忍殺TRPGソロリプレイ【ナイス・クッキング? アット・トレーラーハウス】前編
◇前置き◇
ドーモ。しかなです。当記事はしかながソロシナリオを遊んだ結果を元に作成したテキストカラテ……一般的にリプレイなどと呼ばれるものとなります。気楽に読めるよ。
今回挑戦するのは……手前味噌ながら自作のソロシナリオ、【ビート・モンスター・イン・トレーラー・ハウス】です。
挑戦者はニュービーとする予定。どんなやつかはオープニングで語られます。
……で、自作のソロシナリオにも関わらず改変というかテストプレイというかを行う予定だ。ご了承いただきたい。
ではやってみよう。よろしくおねがいします。
◇これまでのあらすじ◇
勇敢なるブラインド探検隊の一員としてスカイフィッシュ探索に挑んだソウカイニンジャ、オーキッド。紆余曲折ありヨロシサンのシャガイ級データを手に入れた彼女はそれを持て余し、軽い気分でソウカイヤスカウト部門オフィスを訪れたのだ……!
◇オープニング◇
「スウォーム・ジツの使い手?」
「うん。いないの?」
ソウカイヤスカウト部門のオフィスは今日も忙しい。ニンジャ殺しの狂人を嘲笑うかのようにニュービーの数はウナギ・ライジング。その分彼らの管理にスカウトたちが右往左往するというわけだ。
その片隅、デスクで始末書を書いていたディスグレイスはやや不機嫌そうに顔を上げる。改造ミコー装束というこの場ではやや目立つ出で立ち。そのバストは豊満であった。
それを見下ろすのはぶかぶかの迷彩ミリタリーコートを着込んだ小柄な少女。桃色の髪が鮮やかだ。臆する様子もなく見下ろしてくる少女を見て、ディスグレイスは大仰な溜息をついた。
「先ほど叱責されておいてその態度とは……この始末書、誰のためのものだと思ってるんです?」
「いるの? いないの?」
「ええい、結論を急ぐんじゃありません!」
苛立たしげに書きかけの始末書を脇に押し除け、分厚いファイルを取り出すディスグレイス。彼女は最近になって管理職に昇格したニンジャであり、ある程度のニュービーの情報は抑えている。
左手で難儀そうに資料をめくりながら……彼女の右腕は普段、袖の中に引っ込められている……ディスグレイスは怪訝そうに聞いた。
「それにしてもなんのために特定のジツ使いを?」
「……参考になりそうな資料を拾った」
「またぞろ変なものを拾ったんですか。まあ、資料の提供は感心ですね。ソウカイヤの底上げに繋がります……」
ディスグレイスは深くつっこむ様子もない。彼女はオーキッドのことをそれなりに把握している。元危険生物ハンターであり腕はそれなり。だが普段どこをほっつき歩いているかも判然とせず、時折妙なニンジャを拾う悪癖があるとかなんとか。同僚のアベレージが『やつがフェアリーのニンジャを連れてきた』などと世迷言を宣っていたことを思い出す。彼は働きすぎなのだ。
一方のオーキッドはそこまで殊勝なことを考えていたわけでもない。彼女が取得したヨロシサンのシャガイ級フロッピー……スウォーム・ジツの研究データは彼女自身には不要なもの。ならば役立てられるものに渡すのがよい。その程度の考えだ。そのジツの使い手がいないのならば売り払えばそれで済む。
眉根を寄せ、悪戦苦闘するディスグレイスを無表情に見下ろすオーキッド。そこに通りかかったくたびれたヤクザスーツの男が、興味を惹かれたように立ち止まった。
「どうしたディスグレイス=サン? ニュービー関連で急ぎの書類はないぞ」
「ドーモ。アベレージ=サン。……ちょうどよかった。スウォーム・ジツの使い手に心当たりありません?」
「スウォーム……さて、どんなジツだったか」
「アレですよ。インヨカ=サンが使う。どこからともなく小動物をうじゃうじゃと呼び出す……」
「ああ、あの手のジツか。ならインヨカ=サンでいいんじゃないのか?」
「あれはいいんですよ、あれは。もう充分強いでしょう?」
アベレージが怪訝そうに眉をひそめてから考えこむ。数秒後、彼は思い出したように声を上げた。
「ああ、そうだ。そのインヨカ=サンな、お前の秘書に立候補してきた。近く届出が受理される予定だ」
「ハァ!?」
ファイルを勢いよく閉め、ディスグレイスが顔を上げる。わずかな憔悴と困惑、そして大いに嫌悪の表情を浮かべ。
「わたくしを通さずなにを勝手な! 秘書はキールバック=サンだけでいいじゃありませんか!」
「それを決めるのは上だよ。まああいつもあいつで優秀なニンジャではあるし、申し分ないというところだろう。不測の事態に備えて、筆頭補佐付きの秘書は複数名つけるんだとさ。……で、スウォーム・ジツの使い手の話だが」
「その話は後でも、」
「最近入ってきたニュービーに一人いるぞ」
唐突に投げ込まれた情報に、ディスグレイスは面食らったようだった。静観していたオーキッドがアベレージを見やる。
「どういう奴」
「名前はロングカッター。もうじきここに来る。俺が説明するよりは見たほうがハヤイ」
「ロングカッター=サン? わたくしがスカウトしたあの子ですよね? ジツなんて使えたんですか?」
「……本人に説明してもらえ。噂をすればなんとやらだ」
アベレージが視線を上げる。そこへドタドタと駆け込んでくる第四のニンジャ! アベレージの元に来るやいなや、90度のオジギ!
「スンマセン! はー、オラのせいでご迷惑を……! 書類! 書き直してきましたんで!」
「ウム」
しかめつらしく差し出された書類を受け取ったアベレージは、用は済んだとばかりに立ち去っていった。
オーキッドはほっとした様子で息を切らすニュービーを見上げる。相当な長身。室内だというのに暖かそうなコートを着込んでいる。その背に背負うのはカタナ……否、マグロ解体用の大型包丁だろうか。ニュービーは赤くなった鼻をすする。
「ズズッ……アッ、ディスグレイス=サン! ドーモ! ひょっとしてアベレージ=サンとのお話、オジャマしちまったでしょうか?」
「気にしなくていいですよ。ちょうどあなたの話をしていたところなので……ジツを使えるのを忘れていたと?」
「ハー、書類不備の件ですな。釣り餌の代わりにしか使っとらんかったもんで、すっかり抜け落ちてたんで。あんなもんがお役に立てるかどうか……」
ごまかすような照れ笑いを浮かべ、そのニュービーは後頭部を掻く。ディスグレイスはやや思案してから納得したように頷き、傍のオーキッドを指し示した。
「ちょうど、そのジツの持ち主を探していた者がいるのですよ。こちらオーキッド=サン。あなたのセンパイに当たります。アイサツなさい」
「アッ、こりゃスンマセン! ドーモ、はじめまして! ロングカッターといいます!」
ニンジャ名:ロングカッター
【カラテ】:5 【体力】:6/6
【ニューロン】:4 【精神力】:5/5
【ワザマエ】:2 【脚力】:3
【ジツ】:1(スウォーム) 【万札】:0
近接攻撃ダイス:5
遠隔攻撃ダイス:2
回避ダイス:5
【装備品】:
カタナ
【サイバネ】
▶︎クロームハート
【スキル】:
○元イタマエ
「ドーモ。オーキッドです」
にこやかに右手を差し出すロングカッター。数秒置いてからオーキッドはそれに応じた。いきなり利き腕を差し出してくるあたり、まだイクサの経験もないニュービーか。握り返してくる力はなかなかのものだ。
満面の笑みを浮かべていたロングカッターだが、すぐに不思議そうに首を傾げる。
「それにしても、ズズッ! ……スンマセン。冷え性なもんで。とにかく、なんであんなジツのことなんぞ?」
「ああ」
オーキッドは懐から例のフロッピーを取り出そうとした。彼女としてはこれを役立てる相手に渡せればそれでよい。後はスシでも食べに行くだけだ。
しかし、それを押しとどめる者あり。
「ちょうどいいです。オーキッド=サン、その子のOJTをお願いしますね」
「…………は?」
思わず手を止め、オーキッドは発言者……ディスグレイスを睨む。対するディスグレイスは微笑を浮かべるのみだ。
「あなたもソウカイニンジャとして場数を踏んできました。そろそろ後続の育成にも挑戦する時期ですよ」
「おお、センパイがついてくれるんですか! いやー、そりゃありがたい!」
高まるオーキッドの不満にも気づかず、ロングカッターが素直な様子で喜んだ。オーキッドとしてはたまったものではない。ブラインド探検隊のように依頼として舞い込んでくるならともかく、そうでないときは気ままに単独行動する方が性に合うのだ。彼女は迷わず拒否の返答を
「ロングカッター=サンはツキジに住んでいた元イタマエです。ネオサイタマの地理感にもまだ……」
「任された」
引っ込め、掌を返した。変わらぬ無表情。だがディスグレイスは笑みを深める。うまくいった。彼女はオーキッドのことをそれなりに知っている……とにかく食い気に弱いニンジャであり、ことスシに関しては目がないのだ。
「おお、スンマセン! ご迷惑かけるかもですが、ヨロシクです!」
なにも知らぬロングカッターがオジギ! それを横目に、ディスグレイスはオーキッドを手招きして呼び寄せると耳元に囁いた。
「……彼女、体が弱かったらしく。ローンを組んで心臓サイバネを入れています。返済期限は間近。意味がわかりますね?」
「わかる」
オーキッドのアトモスフィアがややシリアスとなった。ソウカイヤでローンという言葉が使われる場合、それは大抵ふわふわローンのことだ。ソウカイニンジャであれば誰でも借りられるが、それで返済できなければニンジャであっても『回収』され、日の目を見ることができなくなる。
つまり、うまいスシを作れる人間が一人いなくなるかの瀬戸際なのだ。これは本気を出さねばなるまい……やや思案していたオーキッドは顔を上げた。
「オオヌギ・ジャンク・クラスターヤードの行方不明事件調査。アレでもいい?」
「あなたが持ち出してきたあのミッションですか……構いません。説明はきちんとするように」
そういうことになった。
◇本編な◇
タマ・リバーを渡りオオヌギ・ジャンク・クラスターヤードへ。そこから川沿いを歩きながら、ロングカッターはオーキッドの説明を一生懸命に聞いていた。
「ここ……もっと正確に言えば、この先の車両廃棄地帯。そこで行方不明者が多発してる」
「ヘヘェー! こんなとこに来る人間がおるもんですねぇ」
「……獣めいた連中しかこない。けど、人目のないここで取引をする場合もあるから。無視はできない」
「成る程」
ロングカッターはしかめつらしく頷いてみせた。実際は緊張で固まりつつある。心臓に埋め込んだサイバネが、それでもなお規則正しい鼓動を刻んでいる。
「……狂暴なバイオ生物を見た、って噂もある。それなら私の性分。けど」
「けど?」
「……あそこ広いから。人手が欲しかった。うん。ちょうどいい」
「お、お役に立てるよう努力しますんで……!」
狂暴なバイオ生物と聞いて、ロングカッターはかつてツキジ・ダンジョンで見かけた巨大バイオタラバガニを思い出す。あれも大変に恐ろしい生き物であったが、さて地表にいるバイオ生物とはどのようなものだろうか。
ロングカッターはより緊張を強める。そして前方を歩くオーキッドにソンケイの眼差しを向けた。危険が待ち受ける場所に向かうというのに、そこにはひとかけらの恐怖すらないのだ。
二人がやがて到着したのはトレーラーハウスが打ち捨てられた一帯である。ロングカッターは思わず小さな歓声を上げていた。ダンジョンではなかなか見る機会のない光景だからだ。
そのとき!
「イエッフー!」「アイエッ!?」
トレーラーハウスの陰から飛び出してきた人影に、ロングカッターは思わず声を上げていた。それはヨタモノめいた男である。その手にはチャカ・ガン! マンハンター気取りか!
「狩って」
「エ……」
淡々としたオーキッドの言葉に、ロングカッターは思わず聞き返す。狩れ、とは……つまり、そういうことなのか?
じっとこちらを見上げる小柄な少女に、ロングカッターは表情を固くして頷き返した。そして「い、イヤーッ!」スリケン投擲!
【ワザマエ】判定(難易度NORMAL)
2d6 → 3, 3 失敗
……しかし鋼鉄の星はあらぬ方向へ飛び、消えた。緊張により手が滑ったのである! 青ざめるロングカッター! 自らの命が失われるかもしれなかったことなど知る由もなく、ヨタモノが銃口をこちらへ向ける!
「撃っちゃうよォー!」
BLAKKA! 銃声にロングカッターは目を瞑る! ……だが、銃弾はいつまで待ってもやってこない。おそるおそる目を開いたその先、首から上をなくしたヨタモノが崩れ落ちるところだった。
「エ……」
「キル完了」
涼やかで無表情な声。見ると、オーキッドがショットガンを下ろすところだった。なにが起こったのか、すぐにわかる。彼女がやったのだ。ヨタモノが自分を撃つ前に、その頭を吹き飛ばした。
「すっ……スンマセン!」
じっ、と見上げられ、ロングカッターは思わず身を竦めた。叱られると思ったのだ。が、怒鳴り声はやってこなかった。
「……ああいうのは獣と思えばいい。やらなければやられる。それだけ」
彼女は淡々と断言した。そして凍りつくロングカッターを置いて首なしヨタモノ死体の元へ接近すると、その懐を探ってサイフを抜き取る。そして何事もなかったかのようにトレーラーハウス密集地隊へ。
ロングカッターは深く息をつく。ソウカイニンジャとはかくも冷酷で無慈悲であるものか。自分もあのようになれるのだろうか……? やや不安になりつつも、彼女は慌ててセンパイの後を追うのだった。
◇◆◇◆◇
「手分けして探す」
密集地帯の中心部へ到着したオーキッドの第一声がそれだった。質問を待たずしてトレーラーハウスの中へと入っていくセンパイを見て、ロングカッターは呆気に取られ……気を取り直すように自らの両頬を叩く。
「イケネ! オラもがんばんねェと! センパイにこれ以上迷惑かけでらんねェもんな」
キアイを入れ、ロングカッターは手近のトレーラーハウスに侵入する。虱潰しに探すことにしたのだ。
中はがらんとしていた。人の気配もない。それでも注意深く周囲を見渡していたロングカッターは「アッ」隅に落ちていたものを見て声を上げた。それはどう見ても……銃だ。
「……も、持っていっちまってもいいのかなこれ」
なんとなく気まずい思いをしつつも、彼女はそれを拾い上げた。売ればカネになるだろう。
1回目
1d6 → 5 チャカ・ガン獲得
続いて隣のトレーラーハウスへ。やはりここにも人の気配もない。全ニューロンを動員して隈なく調査を行ったロングカッターは……数分後、疲れた様子でこのトレーラーハウスを後にした。なにもなかったのだ。
2回目
1d6 → 1 なにもない!
続いて隣のトレーラーハウスへ。「アッ!」ロングカッターは思わず声を上げていた。中のテーブルに放置されているのは……薄汚れた万札ではないか?
やや後ろめたさを感じつつも「……せ、センパイに見つけたもん報告しなきゃなんねえし……」ロングカッターは結局その万札を回収した。ローン返済は大事だ。
3回目
1d6 → 3 【万札】2獲得
続いて隣のトレーラーハウスへ「……イヤーッ!」「グワーッ!?」向かおうとしたロングカッターは、あたりに響くカラテシャウトに足を止める!
「センパイ!?」
間違いなく、片方はあの小さな少女のもの。ロングカッターは慌てて背中のマグロ切断用包丁を引っ張り出し、駆け出した!
【ナイス・クッキング? アット・トレーラーハウス】前編終わり。後編へ続く
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