忍殺TRPGソロリプレイ【カッコー・イン・エレクトロニック・スカイ】後編

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかながニンジャスレイヤーTRPGのソロシナリオを遊んだ結果を元に作成したテキストカラテ(二次創作小説)となります。いわゆるリプレイだ。気楽に読めるよ。

 そして続き物でもある。前回のお話はこれです。

 どさくさに紛れて最高級生体LAN端子とローンを押し付けられた巻き込まれ系少年ニンジャのクークーベイビーは、ダイダロスのスパルタ式直結でコトダマ空間知覚能力に開眼。彼と共にザイバツ電算室へと殴り込むこととなったのだ!

 今回はどうなるか。いってみよう。よろしくおねがいします。



◇本編◇

 五重塔……すなわちコトダマ空間におけるザイバツのセキュリティ機構は恐るべきトラップが仕掛けられていた。ハッキングをしかけた者を迷わせニューロンを焼き切らんとする複雑極まりない迷路。不用意に足を踏み入れればヤリが飛び出るタタミ敷きの大広間。そして電子スモトリが無限に湧き出るドージョー……そのようなものだ。

 とはいえ、だ。

「こうまで蹂躙されているのを見ると、かわいそうになりますね……」

「アワレをかける余裕がありますか。良いことです」

 悠々と階段を上るダイダロスは、困ったようにつぶやくクークーベイビーにただそれだけを返した。

 然り。本来ならば即座にハッカーのニューロンを焼き切るに足るトラップは完全に無力化されていた。迷路には赤いマーカーで正解の道が記され、トラップのヤリは最初から飛び出して柵の代わりにしかならない。電子スモトリに至ってはpop地点に落とし穴が口を開いていたために出現と同時にその生を終える、なんともシュールな光景を作り出していた。

「ところで、見えるところに通貨素子や未公開株券が落ちているのは」

「それもトラップです。カートゥーンのニンジャが使うキントン・ニンポを模倣したものでしょう。迂闊に取得すれば別の罠に誘導される仕組みです」

「へぇー……」

 目もくれずに前進するダイダロスとは裏腹に、クークーベイビーはどうしてもその素子へ目移りしてしまう。なにしろローンのある身である。このミッションに成功すれば返済はできるだろうが、それだけでは生活に足りないかもしれない。

 ちょっと用心して、大丈夫なものだけ掴みとれないか。クークーベイビーは意識を集中させる。

【ニューロン→ハッキング】判定(難易度U-HARD)
(1,1,1,1,2,2,3,3,3,4,5,5,5,5,6,6,6,6) 成功4
【万札】4 → 12

(イヤーッ!)

 クークーベイビーは道中に転がる素子や未公開株券へ手を伸ばし、念じる。すると見よ! 一部の素子がひとりでにその手に吸い込まれていくではないか! トラップ誘導の初手に使用されていた脅威度の低いトークンたちだ!

「クークーベイビー=サン。小遣い稼ぎは構いませんが、任務の目的を忘れないように」

「……アッハイ。スミマセン……」

 やんわりとした叱責を受けつつも、クークーベイビーは粛々とダイダロスの後に続くのだった。


◇◆◇◆◇


 ……そして数分もしないうちに五重塔最上階へと到達したのである! どこか拍子抜けしつつも、クークーベイビーは扉を見つめた。そこには「グランドマスター専用」のショドー。手強いセキュリティが仕掛けられていることは想像に難くない。

「ここは私が解鍵しましょう」

「ハイ。ヨロシクオネガイシマス」

 扉に近づくダイダロスの背を一瞥してから、クークーベイビーは周囲の警戒に移ろうとした。その時だ! 彼の足首を掴む者あり!

「……これは!」

 クークーベイビーは呻く。それは何者かの手……否! 認識する側から鎖に変形したそれは彼の身体を這い登り完全拘束!「ヌゥ……!」それはダイダロスも同様だ。

 このトラップの癖は恐らくヴィジランス。沈黙を保っていたのは油断したその瞬間を突くためか。しかしこれだけならば致命的では……

「死ねッ! ソウカイヤァァァッ!」

【ワザマエ→ハッキング】判定(難易度HARD)
(1,1,1,1,2,2,2,3,3,4,5,5,6,6,6,6,6,6)
【カラテ→ハッキング】判定(難易度U-HARD)
(1,1,1,1,1,1,1,2,2,3,4,4,4,4,5,5,6,6)

「イヤーッ!」

 クークーベイビーは眼前に01障壁を作り、鋭い首刈りソバットを回避!「イヤーッ!」そして空間に波紋を作り出して鎖を崩壊、脱出! カラテを構えた彼は、アンブッシュを仕掛けてきたハッカーに向き直り……驚愕に目を見開きつつもアイサツした。

「ドーモ。ストーカー=サン。クークーベイビーです」

「ドーモ。クークーベイビー=サン。ストーカーです。さっきの屈辱、倍にして返してやる……!」

 美しい顔を残忍に歪めつつ、ストーカーはアイサツを返す。クークーベイビーは状況判断した。その存在感は先ほどの比ではない。まるで本人がこの空間に入り込んだかのようだ。否!

「成る程。『見える』ようになりましたか……いいでしょう。コトダマニュービーに戦い方をレクチャーしてあげましょう」

 いつの間にか鎖を脱していたダイダロスが、クークーベイビーに並び立つ。すると見よ! ストーカーを囲むようにいくつものフスマが出現し、その中から何十人ものダイダロスが出現! 多重ログインだ!

「上等。全員IP晒してニューロン焼き切ってやる……! イヤーッ!

「「「「「イヤーッ!」」」」」

 ストーカーとダイダロスたちは同時に垂直跳躍! 屋根をすり抜け、上空でイクサを開始! その様を視界のみ移動して追ったクークーベイビーは舌を巻いた。この世界にいるにも関わらず追いきれない。それほどの高速処理!

「……っと、それどころじゃないか!」

 クークーベイビーは再び視点を自分に戻すと、「グランドマスター専用」扉へと向き直る。ダイダロスがストーカーを引き受けている以上、自分がやるほかない。だがその前に立ちふさがる影!

「「「「ここは通さんぞ! ドーモ! ヴィジランスです!」」」」

「ドーモ。ヴィジランス=サン。クークーベイビーです……!」

 クークーベイビーはカラテを構える。コトダマの目を得たストーカーほどではないとはいえ、ヴィジランスが油断ならないハッカーであるのは身を持って理解している。恐らくは上空でもストーカーの援護を行いながらも、同時に複数のアカウントを運用し自分を妨害しにかかっている。さすがはグランドマスターの……

 ……グランドマスター。クークーベイビーのニューロンがスパークした!

一時的に『●連続攻撃3』獲得
【カラテ→ハッキング】判定
(1,1,2,3,5,6)(2,2,3,3,5,5)(2,2,3,5,6,6) ヴィジランス三体Kick!

「イヤーッ!」「「「グワーッ!?」」」

 Kick! Kick! Kick! クークーベイビーの姿が掻き消え、三人のヴィジランスの首が飛ぶ! 01の飛沫が上がる! 「イヤーッ!」ザンシンするクークーベイビーに生き残りヴィジランスが飛びかかる!

【回避→ハッキング】判定(難易度NORMAL)
(1,1,1,1,2,2,2,3,3,3,4,4,4,5,5,6,6,6) 成功
【カラテ→ハッキング】判定
(1,1,2,2,3,4,4,4,5)(1,2,3,4,4,5,5,6,6) ヴィジランス(増援含め)撃破!

「イヤーッ!」「グワーッ!?」

 しかしクークーベイビーは難なくそれを回避、そして続けざまの回し蹴りでヴィジランスを上下両断!「イヤーッ!」「グワーッ!」そして視界の端に捉えた新たなヴィジランスアバターの右腕をケジメ! その後カラテ・ストレートで頭を砕く! タツジン!

『くっ、やはり認識者と一対一は……サヨナラ!』

 残された胴体が爆発四散! だがクークーベイビーはそれに構わず、01崩壊を始めたヴィジランスの右腕を使用して扉を開け放つ!「使えるものはなんでも使え」というミヤモト・マサシのコトワザを体現するような動きであった。


0101010001001110...


 扉の先は数千年の歴史を持つテンプルめいた木造の書庫だった。無論、これはクークーベイビーの知覚する光景に過ぎない。01の埃が舞うのを目で追いながら、改めて彼はコトダマ空間の奇妙さに想いを馳せる。ここに至ったものはすべて、自分と同じ景色を共有するのだろうか。本当に?

 「スシ化石」「カラテノミコン」などの恐るべき書物から目を逸らしつつ。クークーベイビーは周囲を見渡す。今見つけるべきはザイバツに関する情報、それだけだ。強くそれをイメージすると、本棚が左右にスライド。その奥に役立ちそうなアイテムと古びたマキモノ罪罰罪罰罪罰罪罰罪罰

(……?)

 罪罰罪罰罪罰罪罰なんらかのアイテムが罪罰罪罰罪罰罪罰

「……ンン」

 クークーベイビーは顔をしかめる。なにかニューロンにへばりつくような気持悪い感覚。それだけに掛かりきりになっている時間はもちろんない。アカウント偽装が剥がされつつあるのか、命綱に凄まじい負荷がかかっているのがわかる。

【ニューロン→ハッキング】判定(難易度U-HARD2) 
(1,1,1,2,2,3,3,3,4,4,4,5,5,5,5,5,6,6) 成功

「……イヤーッ!

 クークーベイビーの瞳が渦巻く! 彼を中心に空間に波紋が走り、部屋を覆いかけていた罪罰の霞を振り払った。クークーベイビーは深呼吸し、本棚奥の小部屋を見つめる。あの感覚はもはやない。いくつかのアイテムと、古びたマキモノがただそこにある。

「これと、これかな」

2「精巧なキョート城の模型」および6「『ニンジャスレイヤー』と書かれた古びたマキモノ」取得

 迷わず古びたマキモノを手に取り、ついで目に止まったキョート城模型を懐に収めてから、クークーベイビーは急ぎログアウトを試みた。だがそのとき、違和感を覚えた。

 ストーカーはわかる。彼女は今、多重ログインしたダイダロスと激しいイクサを行っている。だがヴィジランスは? あのグランドマスターであれば、この隙をついて何か仕掛けてきてもおかしくはない。だが彼は動いていない。何故だ?

「室長!? 私はまだやれます! だからそれは……!」

「今すぐ強制ログアウトしなさい! でないと戻れなく、」

 ストーカーの抗議とダイダロスの警告が降ってくる。クークーベイビーは反応しようとし■■■■■■■■■■


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「……ダイダロス=サン?」

 突然暗転した世界に、クークーベイビーは恐る恐る声を投げかけた。返事はこない。まさか自分は死んだのか? だが頭上にはあの黄金立方体がゆっくりと回転している。となれば、ここはまだコトダマ空間だ。

 足場を意識する。すると足元に一畳のタタミが生じた。クークーベイビーは深呼吸し、ログアウトのコマンドを試行する。反応はない。

 ダイダロスの警告を思い出し、クークーベイビーは青ざめた。なにか不測の事態に巻き込まれたのか? このまま浮いていてもどうしようもない。だからといって無闇に動いても事態は変わるまい。どうすれば……?

 必死に周囲を探る。そして見る。黄金立方体の側に漂う、今にも崩れそうなロープを。間違いない、ダイダロスの命綱! あそこに戻れば希望がある!

「……なんだ、あれ」

 だが、同時にクークーベイビーのニンジャ視力は不穏な影も捉えていた。01で形成された人型がこちらに迫ってくる。あれはまずい。直感する。捕まれば逃げることはできない。だが逃げて命綱を見失えば、二度と肉体には戻れまい。クークーベイビーは……状況判断した!

【ハッキング】判定(難易度U-HARD)
(1,1,2,2,2,3,3,3,4,4,4,4,5,5,5,6,6,6) 成功!

イヤーッ!

 腕を翼へ変え、タタミを蹴って急加速! 驚くべき反応速度でこちらに手を伸ばしてきた01の影を身をよじって回避すると、クークーベイビーはしゃにむに命綱へと縋りつく!

 一息ついてから振り向く。01の影が……アイサツを繰り出した。

「ドーモーモーモーモ、インクィジターターターターター」

「……ド、ドーモ。クークーベイビーです」

 これもニンジャだというのか? クークーベイビーは戸惑いつつもアイサツを返し……凍りつく。コンマ数秒の間にも、01の影はその数を爆発的に増やしていく。多重ログイン? 見た目はそうだ。だがあからさまに異質……!

【回避→ハッキング】判定
【精神力】4 → 3
 自動成功
 (1,1,3,6)(2,3,5,5)(2,3,3,6)(1,2,5,5,6) 回避成功! ゴウランガ!

「イ、イヤーッ!」

 クークーベイビーは即座に闘争を選んだ。命綱を掴んだ手を滑車に変化させ、高速で移動開始! その後を追って迫る01の影!

「0101000111許さない01011001です

「イヤーッ! イヤーッ!」

 01の爪を伸ばすインクィジターの群れを、クークーベイビーは必死に振り払う! その眼下をキョート城が、アッパーガイオンが、セキバハラが、ネオサイタマが流れていく。そこに意識を向ける余裕などなかった。

 もはや限界だ。滑車が火花を上げる。クークーベイビーは諦めかけ……命綱の先に待つトリイ・ゲートに顔を輝かせた。あそこが現実への出口!

 だがゲート前にインクィジターが集結! 寄り集まって一つの巨人となり、その巨大な爪を振りかざす……!

【カラテ→ハッキング】判定(難易度U-HARD2)
(1,1,1,1,2,2,3,3,3,4,4,4,5,6,6,6,6,6)

イィィィィ……

 クークーベイビーは滑車を手に戻し、命綱から離れた。諦めたか? 否! 彼はすぐに己の腕を翼へと変じ、急加速! そして!

ヤァァァァァーッ!

「011000110110グワーッ!00010011101001」

 全身を大槍へと変化させ、速度を持って01の巨人の腹へ風穴を開けたのだ! ゴウランガ! おお、ゴウランガ! 01に崩れ落ちていくインクィジターを尻目に、クークーベイビーはトリイ・ゲートに飛び込み10011001110


◇エンディング◇

 01100110011100110011011001「イヤーッ!」「アバーッ!?」

 突如胸に走った衝撃に、クークーベイビーは目を剥いた。そして目に飛びこんできた光景……白い天井とZBR注射を片手にこちらを覗き込む医療クローンヤクザに目を白黒させる。

「あ、起きた。よかったよかった! アブナイところだったね!」

「……まったく。心停止させるには惜しい人材だったので許可は出しましたが、あなたのそれで爆発四散していたかもしれませんよ」

 耳に飛び込んできた声に、クークーベイビーは億劫に視線を傾ける。身体が嫌に重い。否、現実は元々こうだった。コトダマ空間に慣れすぎたのだろう。

 ともあれ、そこにいたのは二人のニンジャ。かたや痩身のダイダロス。かたや……セーラー服姿のニンジャの少女。思わず顔が歪む。

「……なんで、ここに、いるんですか。シャープキラー=サン」

「アハハ! 単なる通りすがり!」

「筆頭補佐として、あなたがちゃんと役割を果たしているのか視察しにきたのですよ。ZBRで足りなかった分、彼女のカラテがあなたの心臓を元に戻しました。ギリギリではありましたが」

「ハッカーって大変なんだねえ」

 朗らかな笑みを浮かべつつ、シャープキラー。クークーベイビーは今更ながらにゾッとする。あれは生死の瀬戸際だったのだ。彼はそっとダイダロスを見やる。自分と同じ現象に巻き込まれているはずのシックスゲイツは平然としている。あのインクィジターなる謎めいたニンジャに出会わなかったのか、それとも容易く乗り越えたのか。追求する気は起きなかった。

「で、実際何があったんですか?」

「いい質問ですね、シャープキラー=サン。ザイバツの連中、我々に敵わないと見るや電算室そのものを物理的にシャットダウンしたようです。おかげで丸裸にはできませんでしたが……ヴィジランスとあの女ハッカーニンジャ以外の直結奴隷は恐らく全滅。十分な打撃と言えるでしょう」

「うわぁ、ハッカー全滅かぁ……シャレにならないなあ、それ」

 シャープキラーが珍しく恐れ入ったような表情を浮かべている。……そういえば彼女の上司は何かしらの小企業を任せれていると聞いたことがある。そこでもハッカーを雇っているのだろう。それと重ね合わせたか。

 ダイダロスがクークーベイビーを見下ろす。

「それと。あなたの持ち帰ったデータは解析済み。株券や市場データは我らが美味しくいただきます。が、重要なのはキョート城の間取り図とニンジャスレイヤーの情報です」

「……ニンジャスレイヤー。そうだ。どうしてあそこにあんなものが?」

 クークーベイビーは重い身体に難儀しつつ立ち上がる。ダイダロスはシャープキラーへと視線を転じた。彼女は笑って答える。

「アー、私もソニックブーム=サンに連携するために覗かせてもらったんだけどね。なんかスゴイねぇ、ザイバツって。キョート城が古代ニンジャレリックとか、予言によってニンジャスレイヤー誕生を見据えてたとか。どこまで信じる?」

「え、エット……?」

「シャープキラ=サン。要点を」

「アイ、アイ。……ザイバツの本拠地はキョート城で間違いなし。だけど貴方が気にしてるのはニンジャスレイヤーの方だよね。どうもザイバツの人たち、マルノウチ抗争をニンジャスレイヤー誕生のために引き起こしたみたい」

「……は?」

 突拍子もない説明に、クークーベイビーは思わず問い返す。シャープキラーが肩を竦めた。

「データからはそうとしか読み取れないんだよ。で、そこで誕生したニンジャスレイヤーをソウカイヤへのテッポダマに使うと、そういう計画なんだってさ」

「な……え……そ、そんなことができるんですか?」

「できるかどうかはともかく、なってるよね。今」

「……非常に。興味深い情報です。ですがそうですね、これは我々よりも先に知るべき存在がいるでしょう」

 クークーベイビーは驚愕の視線をダイダロスに向ける。ダイダロスは無表情にこちらを見返した。その瞳に、わずかに悪戯っぽい光が見えた。彼の代弁を、笑いながらシャープキラーが口にする。

「まー、そうだよね。真っ先にニンジャスレイヤー=サンに流したいよね! どういう反応するかなあ……楽しみ!」

■リザルトな■
評価点:3 + 5 → 8 A+
【万札】12 → 42 【名声】3 【余暇】3
『●IRCコトダマ空間認識』獲得

 ……一足先にスカウト部門へ情報連携しに戻っていったシャープキラーを見送ってから、ダイダロスはぽつりと呟く。

「あの戦闘を生き延びるとは悪運が強い……また、依頼をするかもしれませんね」

「は、ハハ……そのときはお手柔らかに……!」

 直々に報酬を受け取ったクークーベイビーは引きつった笑いを浮かべながらオジギ。奥ゆかしく退室した。

 下層に向かうエレベーター。身体全体にかかる重圧を、彼は煩わしく思う。コトダマ空間。ニンジャもモータルも等しい環境。危険に満ち溢れた世界。

 それでも、あそこで感じた自由さは本物だ。現実では再現しようもない、あのイクサも本物だった。クークーベイビーはそっと生体LAN端子に指を伸ばす。楔とばかり思っていたこれは、思わぬ自由への扉を開く鍵でもあるのだ。彼は知らずのうちに微笑した。


【カッコー・イン・エレクトロニック・スカイ】終わり


◇あとがきな◇

 ローンとともに押し付けられた最高級生体LAN端子のおかげもあり、クークーベイビー無事生還。メデタイ! なお、彼はこの後シャープキラーにグレアリング・オロチへ配属されています。その辺はニンジャ・ダイアリーで語られるでしょう。

 無事ローンも返済し、余暇も獲得。直結用のLANケーブルを買って後は何をするか……どう育てるか……考えどころだ。

 ではここまで読んでくださった皆様方。そして楽しいソロシナリオを書いてくださったyuu=サン! ありがとうございました! 気が向いたらまたやるよ!


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