忍殺ソロリプレイ【チョコレート・カプリチオ】
ドーモ。しかなです。当記事はしかながソロシナリオを遊んだ結果を元に書き上げたテキストカラテ……おそらくはリプレイと呼ばれる類のものとなります。気楽に読めるよ。
今回挑戦させていただくのはこちら。ラブサバイブ=サンの【ニンジャとチョコレート工場】です。
甘い予感がしますね。
さて、このソロシナリオに挑むのはこいつ。カニを獲ってネオサイタマに舞い戻った元アサシン、レッドブーツです。
ニンジャ名:レッドブーツ
【カラテ】:6 【体力】:6/6
【ニューロン】:4(-1) 【精神力】:2/3
【ワザマエ】:6(+1) 【脚力】:5
【ジツ】:1(サソリ) 【万札】:8
近接攻撃ダイス:6
遠隔攻撃ダイス:7
回避ダイス:8
【特筆事項】:
レンタルアジト(トイレなし)のため【精神力】-1
【ジツ】
☆カトン・ジツLv1
【装備品】:
カタナ
▶︎ヒキャク
▷内蔵型スリケンボウガン
【スキル】:
○キラーマシーン教育
【説明】
アサシン養育施設「アシサノ私塾」の生き残りの一人。
基本的に夢見がちな性格であり、そのカラテにも掴みどころがない。
同僚の少女を強く意識しており男装を好む。
ネオサイタマに舞い戻ったあとはモータルをハントしてマキモノを読んでまたモータルをハントしていた。運良く赤黒の死神には目をつけられていない。
果たしてちゃんとミッションを遂行できるのか。やってみよう。よろしくおねがいします。
◇オープニング◇
ウシミツ・アワー。モナカ・ディストリクトを音もなく歩く影が一つ。時折ダンスめいたステップを踏んでいたその者は、とある建物の前で足を止めた。
それはチョコレート製菓工場である。数秒の間、高い塀を眺めていた訪問者は不意に跳んだ。難なく塀を乗り越えて敷地内へ。人間業ではない。……当然だ。この者はニンジャなのだから。
(いいか、レッドブーツ=サン。テメェの仕事は……)
「工場内でのニンジャの関与の確認。ハイ。わかってますよ」
脳内で再生される上司……スカウト部門筆頭、ソニックブームの姿と言葉に、レッドブーツは軽い調子でひとりごちる。癖のようなものだった。
近くの木陰に身を潜めつつ、おさらい。ここはヨロシサン・フーズ系列の経営する製菓工場。当初はともかく、今は不採算部門の一つ。おそらく数えられないほどの労働者がリストラされ路頭に迷ったことだろう。レッドブーツには関係がない。
ミッションと関係があるのは、不採算部門にも関わらず使用電力が増え続けていることだけだ。さらにはヤクザリムジンや大型トレーラーの出入り、挙げ句の果てには……ニンジャの噂。
単なる噂か真実か。真実だとしたら、そのニンジャは何者か。そうした細々としたことを調査するのが今回の仕事である。
(目先のイサオシに目が眩んで、ニンジャにやられて爆発四散なんてブザマを晒すんじゃねェぞ? エエッ?)
「わかってますとも」
レッドブーツは過去のソニックブームへ、過去にしたのと同じ呟きを漏らす。とはいえ、だ。対処できるかは別としてニンジャがいてくれると助かるのは事実。いろいろとカネが欲しい年頃なのだ。
とはいえ、爆発四散はゴメンだ。まだ愛しい人と添い遂げられていないのに幕引きは勘弁である。
(ちょっと見ない間にもっと素敵になってるんだもんな、フフッ)
木々や茂みを渡り歩いてスニーキングしつつ、レッドブーツは微笑する。ミッションの途中とも思えない。夢見るような微笑であった。
◇本編◇
敷地内に監視カメラやセキュリティの類はなし。所詮は不採算部門か、それともそう装うためにわざとそうしているのか。
無論、ザルというわけではない。見よ。向こうから歩いてくるのはクローンヤクザだ。最低限の巡回役として、定期的に痰を吐きながら周囲を見渡し
【ワザマエ】判定
2, 3, 3, 4, 5, 5, 6 成功
【万札】8 → 9
近くの茂みから飛び出した影の放った銀閃に喉を断ち割られ、緑の血飛沫を上げながら倒れ込む。悲鳴を上げることすら許さぬ、鮮やかなアンブッシュ。
くるくるとカタナを回し、刀身の血を払ったレッドブーツはザンシン。追加のクローンヤクザがいないことを確認すると、ジャケットについた葉をはたいて落とす。
そのまま搬入口の方向へ向かおうとした彼女は、ふと思い出したようにクローンヤクザの死体を覗き込む。もしこれがどこかの組織の所有物であれば、その身分を証明するものを持っているかもしれない。
【ニューロン】判定
1, 1, 5 成功
「ンンー……?」
彼女は思わず訝しむ。身につけたバッチはこの工場の社章と同一。ヨロシサンの系列であれば、クローンヤクザの守衛など珍しくもない。レッドブーツの興味を惹いたのはそこではない。
無造作に死体を蹴り転がし、首真後ろのバーコード・イレズミを確認。この読解法はヨロシサンの守秘事項であり、気にしたところで仕方がない。だが、型番であろうY-14という文字は読み取れる、
「……ボクがいない間にクローンヤクザも最新化が進んだ? ンなわけないよな」
諸事情あり一ヶ月ほどネオサイタマを離れていたレッドブーツだが、クローンヤクザ事情がそこまで大きく変化していないことは把握している。現在の主流はY-12型。ヨロシサンが開発をアピールしているのがY-13型。譜面通りに捉えるならば、このクローンヤクザはそれよりもなお新しい。
何故、そのような代物がこんな工場の警護などをしているのか。(想像よりも稼げる案件かもな、これ)レッドブーツは確認もそこそこに立ち上がり、無造作にクローンヤクザの死体を茂みの奥まで蹴り飛ばした。
◇◆◇◆◇
工場内部では、労働者たちがチョコレートスナックの箱詰めを行い、フォークリフトがそれをトラックに積んでいる。規模を縮小しているとはいえ、当然このように働く者たちはいるわけだ。物陰に潜みながら観察するレッドブーツの目にも、それはいたって普通のような光景に見えた。
ブロロロ……新たなトラックがチョコレートスナック出荷トラックと入れ違いに工場へ進入。それはフォークリフトの側を通過し、大型エレベーターに乗り込む。エレベーターを操作しているのは……クローンヤクザだ。
(あれも新型かな?)
レッドブーツは目を細める。エレベーター内トラックの積荷はどうやら大量の金属。製造機械に使用する部品? だが、それをわざわざクローンヤクザ付きで? 訝しい。
【脚力】判定
1, 4, 4, 5, 6 成功
迷わず跳躍。彼女はフォークリフトや労働者たちの頭上を通過し、見事トラックの荷台へ着地する。ダンボールの奥に隠れつつ、レッドブーツは己のサイバネ脚を愛おしげに撫でた。半ズボンから覗く、真っ赤に塗装されたそれは官能的ですらある。愛しの人がちょっとした負債とともに贈ってくれたものだ。
ゴウン。大型エレベーターが唸りを上げ、ゆっくりと地下へと進んでいく。揺れる荷台の中、レッドブーツはただ微笑していた。
◆◇◆◇◆
十数分後! レッドブーツはトラック荷台を途中下車! 難なく着地し、周囲を見渡して目を細める。そこは巨大なトンネルの中だ。工場の地下にこんなものが。なぜ?
いずれにせよ、その答えはトンネルの先の彼らが説明してくれるだろう……気配を隠しつつ、彼女はトラック出迎えの面々を見やる。1ダースを上回るだろうクローンヤクザたち。そしてそれを率いる……ナムサン、ニンジャ!
「よし、部品を運び出せ! 間違っても落とすな!」
「「ヨロコンデー」」
働きアリめいて荷台からダンボールを運び出すクローンヤクザたち。レッドブーツは淡々と指示役のニンジャを観察する……両腕と両足をサイバネ置換。それ自体は珍しくもない。が、見たことのないタイプのサイバネティクスだ。
「スワッシュバックラー=サンがお着きになるまでに作業を終わらせろ!」
(ハハァ、組織か)
微妙なニュアンスを読み取り、レッドブーツは笑みを浮かべる。スワッシュバックラーなるニンジャなど聞いたこともない。ソウカイヤではない。ザイバツか、イッキ・ウチコワシか。ここはそのいずれかの前線基地か?
もう踏み込んでみるべきか。思案するレッドブーツの耳に「ンアーッ!?」突然響く女の叫び声! サイバネニンジャがうんざりしたように毒づくのが聞こえた。
「まったく、バンブーニードル=サンめ。まだ遊んでいるのか?」
……奥へと戻っていくサイバネニンジャの背を見やり、レッドブーツは目を細める。少なくともここにはニンジャが二名。さらにもう一人来る気配がある。自分一人の手には余る戦力だ。
とはいえ相手の所属も判然としない。このまま戻っても報酬は高が知れているだろう。となれば。
●ニンジャを追う
(ちょっと楽しんでみるか。なに、あのカメよりはマシだよね)
海上で出会ったあの化け物と、先ほどのサイバネニンジャを比較したレッドブーツは決断した。彼女は運搬作業を続けるクローンヤクザたちから身を隠しつつ、サイバネニンジャの足取りを追って奥へ。無音の中、彼女もまた闇へと消えた。
◇◆◇◆◇
「バンブーニードル=サン! 女は吐いたか?」
「ドーモ、シルバーホイル=サン。なんともこの女、軽そうに見えて口が軽い! ソウカイヤの者であることは確かめたがな」
無言の追跡劇を終え、たどり着いたのは不快な高熱が篭る広間。レッドブーツは眉間にしわを寄せる。サイバネニンジャ……シルバーホイルと話しているのは全身にバンブーの棘を生やしたニンジャ。ジツか、サイバネか。いずれにしても近寄りたくない手合いではある。
続いて周囲を観察。ニンジャたちの近くに稼働中のUNIXが一基。そして部屋の中央には……(なんだあれ)
レッドブーツは訝しむ。火にくべられているのは直径5メートルほどの大釜。奴隷スモトリが巨大なウチワで扇ぎ、薪を投げ込んで火力を維持している。中には湯……否、この甘ったるい匂い……(チョコか? まあそういう工場だしな)納得する。
そして最後に視線がいきついたのは、大釜真上でバンブーのボーにくくりつけられた女。腰から下にかけ、濃褐色の粘液を滴らせている。随分と体力を失っていると見え、息も絶え絶えといった様子だ。
「どうだ! 吐く気になったか!」
「しゃべることは……しゃべったって……!」
「そうか! 物足りぬか!」
「や……ヤメロー!」
バンブートゲニンジャ……もとい、バンブーニードルの問いかけに、女は力なく答える。バンブーニードルの声に愉悦の響きが混じった次の瞬間、クレーンで吊り下げられていたボーが降下! すると……おお……ナムアミダブツ! 女の姿が釜の中へ! 「アババババーッ!」
「成る程」
レッドブーツは納得した。独創的なインタビューであることだ。甘いもの好きだったら耐えられるのだろうか。例えばあの子とか。……唆る風景にはなりそうだが、そもそもあの子ならこんな事態に陥らないだろう。
「そろそろ実際死ぬぞ。ライトニングウォーカー=サンとやら。本当の目的を吐いたらどうだね? 合成チョコレート原液に煮られて死ぬよりはセプクの名誉の方がよかろう?」
「だから……わたしは、このあたりの人たちに頼まれて調べにきただけで……メガ……トリイ? なんてもの、知らない……!」
「やれい!」
「ヤメロー! ヤメロー!」
バンブーニードルの声が飛ぶ! 再びチョコレートにフォンデュされる女! ナムアミダブツ! ブッダよ、寝ているのですか!?
「貴様はメガトリイの遺産を奪いに来た。ソウカイヤ配下の暗黒メガコーポ……オムラあたりの差し金でだ。そうだな?」
サイバネ腕を弄びつつ、シルバーホイル。だが女……ライトニングウォーカーはなおも首を横に振る!
「違う! わたしはそんなの知らない!」
「まだ言うかーッ! 貴様が盗み出したデータはアルゴス=サンを目覚めさせるための……!」
バンブーニードルが三たびクレーン作業台へ合図を送ろうとした、そのとき!「シツレイシマス!」入室したクローンヤクザが続くインタビューを結果的に制止した。
「作業が完了しました。スワッシュバックラー=サンも間もなくお越しになるとのことです」
「フン! いいだろう! お前たちはこの女を見張っておけ!」
不機嫌そうに鼻を鳴らし、バンブーニードルがシルバーホイルとともに歩いてくる。レッドブーツは物陰に身を隠す。「……あの女が盗んだデータは脳内UNIXの中だ。ご丁寧に元データの破壊までやってくれるとはな」「上が気付く前にデータを戻し、何事もなかったかのように振舞わねば我らの身が危ういというのに……」(成る程)
充分に二人が離れたことを確認し、レッドブーツは広間を覗き込む。後方では話題を下世話な方向で推移させながらニンジャ二名が去っていくところ。正体はわからねど、ソウカイヤに敵対するニンジャの名前を三人持ち帰る。成果としては悪くない。悪くないが。
「もうちょっと欲張りたいよね」
しめやかにエントリー。まず向かうはUNIX。慣れぬ手つきでキーボードを叩く。
【ニューロン】判定
3, 4, 6 成功
ピガガガガ……無事にパンチシートを吐き出すUNIXを前に、レッドブーツは額の汗を拭った。正直な話、彼女はあまり機械が得意ではない。人を殺す方がよほど簡単だ。
敵陣のUNIXから得た情報となれば、電算室に持ち込めば解析が可能。相手の正体も掴めるというもの。あとは……大釜の真上で力なく項垂れる、あの女。あれだ。
『天下』とショドーされたUNIXを離れ、レッドブーツは屈み込む。その膝から内蔵されたスリケンボウガンがバンブーに照準を合わせた。
【ワザマエ】判定
2, 2, 3, 4, 4, 4, 5 成功
ドシュッ! 発射された鏃スリケンが拘束バンブーを破壊!「アイエッ!?」悲鳴をあげる女はそのまま重力に引かれて大釜の中へ「イヤーッ!」落下する寸前、色つきの風に攫われ離れた場所へ着地する!
「これでよし、と」
「え、あ……ありがとうございます! ドーモ、ソウカイニンジャのライトニングウォーカーです」
「ドーモ。ライトニングウォーカー=サン。レッドブーツです。同じくソウカイヤ」
淡々とアイサツを返し、レッドブーツは相手を観察する。その装束は執拗なチョコ拷問と大釜から立ち昇る高温によってもはや装束の程を為していない。今更ながらに気づいたのか、ライトニングウォーカーが赤面した。そのバストは豊満である。
「ア、アイエエエエ……恥ずかしい……」
「お気の毒さま。ボクが女でよかったね」
【ワザマエ】判定
2, 2, 4, 4, 4, 5, 5 成功
「ナンオラアバッ」
異常に気付いて接近してきたクローンヤクザを無造作に斬り殺し、レッドブーツは再びライトニングウォーカーを見下ろす。彼女はへたり込んでいた。立てないのだろう。よほどの長期間インタビューを受け続けたと見える。
「……しょうがないか。ほら」
「えっ」
お気に入りの赤いレザージャケットを脱ぎ、ライトニングウォーカーに羽織らせる。目を丸くして見上げる彼女を、レッドブーツは無造作に抱き上げた。
「アイエッ!?」
「こっちのほうが効率がいい。ま、オミヤゲはこれで充分だろ」
レッドブーツは難なく立ち上がると、そのままクローンヤクザたちの監視を振り切り入り口へと走っていった。
◇◆◇◆◇
チョコの甘い匂いに眉根を寄せつつ、レッドブーツは駆ける。ライトニングウォーカーに非はないとはいえ、合成チョコレート原液はレッドブーツの衣服をも汚していた。もっとも、それを気にしている事態ではないのだ!
【回避】判定
1, 1, 2, 3, 3, 5, 5, 6 成功
「イヤーッ!」「イヤーッ!」投擲されたスリケンをバックステップ回避! その間にライトニングウォーカーを片手で抱え上げる形に持ち替える。
「……まあ、そこまでうまくいかないよなあ。ドーモ。シルバーホイル=サン。バンブーニードル=サン。レッドブーツです」
「ドーモ。レッドブーツ=サン。シルバーホイルです」「バンブーニードルです」
トンネル前で待ち構えていた二人のニンジャがアイサツを繰り出す。その周囲にはクローンヤクザ軍団。バンブーニードルが苦々しげに睨みつける。
「ネズミがいたとは……不覚よの」
「なに、始末すればそれでいい。だが」
シルバーホイルが目を細めた。その視線の先には抱え上げられたライトニングウォーカー。身を震わせる彼女を、レッドブーツは空いた手で宥める。
「そこの女だけは逃すわけにはいかん。置いていけ」
「ふぅん。なにと引き換え?」
「お前の命。どうだ?」
レッドブーツは微笑する。そしてシルバーホイルに突きつけて見せた。キツネ・サインを。拒絶!
「「イヤーッ!」」
【回避】判定
(1, 3, 5)(2, 4, 6)(1, 2)
【体力】6→5
「イヤーッ!」両ニンジャのカラテを素手でいなし、レッドブーツは再び急加速! 「イヤーッ!」「アバーッ!?」立ち塞がったクローンヤクザを踏み台にトンネル突入!
「おのれ! イヤーッ!」バンブーニードルが己の肉体より放ったのはタケヤリめいたバンブー・クナイ! それは狙い違わずレッドブーツの肩に突き刺さる!
「ンン……!」「レッドブーツ=サン!?」「ハハ、まだ平気。心配しないで……イヤーッ!」
引き離さんと駆ける! だがその後を追う色つきの風が二つ!
【回避】判定
(2, 5, 6)(1, 4, 6)(2, 4)
【体力】5→4
「イヤーッ!」「イヤーッ!」サイバネ腕を伸長させて放たれたシルバーホイルのカラテを回避!「イヤーッ!」「イヤーッ!」バンブーニードルの射出するバンブー・クナイを回避! レッドブーツはエレベーター内の緊急用階段を駆け上がる!
「イヤーッ!」「ンアーッ!?」シルバーホイルが射出したスリケンがレッドブーツのヒキャクを傷つけた。レッドブーツは怒りの眼差しで真下の彼を見下ろし……強いて笑いを弾けさせた!
「サラバ! ゴキゲンヨ! 情報管理のなっていないどこかの誰かさん!」
「お……オノレーッ!」
シルバーホイルが地団駄を踏む! スリケンは彼女を足止めさせるには不十分であった。見よ。レッドブーツは既に階段を駆け上がり地上階!「「「アイエエエ!?」」」ニンジャを目撃した労働者たちの悲鳴が響く!
「ヌウウーッ……!」
バンブーニードルもまた足を止めざるを得ない。彼らは安易に衆目の前に立つわけにはいかない故に。そこまで計算された立ち振る舞いか、それともキューソーめいたヤバレカバレか。
いずれにせよ、ネズミは彼らの手から逃げ去ったのだ。
◇◆◇◆◇
「ハァーッ、ハァーッ……!」
「だ、ダイジョブですかレッドブーツ=サン!」
「まだ平気。それより、ボクの代わりに連絡しておいてくれた?」
こくこくと頷くライトニングウォーカーに、レッドブーツは短く安堵の息を吐く。彼女たちは今や工場を後にし敷地を駆けていた。IRC要請により家紋タクシーの待つ出口まで、あと少し。
……だが、そのとき!
【ワザマエ】判定
2, 3, 3, 3, 5, 6, 6
「イヤーッ!」「イヤーッ!?」KILLIN'! 二筋の銀光が衝突し、澄んだ音を立てた。かろうじてイアイを間に合わせたレッドブーツは、飛び離れたアンブッシュ者に驚愕の眼差しを向ける。なんたる鋭い突き。にも関わらず気配すら察知できなかった。
鼻から上を覆う仮面めいたメンポをつけたそのニンジャは、得物である刺突剣を眼前に掲げアイサツを繰り出した。
「ドーモ。スワッシュバックラーです」
「……ドーモ。スワッシュバックラー=サン。レッドブーツです。こちらはライトニングウォーカー=サン」「ド、ドーモ」
レッドブーツは一歩退く。先の二人のように隙をついて逃げられるか? 彼女のニューロンは無慈悲な答えを導き出していた。無理だ。たとえライトニングウォーカーを囮にしようとも、このニンジャは自分を逃すまい。彼我のカラテにはそれだけの乗り越え難い差がある……!
「そちらの女性を抱えながら今のアンブッシュを生き残ったのは見事。ですが、これまでです」
優雅とも取れる動作でスワッシュバックラーが刺突剣を構える。レッドブーツはカタナを構えた。もはやこれまでか? 嫌だ。まだ死にたくはない。
「イヤーッ!」
カラテシャウト。だがそれはスワッシュバックラーのものでも、ましてやレッドブーツのものでもない。まったくの第三者! そして飛来したのは巨大なスリケンだ!
「なに!? イヤーッ!」
スワッシュバックラーはブリッジ回避! そこへ「イヤーッ!」第四のカラテシャウト! 振り下ろされる追撃のカラテ!「グワーッ!?」防御を固めたスワッシュバックラーが吹き飛ばされる!
眼前に降り立った巨大なニンジャの影に、レッドブーツは目を丸くした。会うのは初めてだが、知っている。ダイシュリケンを片手に真横に降り立つニンジャもだ。ソウカイヤであれば知らぬ者などいない!
「ドーモ。アースクエイクです」「ヒュージシュリケンです」
「ドーモ。スワッシュバックラーです。これはこれは。ソウカイヤでも名高いお二方がそろってのお出ましとは! 恐悦至極ですな」
「サンシタが相手ではつまらんだろう。貴様には聞きたいことが山ほどある」
アースクエイクが一歩を踏み出し、手招き。ダイシュリケンを構えたヒュージシュリケンが愉しげに笑う。
「お前のチンケな部下とは一緒に考えるなよ。俺はお前のメンポを見るだけで2ダースは拷問の手順を思いつく」
レッドブーツは訝しむ。この言い様。まるでライトニングウォーカーが受けていた拷問を聞いていたかのような……
無表情に両者を眺めていたスワッシュバックラーは苦笑し、肩を竦めた。
「せっかくのお誘いだが辞退させていただこう。この場所にはあなた方とカラテを交わすほどの価値はない」
直後! KABOOOOOM! 衝撃が地面を揺らし、工場が炎に包まれる! 地下施設が爆破されたのだ!
「ヌゥッ……!?」
「今宵はこれにて! またお会いしましょう、皆様方! ごきげんよう!」
一瞬の動揺。その間に慇懃無礼なアイサツを残し、謎めいたニンジャは姿を消していたのである。
◇エンディング◇
そのしばし後。レッドブーツは家紋タクシーに揺られトコロザワ・ピラーにたどり着いていた。ライトニングウォーカーを含めた重要物資はひとまず電算機室に預け、彼女は今、会議室でソニックブームと向き合っている。
「シルバーホイル。バンブーニードル。それにスワッシュバックラー……か」
「は。特にスワッシュバックラー=サンは恐るべきカラテ強者と見ました。他二人の口ぶりからして、なんらかの組織の幹部格の可能性もあるかと」
「アマクダリ・セクト」
ソニックブームの呟きにレッドブーツは顔をあげる。彼の手には既に解析されたデータがあった。皮肉げな笑みを浮かべ、彼は少女を見た。
「たいそうな名前じゃねェか?」
「……ですね。メガトリイやらアルゴスやら、そうしたワードも聞き及んでいます。重要なデータはライトニングウォーカー=サンの頭の中に」
「そっちはダイダロス=サンが引きずり出して解析中だ。なかなか面白ェことになりそうだぜ。せいぜい楽しみにしてろや」
「ハイ」
レッドブーツは無表情に頷く。ソニックブームは目を細め……ふと気づいたように腕を組んだ。
「にしてもあの女、なんであんなとこにいたんだ?」
「近隣の住民に頼まれた、としか……自分としては、シックスゲイツのお二人があの場に現れたほうが意外です」
首を傾げたレッドブーツは、何気無い様子で上司を見上げる。
「発信機と盗聴器。いつ仕掛けられていたものか。ご存知ありませんか、ソニックブーム=サン」
「アァ? 念のためだ、念のため。俺様だって連中に借りを作りたくはねェが、ニンジャが複数ともなりゃシックスゲイツが対処するのが自然だからな」
悪びれる風もなくソニックブーム。レッドブーツは微笑した。カニキャッチから帰ってきたばかりの自分にわざわざ衣服を誂えるなど妙だと思っていたが、やはり裏があったというわけだ。とはいえ、今回はそれに命を救われた。文句を言う気などない。
「ま、お前にしちゃあ上出来だ」
ソニックブームの一言が、ブリーフィングの終わりを告げた。
■リザルト■
【万札】9 → 32
【名声】0 → 1
【余暇】3
◇◆◇◆◇
報酬を受け取った後も、レッドブーツはトコロザワ・ピラーをさまよっていた。愛しの少女と出くわすのではないかと思ったからだ。特にスカウト部門オフィス近くで目撃情報が多い。が、今のところうまく逃げられている。まったくいつまでたっても隠れんぼがうまい。
「あ」
「ん」
聞き覚えのある声にレッドブーツは足を止める。見ると、そこには車椅子に乗ったライトニングウォーカーの姿。億劫そうに車輪を回して近くまでやってきた彼女は改まった様子でオジギする。
「ドーモ。このたびはありがとうございました」
「ドーモ。足、平気?」
「全治一ヶ月だそうです。サイバネに替えてもいいんですけど、おカネなくって」
「ああ……無理にローン組むとカニキャッチだもんね。大変だよアレ」
二人は顔を見合わせ苦笑する。もののついでで助けたとはいえ、こうして無事に笑顔を見せてくれるとレッドブーツとしては心が温かくなる。彼女は笑顔の素敵な人が好きだ。男女問わず。
「もうしばらくチョコレートは見たくないかも……と、そうだ! お礼させてください。おかげで命拾いしたわけだし」
「お礼? いいのに」
「いいから。こっちへ」
病み上がりとは思えない速さでレッドブーツの腕を掴んだライトニングウォーカーは、慣れぬ車椅子とは思えない速さで物陰に連れ込む。そして……胸元から取り出した何かを彼女の手に押し付けた。
「これ。表沙汰にしたらヤバいブツなんで。こっそりと楽しんでくださいね」
「……危険物押し付けてない?」
「まさか! 本当に心からの感謝ですよ。そんじゃ」
「ハイハイ。オタッシャデー」
キコキコと去っていくライトニングウォーカーに手を振りつつ、レッドブーツは渡されたものを見やる。なにやら妙なフロッピーディスク。それを無造作にジャケットのポケットに突っ込み、彼女はあてもない放浪を再開した。時折踊るようにステップを踏みながら。
メガデモ:チョコレート狂想曲 獲得
【チョコレート・カプリチオ】終わり
◇あとがき◇
逃走劇でヒヤリとする部分はありつつもなんとか生還。これでアシサノ私塾(要はキラーマシーン教育受講者たち)がそれぞれチョコレートをもらったというわけです。よかったよね。
レッドブーツの場合はかなり方向性が定まってきているので、なんなら他のソロシナリオに出すかもしれないし出さないかもしれない。
それはともかく。ここまで読んでくださった皆様方! そして楽しいシナリオを書いてくださったラブサバイブ=サン! ありがとうございました! 気が向いたらまたやるよ!
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