忍殺TRPGソロシナリオ【カプリース・オブ・アリス】

◇前置きな◇

 ドーモ。しかなです。当記事はニンジャスレイヤーTRPGの自作シナリオ……それもダイスと紙さえあれば一人で遊べる、ソロシナリオと呼ばれる類のものです。

 当シナリオはあなたのニンジャがどこに所属しているかを問いません。作中であるソウカイニンジャがNPCとして登場するものの、そこまで気にせず協力してもらって構いません。

 あとこのソロシナリオは比較的左寄りになるのではないかと思います。「私のニンジャはソーシリアスなんだ!」という方は、オープニング一読してから挑戦するか否かを決定したほうがいい気がする。

 ではやってみよう。ヨロシクオネガイシマス。



◇オープニングな◇


 ……011011001110000101……

 ある日のこと。ニンジャであるお前が目を覚ましたとき、そこは見たこともない森の中だった。気のせいか木々の間には燐光を放つ球体が緩やかに飛び交い、隙間から覗く真っ暗な空には黄金の立方体が静かに回転しながら浮かんでいる

 なんだここは。なぜ自分はここに? 身を起こし、茫然と周囲を見回していたお前の後頭部に突然冷たい銃口が突きつけられた。

「動かないで。こっちの言葉がわかるなら」

 背後からかけられたのはまだ幼さの残る少女の声。それに背いたらどうなるか……容易に想像のついたお前は大人しく静止した。1分ほど経った頃、銃口が離される。

「ん。いいよ、こっちむいて。……ドーモ。オーキッドです」

 振り向いた先に立っていたのは、桃色の髪をした小柄な少女。ぶかぶかの迷彩ミリタリーコートに、使い古されたショットガン。オジギ姿勢から復帰した彼女は不思議そうに首を傾げる。

「ここに他のニンジャがいるの、久しぶりに見た。なんでここに?」

 その質問にお前は答えることができない。オーキッドは……お前の様子から事情を察したのか、あるいは興味を失ったのか……不意に背を向け、歩き始めた。

「私、これから帰るところ。ついてきてもいいよ」

 なにが起こっているのかまったくわからないものの、ここに残っていてもどうしようもない。お前は少女の後についていくことにした。



◇本編な◇


♥︎ご機嫌よう! 今日もコトダマランドに迷い子がやってきたみたいね。初めてやってきた子と、うちのホワイトマーチ=サンを追いかけてやってきてからちょくちょく出入りしている……オーキッド=サン! カワイイ! どんな子かもだいたいわかってるわ。こんな感じね♥︎
ニンジャ名:オーキッド
【カラテ】:4
【ニューロン】:6
【ワザマエ】:6
【ジツ】:2(ヘンゲヨーカイ)
【体力】:3
【精神力】:6
【脚力】:3
【万札】:13
【名声】:1
持ち物など:
○危険生物ハンター
『スダチカワフ・ショットガン』『ヒートダガー』
♥︎彼女は素敵な狩人さんなの。きっと向こうでも同じような冒険をしていたはずだから、こっちにもすぐ慣れたのね。だから帰り道が平坦でないことも重々承知のはずなのだわ♥︎
♥︎つまりね……「「キキーッ!」」ああいう小鬼たちが襲ってくるのにも慣れっこってワケ。片方の新顔さんは驚いてるみたいだけどね。向こうにはいないのかしら、小鬼。あの子たちってばあんまり頭が良くないから、すぐに悪戯しに出てくるのよね♥︎
♥︎せっかくだから新顔さんのカラテも見たいわ。【カラテ】判定(【カラテ】の値と同数のダイスを振って判定、ってことよ。あたし詳しいんだから)して小鬼をやっつけて! 出目が4以上のダイスが一つでもあれば成功! 小鬼たちは怯えて、キラキラしたものを置いて逃げていくわ(向こうだと【万札】1、っていうのかしら?)♥︎
♥︎判定に失敗してしまったらどうなるかって? そりゃもちろん「キキーッ!」襲われるわ。棍棒で力いっぱい殴りかかってくるから頑張って避けてね(一番高い能力と同じ数のダイスで判定よ)。出目が3のダイスが一つでもあれば成功! これも失敗してしまったら……【体力】が2減少してしまうの。【体力】が0以下になったニンジャさんは、ずっとコトダマランドにいてもらうわね(向こうからするとキャラロストになっちゃうけど)♥︎
♥︎回避に成功、もしくは殴られても耐え切れれば……BLAKKA! オーキッド=サンがショットガンで小鬼を始末してくれる。手際がいいのね。この場合、キラキラしたものはオーキッド=サンが持っていっちゃうんだけど、まあそのくらいは許してあげてね。一人で二匹、小鬼をやっつけたことになるんだから♥︎


…1000110101…


♥︎小鬼たちと戯れた新顔さんとオーキッド=サンは、森の中をずんずんと進んでる。あれきり他の小鬼は出てこないし、見ている方もちょっと退屈になっちゃう♥︎
♥︎あら? 急にオーキッド=サンが立ち止まったわ。どうしたのかしら。「お腹すいた」ご飯にするみたい。あたりの木の根本に生えてるキノコを無造作に手に取ると、短剣を使って焼き始めたわ。向こうの技術って進んでるわよね。個人的にはあまり好かないのだけど……♥︎
♥︎さて、耳を済ませれば新顔さんのお腹の音も聞こえてくる。どうやらオーキッド=サンの真似をしてキノコを食べようとしてるみたい。でもダイジョブかしら。ここのキノコ、たまに普通のニンジャには刺激が強いのが混ざってるの♥︎
♥︎採ったキノコは果たしてどうか。運を天に任せましょう。ダイスを一個振って! 出目によってどんなキノコかが変わってくるから♥︎
♥︎具体的にはこんな感じ♥︎
出目1:一口食べた瞬間バッド・トリップ! けど、ソウルに聴く味だったのね。【精神力】が2減ってしまう(0で止まるから安心してね)けれど、【ジツ】値が1上昇したわ! 【ジツ】4まで上げられるからね
出目2、3:ちょっとくらっときたかしら? 頭にくる美味しさね! 【精神力】1減少(最低値は0)、【体力】1回復ね。【体力】がいっぱいでも安心して! この冒険が終わるまで、あなたは【体力】の最大値を超えることができるから。
出目4、5:顔が綻ぶような味でしょう、そのキノコ? 意外といけるんだから。まあ毒キノコなんだけど……【精神力】が1回復して【体力】が1減少(【体力】1で踏ん張れるから気を確かにね)。この冒険の間、【精神力】が最大値でも一時的に限界を超えられるからね
出目6:あら、すごいの引き当てたわね! そのキノコはあなたの力を引き出してくれるわ。代わりにすっごい体力持ってかれるけど。【体力】2減少(既に【体力】2以下の場合、【体力】は1になる)。代わりに【カラテ】【ワザマエ】【ニューロン】のどれかを1上げることができるわ。どの力も7まで上げられるわよ。
♥︎さて、幸せな気分になれた? もっとこの地に留まっていたいと思ってくれたかしら。……残念、思ってくれなかったみたい。新顔さんはオーキッド=サンの後に続いて出口探しに戻っちゃった♥︎
♥︎たしかにあちらの方角なら、今ちょうどネオサイタマとリンクしてるのだけど……ううん……これだけで帰しちゃうのはつまらないわね! ちょっと遊んであげなくちゃ♥︎011011110010


…10010011♥︎♠︎♣︎♦︎♤♧♢♡…

 ……果たしていかなる仕組みなのか。お前は今、木で作られたトンネルの向こう側に見慣れたネオサイタマの風景を見ることができる。シンピテキ、あるいはブードゥー? なんにせよ、帰還の道は開けた。

 駆け出そうとしたお前は、しかし慌てて足を止める。なんの前触れもなく、目に見えぬ圧力がトンネルの手前に出現したからだ。それはオーキッドも感じ取ったのだろう。彼女は瞬時にカラテ警戒!

 やがて周囲の木々から飛来したのは、小さな光球……そうとしか呼べないなにか。トンネル手前に結集していくそれはやがて人の形を取り……童話めいたドレスニンジャ装束の少女を形取る。

 人形めいた美貌に微笑を浮かべ、謎めいたそれは優雅にカーテシー。ナムサン! アイサツである!

「ドーモ。ご機嫌よう、異邦人の皆様方? あたし、アリスというの」

 まだ幼さの残るそのニンジャに、しかしお前は警戒を緩めない。ニンジャソウルが警鐘を鳴らしている。眼前の相手が只者ではないと!

「お帰りになる前に、少しだけあたしと遊んでくれない? ねえ、いいでしょう?」

 無言でオーキッドがショットガンを構える。お前もすぐに理解できた。アリスのそれは形こそ問いかけだが決定事項。そしてこれから始まるのがイクサであると……!


♠︎遊戯、あるいはイクサ♤

 まず最初に、お前は立ち塞がったこのニンジャのことを知るべきだ。

ニンジャ名:アリス・ニンジャ
【カラテ】:1
【ニューロン】: 18
【ワザマエ】:13
【ジツ】:9
【体力】:54
【精神力】:18
【脚力】:8
***半神的存在***
このニンジャの体力は【ニューロン】×3となる
***不滅***
並のニンジャでは彼女を滅ぼす事はできない
***即死無効と欠損部位再生***
『サツバツ!』出目6などの即死効果を受けた場合、即死せずD6ダメージを受ける
また『サツバツ!』出目2〜5の効果を受け部位欠損が発生している場合、ターン終了フェイズに
欠損部位再生を宣言し、【精神力】1を消費することでペナルティを回復する
●戦闘スタイル:ムソウ
自らのローカルコトダマ空間と現実を重ね合わせることで理想のカラテムーブを再現する。
この戦闘スタイルが選択されたとき、近接攻撃を【ニューロン】で判定する
●タツジン:ムソウ
戦闘スタイル:ムソウ選択時、ニューロンの値に応じて『●連続攻撃』を得る。
アリス・ニンジャの場合、『●連続攻撃3』を得る。
●強固なエゴ
このニンジャは「カナシバリ状態」「操り人形状態」にならない。
☆女王の戯れ
このニンジャは3ターンの間、【回避】を含めた一切の行動をとらない。
☆戯れの終わり
『女王の戯れ』終了後に発動。
このニンジャは出番開始時、戦闘中の敵すべてに対し
自身の【ニューロン】と同値の【体力】ダメージ(回避不可)与える。

 ……この通り、常人では到底勝ち目のない相手だ。だが慢心か、それとも他の目的があるのか。このニンジャは3ターンの間なにもしてこない。お前とオーキッドはその間に全力を尽くすべきだ。

 【ニューロン】の高いものから順に【カラテ】【ワザマエ】で攻撃……あるいはジツを持つならば【精神力】を消費し【ニューロン+ジツ】で判定を行え。お前はオーキッドにも好きな行動をとらせることができる。ヒートダガーで斬りかからせてもいいし、ヘンゲヨーカイ・ジツを発動させてもいいし、ショットガンを撃たせてもいい。

 また、【カラテ】判定時に出目6のダイスが二つ出ると『サツバツ!』が発生する。お前は単純にこれを『ダメージ+2』と扱ってもよいし、ルールに則ってダイスで追加効果を決めてもいい。いずれにせよ、アリス・ニンジャに与えたダメージをカウントしておくこと

 3ターンが経過したのち、アリス・ニンジャは攻撃に移る。自身の持つスキルにより、彼女はお前とオーキッドの【体力】を18減少させる。つまり、もう遊びに飽きたということだ。

 もしお前が優れたニンジャで、この理不尽な攻撃に耐えた場合……お前はもちろん反撃を行うことができる。しかし今度はアリス・ニンジャも回避行動を取り、かつカウンターも仕掛けてくる。そして次の出番でまた回避不能の【体力】18ダメージを叩き込んでくる。お前が意識を保っている限り、『☆戯れの終わり』の効果は永続する。

 ここで【体力】が0以下になってもお前とオーキッドは爆発四散しないので安心してよい(行動不能にはなる)。アリス・ニンジャか、お前とオーキッドの【体力】が0になるまでイクサを続けること。0になったらエンディングだ。


♥︎♠︎♣︎♦︎エンディング♤♧♢♡


「アハハ! 久しぶりにいい運動ができたわ!」

 激闘の末、お前の意識は遠のいていく。アリスの楽しげな笑い後だけがいつまでもニューロンに木霊した。

「いいわね、気に入っちゃった。印をつけておいてあげるから、またこの地にいらっしゃいな。コトダマランドはいつでもあなたたちを歓迎するわ」

「……まあ、あたしの方から遊びに行ってもいいけど! それじゃあ、サヨナラ!」

 明るい声とともに、お前の視界が白で埋め尽くされていく……


…01100010101000110101…


「……起きて」

 乱暴に揺り動かされ、お前は呻きとともに目を覚ます。そこはネオサイタマの路地裏だ。倒れたゴミ箱から顔を出したバイオネズミが、どこへともなく走り去っていった。

 顔を上げると、無表情にこちらを見下ろすオーキッドの姿。ひどく疲れているようではあるが、無事のようだ。

「……散々な目にあった。あんなやつ、初めて見たよ。無事でよかったね」

 不機嫌そうに呟いた彼女は、「じゃあね」という短い言葉だけを残して去っていった。お前も軋む体に鞭打ち、立ち上がろうとしたところで……側に置かれた宝石に気づく。


♦︎女王からの報酬♢
アリス・ニンジャに与えたダメージと同じ数の【万札】を獲得すること。
オマケとして【余暇】2


 いったいあのニンジャは、あの地はなんだったのだろうか? おとぎ話めいた風景はすぐに霞みがかってニューロンの彼方へ消えていく。お前は首を振り、ネオサイタマの生活へと戻るため立ち上がった。【終わり】


♦︎女王からの報酬:おまけ♢
このシナリオをクリアしたニンジャは、【余暇】を消費してアリス・ニンジャと謁見ができる。謁見については下記の非公式プラグインを参照のこと

……なお、このシナリオをクリアしたニンジャはだいたいがアリス・ニンジャクランではないのでジツの修行ができないことに留意されたし。アリス・ニンジャは強大だが、他のクランのジツを教えることができるほど物知りではない。また、このプラグインを適用するかしないかはあなた次第だ。


◇あとがきな◇

 というわけで、コトダマランド再びである。やはりそのうちコトダマランドのプラグインも作る気がしてきた。その暁には是非遊びに来て欲しい。

 今回は短めだがこんな感じ。ここまで読んでくださった皆様、そして遊んでくださった皆様、ありがとうございました! 気が向いたらまたやるよ!

 



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