忍殺ソロリプレイ間話【スパイラル・アップ、カシマシ・ガールズ】

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかながソロシナリオを遊んだ記録……とは直接関係がないのですが、それに関係する感じのエピソードを描いた間話となります。

 今回描くのは遺跡探索を終えた以下三名の余暇です。(つけている画像はすべてななメーカー=サンで作成したイメージとなります)


画像1

ニンジャ名:キールバック
【カラテ】:3          【体力】:3/3
【ニューロン】:5       【精神力】:5/5
【ワザマエ】:7          【脚力】:5
【ジツ】:2(カナシバリ)   【万札】:22
近接攻撃ダイス:4
遠隔攻撃ダイス:8
回避ダイス:8

【特筆事項】:
【名声】:6

【装備品】:
▲バイオサイバネヘッド(軽度)
▽生体弾

【スキル】:
●連射2
●疾駆
◉スリケン急所破壊
○信心深い


画像2

ニンジャ名:チェインドッグ
【カラテ】:2        【体力】:2/2
【ニューロン】:4       【精神力】:4/4
【ワザマエ】:5       【脚力】:3
【ジツ】:3(キネシス)   【万札】:20
近接攻撃ダイス:3
遠隔攻撃ダイス:6
回避ダイス:5

【特筆事項】:
【名声】:4

【装備品】:
▲バイオサイバネヘッド(軽度)

【スキル】:
○実家のカネ


画像3

ニンジャ名:シャープキラー
【カラテ】:5(+1)      【体力】:6/6
【ニューロン】:5(-1)       【精神力】:4/4
【ワザマエ】:4(+1)       【脚力】:4
【ジツ】:1(カラテミサイル)   【万札】:33
近接攻撃ダイス:7
遠隔攻撃ダイス:5
回避ダイス:7

【特筆事項】:
【名声】:5

【装備品】:
カタナ
**バスタード・カタナブレードツルギ**
▶︎ヒキャク
▷ブースターカラテ・ユニット

【スキル】:
○キラーマシーン教育

 与えられた余暇は4日。どんなふうに過ごすのか早速見ていこう。よろしくおねがいします。



◇余暇の前に◇

 ネオサイタマ・ステイション改札前。人混みの中、じっと改札を見つめる小柄な少女が一人。側の柱に背を預けていたセーラー服の少女が、朗らかな笑顔とともに声を掛ける。

「キールバック=サンの背丈じゃ見えなくない? 肩車したげよっか」

「ブチ殺すぞ……コホン! 結構です! 私、目には自信ありますから」

「フーン。あ、来たよ」

「エッ!?」

 小柄な方……キールバックは慌てて振り向いた。セーラー服の少女の言葉通り、目当ての人物が改札を出てこちらに向かってくるところ。艶やかな長い黒髪に改造ミコー装束の女である。隻腕と見え、その右袖はむなしくはためいている。

 顔を輝かせ、キールバックはミコーに駆け寄る。

「オツカレサマデス、お姉さま! お待ちしておりました!」

「ウフフ、アリガト。キールバック=サン。アベレージ=サンから聞いていますよ? ミッションを終わらせたばかりだとか。うちで休んでいてもよかったのに」

「なんてことはないミッションでしたから。それに、お姉さまのお側にいるほうがずっと大事です。今、お荷物を……あれ」

 そこでようやく、キールバックは『お姉さま』に連れがいたことに気づく。黒いセーターに白衣を纏い、口元を白いマスクで覆う女。初めて見る顔であり……わかる。ニンジャだ。

 一方の『お姉さま』もキールバックの連れに気づいたのだろう。わずかに眉間にしわを寄せる。

「……あなたも出迎えですか。どういう風の吹き回しです? シャープキラー=サン」

「ドーモ! ディスグレイス=サン! やだなあ、私だってディスグレイス=サンに少しでも早く会いたかっただけなのに。で、そっちの人は?」

「ああ」

 と、改造ミコー装束の女……ソウカイニンジャ、ディスグレイスは微笑した。その笑みに冷たいものが混ざる。この時点でキールバックとシャープキラーは見知らぬ女ニンジャの末路を理解した。

「紹介します。こちらスパルガヌム=サン。岡山県の方で親しくさせていただきまして。フリーランスのニンジャなのですが、ソウカイヤにも力を貸していただけることになったのです」

「……ドーモ」

 スパルガヌムは無愛想な様子でオジギ。そしてキールバックらをなんとも言えぬ顔で見つめる。キールバックは目を細めてそれを見返した。

「成る程。じゃあ荷物運びはこの方に任せれば問題ないですね」

 あっさりと言い放つ。スパルガヌムの顔に一瞬だけ驚愕と屈辱の表情が浮かんだ。ディスグレイスの妹分であるからして、キールバックは『お姉さま』の趣向とそれに付き合わされたニンジャの扱い方をよく知っている。結局のところ、この女はディスグレイスの新しいオモチャに過ぎない。

 微笑ましげにその様子を眺めていたディスグレイスが、思い出したように指を鳴らした。

「ああ、そうだ。忘れる前に渡しておきましょう。キールバック=サン、これを」

 そして胸元から取り出したマキモノをキールバックへ。そのバストは豊満であった。

「オミヤゲです。向こうで見つけたものですが……あなたに渡した方が後々のためになるでしょう」

「あ……アリガトゴザイマス! 大切にします!」

「ウフフ! 取っておくのではなく、然るべきときに使ってくださいね」

 90度オジギする妹分の頭を優しく撫で、ディスグレイスは歩き出す。その後を追うキールバック。彼女らを視線で追ってから、シャープキラーは唐突にスパルガヌムへと歩み寄った。

「ドーモ、ドーモ。大変だったみたいだね」

「……知ったような口を……」

「アハハ! いやね? ディスグレイス=サン、ちょっと前にもあなたと同じ様なニンジャ連れてきたことがあって。トリプルファイブ=サンだったかな? 今でもたまに部屋の掃除しにくるんだよ」

「何が言いたい」

「ンー? 別に? スパルガヌム=サン、『綺麗』にされたクチでしょ? 私たちとはナカヨシになっておいたほうがいいよって話。そこまで性格の悪い子、いないと思うんだけどね……下手にヒンシュク買うと、なにされるかわからないもの。ねえ?」

「……」

 スパルガヌムは暗い目でこのセーラー服の少女を睨む。少女は朗らかに笑い、手振りで彼女を促した。

ディスグレイスからキールバックへ
*グレーター・マキモノ・オブ・カラテ・アーツ*譲渡



◇余暇1日目◇

 とあるヨロシ研究所にて。チェインドッグはとあるヨロシ研究員と向き合っていた。無論、極度の人見知りである彼女だ。センパイであり、昨日岡山県から帰還したばかりのディスグレイスにも付き添いとして来てもらっている。

「成る程、現在のバイオサイバネに付属サイバネですか」

 ヨロシ研究員ソラン・イゾセは、分厚いレンズ越しにちぢこまるチェインドッグを一瞥してからディスグレイスに確認を取る。ディスグレイスは隣のコウハイに優しい眼差しを向けてから頷いた。

「ええ。この子は強力なジツを扱えるのですが、もしそれがなくなったときに戦う術がなくなってしまうのではないかと心配になったそうで」

「ハ、ハイ。そ、その、私、まだカラテも弱くて。だから……」

「成る程……大丈夫ですよ。そうした悩みを抱えたニンジャの方は多くいらっしゃいます。そしてヨロシサンはそうしたニンジャの方々に向けたバイオサイバネも取り揃えていますので」

「ウフフ! 怖がらなくてもいいですよ、チェインドッグ=サン。ソラン=サンはわたくしのかかりつけバイオサイバネ技師でもあります。ワザマエは保証しますから」

 ディスグレイスの賛辞に、ソラン研究員は顔を赤らめた。そのバストは豊満である。どことなく幼い風貌にも見えるが、それは白磁めいたバイオ皮膚や濃緑色のバイオ毛髪によるヨロシ・アンチエイジングの賜物であるかもしれない。

「コホン! では、エート、いくつか提案させていただきますね。まずジツの使用を補助する脳物質分泌バイオサイバネの埋め込み。今後もバイオサイバネへの置換を重点するようでしたら、こちらのコースも視野に入るかと」

「の、脳物質……」

 いきなりの仰々しい単語にチェインドッグが青くなる。その顔色の変化を悟ったのだろう。ソラン研究員が慌てて言葉を付け足す。

「あまり重大にお考えになる必要はないですよ? 精神状況の安定にも使用されていて安全ですから」

「……フゥーム。とはいえ、彼女の心配事は『ジツが使えないとき』になんとかできる付属サイバネですからね。やや外れるやも」

「でしたら……チェインドッグ=サンの使用しているバイオサイバネから逆算すると……生体弾やバイオ散弾ということになるでしょうか」

 ディスグレイスの口添えで新たなプランが提案される。生体弾、という言葉にチェインドッグはわずかに耳を動かした。頼りになるキールバックも使用しているバイオサイバネだったはず。

 それにしよう……と決めかけたチェインドッグはしかし、ふと不安要素を思い出した。

「あ、あの。生体弾って、金属にできますか?」

「金属ですか? 生体金属弾ももちろんございます。けれど……頭部のバイオサイバネに仕込むとなると……そうですね、例えば牙。必要時にはバイオ筋肉で射出し、日常で射出分を生成する形になるでしょうか。バイオサメの生態を模倣した格好になります」

「アイエエエ……」

 淡々と告げられる生体弾の実装手段にチェインドッグは慄いた。自分の牙をスリケンとして飛ばす。なんたる痛みを想像してしまいそうな生々しい攻撃法! だが、金属は譲れない。彼女のキネシス・ジツは金属にしか作用しないのだ。

 ならば、もう片方のバイオサイバネはどうか。

「頭部へのバイオ散弾となりますと、例えば髪に特殊なバイオ毛髪を仕込みますとか、ガスを噴射するバイオ機構を仕込みますとか……あとはそうですね。音波というやり方もあります」

「そ、それにします!」

 チェインドッグは勢いよく身を乗り出した。音波。それならばきっと痛くないに違いない! ……実のところ、バイオ筋肉を酷使するには変わらないためある程度の負担はある。しかしチェインドッグにとっては痛くなさそうなことが重要なのだ。


◇◆◇◆◇


「あ、アー……アー……?」

 バイオサイバネ手術はその日のうちに終わった。チェインドッグは自分の喉に手を当て、声の具合を確かめる。喉に付属バイオサイバネを追加したということらしいのだが、あまりに違和感がないので本当に改造されたのか不安になる。

 ディスグレイスは微笑を浮かべ、チェインドッグの様子を眺めていた。

「ウフフ! 言ったでしょう? ソラン=サンのワザマエはたしかだって」

「あ、アッハイ! その、も、もしバイオサイバネを埋め込む気になったら、また、あの人にお願いしようと思います!」

「そうですねえ……バイオサイバネの埋め込み過ぎは負担がかかるでしょうから、それだけには注意しなさいね」

 こくこくと頷きながらもチェインドッグは安堵する。ディスグレイス。最初に会ったときはどことなくコワイ・アトモスフィアを感じたものの、実際に会話してみれば実に優しい。彼女の言いつけを守れば、きっと自分もソウカイヤでやっていける。そのような信頼感すらある……

 チェインドッグのこの判断はある意味で正解であり、別の意味から見れば間違いである。ディスグレイスは右腕と置換したバイオ触手と強力なカナシバリ・ジツで敵を拘束し屈服させることを好む邪悪なニンジャだ。が、それはあくまで抵抗する敵、しかも女に限られる。チェインドッグのように素直に慕ってくるコウハイを無理やり手篭めにする趣味は持ち合わせていないのだ。

 チェインドッグのような相手の場合、ディスグレイスは巧みに信頼関係を気づき自分から離れられないようにするほうが好みであり、チェインドッグは見事にその術中に嵌っていることになる。それからどうなるかは……読者諸氏のご想像にお任せしよう。

 閑話休題。マンション「せなまし」へ帰還したチェインドッグらが玄関扉を開けると、リビングでリラックスしているシャープキラーとキールバックの姿があった。近くのセントーにでも行ってきたのか、心なしさっぱりとしている。

「た、タダイマ」

「ああ、オカエリナサイ。チェインドッグ=サン。それにお姉さまも!」

「ええ、タダイマ。今日もトレーニングだったのでしょう? 首尾はどうでしたか?」

「ハイ! 私、スリケンの扱い方に相当慣れてきました!」

 キールバックが満面の笑みで答える。彼女も彼女で素直だ。きっとなんらかの極意を掴んだにちがいない。チェインドッグはそっとシャープキラーを見やる。なにがしか考え込んでいた彼女は……ふと決心したかのように席を立った。

「ねえ、ディスグレイス=サン。お願いがあるんだけど」

「……なんです?」

「一緒にオンセン行かない?」

 唐突な提案に、部屋のアトモスフィアが一瞬硬直した。

キールバック:スキルトレーニング
【万札】22 → 12
1d6 → 5 成功
◉タツジン:スリケン 習得
チェインドッグ:バイオサイバネ手術
【万札】20 → 10
▽バイオ散弾 獲得
シャープキラー:カラテトレーニング
【万札】33 → 30
1d6 → 6 成功
【カラテ】5 (+1) → 6 (+1)
【体力】6 → 7


◇余暇2日目◇

 その翌日のこと、トレーニングで汗を流したチェインドッグは、リビングで不機嫌そうにくつろいでいるキールバックを見てびくりと身体を跳ねさせた。ややあってから、恐る恐る尋ねる。

「あ、あ、あの。キールバック=サン、ダイジョブ……?」

「あァ? ……あ、ゴメンナサイ。ダイジョブですよ。ちょっと機嫌が悪いだけです」

 怯えているチェインドッグを見て慌てて態度を軟化させたキールバックは、昨夜のことを思い出してこっそりとため息をつく。急なオンセン旅行の誘い。わかっている。前回お姉さまがあのゾンビーニンジャを連れて旅だったときはカラテの特訓のためだった。今回のシャープキラーも同じ腹づもりだろう。わかっている。わかってはいるが……

「ハァー……私、不安です。シャープキラーのやつ、お姉さまに粗相しないでしょうか……」

「アイエッ? そ、その……エット……だ、ダイジョブじゃない……?」

 おどおどとした様子でチェインドッグ。キールバックは彼女を一瞥し……不機嫌になっている自分が不意にバカバカしくなった。強いて笑みを浮かべ、彼女を見上げる。

「まあ、そう信じるほかありませんね。ところでどうですか? チェインドッグ=サン。鍛錬の調子は」

「エッ? あ、う、うん。上達してると思う」

「それはよかった」

「……でも、その。ここから先は誰かに教わらなくちゃいけないかもだし……その、以前もらったオンセン旅行券もあるし……エット、時間ができたら、その……」

 なにやらモジモジとし始めたチェインドッグからいったん意識を外し、キールバックはお姉さまに思いを馳せる。何事もなければいいのだが。


◆◇◆◇◆

 その日の夕刻。タマチャン・ジャングルに位置するオンセン旅館『ユノクトヒ』。立地の関係上、ヤクザやニンジャなどにしか利用されていないこの宿に、二人のニンジャがチェックインした。ディスグレイスとシャープキラーである。

「……まったく。特訓を頼むにしても急に過ぎるのです。まあ、わたくしとしても部下の育成には力を入れておきたいですし? 今回はこうして付き合ってあげていますけれど、もし今後ソニックブーム=サンやビホルダー=サンに頼むようなときはもっと……聞いてます?」

「……ディスグレイス=サン、やっぱり豊満だよね」

「なにをしみじみと言ってるんですかあなたは」

 夕食を済ませ、オンセンに浸かっていたディスグレイスは大いに呆れてオンセン旅行の首謀者を睨んだ。湯気を透かして見ることのできるニンジャ視力の持ち主には、彼女の肉体のところどころに浮かぶヘビめいた鱗を捉えることができるだろう。バイオサイバネ由来ではない。彼女に宿った強大なニンジャソウルがもたらした変質であった。

 同じ湯に浸かっているシャープキラーは彼女を凝視。ディスグレイスほどではないがそのバストは豊満である。精緻なサイバネ脚を持つシャープキラーであるが、施された防水加工により問題なくオンセンに入ることができるのだ。

 カコーン……奥ゆかしいシシオドシ音が響く。ディスグレイスとシャープキラーは一定の距離を保つ。かたや危険なブースター・カラテユニットを備えるサイバネニンジャ、かたや右腕をバイオ触手群に置換したニンジャ。一糸纏わぬ状態であれ、ここからイクサが始まってもおかしくはない。

 シャープキラーが息をついた。

「ディスグレイス=サン、側に行ってもいい?」

 沈黙。少女は苦笑し、続けた。

「なにもしないってば! だいたいほら、今の私はノーカタナだし? ヒキャクがあるからって、今のディスグレイス=サンには敵わないもの。でしょ?」

「…………いい機会です。今のうちに聞かせなさい」

「エ? 何?」

「なぜ、わたくしの元に? あなたのことです。そのサイバネのことも既に把握しているはず」

「ああ、これ」

 シャープキラーは視線を下ろす。幻想的な白い湯のために、そのサイバネ脚は見えない。アシサノ私塾襲撃時に生身の脚は断たれた。そのことについて、彼女は特に後腐れを持っていない。

「ディスグレイス=サンが手配してくれたんだっけ? 正直ありがたいよね……ニンジャになっても、脚がないんじゃつまらないし」

「……それだけですか?」

「他になにがあるのさ? ああ、フラッフィー=サンに回収させようとしたこと? 別にあれだって、まあ、よくあることじゃない? 役に立たなきゃそこで終わり、ってのはさ。ディスグレイス=サンだって、見込みのない奴は側に置きたくないよね……」

 シャープキラーはクスクスと笑う。が、不意に笑みを消して真顔でディスグレイスを凝視した。

「あのね、ディスグレイス=サン。本当に感謝してるんだよ。アシサノではつまらない勉強しかやることなかったから。使い捨てられて、終わり。その未来しかなかったし、実際そうなった。……けど今は違う。気まぐれでもなんでもいいけど、命も拾ってもらってヒキャクもつけてくれて。今の私、最高に楽しいもの」

「……そう、ですか」

「そう。だから少しでも役に立てるようになりたい。……ま、ネンゴロになりたいって下心がないわけじゃないんだけど!」

 言ってシャープキラーは舌を出す。ディスグレイスは眉根を寄せていたが……しばらくしてから観念したように溜息をついた。

「わかりました。好きになさいな、もう」

「ヤッタ! ねぇねぇ、その右腕触ってみていい? 前から気になってたんだー」

「いきなり気安いですね、まったく……! 好きになさい。その分、明日は厳しくやりますよ」 

 湯を掻き分けて身を寄せてくるシャープキラーに、ディスグレイスはうんざりとしたように言った。カコーン。シシオドシ音が微かに響く。

キールバック:ザゼン(累積)
【万札】12 → 7
1d6 → 6 成功
【ニューロン】5 → 6
【精神力】5 → 6
チェインドッグ:ワザマエトレーニング(累積)
【万札】10 → 5
1d6 → 6 成功
【ワザマエ】5 → 6
シャープキラー:カラテ特訓withディスグレイス
【万札】300
※本来はディスグレイスも余暇である必要があるのですが
 一人でカネを出したので特例としています


◇余暇3日目◇

 早朝。シャープキラーとディスグレイスは同時に目を覚ました。「オハヨ」シャープキラーが密やかにアイサツ。ディスグレイスは不機嫌そうに睨み返す。

「警戒はしていましたけど、本当にわたくしのフートンに潜り込んでくるとは……」

「それくらいはよくない? 昨日のオンセンでだってさ」

「やかましい。……まったく、その気安さが時々嫌になります。もう少し淑やかにしていれば、わたくしのほうだって」

「ハイハイ。もう少しくっつく? ディスグレイス=サン、最近寒いの苦手なんでしょ?」

 微笑とともに問いかける。ディスグレイスは眉間のしわを深くしたが……もぞもぞと身を寄せてきた。

 それから十数分経った後、二人のニンジャは同時に起床した。


◇◆◇◆◇


「イヤーッ!」

 起床から数十分後! タマチャン・ジャングルにカラテシャウトが響く! 遺跡から拝借したバスタード・カタナブレードツルギを振り回したシャープキラーは顔をしかめた。胴体を真っ二つに断たれたディスグレイスが虚空に消える。

「また変なジツ覚えたんだね、ディスグレイス=サン……イヤーッ!」

 大振りな斬撃がもう一人のディスグレイスを真っ二つに! だがそれもまた虚空に消える。ブンシンなのだ。三人並んだディスグレイスがクスクスと笑う。

「「「ウフフ! あなたもそのような顔をするのですね。素直に見せてくれればわたくしのほうも気にかけてあげるのに」」」

「ほんっと、いい性格してるよ……! イヤーッ!」「「「イヤーッ!」」」

 三人のディスグレイスがてんでバラバラの方向に跳躍! シャープキラーはそのうちを一人を断ち切るもやはりブンシン! 着地したディスグレイスがミスティック・サインを刻むと、その姿が5人に増える!

「「「「「ほらほら、頑張りなさいな。わたくしの役に立ちたいのでしょう?」」」」」

「……アッハハハ! もちろん! 怪我しても知らないからね! イヤーッ!」

 セーラー服の少女はカラテを振り絞り、ミコーの影へと斬りかかる。彼女らの鍛錬は、それこそ帰りのバスがやってくるまで続いたのだった。


◆◇◆◇◆


 ……その日の夕方! マンション「せなまし」413号室! オンセンから帰還したシャープキラーは、ぐったりとリビングの長脚チャブに突っ伏していた。

「……疲れた。本当に疲れた……」

「あ、あの……ダイジョブ……?」

「アー、チェインドッグ=サン。ダイジョブ、ダイジョブ……ちょっとディスグレイス=サンに激しくされただけだから。イテテ……」

「どうとでも取れる言い回しをやめなさいな、シャープキラー=サン」

 その前にスシが置かれる。ディスグレイスが購入してきたものだ。その傍らにはどこか自慢げなキールバックの姿がある。

「ひとまず今日はしっかり食べて休むこと。感覚は掴めたのでしょう?」

「お陰様でね。けどディスグレイス=サンみたいな敵とイクサすることを考えると、得物の取り替えを考えたほうがいいかもなー……」

 突っ伏したまま答えるシャープキラー。ディスグレイスは微笑し、キールバックを見やる。

「あなたの方も進歩があったようですね、キールバック=サン。あのマキモノを読み終えたんですって?」

「ハイ! 大変参考になる内容でした。ニューロンが澄み渡るようです」

 キラキラとした目が帰ってくる。ディスグレイスは微笑した。彼女らもまた、誰かに教える立場となる実力を備えたのだ。これで自分の仕事も楽になる……ひいては筆頭の負担も少なくなり、ソウカイヤの質の向上にも繋がる。先行投資としては上々の成果といえよう。

キールバック:マキモノ使用
*グレーター・マキモノ・オブ・カラテ・アーツ*使用
【ニューロン】6 → 7
【精神力】6 → 7
●時間差 ●マルチターゲット 習得
チェインドッグ:スキルトレーニング
【万札】5 → 0
1d6 → 2 失敗
次回、スキル出目+1
シャープキラー:カラテ特訓withディスグレイス
1d6 → 4 成功
【カラテ】6(+1) → 7(+1)
【体力】78
●連続攻撃2 獲得


◇余暇4日目◇

 ワザマエのトレーニングを終えたキールバックは一人リビングで寛いでいた。日中からこのアジトに全員が揃うことはほとんどない。あのブラッディリリーでさえ、実験データがどうこうという理由でリー先生の秘密ラボに赴いているのだ。

 お姉さまは仕事だし、フィアーレスのやつはどこかをほっつき歩いている。チェインドッグは……驚くべきことに、今日はシャープキラーと行動を共にしているらしい。一抹の不安は覚えるものの、まあ彼女にしてみれば大きな進歩と言えるだろう。

「タダイマー!」「た、タダイマ……」

「オカエリナサイ」

 噂をすればなんとやら。早速帰ってきたシャープキラーとチェインドッグに声をかけたキールバックは眉をひそめた。チェインドッグの顔色がやや悪い。

「……シャープキラー=サン。なにしたんです?」

「いきなりそんなコワイ顔しないでよ。ちょっとお小遣い稼ぎを手伝ってもらっただけ!」

 朗らかな笑みとともにシャープキラーが言う。成る程、とキールバックは納得した。小遣い稼ぎ……自分もよくやる、後ろ暗いモータルから資金を回収するアレだ。

「にしても、やり方がありますよね? まさかチェインドッグ=サンに直接……」

「攻撃させるようなことはしてないって! アレだよ、『令嬢と騎士』メソッド。令嬢役やってもらったの」

「ンン……まあ、それくらいなら……」

 帰ってきた答えに、キールバックはなんとも言い難い感情を覚える。ヨタモノを誘き寄せる役ならばチェインドッグでもなんとかなるだろう。集まったヨタモノは、シャープキラーがカラテで『成敗』して資金を徴収するというわけだ。

「コホン……いいですか、チェインドッグ=サン。ニンジャに与えられるミッションはどうあっても暴力と紐づいています。今回はその予行練習と思いなさい」

「う、ウン……」

「ま、私たちが引っ張り出される相手ってだいたいヤクザとかニンジャとかだからね。殺らなきゃ殺られるんだし。そのときのことはそのとき考えればいいよ」

「アイエエエ……」

 取り分なのだろう誰かのサイフを抱え込み、チェインドッグは涙目になる。彼女が一人前のソウカイニンジャとして活躍できるようになるまでには、まだまだ支えてやらねばならないようだ。キールバックは静かに嘆息した。

キールバック:ワザマエトレーニング
【万札】7→1
2d6 → 5,6 → 11 成功
【ワザマエ】7→8
チェインドッグ:モータルハント
1d6 → 2
6 + 3 - 2 → 7
【万札】0 → 7
シャープキラー:モータルハント
1d6 → 2
5 + 1 - 2 → 4
【万札】0 → 4


【スパイラル・アップ、カシマシ・ガールズ】終わり


◇あとがき◇

 というわけで、一部ハウスルール的裁量も加えてしまったもののガールズ大躍進という結果になった。余暇終了後のステータスは以下。

ニンジャ名:キールバック
【カラテ】:3          【体力】:3/3
【ニューロン】:7       【精神力】:7/7
【ワザマエ】:8          【脚力】:5
【ジツ】:2(カナシバリ)   【万札】:1
近接攻撃ダイス:4
遠隔攻撃ダイス:9
回避ダイス:9

【特筆事項】:
【名声】:6

【装備品】:
▲バイオサイバネヘッド(軽度)
▽生体弾

【スキル】:
●連射2
●疾駆
●時間差
●マルチターゲット
◉スリケン急所破壊
◉タツジン:スリケン
○信心深い
ニンジャ名:チェインドッグ
【カラテ】:2        【体力】:2/2
【ニューロン】:4      【精神力】:4/4
【ワザマエ】:6       【脚力】:3
【ジツ】:3(キネシス)   【万札】:7
近接攻撃ダイス:3
遠隔攻撃ダイス:7
回避ダイス:6

【特筆事項】:
【名声】:4

【装備品】:
▲バイオサイバネヘッド(軽度)
▽バイオ散弾

【スキル】:
○実家のカネ
ニンジャ名:シャープキラー
【カラテ】:7(+1)      【体力】:8/8
【ニューロン】:5(-1)       【精神力】:4/4
【ワザマエ】:4(+1)       【脚力】:5
【ジツ】:1(カラテミサイル)   【万札】:33
近接攻撃ダイス:9
遠隔攻撃ダイス:5
回避ダイス:9

【特筆事項】:
【名声】:5

【装備品】:
カタナ
**バスタード・カタナブレードツルギ**
▶︎ヒキャク
▷ブースターカラテ・ユニット

【スキル】:
●連続攻撃2
○キラーマシーン教育

 シャープキラーが成長の壁を超えて、かなり強力なカラテの持ち主となった。キールバックもディスグレイスのサポート役として相当の仕上がりとなってきたのではないだろうか?

 なお、作中に出てくるスパルガヌムとトリプルファイブの両名は海中劣=サンのソロシナリオに登場するニンジャとなっています。本来であれば逃亡したり爆発四散したりする定めの持ち主だが、ディスグレイスに関わったがためにこんなになっている。ご了承ください。

 さて、ここまで読んでくださった皆様方、ありがとうございました! 気が向いたらまたやるよ!


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