忍殺TRPGソロリプレイ【コモン・シーヴス・ナイト】#1
◇前置き◇
ドーモ。しかなです。当記事はしかながニンジャスレイヤーTRPGのシナリオを遊んだ結果を元に書き上げたテキストカラテ(訳注:二次創作小説)となります。いわゆるリプレイだ。気楽に読めるよ。
今回挑戦させていただいたのは、黒鷺あぐも=サンの【シーフ・イン・ザ・ナイト】です。
今回は前編にチャレンジするぞ。挑戦者はオープニング内で発表だ。
では早速いってみよう。よろしくおねがいします。
◇オープニング◇
トコロザワ・ピラー、スカウト部門オフィスにて。ニンジャが一人思案に耽っている。中肉中背で目立った特徴のない男。その名をアベレージという。
ニンジャ名:アベレージ 【カラテ】:4 【体力】:5/5 【ニューロン】:4 【精神力】:5/5 【ワザマエ】:4 【脚力】:2 【ジツ】:1(カトン) 【万札】:0 近接攻撃ダイス:4 遠隔攻撃ダイス:4 回避ダイス:4 【特筆事項】: 【名声】:4 【装備】: パーソナルメンポ タクティカルニンジャスーツ 【アイテム】
ZBRアドレナリン注射器 【説明】 ソウカイヤのニンジャ。悲観的な性格の持ち主。 そのニンジャネームも「ソウカイヤにおいて特筆すべき点のない 平均的なニンジャの一人に過ぎない」と己から名乗っているもの。
「どうしたものか……」
彼は自席の背もたれに体重を預ける。彼が悩んでいるのは、ケントゥリオンというニンジャから送られた一通の密告メールへの対応だ。
曰く。ニンジャスレイヤーによって発生した空白地帯(管理担当ニンジャのいない地域のことだ)を襲撃し、私服を肥やそうとしているニンジャが二名いる。早急に対応されたし。……そのような内容である。
捨て置けないのは事実。だからといって、自分はニンジャ二名を相手取れるほどカラテが高いわけでもない。至って平凡なニンジャなのだ。つまるところ、手を貸してくれるニンジャが欲しい。
とはいえ、かつての仕事仲間だったディスグレイスはもはや雲上の存在。オーキッドのやつはオオヌギ・ジャンク・クラスターヤードに住処を決めたとかで、ここに呼びつけるにも時間がかかるだろう。誰か他に都合のつくニンジャは……
「ドーモ! お取り込み中のところシツレイシマス! ソニックブーム=サンはおられますかな?」
突然降ってきた声にアベレージは顔を上げる。すぐ近くに立っていたのはスキンヘッドのニンジャ。いかめしい顔つきには柔和な笑みで中和されている。
アベレージは数秒の時間で眼前のニンジャの名前を脳内から探り当て、立ち上がってオジギした。
「ドーモ。ヘブンリリーフ=サン。アベレージです。すまないがソニックブーム=サンはご不在だ。会議でな」
「ドーモ。アベレージ=サン。ヘブンリリーフです。それはそれは、困りましたな。折の悪いときに来てしまったようだ」
ニンジャ名:ヘブンリリーフ
【カラテ】:5 【体力】:5/5
【ニューロン】:3 【精神力】:3/3
【ワザマエ】:5 【脚力】:3
【ジツ】:2(カラテミサイル) 【万札】:0
近接攻撃ダイス:2
遠隔攻撃ダイス:5
回避ダイス:5
【装備】:
巨大ハンマー(大型武器読み替え)
【アイテム】:
トロ粉末
【スキル】
○アンタイブディズム・ブラックメタリスト
【説明】
ボンズめいた風貌のソウカイニンジャ。過去はアンタイブディズム・ブラックメタリスト
の一員として暴れ回っていた。暴動鎮圧時にニンジャとなって
生き延びたことからその名をつけられる。皮肉なものだ。
ヘブンリリーフは腕組みし眉をひそめる。その様子からわずかにトラブルのアトモスフィアを察知したアベレージは問いただす。
「ミカジメ・フィー回収程度の要件であれば、俺の方からソニックブーム=サンに伝えておくが」
「ああ、いや。お心遣い痛み入る。しかしそのようなマターではないというか……」
ヘブンリリーフは素早く左右を見渡し、こちらに注目している職員がいないことを確認してからそっとアベレージに耳打ちする。
(実は、空白地にて狼藉を目論む不埒者の情報を掴みましてな。ことが大きくならぬうちにソニックブーム=サンへお伝えしようと思った次第)
(ほう)
アベレージは訝しんだ。どこかで聞いたことのある話だ。彼は囁き返す。
(それはウナギ・ディストリクトの話か?)
「な……なぜそれを!?」
「急に大声を出すな。やかましいぞ」
動揺するヘブンリリーフをひと睨みしつつ、アベレージは状況判断する。ケントゥリオンのタレコミと同様の内容。信憑性が高まってきたと見るべきか。いや、それよりも。
(その情報、どこから得た)
(ケントゥリオン=サンなるソウカイニンジャより)
(直接会ったのか)
(否。IRC端末経由です。彼自身とは会ったこともない)
どうにもきな臭い。アベレージは状況判断し、決断する。
「ヘブンリリーフ=サン。この後の予定は?」
「は? いや、ありませんが」
「ならば少し時間をもらえるか。アイアンフィスト・カンガルー・ヤクザクランへミカジメ徴収に行く必要があってな」
ヘブンリリーフが一瞬だけ訝しみ……その意を汲み取ったかしかめつらしく頷いた。アイアンフィスト・カンガルー・ヤクザクランは既に取り潰されたヤクザクラン。だがその事務所はまだ残されている。
姿なきケントゥリオンの言葉を信じるのであれば、そこが狼藉者たちの潜むアジトなのだ。
◇◆◇◆◇
その日の夕方。元アイアンフィスト・カンガルー・ヤクザクラン事務所。元々は応接間だった広い部屋を、イライラとした様子で歩き回る長身の影あり。
「クッソ……今日決行じゃねえのかよ……オイ、ライデンキャット=サン! お前情報読み違えてねえだろうな!?」
「フニャッ!?」
その怒声に飛び起きたのは、壁に寄りかかって眠っていた小柄な少女だ。バイオサイバネによるものか、その瞳はネコめいている。頭頂部から伸びるのもバイオネコミミ。そのバストは豊満である。
ニンジャ名:ライデンキャット
【カラテ】:5 【体力】:5/5
【ニューロン】:1 【精神力】:1/1
【ワザマエ】:4 【脚力】:3
【ジツ】:0 【万札】:13
近接攻撃ダイス:6
遠隔攻撃ダイス:5
回避ダイス:5
【サイバネ】:
バイオサイバネヘッド(軽微)
【アイテム】:
トロ粉末
【スキル】
○ピンハネ
【説明】
アクセサリー感覚でバイオサイバネを置換するアニマルパンクスの少女に
ニンジャソウルが憑依。面倒なことはカラテで押し通し、上司の前では
猫をかぶってピンハネ。しぶとくニンジャ社会を生き抜く。
「エッ……エット……ゴメン、寝てた。何?」
「寝てんのは見りゃわかんだよ。テメェ、ちゃんと、メール、読んでんだろうな!? どんだけアタシを待たせるつもりだ、エエッ!?」
「エエーッ……そんなこと言われても……横から首突っ込んできたの、コールドブラッド=サンのひうじゃん……」
ぼそぼそと抗議するライデンキャットを、長身の影は苛立たしげに見下ろした。全身バイオ包帯にフード付きPVCレインコートの怪人めいた出で立ち。そのバストは豊満であった。
ニンジャ名:コールドブラッド
【カラテ】:6 【体力】:6/6
【ニューロン】:4 【精神力】:4/4
【ワザマエ】:6 【脚力】:3
【ジツ】:2(ヘンゲヨーカイ) 【万札】:32
近接攻撃ダイス:6
遠隔攻撃ダイス:6
回避ダイス:6
【特筆】:
【名声】:4
【アイテム】:
ウイルス入りフロッピー
【スキル】
○指名手配犯
【説明】
ハッカーを専門にツジギリ強盗していたオイランスラッシャー。
ニンジャとなった折に得たジツによって巨大なトカゲめいた姿を
変化することができる。いざというときの切り札だ。
察しのいい読者であれば、この二人がソウカイニンジャであると看破できるだろう。だがなぜこの廃墟同然のアジトで待機しているのか? それは時をやや遡って説明する必要がある。
きっかけはライデンキャットが受け取ったIRCメールからだ。空白地帯の発生、及び担当ニンジャ不在の企業からのミカジメ徴収権略奪可能性。そして、それを我がモノとできるのは貴方しかいないこと、など。そのような記載だ。
ライデンキャットは迷わずその話に飛びついた。彼女はニンジャではあるがサンシタもいいところ、カネがあるならば欲しい。そのため差出人との詳細な打ち合わせのために、このアイアンフィスト・カンガルー・ヤクザクラン事務所跡を訪れ……そこをコールドブラッドに見つかった。
ライデンキャットにとって幸運だったのは、コールドブラッドが規律に厳しいタイプのニンジャではなかったところ。つまり、お咎めはなし。不運だったのは、彼女もまた空白地帯に興味を示したところだ。
ライデンキャットもこう見えてカラテはあるものの、コールドブラッドはそれをさらに上回る。実力差を見てとった彼女は、渋々コールドブラッドを仲間に引き入れることとなったのだ。
眠たげに目を擦りつつ、ライデンキャットは自身の携帯IRC端末で今日の日付と送られてきたメッセージの内容を見比べる。
「フアア……ウン、間違いないよ。決行は今日。念には念を入れて、助太刀を送るって」
「たかがミカジメ・フィーの徴収に、そんなにニンジャを動かすこたあねえだろ……担がれてんじゃねえのか?」
コールドブラッドが訝しげに呟いた、そのときだ。彼女は懐に手を忍ばせスリケンを掴む。入り口に気配!
「フアア……ドーゾ」
ライデンキャットが緊迫感のない様子で入室を促す。コールドブラッドは舌打ちした。まだ扉の向こうの相手が『助太刀』と決まったわけでもあるまいに……!
沈黙は数秒。その後、静かに押し開けられた扉から二人のニンジャが足を踏み入れる。アンブッシュを目論んでいたコールドブラッドは、その顔を見て目を丸くした。
「アン? ヘブンリリーフ=サンと……マジメニンジャじゃねえか。なにしにきたんだこんなとこへ」
「それは俺が聞きたいんだがな。ドーモ。コールドブラッド=サン。アベレージです」
「ヘブンリリーフです! いやはや奇遇ですな、コールドブラッド=サン」
物騒な大槌を下ろしつつ、ヘブンリリーフがアイサツした。コールドブラッドは鼻白む。知らない相手ではない……かつてソウカイヤ首領の息子、ラオモト・チバがトーフ工場襲撃に巻き込まれた際に顔を合わせた仲だ。
そしてもう一人のアベレージも知っている。専らスカウト部門の書類仕事を請け負っている彼を知らぬニュービーはほとんどいない。
当のアベレージは不審げにコールドブラッドとライデンキャットを見やり、眉間にシワを寄せた。
「……まあたしかに二人だな……聞くがコールドブラッド=サン。ツクル・マシン・システムズ社にミカジメ徴収を行おうとしているのは事実か?」
「なっ……」
「そーだよー。じゃあアベレージ=サンたちがケントゥリオン=サンの言ってた助太刀?」
「そーだよー、ではなく……待て、ケントゥリオン=サンだと?」
アベレージが怪訝な声を上げる。コールドブラッドは目を細め、ヘブンリリーフへと向き直った。
「……このマジメニンジャがそういう理由で来るはずもねえ。実際はどうなんだよ、ヘブンリリーフ=サン」
「う、ウム……我々はウナギ・ディストリクトで狼藉を目論むソウカイニンジャの情報を聞いてな。確かめに参ったのだ」
「聞いたって、誰から」
「……ケントゥリオン=サンだ」
答えたのはアベレージ。彼は難しい顔で一同を見渡し、腕組みする。事情を理解したニンジャたちは顔を見合わせた。そのときだ。
『ザザッ、ドーモ。はじめまして。ケントゥリオンです』
部屋の隅に設置された年代物のUNIXスピーカーから歪んだ電子音声が流れたのは。反射的にカラテを構えた四人のニンジャを前に、声の主は淡々と続けた。
『これだけのニンジャが集まったのならば、万が一もないでしょう。改めて、ツクル・マシン・システムズ社へのアサルト行為をお願いします』
【コモン・シーヴス・ナイト】#1終わり。#2へ続く
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