忍殺TRPGソロリプレイ【カシマシ・ニンジャズ・ゴー・ダウン・エンシェント・トレイル】その3

◇簡単な前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかながソロシナリオを遊んだ結果をテキストカラテナイズした、リプレイと呼ばれる類の読み物です。気楽に読めるよ。

 そして続き物でもある。前回はこれです。

 ようやっと遺跡の探索を始めた三人組。カラテ計算機とニンジャアーチャースタチューの試練を乗り越え、次に待つのは……?

 と、簡単なあらすじを終えたところでいってみよう。よろしくおねがいします。


◇第三の試練◇

 スタチューの試練をくぐりぬけ、さらに下層へと降りていったキールバックらをまず出迎えたのは熱気であった。キールバックは顔をしかめ、階段で入り口から次の部屋の中を見やる。ゴポゴポと不穏な音を立てて光を放つのはどう見てもマグマなのだ。

「……で、次はあれをなんとかする必要があると」

 入り口前の細い橋の先にはドヒョーめいた円形のリング。その中央に鎮座しているのは目から紫の光を放つスモトリの石像だ。その背後には次の間へと続く通路。どうやらこの遺跡、各箇所にチェックポイントとでもいうべき試練が待ち構えているらしい。

 キールバックは振り返り、シャープキラーを見上げて親指で石像を示す。

「ほら、あなたの出番ですよヨージンボ=サン。さっさと片付けてきてください」

「ハーイ。これ、女が入ったらペナルティがかかるとかないよね?」

「……ダイジョブですよ。たぶん」

 キールバックは無責任に答える。仮になにかペナルティがあったところでそれを被るのはシャープキラー。自分は痛くもかゆくもないのだ。その意図を悟ったのかどうか、セーラー服の少女は無造作にカタナをチェインドッグに預け、軽い足取りでドヒョーへと向かっていく。

 「イヤーッ!」そして彼女がドヒョーの上に乗った瞬間、橋がドヒョー・リングに格納! キールバックは眉間にしわを寄せる。今までの試練とは違い、ここは『代表者』だけで突破しなければならないらしい。

 軋みを立ててスモトリ・スタチューが前傾姿勢をとる。シャープキラーが笑顔のままにカラテを構えた。……そして!

シャープキラー:【カラテ】判定
1, 1, 1, 4, 6, 6 成功数4
スモトリ:【カラテ】判定
2, 2, 4, 5 成功数2

イヤーッ!」『ドッソイ!』同時に動く! カラテが衝突し、部屋の空気を震撼させた。スモトリ石像がやや後退する。シャープキラーのカラテに耐えかねた故だ!

「よっし! 楽勝だね!」

「バカ! まだ終わってないですよ!」

 気楽な様子のシャープキラーに、キールバックは叫ぶ。彼女と同じくニンジャ視力を備えた読者ならばわかるだろう。スモトリ・スタチューの紫の火は未だ消えていないのだ!『ドッソイ!

シャープキラー:【カラテ】判定
1, 1, 3, 3, 4, 6  成功数2
スモトリ:【カラテ】判定
1, 1, 5, 6 成功数3
シャープキラー:【回避】判定
1, 1, 2, 3, 4, 4, 6 成功

「っと! イヤーッ!」強烈なハリテをシャープキラーは後方に跳んで回避! その間にスモトリは中央部までのしのしと歩を進める。振り出しに戻った格好だ!

「アー……これ、マグマに落とさなきゃダメってこと? メンドクサイ……なァ! イヤーッ!」『ドッソイ!』

シャープキラー:【カラテ】判定
1, 2, 3, 4, 5, 5 成功数2
スモトリ:【カラテ】判定
1, 3, 4, 6 成功数2
引き分け!

 突進してきたスモトリ・スタチューをシャープキラーは真正面から受け止める! そのヒキャクのかかと部から剣呑な刃が飛び出しドヒョーに突き刺さる。無理矢理にブレーキをかけたのだ。この文明の利器をもってしてゴジュッポ・ヒャッポ!

 腕組み観戦していたキールバックの表情がやや厳しいものとなる。これは長期戦になるか。この立ち位置からではスリケンの援護も難しい。そもそもあの石像にスリケンの効果があるかも不明だ。どうあってもあのシャープキラーにがんばってもらわなくてはならない状況……

「が、ガンバレーッ!」

 不意に隣から上がった大声に、キールバックは驚いて振り向く。隣のチェインドッグによるものだ。シャープキラーを応援していることに気づくのに、数秒ほどかかった。

 シャープキラーにとっても意外だったのだろう。拮抗状態を保ったまま振り返った彼女はぽかんとした表情を浮かべていたが……すぐに不敵な笑みを取り戻し、チェインドッグに向けてサムズアップをしてみせる。「イヤッハーッ!

オプション『応援』によりシャープキラーの判定ダイス+2
シャープキラー:【カラテ】判定
1, 2, 2, 2, 4, 4, 5, 6 成功数3
オスモウ
1, 1, 4, 6 成功数2
シャープキラーの勝利

『ドッソイ……!?』スモトリ・スタチューが動揺の声を上げた……ように、キールバックには聞こえた。見よ。シャープキラーのカラテがゆっくりとスモトリ・スタチューを押し戻している。今度こそこの謎めいた石像をマグマの底に落とし、決着をつけるために!

 ここが勝機。キールバックは深く息を吸い込み、声を張り上げた。

今度は油断すんじゃねェぞオラーッ! トドメオサセーッ!」「アイエッ!?」

 突然の怒声めいた応援にチェインドッグがびくりと震えた。シャープキラーは……さらにヒキャクにカラテを込める!

オプション『応援』によりシャープキラーの判定ダイス+2
シャープキラー:【カラテ】判定
1, 1, 1, 3, 3, 3, 5, 5 成功数2
オスモウ
1, 3, 3, 5 成功数1
シャープキラーの勝利。試練突破!

イィィィヤァァァーッ!」『ドッソイ!?』スモトリ・スタチューが宙に浮いた。ニンジャのカラテとサイバネが生み出す推進力の相乗効果に敗れたのだ! そのままドヒョー外へと落下したスモトリ・スタチューはマグマに飲まれ、沈んでいく。

 ザンシンを終えたシャープキラーは相手の最期を確認しようと覗き込み……サムズアップを掲げた右腕を見つけて鼻白む。右腕はそのまま沈んでいき、やがて見えなくなった。ショッギョ・ムッジョ。

 ガコン。ドヒョー・リングから次の通路へ渡される橋が展開する。同時にキールバックたちの元へも橋が渡されたのだろう。軽い足音とともに二人がやってきた。

「もう! なにを遊んでるんですか、シャープキラー=サン!」

「アッハハ! ゴメンゴメン! けどさあ」

「なんです?」

「キールバック=サン、もしかしてアレが素なの?」

 先ほど投げかけられた荒っぽい声援を思い出し、シャープキラーは朗らかな笑みとともに尋ねる。案の定、キールバックは渋面を作ってすたすたと次の通路へ向かってしまった。あれは図星か。

「あ、あの……ダ、ダイジョブだった……?」

「ウン? アー、平気平気! それより、応援してくれてありがとねチェインドッグ=サン。私たちもいそごっか」

 おずおずと声をかけてくる……今まで逃げられていたことを思えば相当の進歩だ……チェインドッグにも笑みを向けつつ、シャープキラーもまた次の試練へと足を踏み入れるのだった。


◇第四の試練◇

 次の間に足を踏み入れたキールバックは訝しんだ。背後にやってきたシャープキラーを見上げ、疑問をぶつける。

「ここだけなんかアトモスフィアが違いません?」

「ンー……そうだね。匂いもなんか……なんのインセンスだろ、これ」

 シャープキラーも同様に眉をひそめている。然り。この広間にはなんらかの芳しいインセンスが漂っており、さらにぼんやりとしたピンク色の光に照らされているのだ。光源がどこにあるのかも判然としない。追いついてきたチェインドッグが目を丸くした。

 カラテ警戒をしても矢が飛んだり石像がやってきたりすることもない。三人は固まりつつ次へと向かう出口を探す。

「ネオカブキチョにこういう一帯があるよね」

「行ったことあるんですか? あなた」

「見学にね。特に経験はしてないよ」

「経験って、なんの……?」

 不思議そうに言葉を投げかけるチェインドッグに、シャープキラーは曖昧な笑みを返す。彼女は一瞬で状況判断を終えたのだ。チェインドッグは『そういう』話題にまるで知識がない。

 と、そのときである!「アイエッ!?」チェインドッグが驚いたように立ち止まった。キールバックとシャープキラーは同時にカラテ警戒。そしてチェインドッグの視線の先を見やり……ほとんど同時に顔をしかめた。

 そこにはカーテンで遮られた小部屋がいくつか。向こうにも光源があるのだろうか、向こう側にいるであろう何者かの影を映し出している。二人の顔をしかめさせたのはその影たちの行為のためだ。あからさまに前後しているのである!

「……えっ、ナンデ?」

「スリケンでも投げとく?」

「い、いえ。やめておきましょう。それをキッカケに妙なトラップが動いたら困ります」

「あれ、何やってるのかな……」

 チェインドッグが不思議そうに小首を傾げた。無垢! キールバックとシャープキラーは顔を見合わせ頷いた。一刻も早くこの場を離れよう。教育に悪い。

 と、そのときである。カーテンに遮られた小部屋の一つから、透き通ったローブ姿の艶やかな女が姿を現したのだ。

「あら、カワイイお客さん。あなたもしない?」

全員【ニューロン】分割判定
キールバック
(2, 4)(1, 1, 5)
チェインドッグ
(1, 3)(2, 6)
シャープキラー
(3, 5)(2, 4)
全員のなんらかは守られました

「あ、あのう、するってなにを」「「イヤーッ!」」「アイエエエ!?

 チェインドッグが質問を終えるより早く、キールバックとシャープキラーはその両腕を掴み全力疾走! すぐそばにあった出口へと駆け込む!「バイバーイ」艶やかな女の声を最後に、広間の光は消え失せ、あとには暗闇だけが残された。

 ……「ハーッ……トラップにしたってもっと、こう、なんかあるんじゃないの!?」「アッハハ! 素に戻ってるよキールバック=サン」「うるさい! ……です!」「でもあの女の人、ちょっとディスグレイス=サンに似てた気が」「お姉さまはもっと上品で美しいですよ」「ディスグレイス=サンはもっと魅力的かなあ」「あ、アッハイ……ゴメンナサイ……」


◇第五の試練◇

「また目が痛くなりそうな部屋ですね」

「アハハ! まあどういう方向性かはわかるよね」

 無数のクエスチョンマークに彩られた室内を、キールバックは半眼で眺める。シャープキラーはいつものように朗らかな笑み。チェインドッグは関心した様子であたりを見回し……部屋の奥に鎮座する「それ」に気づいた。

「つ、次はあれが鍵なんでしょうか?」

 キールバックらもそれを見つめる。円筒の上に半分にした球をくっつけたような形状。左右には細い筒めいたパーツ。ハニワと呼ばれるタイプのエンシェント・ドールだ。

 三人のニンジャが用心深く近づくと、その虚な目に光が灯った。

『ハニワチャンの、なぞなぞ、タイム』

「ハニワチャン……?」

 キールバックが呆れまじりの声を漏らした。するとハニワチャンは身体ごと彼女へと向き直り、その瞳の光を強める。

『ニンジャが、乗り越えるべき、道は、あといくつ?』

「……ハイ?」

「き、キールバック=サンが答えなきゃいけないんじゃ……」

「私が!? 道……道!? そんなこと言われたって、いくつもあるでしょうに……!」

『なぞなぞ、不正解』

 ハニワチャンが無慈悲に告げると同時、ZZZZZZT! その瞳から電撃が放たれる! キールバックのみならず他二人まで巻き込む広範囲だ!「チィーッ!? イヤーッ!」「イヤーッ!」「い、イヤーッ!?」

 少女たちは飛び退き、側転し、あるいはその場に蹲って電撃を回避! 目の輝きを落ち着かせたハニワチャンは、じっとキールバックを見つめる。シャープキラーがそっと耳打ちした。

(下手に答えないほうがいいよ、キールバック=サン。こいつたぶん……)

(言われなくてもわかって……ます! 私の発言を答えと認識するんですよね、どうせ)

 邪険にシャープキラーを押し除けてから、キールバックは黙考した。チェインドッグの不安げな眼差しを背に感じつつ、数秒間。キールバックは覚悟を決めたように目を開き、ハニワチャンを見据える。

「一つ、ですか?」

『……なぞなぞ、正解』

 ハニワチャンの瞳の光が消えた。ゴゴゴゴゴ……台座ごとスライドし、その裏側にあった扉を曝け出す。額の汗を拭うキールバックの元にチェインドッグが駆け寄ってきた。

「す、すごいです! なんで答えがわかったんですか!?」

「え? その……ほら、考えればわかる問題でしたからね!」

 憧憬にも似た眼差しに、キールバックが胸を張る。そのバストは平坦であった。シャープキラーは少し離れた位置からそれを見守る。(『いくつもある』で間違いだったから、『一つ』から攻めたんだな……)という推測を口に出すようなことはもちろんしない。無粋だからだ。

「さ、さあ! 先を急ぎましょう! それにしてもいくつ仕掛けがあるんですかこの遺跡」

「さあねえ。作ったやつが暇人だったんじゃない?」

「早くおうちに帰りたい……」

 ぼやき、軽口、泣き言。三者三様に騒ぎつつ、少女たちはさらに奥へと進む。


◇第六の試練◇

 三人をまず出迎えたのは熱気だった。そして部屋をほのかに照らす赤い光。最後にゴポゴポとという不吉な音。キールバックはうんざりと部屋の中を見渡した。

「またマグマですか……!」

「アハハ! けど、ここで最後なんじゃない? ほらあれ」

 シャープキラーが笑いながら奥を示す。部屋の中央と思しき場所には祭壇があり、そこになにかが設置されているのが見て取れた。ようやくこのミッションも終わりが見えたか。キールバックはしかし、視線を手前に引き戻す。

 ナムサン。祭壇のある足場とキールバックらのいる入り口を結ぶのは異様に細い橋一つきり。一度にニンジャ一人通るのが限界だろう。そもそも渡り切れるだろうか? 下手に足を止めればその場で崩れ落ちかねぬ……!

「駆け抜けます。二人はここで待っててもいいですよ?」

「エー? 私もオタカラ見たいもの。行く行く。チェインドッグ=サンも来るよね?」

「アイエッ? え、エット……ハイ……」

 そういうことになった。チェインドッグに一抹の不安を覚えつつ「イヤーッ!」駆ける!「イヤーッ!」駆ける!「い、イヤーッ!」駆ける!

全員【脚力】判定
キールバック
1, 2, 4, 4
チェインドッグ
1, 2, 4
シャープキラー
1, 1, 1, 3, 5
全員成功!

 色つきの風が吹く。橋がやや揺れ、パラパラと破片がマグマに落ちて蒸発した。しかし崩れることはない。三人のニンジャはなんの問題もなく対岸へ到達! ゴウランガ!

「アハッ! 少しだけタノシイだったね!」

「相変わらず緊張感のない……さっさとレリックを回収して帰りますよ。……? どうしました? チェインドッグ=サン」

「……い、いる」

 祭壇から距離を取り、チェインドッグが呟いた。訝しんでいたキールバックは、RRRRRR……どこからともなく聞こえてきた駆動音にカラテ警戒! シャープキラーもイアイを構え、祭壇を睨んだ。

 RRRRRR……祭壇の影、否、横手からのっそりと姿を表す巨大な影あり。それは紫色に輝くバスタード・カタナブレードを構えるサムライアーマー! ニンジャ古代史に詳しい読者であれば一目で看破するであろう。遺跡の守護者として設置されたケンドー・オートマトンなのだ!

◆ケンドー・オートマトン (種別:戦闘兵器)
カラテ		6	体力		6
ニューロン    	1	精神力		ー
ワザマエ		1	脚力		3
ジツ		ー	万札		4
			
◇装備やスキル
 『●連続攻撃2』
 **バスタード・カタナブレードツルギ**:『近接武器』、『ダメージ2』、『攻撃基本難易度:HARD』
 戦闘兵器:このルールを持つキャラに「カナシバリ・ジツ」などの精神攻撃は作用しない。
      また機械部品が使用されていないため、『電磁ショック』のダメージ倍加を受けない。

 キールバックらはニンジャ古代史には明るくないため、ケンドー・オートマトンの存在など知らぬ。しかし動揺はない。これまで乗り越えてきた試練と同様、否、それよりも単純だからだ。

「最後の邪魔者というわけですね。倒しますよ、二人とも!」

「は、ハイ!」

「オッケー!」

 打ち倒せばそれで済む話であるからだ! 少女たちは揃ってカラテを構える!

戦闘開始な
キールバック→チェインドッグ→シャープキラー→ケンドー・オートマトン

 「SPIT! SPIT!」先手を打ったのはキールバック! すぼめた口先から放たれたのはバイオテック由来の水滴スリケン! それらはサムライアーマーの隙間を撃ち抜き、ケンドー・オートマトンの関節部に確実にダメージを与える!

 「い、イヤーッ!」チェインドッグの目が白く輝く! 両腰のホルスターに納めていたスリケンがひとりでに浮遊し、彼女の周囲を旋回し始めた。これぞ彼女がニンジャとなって得たキネシス・ジツ!

 チュイン! チュインッ! チェインドッグが手を差し伸べると同時、二つのスリケンが複雑な軌道を描いてケンドー・オートマトンへと飛ぶ! RRRRRR……切り払いのバスタード・カタナブレードツルギをイナズマめいた射線変更で回避し、その手を強かに傷つけた。わずかに怯むケンドー・オートマトン!

「よし! じゃあ決めるか!」

 シャープキラーが笑い、跳躍! ドウ! そのヒキャクに仕込まれたブースターが火を噴き、さらに加速! 「イイイ……」迎撃にカタナを構えるケンドー・オートマトンの首を「イヤッハー!」強烈なイアイドー斬撃が跳ね飛ばした。

 RRRR……RR……呻きめいた駆動音が止まり、バスタード・カタナブレードツルギの光が消える。三人のニンジャは揃ってザンシンした。一瞬の出来事であった。

『1ターン目』
キールバック:スリケン
(2, 3, 3, 6)(1, 4, 5, 5) オートマトン【体力】6→4
チェインドッグ:キネシス・ジツ使用
【精神力】4→3
チェインドッグ:スリケン
(2, 3, 4)(2, 4, 6) オートマトン【体力】4→2
シャープキラー;強攻撃
2, 4, 4  オートマトン【体力】2→0 撃破!

「さて、レリックを回収しましょう。行きますよ、チェインドッグ=サン」「う、うん……!」

 使い手を失い転がったバスタード・カタナブレードツルギを検分しているシャープキラーを尻目に、キールバックとチェインドッグは台座へと向かった。そしてそこに安置されたマキモノを……掴み取る!

 しばしの沈黙。キールバックは思わず息をついた。映画などではここから遺跡の崩壊が始まるところだが、ここに至ってはそのようなことはないはしい。

 大事そうにマキモノを両腕で抱えるチェインドッグに微笑ましさを覚えつつ、振り返ったキールバックは……目を丸くした。

「シャープキラー=サン? まさかそれ、持ち帰るつもりですか?」

「エッヘヘ……だってまだ使えそうだしさ。滅多に手に入らないもの、こういうの」

 楽しげにバスタード・カタナブレードツルギを振り回すシャープキラー。己と同じ背丈はある刃にも関わらず、普段カタナを使っているときと変わらぬ太刀捌き。キールバックは呆れた。

「……好きにすればいいです。帰りますよ」

「了解。けどさあ、これ帰りもあの試練を乗り越えなくちゃいけないのかな?」

 シャープキラーの素朴な疑問に、キールバックは思わずうんざりとした。実にありそうな話だったからだ。とりあえず、あの橋をまた渡る必要があるだろう……

ケンドー・オートマトン撃破
シャープキラー【万札】9 → 13
**バスタード・カタナブレードツルギ** 獲得



◇エピローグ◇

 試練を乗り越え、遺跡を脱出し、IRCで報告を行い、トコロザワ・ピラーまでマキモノを届け、アジトに戻って一夜が明けた。そして再びスカウト部門オフィスに呼び出されたキールバックは、チェインドッグにシャープキラーを伴ってアベレージと顔を合わせているのである。

「昨日はご苦労だった。お前たちの持ち帰ったマキモノだが……どうやらミヤモト・マサシとは関係のない代物だったらしい」

「……そうですか」

 初手から悪いニュースである。いくら価値あるレリックとはいえ、頭領の求めるものではなかった以上……今回の報酬も危うい。そう直感したからだ。シャープキラーが口を開く

「じゃあなに? 今回の私たち、タダ働きってこと?」

「……フフ! 結論を出すのがハヤイすぎるぞ、シャープキラー=サン。どうやらあのマキモノ、別方面で価値のあるレリックだったようでな……買い手がついた」

「ヘェー! 誰?」

「リー先生。俺にはよくわからんが、どうやら太古のニンジャが残した代物だったらしい。まあ、あの手合いには貴重なものなんだろうな」

 その心配が無用のものだとわかり、キールバックはこっそりと胸をなでおろす。チェインドッグは相変わらず話を理解しきれていないようで、不安そうにそれぞれの顔色を伺っていた。

 アベレージが咳払いし、一同を見渡す。

「そういうわけで、特別ボーナスが出る。カネか武器か女……と言っても、ソウカイヤ直営の高級オイラン・マッサージ店のチケットだが……どれかだ。どうする?」

「カネですかね」「カネがいいな!」「え、エット……じゃあ私も……」

「……まあそうなるだろうとは思ったよ。あとで口座に振り込んでおく。確認しておいてくれ」

◇報酬獲得な◇
 それぞれに【万札】20(ボーナス込み), 【余暇】4, 【名声】2

「ソウカイヤとしては以上。俺からはもう一つある」

「……アベレージ=サンから?」

「お前のとこのお姉さま、今日の夕方にはネオサイタマ・ステイションに到着するそうだ。ちょうどいいから伝えておく」

「……! わかりました! アリガトゴザイマス!」

 キールバックは勢いよく立ち上がり一礼! チェインドッグも慌ててそれに倣う。シャープキラーは微笑を浮かべてその様子を横目で眺めていた。そして慌ただしく退室していく二人を追って立ち上がり……ふと思い出した様に立ち上がる。

「そういやアベレージ=サン、今度の組織再編でディスグレイス=サンの補佐になるって本当?」

「そういう噂があるのは知ってる。ま……あいつは最近腕を上げてるニンジャだ。平均的な俺とは違ってな。そういうこともあるだろうさ」

「フーン。じゃ、なんかあったらヨロシクネ!」

 朗らかな笑みを残し、セーラー服の少女が退室する。アベレージはため息をつき、立ちあがった。スカウト部門の仕事は多い。まさにタイム・イズ・マネーなのだから。

【カシマシ・ニンジャズ・ゴー・ダウン・エンシェント・トレイル】おわり


◇あとがき◇

 というわけで、無事遺跡からレリックをもって生還。ついでに「持っていってもいい」とあったのでバスタード・カタナブレードツルギをもって帰りました。シャープキラーの方向性が見えてきた気がする。

 しかし遺跡探索というのはなかなか面白く、自分も何かソロシナリオで書いてみたい気もしている。そこはまあ、もう少し構想を練ってからになりそうだが……

 とにかく、ここまで読んでくださった皆様。そして楽しいソロシナリオを書いてくださったT1000G=サン。ありがとうございました! 気が向いたらまたやるよ!


 

 

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