忍殺TRPGソロリプレイ【ウェルカム! アンディザイアード・ゲスト】その2

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかながプレイしたソロシナリオの結果をテキストカラテナイズしたリプレイだ。要は読み物です。お気軽にドーゾ。

 そして続き物でもある。前回のテキストはこちら。

 今回はほとんどイクサがメインになる。早速行ってみよう。よろしくおねがいします。



◇屋根上にて◇


 銃声、怒号、悲鳴、断末魔。奥ゆかしくあったはずの高級料亭「美辞樽」は今、アビ・インフェルノ・ジゴクめいた騒乱の只中にあった。

「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 そして、おお! それは屋根の上でさえ例外ではない。だが下とは違い、響くのは剣戟とカラテシャウトだ。ドクロめいた月の下、二筋の色つきの風がぶつかり合い、離れ、またぶつかり合う!

「「イヤーッ!」」

 風が離れ、わだかまる。屋根の端に着地したブレードブレイカーは油断なくカタナを構えたまま舌打ちした。

「チョコマカと……! ケチな傭兵風情がァ……!」

「フン、ソウカイヤってのは傭兵風情に苦戦する程度の組織なのか?」

 屋根の端に着地し悪罵を鼻で笑うのは、緑色の流線型サイバネスーツに身を包む重サイバネのニンジャである。屋根から状況把握を行おうとしたブレードブレイカーは侵入を試みていたこのニンジャと鉢合わせし、イクサを繰り広げていたというわけなのだ!

 ジリ……ブレードブレイカーは静かに間合いを測る。眼前のニンジャは油断ならぬカラテの持ち主。だがそれ以上に厄介なのは、相手が時間稼ぎに徹していることだ。つまり、本命は他にある。相手の思惑に乗ってしまっている事実が、ブレードブレイカーを苛立たせていた。

 だが無策に突っ込めば手痛い反撃が待つのも事実。悠然とカラテを構える重サイバネニンジャの隙を見出すため、ブレードブレイカーは全ニューロンを集中させた。

 ズル……ズル……

 そのときだ。なにかが這う、名状しがたい音が聞こえてきたのは。重サイバネニンジャも同様にその音を捉えたのだろう。わずかに眉間にしわを寄せる。

 ズル……ズル……

 音が大きくなる。近づいてくる。どこに?「イヤーッ!」不意に重サイバネニンジャが跳躍! 彼が立っていたその場所に、真っ赤な手が伸びた。ズル……ズル……「ヨイショ、っと」

「「イヤーッ!」」

 ブレードブレイカーが仕掛ける。ドウ! 重サイバネニンジャは足元から炎を噴射し軌道修正、これを回避! サイバネ脚に仕込まれたブースターユニットだ! その間に、赤い手の持ち主が屋根上に姿を現した。

 "それ"は異様な存在である。7フィートを超えるであろう長身は上から下まで鮮烈な赤。ドレスめいた仮足。全身にドレスの装飾めいて細い腕が巻きつく。極めつきは異様に長い右腕だ。マフラーめいて口元を覆ってもなお、地に掠りそうなほどの長大さ。

 "それ"はブレードブレイカーを見やり、着地した重サイバネニンジャを興味深げに見やった。そして何事か納得したかのように頷くと、人並みの左腕の掌を上向け、豊満なバストの前に当ててオジギを繰り出す。ドレスめいた仮足の裾がひとりでに持ち上がった。カーテシーめいて。

「ドーモ。ゴキゲンヨ。ブラッディリリーです」

ブラッディリリー
選択肢2:ブレードブレイカーと(?)屋根上へ向かう

「……ドーモ。ブラッディリリー=サン。ネバーランドです」

 重サイバネニンジャはアイサツを返し、油断なくカラテを構えた。その目がどこか呆れたようにブラッディリリーを見つめる。

「……心音がない、か。ソウカイヤは死人を引っ張り出すほど人手不足なのかね?」

「ねぇねぇ、ブレードブレイカー=サン。こいつは?」

「見りゃわかんだろうが、アサシン野郎だ!」

 ネバーランドの揶揄を無視して尋ねてくるブラッディリリーに、思わずブレードブレイカーは怒声で答えた。彼にとってもこのニンジャの乱入は予想外であった。

 ブラッディリリーは虚ろな眼窩の奥で白光を煌めかせる。そして仮足を蠢かせ、腕組みをするネバーランドへと向き直った。

「わかった。じゃあお手伝いするね」

「……なンだと?」

選択肢①:ブレードブレイカーと協力して戦う

「だって、一人じゃ殺せなかったんでしょ? だったら私が手伝わないと終わらないじゃない」

 あけすけな一言に、ブレードブレイカーの額に青筋が立つ。ネバーランドが苦笑し、肩を竦めた。

「まあ、好きなようにするといい。この後も予定がつかえてるんでな」

「ふぅん。貴方はみんなに欲しがられるオモチャなのね」

「……チッ! 気ィつけろよ。すばしこいぞ、そのオモチャ野郎は」

 ブレードブレイカーはネバーランドを挟み込むように立ち回る。重サイバネニンジャは不適に腕を組んだまま、ブラッディリリーを見据えていた。空気が張り詰めていく……!

ニンジャ名:ブラッディリリー
【カラテ】: 7
【ニューロン】 :6
【ワザマエ】:3
【ジツ】:0
【体力】:14
【精神力】:6
【脚力】:3
『ネクロカラテ』
『ゾンビーニンジャ』
『●連続攻撃2』
◆ブレードブレイカー(種別:ニンジャ)	
カラテ      6		体力	9
ニューロン    6		精神力	6		
ワザマエ     6		脚力	4		
ジツ      3		万札	10	
◇ジツ(近接武器系のソウル)
近接攻撃ダイス+3、回避ダイス+1
◇装備や特記事項					
【アイテム】:*ブラッドカタナ* 近接攻撃ダイス+1
【サイバネ】:ヒキャク【脚力】+1、回避ダイス+1個
【装備品】:フルヘルムメンポ【体力】+1
     :*高級ヤクザスーツ
【スキル】:●滅多切り
        ●タツジン(イアイドー)
        ●頑強なる肉体
◆ネバーランド (種別:ニンジャ/重サイバネ)	
カラテ		7	体力		8
ニューロン    	5	精神力		2
ワザマエ		5	脚力		7
ジツ		0	万札		15
				
◇装備や特記事項
 装備:▶︎生体LAN端子:【ニューロン】判定時にダイス+1個、ハッキング時にさらに+2
    ▶︎▶︎▶︎ヒキャク++:装備前提「▶︎生体LAN端子」以上:【脚力】+2、回避ダイス+2個、連続側転難易度−1
    ▷▷ブースターカラテ・ユニット+:近接攻撃ダイス+2個
    ▷ローラーブレード:【脚力】+1、『●ダッシュ移動』自動取得((移動後に難易度+1で行動可能))
スキル:●『連続攻撃2』
    ●『ダッシュ移動』
    ◉『ツジギリ』
    ◉『タクティカル移動射撃』
狂気:残存記憶のゴースト:アトモスフィアがハード化した場合、回避ダイスが−1個され、
             以降戦闘終了まで1ターンごとに−1個ずつ増えてゆく。
   サイバネティクスへの狂信:【体力】-1、【精神力】-1
ブレードブレイカー→ブラッディリリー→ネバーランドの順で行動
イクサに入る前のお詫び
次から始まるイクサにおいて、ブレードブレイカー=サンのダイスが少なくなっている。これはしかなが彼についたもろもろの近接攻撃ダイス補正(ソウルによる+3、ブラッドカタナによる+1、タツジンによる+1)をうっかり読み飛ばしていたからです。本来の彼はもっと強い。申し訳ないが、イクサの結果は修正せずそのまま掲載とします。ご了承ください。


◇第一のイクサ◇

「イヤーッ!」

 真っ先に仕掛けたのはブレードブレイカー! 踏み込み、イアイを……仕掛けない! 「何?」「イヤーッ!」訝しんだネバーランドの胴を、強烈な突きが襲う!「イヤーッ!」跳躍回避!

 ブレードブレイカーは追わず、そのまま真下を駆け抜けブラッディリリーの元へ。仮足を引きずり、入れ替わるようにしてブラッディリリーが前へ。「イヤッ! イヤーッ!」着地側を狙ったチョップ突きを放つ!

「成る程……イヤーッ!」

 ネバーランドはこれを丁寧に弾き「イヤッ! イヤーッ!」上段、下段と続く反撃のケリ・キック!「アバーッ!」下段の蹴りがブラッディリリーの身体を揺らした。

 重サイバネのニンジャが眉をひそめる。

「動きは鈍いが、タフな手合いか。ゾンビーらしい!」

『1ターン目』
ブレードブレイカー:フェイント斬撃
ネバーランド:回避ダイスダメージ2
1, 2, 2, 3, 5, 6 成功
ネバーランド:回避
3, 3, 5 成功
ブラッディリリー:カラテ
(1, 3, 4, 4)(3, 5, 6)
ネバーランド:回避
(6, 6)(2, 5)
ネバーランド:カラテ
(1, 3, 4, 4, 6)(1, 3, 5, 6)
ブラッディリリー:回避
(1, 4, 5, 6)(1, 4, 4)
回避失敗 ブラッディリリー【体力】14→13

「イヤーッ!」

 揺らめくブラッディリリーの脇を潜り抜けるようにブレードブレイカーが突貫! フェイントを交えた鋭い斬撃! 「イヤーッ!」ネバーランドはこれをバックステップ回避! ブレードブレイカーは深追いせず再びブラッディリリーの背後へ。

 ネバーランドが顔をしかめる。もはや明白だ。ブレードブレイカーはこちらの動きを制限することに専念しはじめている。すべては「イヤーッ!」

 夜の闇を赤が切り裂く。すべてはこの、奇妙なゾンビーニンジャのカラテのために。左の鋭い突きをネバーランドはすんでのところで回避。そこへ異様なリーチを持つ右腕のカラテが襲う!「グワーッ!?」

 恐るべき怪力。ナイフめいて鋭く尖った指先がネバーランドのサイバネスーツを切り裂いた。「イ……ヤーッ!」ドウ! 屋根を転がったネバーランドはサイバネ脚からのブースターで強引に軌道修正! 右腕を引き戻すブラッディリリーのワン・インチ距離へ!

「「イヤーッ!」」

 衝突する両者!身体の各所に生えた装飾腕を振るい、ネバーランドのカラテを迎撃するブラッディリリー! バチッ! その一つがサイバネ脚に命中。外装を削り取り火花を散らす!「チィーッ! イヤーッ!」「アバーッ!」ネバーランドは強引にブラッディリリーの胴体へケリ・キック! 反動で距離を取る!

 グラグラと揺れていたブラッディリリーは、眼窩の奥の光を重サイバネニンジャへと向けた。

「あなたは素早いけど脆いのね。金属だから、もっと丈夫だと思ってた」

「生憎こいつは繊細でね……お前みたいなバケモノの力には耐えきれんのさ」

「キャハハ! やっぱりオモチャなんじゃない!」

 これまで受けた傷など意にも介さぬように死者が笑う。その影を色つきの風が走った。

『2ターン目』
ブレードブレイカー:フェイント斬撃
ネバーランド:回避ダイスダメージ2
2, 2, 4, 5, 5, 6 成功
ネバーランド:回避
3,6 成功
ブラッディリリー:カラテ
(3, 4, 5, 6)(2, 4, 6)
ネバーランド:回避
(3, 4)(2, 2, 3)
回避失敗 ネバーランド【体力】8→6
ネバーランド:カラテ
(1, 1, 2, 3, 5)(1, 2, 3, 6)
ブラッディリリー:回避
(1, 4, 4)(3, 4, 5, 6)
回避失敗 ブラッディリリー【体力】13→12
カウンターカラテ! ネバーランド【体力】 6→5

 「イヤーッ!」ブレードブレイカーは仕掛ける。冷徹に、無慈悲に、己の苛立ちを押し殺し。あのガキめいたゾンビーニンジャのカラテは確かなものだ。自分が超えられていない、なんらかの「壁」をすでに乗り越えているようにすら見える。それが無性に腹立たしい。

 カタナを振るい、その勢いのまま一回転。本命の斬撃を『オモチャ』めいたネバーランドに叩きつける。「イヤーッ!」奴の身体が宙に舞い、ドクロめいた月に照らし出される。ブレードブレイカーはメンポの奥の口元を歪めた。そうやって羽虫めいて飛んでいるがいい。似合いの有様だ

「イヤーッ!」

 そこへブラッディリリーの右腕が飛んだ。ムチめいてしなる強烈な一撃。当たればただでは済むまい。だが……

「雑だぞ、ブラッディリリー=サン……!」

 ブレードブレイカーは悪態をつく。ああ、ほら、見たことか。あの重サイバネニンジャはサイバネ脚からブーストし姿勢を制御。ブラッディリリーの右腕を滑るように辿り「イヤーッ!」「アバーッ!」その顔へ強烈なケリ・キック! ブラッディリリーの端正な顔が歪み、首が150度回転!

「イヤッ! イヤーッ!」

 ドウ! 反動で飛び退いたネバーランドが空中でブースト点火し最接近!「イィィヤァァーッ!」その勢いのままブラッディリリーの頭にカイシャクめいた回し蹴りを放つ! ナムアミダブツ!?

「……イヤーッ!」

 だが直撃の寸前、ブラッディリリーの身体が溶け落ちた。一瞬だけ人の輪郭を失ったゾンビーは転がるようにして退避、再びオヒメサマめいた姿へと赤い肉体を再構築!

「ウウ……ねえブレードブレイカー=サン! 私、ちゃんと戻れてる!? 変じゃないよね!?」

「テメェは元から変だろうが! ちゃんと戻れてるから集中してそこのオモチャと遊んでろ!」

「……まったく。ここまで堪えていないとは。自信喪失だな……!」

 ようやく着地したネバーランドがカラテを構え直す。ブレードブレイカーは舌打ちした。ゴジュッポ・ヒャッポ。二対一で。

『3ターン目』
ブレードブレイカー:フェイント斬撃
ネバーランド:回避ダイスダメージ2
1, 2, 3, 4, 5, 5 成功
ネバーランド:回避
5,5 成功
ブラッディリリー:カラテ
(1, 2, 3, 3)(1, 6, 6)失敗&サツバツ!
ネバーランド:回避
3, 5, 6, 6, 6
カウンターカラテ! ブラッディリリー【体力】12→11
ネバーランド:カラテ
(1, 1, 4, 6, 6)(3, 4, 4, 6) サツバツ!
ブラッディリリー:回避
自動回避(【精神力】6 → 5)・(3, 4, 4, 6)

「イヤーッ!」ブレードブレイカーの放ったイアイはしかし空を切る。焦りによるものか、狙いが甘い! ネバーランドが嘲笑するように目を細め「イヤーッ!」次いで放たれたブラッディリリーのネクロカラテに本格対処! これを回避!

「イヤーッ!」

 ネバーランドは踏み込む! ……その脚が妙な感覚を伝えた。(何)彼は訝しみ、目線を下に。サイバネ脚が踏みしめるのは、屋根瓦ではなく赤いドレスめいた仮足……!

「シマッタ!」「イヤーッ!」「グワーッ!?」

 ワン・インチ距離。人間ではありえぬ、腰回りから伸びた細い腕が乱暴にネバーランドのサイバネ脚を切り裂く! ブラッディリリーが不機嫌そうに唸った。

「足元を封じればいいんだね。最初からこうしていればよかった! イヤーッ!」

「チィッ……イヤーッ!」

 ドウ! サイバネ脚のブースターユニットを強引に点火させ、ネバーランドはカラテ追撃を回避! そのまま夜空に舞い上がった彼は、忌々しげに赤いゾンビーニンジャを見下ろした。

『4ターン目』
ブレードブレイカー:フェイント斬撃
ネバーランド:回避ダイスダメージ2
1, 2, 2, 3, 3, 3 失敗
ブラッディリリー:カラテ
(2, 3, 4, 6)(1, 2, 5)
ネバーランド:回避
(1, 3, 4)(2, 3, 3, 5)
ネバーランド:カラテ
(1, 2, 2, 3, 5)(1, 4, 5, 6)
ブラッディリリー:回避
(2, 3, 5, 6)(2, 5, 6)
カウンターカラテ! ネバーランド【体力】5 → 4
ネバーランド撤退、イクサ終了

「旗色が悪い……これ以上は不利益しか生まれんな! イヤーッ!」

 ブースター再点火! だが彼が降りたのは屋根の下だ。いつの間に呼び出したものか、駆け込んできた流線型モーターサイクルに飛び乗った重サイバネニンジャはシームレスにトップスピードまで加速!「オタッシャデー!」見下ろすブレードブレイカーらの視線を振り払うかのように「美辞樽」から離れていった。

「……チッ! 逃したかよ!」

「ああー、あの音。あれが聞こえたからここまで来たんだ、私。偉い?」

「仕留めきれなかったのに偉いもクソもあるか! ……まァいい。オイ、ビホルダー=サンのところに行くぞ」

 不機嫌そうに下へ降りようとするブレードブレイカーを、ブラッディリリーはきょとんと見つめた。

「でも、ママがお留守番してなさいって……」

「……ここまで来ておいてフザけてんじゃねェぞ、ブラッディリリー=サン。今は緊急事態だ。ビホルダー=サンどころか、テメェのママだってアブナイかもしれんぜ」

「ママが? ……ウーン、そうかなあ……まあいいや。じゃあ行く」

 いまひとつ危機感のない様子で、"それ"はずるずるとブレードブレイカーの後に続く。ブレードブレイカーはこっそりと溜息をついた。ディスグレイス。あの女。いったい何をどう間違えればこんなゾンビーニンジャを育てられるというのだ?

(実際無事かね、あの女も。頼むぜ……このアホみてえなゾンビーニンジャの面倒見るのなんぞ……)

 ふと、彼の脳裏にアイマスク・メンポをつけた同僚の顔がよぎる。アレとどちらがマシだろうか。いや、冷静に考えろ。最悪アレとこのゾンビーニンジャの両方の面倒を見ることになりかねない。

(……マジで頼むぜ、ディスグレイス=サンよ……)

 彼は心底マジメに、同僚の無事を願うのだった。


【ウェルカム! アンディザイアード・ゲスト】その2終わり。その3へ続く




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