!」「アバーッ!?

 モンド・ムヨー! ディスグレイスはブラインドの拘束を解き、バイオ触手で茶色の影を退治! 柳眉を逆立てた彼女は、我関せずといった様子でイビキをかくブラインドを勢い良く指差した。

「ええい、待っていなさい! この一帯をキレイな更地にした後、貴様の自由を奪って惰眠を貪っていたことを後悔するような恥辱を味合わせてくれます!」

 そして左の袖を捲る。掃除の始まりだ


◇◆◇◆◇


イヤーッ!」ゴミを触手で巻き取り「イヤーッ!」分類し「イヤーッ!」ゴミ袋にまとめ「イヤーッ!」マンションのゴミ捨て場に投げ捨て、駆け戻る! ゴウランガ! ディスグレイスの地道な繰り返しにより、ゴミ山がみるみるうちに小さくなっていく!

【カラテ】判定(難易度:EASY)
5d6 → 1, 4, 4, 5, 5 成功

 だがゴミを排除してもなお部屋のアトモスフィアは最悪だ。見よ! 壁や床のそこかしこに残るカビやシミを!「アーッ! モーッ!」思わず苛立ちの声を漏らしつつ、ディスグレイスは触手それぞれに洗剤を含ませたスポンジを携え、同時に拭き取り開始! 常人にはできない掃除スタイル! 

【ワザマエ】判定(難易度:EASY)
4d6 → 3, 4, 4, 5 成功

 ……一時間後! 見違えるほど綺麗になった部屋を前に、ディスグレイスは満足げな笑みを浮かべた。これでようやくアトモスフィアが整ったというわけだ。彼女はブラインドに向き直ろうとし……気づいてしまう。部屋の片隅にあったUNIX。その周辺。ネオサイタマの電線網よりもなおひどく絡み合った配線に!「ヌゥーッ!」

「まったく! なぜ! こんなことになるまで! 放置を!」

 憤懣やるかたない様子で彼女は配線をほどきにかかる。元々が几帳面な性質なのだ。「フゴー……フゴー……」その背後でブラインドは爆睡!

【ニューロン】判定(難易度EASY)
5d6 → 2, 3, 3, 4, 4 成功

 ……その後もイクサは長く続いた。なぜかベランダのゴミ山の中に紛れこんでいたクローンヤクザを放り投げ(「「「ザッケンナグワーッ!?」」」)なぜか収納スペースにみっちりと詰まっていたミニバイオスモトリを苦心して引っ張り出し、なぜか風呂場に巣食っていたバイオ触手生物(水分が足りなかったのか干からびていた)を処分した。

 その甲斐あってか、見よ! もはやあのゴミ山の痕跡はどこにもない。胸を張って家主に見せられる部屋へと変貌したのだ!

 周囲の清潔さを見渡し、ディスグレイスは満足げに微笑した。そして……ついにブラインドへと視線を向ける。

「……あのゴミ山の中で寝ていたのですから、さぞ汚れているでしょう。ええ、全身くまなく洗ってさしあげます……!」

 バイオ触手がブラインドへ伸びる! ああ、ブッダ! そんな!?

待てい!」

何奴!?」

 突如、背後からかけられて声にディスグレイスは振り向き……絶句する。言葉の主は床に這っていた。どこからともなく姿を現したバイオローチ! その全長、おおよそ3フィート!

「SHHH……この俺を倒すまで掃除が終わったと思わんことだな」

「いやいやいや!?」

 あまりの事態にディスグレイスは後ずさり……いまだ爆睡しているブラインドを後ろに蹴り転がした。依頼人に対して好ましい行為ではないが、彼女としてはそれどころではないのだ。

「おかしいでしょう! 物理的におかしい! どこに潜んでいたんです!?」

「細かいことは気にするな」

「なにも細かくないんですよ! ……というか喋った!? バイオローチが!?」

 狼狽する彼女の背後で「フゴー……フゴー……」ブラインドは変わらず爆睡! ケイオス! バイオローチの目がぎらりと光った……気がした。

「もはや語る言葉なし! 行くぞ! イヤーッ!」

「ウワーッ!?」

 翅を広げ飛びかかってきた巨大知性ローチを、ディスグレイスは悲鳴をあげつつバイオ触手で弾き返す!「グワーッ!」弾き飛ばされたバイオローチは壁に着地! そのままカサカサと天井へ!

「まったくもって意味がわからない……ですが!」

 その間に、ディスグレイスはなんとかマインドセットを終えた。その巨大さや知性はともかく、眼前の存在が不潔の象徴であることに変わりなし。ならば掃除せねばならぬ!

「この部屋に汚点一つ残す理由なし! イヤーッ!」

グワーッ!」

 バイオ触手がY軸アドバンテージを取ろうとしていた巨大知性ローチを一撃! たまらず落下するローチ! そのままカサカサと尋常ではない速度でディスグレイスの背後を取りにかかる!

「成る程、このゴミ山要塞を攻略したニンジャだけのことはある! イヤーッ!」

 そして目にも留まらぬ速度で飛びかかり「イヤーッ!」「グワーッ!?」すでに展開していたバイオ触手の防衛網に絡みつかれた。

「いかに巨大であろうと、あなたの行動パターンは予測できます。この部屋で何匹あなたの同族を見てきたとおもってるんですか」

「……見事だ。モハヤコレマデ」

 ギチリ、とバイオ触手が巨大知性ローチを締めつける。キチン質の甲殻が音を立てて割れ始めた。もはや観念したのか、もがくことすらしない。その神妙さにディスグレイスも思わず態度を改めた。

「……ハイクを詠みなさい」

「ものぐさな/誇りは塵に/華と散り」

 バイオローチとは思えぬ見事なハイクであった。「イヤーッ!」「アバーッ!」直後、バイオ触手によって引き裂かれ、巨大知性ローチは四散。その死骸は換気のために開け放っていた窓から吹き込む風に晒され、塵となって消えた。

VSバイオコックローチ戦
1ターン目
バイオローチ【カラテ】4d6 → 1, 2, 5, 6 成功2
ディスグレイス【回避】5d6 → 2, 3, 4, 5, 6 成功3
カウンターカラテ発動。バイオローチ【体力】6 → 5

ディスグレイス【カラテ】5d6 → 1, 1, 3, 3, 6 成功1
バイオローチ【体力】5→3

2ターン目
バイオローチ【カラテ】4d6 → 2, 2, 5, 6 成功2
ディスグレイス【回避】5d6 → 2, 2, 4, 4, 5 成功3
カウンターカラテ発動。バイオローチ【体力】3→2

ディスグレイス【カラテ】5d6 → 1, 2, 4, 4, 5 成功
バイオローチ【体力】2→0

バイオローチ撃破!
ディスグレイス【万札】5→10

 ディスグレイスは……「…………ウーン」これまでの疲労と情報量がニューロンの限界を超えたことにより、その場に崩れ落ちて気絶した。



◇エンディングな◇


「……シ! ……モシ! モシモシ!」

 聞き慣れぬ男の声。ディスグレイスはゆっくりと目を開く。まず視界に飛び込んできたのは嘴めいたメンポ。どうやら男のニンジャだと気づいたのはその数秒後。切羽詰まったその様子からして敵意ある存在ではないらしい。

「気がつきましたか! 大丈夫ですか!」

「ええ、お陰さまで」

「無理はしないでください。休んでいてください」

 答えつつ身を起こす。妙に頭が痛い。嘴メンポの男は心配そうな言葉をかけた後……別の方向を睨みつけた。視線を追うとそこには正座するブラインドの姿。

なんで全部人任せにしてるんですか! 自分のことは自分でやらないと!

「ハイゴメンナサイ!」

 怒声! ブラインドがドゲザ! その様をディスグレイスはぼんやりと眺めていた。この親しさからして、この嘴メンポのニンジャがチキンハート……なのだろうか。彼はまた心配そうにディスグレイスを見やる。

「後のことは俺がやっておきます。ですから今日は家に戻って静養してください……ブラインド=サン! お礼と報酬を!」

「アッハイ。……アリガトゴザイマス」

 しおらしい様子で差し出された封筒を、ディスグレイスは黙って受け取った。なにがどうなって自分は倒れていたのだったか。今ひとつ思い出せない。

 ブラインドを見つめる。最後にゴミ山の中にいた身体を徹底的に洗浄させてもらうべきか。……だが、妙に気が乗らなかった。

「では、シツレイシマス」

「ええ。今日は助かりました」

 微笑する嘴メンポの男に一礼してから、ディスグレイスは部屋を後にした。


◇◆◇◆◇


「ヨイショ、ヨイショ」

 マンションの表には一台のヤクザバンが止まり、一人のヤクザが忙しなく荷物を運び入れている。その中のUNIXに見覚えがあった。ブラインドのものだ。ディスグレイスは思わず声をかけていた。

「オツカレサマです」

「ハイ? ……あ、ブラインド=サンの。いえいえ、そちらこそオツカレサマで」

 人相の悪いヤクザは、人当たりのいい笑顔でアイサツを返す。ディスグレイスは曖昧な笑みとともにオジギし、立ち去ろうとして……ふと思い出してヤクザに向き直った。

「あのですね」

「ハイ?」

「あの女の部屋、定期的に掃除しなさい。少なくとも」

 なぜか喉に引っかかる言葉を、ディスグレイスはなんとか押し出した。

「……バイオローチが湧かないように!」


◇おまけ?◇


 引っ越し手伝いヤクザに最低限の助言を残し、ディスグレイスは今度こそ帰路に着く。懐は暖かくなったが嫌に疲れた。帰ったらキールバックと一緒にフートンに入ろう……

 ピピピピピ。電子コール音が思考の邪魔をする。ディスグレイスは眉をひそめてハンドベルトUNIXを見やり……眉間にしわを寄せた。コール相手の名は、アベレージ。

「……モシモシ。どうしました、アベレージ=サン」

『ドーモ。悪いが、今からトコロザワ・ピラーに来れるか。頼みたいことがある』

「今日……は、できれがご勘弁願いたいのですけれど。いろいろあって疲れが……」

『そうか。残念だ。まだ若い女ニンジャの世話を任せようかと思ったんだが』

「今疲れが飛びました。詳しい話を」

 ディスグレイスは居住まいを正す。苦笑しつつも、アベレージが言った。

『なに、ニュービーの世話だ。得意だろう? そういうのは』

「まあ、それなりに。どんな子です?」

『名前はチェインドッグ。俺が説明するよりは会う方が早かろう。ちょうど今、つまらんお使いで外に出てるところだ。帰ってくる前に準備を済ませたい。じゃあな』

 通話が切れる。ディスグレイスは深呼吸し、トコロザワ・ピラーへと行先を変えた。



◇あとがきな◇

 というわけで、ディスグレイスはシンピテキな巨大知性ローチとのイクサに打ち勝ち無事掃除を終えたのだった。本来は掃除のときに出目6が出た分だけ【万札】1が獲得できる仕組みだったのだが、このバースのブラインド=サンはカネの管理だけはしっかりしていたらしい。

 というわけで【万札】5、【余暇】2を獲得して以下のようになった。

ニンジャ名:ディスグレイス
【カラテ】:5
【ニューロン】:5
【ワザマエ】:4
【ジツ】:3(カナシバリ・ジツ)
【体力】:6
【精神力】:4
【脚力】:3
【万札】:5→15
【名声】:5
【余暇】:3→5
持ち物など:
オーガニック・スシ
▲バイオサイバネ腕(片腕)
▽吸血バイオ器官
○信心深い

 本来、余暇というのはこういう風に貯蓄できるものでもない気がするが……そこは見逃して欲しい。

 改めて海中劣=サン、そしてここまで読んでくださった皆様がた、ありがとうございました! 気が向いたらまたやるよ!


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