忍殺TRPGソロリプレイ【ウェルカム! アンディザイアード・ゲスト】その1
ドーモ。しかなです。当記事はしかながプレイしたソロシナリオの結果をテキストカラテナイズしたリプレイだ。要は読み物です。お気軽にドーゾ。
今回挑戦したソロシナリオは海中劣=サンの【ニンジャの護衛任務】です。いつもお世話になっております。
このソロシナリオ、最大ニンジャ三名まで挑戦が可能なのだ。というわけで、いつもマンションでグダグダしている「せなまし」組から三人ピックアップしてチャレンジさせていただいた。挑むのは以下のメンバー。
ニンジャ名:ディスグレイス
【カラテ】:6(+1)
【ニューロン】:5
【ワザマエ】:4
【ジツ】:4(カナシバリ・ジツ)
【体力】:12
【精神力】:5 (-1)
【脚力】:4
【万札】:8
【名声】:5
【余暇】:2
持ち物など:
『★カナシバリ・マスタリー』
『★★★半神的存在』
『★★★不滅』
『ニンジャソウルの闇:ソウルの悲鳴』
オーガニック・スシ
▲バイオサイバネ腕(片腕)
▽吸血バイオ器官
○信心深い
ニンジャ名:キールバック
【カラテ】:3
【ニューロン】:5
【ワザマエ】:6
【ジツ】:1(カナシバリ)
【体力】:3
【精神力】:5
【脚力】:3
【DKK】:0
【万札】:7
装備:
・ウイルス入りフロッピー
▲バイオサイバネヘッド(軽度)
▽生体弾
○信心深い
ニンジャ名:ブラッディリリー
【カラテ】: 7
【ニューロン】 :6
【ワザマエ】:3
【ジツ】:0
【体力】:14
【精神力】:6
【脚力】:3
『ネクロカラテ』
『ゾンビーニンジャ』
『●連続攻撃2』
当方のニンジャでもそれなりに成長してきたディスグレイスと愉快な妹分たちである。ちゃんと護衛ができるのか。
ではやってみよう。よろしくおねがいします。
◇オープニングな◇
眠らぬ都市、ネオサイタマ。鮮やかなネオン光がストリートを行く人々を照らし、その光の届かぬ場所ではヤクザやヨタモノが我が物顔で蠢いている。
だが「美辞樽」はそのどちらでもない。ボンボリの奥ゆかしい光が玄関を照らし出し、内側からは談笑の声が漏れ聞こえる。この高級料亭を利用できるのは、ネオサイタマでも有数のカチグミたちだ。
その玄関前に今、一台のヤクザリムジンが到着した。まず助手席から降り立ったのはオーダーメイドのヤクザスーツに身を包んだ男である。只者でないことは、その口元を覆う布製メンポや鎧兜の額飾りを見れば一目瞭然だ。彼の名はブレードブレイカー。ネオサイタマを牛耳るヤクザ組織、ソウカイ・シンジケートの末端ニンジャである。
彼は油断なく周囲を見やり、後部座席のドアを開いた。直後。
「じゃー、持ち上げるねー!」
「ブラッディリリー=サン! 礼儀!」
中から響いた甲高い声に鼻白む。だが、直後にヤクザリムジンから降り立った人物を見てすぐに居住まいを正した。
車椅子に腰かけた初老の男だ。車椅子は危なっかしく持ち上げられ、そろそろと地面に下ろされる。ブレードブレイカーは120度オジギ。この車椅子の男こそビホルダー……ソウカイヤでも指折りの実力を持つニンジャ。ソウカイ・シックスゲイツの一人であった。
「フフ! 力自慢の部下がいると楽ができるな」
「エヘヘ! 褒められたよー、キールバック=サン!」
「だから! 礼儀! ……し、シツレイしましたビホルダー=サン。ここからは私が」
叱責を残し降り立ったのは、まだ小柄な少女である。奥ゆかしいキモノ姿。だがその袖の奥からは、ラバースーツめいてピタリと身体を覆うニンジャ装束が窺える。彼女の名はキールバック。
キールバックに車椅子を押され、ビホルダーは「美辞樽」へエントリーする。それを見送っていたブレードブレイカーは、次いで降り立つ改造ミコー装束の女に胡乱な視線を向けた。
「オイ」
「なんです」
「あのガキはまあいい。テメェの手飼いだろ、ディスグレイス=サン。小間使いとしちゃ上等だ。だがな」
と、ブレードブレイカーはヤクザリムジンの中へ視線を向ける。薄暗い室内の中、異質な白光が二つ彼を見返した。ブレイドブレーカーは舌打ちする。
「なんだ、コイツは。どこからこんなモン連れてきやがった? というか、なんで連れてきやがったんだ」
「一つ目。リー先生の秘密ラボから。二つ目。この子が勝手についてきたんです。言い出すと聞かないんですよ」
「ガキかよ。……ああ、実際ガキなんだっけか? シツケがなってねェんじゃねェのか」
「あら。あなたよりは余程お行儀がいいと思いますけれど」
ミコー装束の女が微笑する。ブレードブレイカーが目を細めた。もしこの場に通行人がいたのならば、わずかに二人の間の空気が凝縮したのを感じとり失禁していたやもしれぬ。
ディスグレイスは悠然と見返す。その瞳はほのかに金色に輝いていた。コンマ数秒の睨み合いの後、二人は同時に視線を逸らし、「美辞樽」へ歩みを進める。
「その眼もリー先生のお手製か? それとも単なるコケオドシか」
「あなたもリー先生のところに行けば同じようにしてもらえるかもしれませんよ。十中八九後悔することになるでしょうけれど」
「カハッ! 違いねぇ」
挑戦的に笑ったブレードブレイカーの眼差しが、ふと真剣なものとなる。彼は不意にメンポの位置を調整した。
「……何も無ければいいがなァ」
「まったくもって。……ブラッディリリー=サン。しっかりお留守番していなさいね」
「ハーイ!」
場違いに明るい声とともにヤクザリムジンのドアが勢いよく閉められる。二人のニンジャはしめやかに「美辞樽」へエントリーした。海外マフィアの重鎮と商談を行うビホルダーの護衛のために。
◇座敷にて◇
「美辞樽」においても一番上等な座敷で待ち続け、はや十数分。「ドーゾドスエ」フスマの向こうからオイランの声。次いで静かに開けられるフスマ。入室してきたのはナマズめいた顔をした恰幅のいい男だ。Tシャツにズボンと一見ラフな格好。しかし見るものが見れば、それがマケグミではローンを組んでも購入できないブランド物であることがわかるだろう。
ビホルダーが笑みを浮かべ、両腕を広げて歓迎の意を示した。
「ドーモ、ヂオハイ=サン。私はビホルダーです。ウエルカム!」
「おお、ドーモドーモ! お世話になっております! ヂオハイです!」
友好的な笑みとともに駆け寄ったナマズめいた男……今回の商談相手、ヂオハイはビホルダーと硬い握手を交わす。その間もブレードブレイカーら護衛チームは油断なく警戒を続けていた。
ふと、ディスグレイスの視線がフスマに向かう。ブレードブレイカーが訝しんだ。
(どうした、ディスグレイス=サン)
(いえ。向こうの方々が気にかかりまして)
ブレードブレイカーが視線をずらす。フスマの向こう側で立ち尽くすのは二つの人影。かたやオフショルダーのミニ丈ワンピースにサングラスをかけた女。かたやラメ入りのスーツの男。サイバネでも入れているのか、その髪や目、果ては爪にいたるまでが薄らと輝いてみえる。
眉をひそめたブレードブレイカーは小さく呟いた。視線がぶつかり合う。
(女だからって鼻の下伸ばすんじゃねえぞ、ディスグレイス=サン)
(失敬な。今の自分の立場くらい弁えていますよ)
一瞬の視線の交錯。ふと気づいたかのように、ヂオハイが笑顔で後方を振り向いた。合わせたかのように二人の男女も入室。ヂオハイの左右に並ぶ。
「おお、これはシツレイ。この二人は護衛でしてな。ほれ、アイサツしなさい」
「ドーモォ。プリンセスビーですゥ」
間延びした声で女がアイサツ。その横で、ラメ入りスーツの男は遠慮のない様子でブレードブレイカーらの元へ。
「ドーモ! ロイコクロリディウムです! ヨロシクネ!」
「……ドーモ。ロイコクロリディウム=サン。キールバックです」
そして勢いよく腕を差し出した。コンマ数秒後、その手を取ったのはキールバックである。ロイコクロリディウムは笑みを深めて彼女と握手。大きくその手を振った。
「ドーモ。ブレードブレイカーです」
「ドーモ。ディスグレイスです」
やや遅れ、二人もアイサツ。……この頃には既に理解している。ヂオハイの連れてきたこの二人もまた、ニンジャであると。向こうも同様にそれを理解しているだろう。少なくとも握手を通じてカラテをはかりにきたロイコクロリディウムの方は。
当然だが、彼らは敵ではない。むしろ護衛という任務を共にするビジネスパートナーだ。……だが、完全な味方とも言えぬ。油断すれば足元を掬われるのがこの世界の常だ。
キールバックは率先して危険な橋を渡ったと言えよう。相手に害意があれば、思わぬアンブッシュを受けていたかもしれぬ。サイバネか、ジツか。そこまではわからないが……
いずれにせよ幕は上がった。料理が運び込まれてくる。食事を兼ねた商談の始まりだ。
◇◆◇◆◇
……一方その頃! 「美辞樽」駐車場へ移動したヤクザリムジン内!
「ひーまー」
読み終えた本を傍に置き、"それ"は窮屈そうに蠢いた。運転席に座る運転クローンヤクザは無言。背後から頭をつつかれても、振り向くそぶりすら見せない。
「フアー……」
大口を開けて欠伸。『ママ』が出かけるからついてきたのはいいものの、まさかこんなに長くかかるとは思わなかった(とはいえ、まだ三十分も経ってはいない。なんにせよ"それ"にとっては長い時だ)。他の客が失禁しかねないという理由で、"それ"はリムジン内での待機を強いられている。
と。
ブラッディリリー
【ニューロン】判定(難易度NORMAL)
6d6 → 3, 4, 4, 4, 6, 6 成功
ブゥ……ゥゥン。駐車場の外、高速で駆け抜けていくエンジン音。ブラッディリリーは欠伸をやめ、車窓から外を眺めた。モーターサイクルが珍しいから……では、もちろんない。そのニンジャ第六感が不意に警鐘を鳴らしたのだ。
ゴン! 低い天井に頭をぶつけつつ、ブラッディリリーは後部座席ドアを開けた。そしてそのままずるりと暗い闇の中に這い出たのだった。
◆◇◆◇◆
ディスグレイス
【ニューロン】判定(難易度NORMAL)
5d6 → 1, 1, 2, 6, 6 成功
キールバック
【ニューロン】判定(難易度NORMAL)
5d6 → 2, 3, 3, 5, 6 成功
……ほぼ同時刻! ディスグレイスとキールバックもまた、談笑の続く座敷を辞したところであった。理由は単純。「美辞樽」周囲で蠢く不穏な兆候を察知したからである。
無論、彼女らだけではない。部屋の外には既にブレードブレイカーやヂオハイの護衛コンビが揃い踏みしている。不意にロイコクロリディウムが芝居がかった様子で言った。
「どうやら招かれざる客が来たようだ! 残念ながらお引き取り頂かなくてはならないね!」
つまりは護衛としての仕事をするときだ。商談の妨害……否、暗殺。狙いはビホルダーか、ヂオハイか。いずれにせよ、見逃すわけには行くまい。
五人のニンジャは視線を交わし合う。それがニンジャブリーフィングの始まりとなった。
「だったら、どうする?」
「別れてェ、対応しましょっかァ」
ブレードブレイカーの問いに、プリンセスビーが答える。不意にロイコクロリディウムが笑みを浮かべ、踵を返した。
「では僕は入り口に向かおう! 何、心配は無用さ!」
「……私もそちらへ。ご迷惑でなければ、ですが」
「おや、手伝ってくれるのかいキールバック=サン? 嬉しいよ! 君とは仲良くなれる気がしていたんだ!」
軽薄な様子でキールバックの肩を抱き、ロイコクロリディウムは正面玄関へと向かっていく。ディスグレイスはやや眉をひそめ、気を取り直すようにブレードブレイカーへ向き直った。
「貴方は?」
「……上に行く。高所からなら状況判断もしやすいからな」
「成る程。一緒に行ってあげましょうか? 迷子になってしまうかもしれませんし」
「抜かせ。テメェはそこの女とヨロシクやってろ」
舌打ちを残し、ブレードブレイカーは単身「イヤーッ!」窓から飛びだす! そのまま屋根上へ向かう算段なのだ!
自然、残されたディスグレイスはプリンセスビーを見やる。プリンセスビーは微笑し……ディスグレイスにしなだれかかる。彼女のバストは豊満であった。
「じゃあァ、私たちはァ、一緒にいよっかァ?」
「ウフフ! あまりからかわれると困ってしまいますわ。本気にしてしまいそうですもの……」
ディスグレイスは微笑を返し、左腕でプリンセスビーを抱き寄せた。彼女のバストも豊満であった。
「あらァ、情熱的ィ……ウレシイィ」
「わたくしもです。さて、参りましょうか」
不敵な笑みを交わし合い、二人はそのまま廊下の見回りを始めるのだった。
◇正面玄関な◇
「それにしてもソウカイヤというのは流石だね! ブレードブレイカー=サンのようなニンジャだけでなく、君のような可憐さとカラテを兼ね備えたニンジャまで揃えているのだから! ……おや、どうしたのかな? 緊張してるのかい?」
「あなたの口数の多さに呆れているんです! あと、いい加減手を離してくれません?」
「これはしたり! 僕としたことが、君との出会いに舞い上がってしまっていたようだ!」
大仰な身振りとともに離れるロイコクロリディウム。キールバックは遠慮なく半眼で彼を睨み上げた。油断ならぬ使い手だとは思うのだが、どうにもつかめない。
「いや、本当に申し訳ない! プリンセスビー=サンからも時々注意されるんだよ。彼女、ああ見えて舌が鋭いのさ」
「あなたに対してはみんなそうなるんじゃないですかね……」
「アッハッハ! 手厳しい!」
くだらない会話を繰り広げていたそのときだ! KRAAASH!「アイエエエ!?」「アーレエエ!」破砕音と悲鳴!そして「ザッケンナコラー!」ヤクザスラング!
キールバックとロイコクロリディウムは同時にカラテを構えた。そこに駆け込んでくるのはクローンヤクザ! それも一体だけではない!「ザッケンナコラー!」「ザッケンナコラー!」「ザッケンナコラ「ザッケンナコラ「ザッケンナ「ザッケンナ「「「ザッケンナコラー!」」」大群!
ロイコクロリディウムは片眉を跳ね上げ、口の端を歪めた。
「ワオ! こいつはピンチだ! だがピンチをクールに乗り越えてこそ一流のニンジャってものさ! そうだろう?」
あくまで彼は軽薄な態度を崩さない。だがその身に宿る光がだんだんと強くなっていく。なんらかのジツの前兆!
が、キールバックはそれを制した。
選択肢2:ロイコクロリディウムを別の場所へ向かわせ、一人で戦う
「ここは私だけで充分です。あなたは座敷へ」
「おや、君一人で? 自信がおありのようだね!」
「……あのですね。誰の手先かは知りませんけど、このクローンヤクザどもが本命だと思います? あなたは私よりお強いんでしょうから、早めに護衛に戻ってくださいと言っているんです」
「ハハ! ごもっともだ! ではここはお任せするよ。後ほど! シーユー!」
爪から光の滴を飛ばしつつ、ロイコクロリディウムは軽やかに座敷へUターン! その背中へ思いっきり舌を出してから、キールバックはクローンヤクザ大群は向き直る。
【回避】判定(HARD)×5
6d6 → 2, 3, 6, 6, 6, 6
6d6 → 1, 2, 3, 4, 4, 5
6d6 → 1, 1, 2, 4, 4, 6
6d6 → 2, 2, 4, 4, 5, 6
6d6 → 1, 1, 2, 2, 6, 6
全弾回避! ゴウランガ!
BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM! 非人間的統一感でマズル光が輝き、銃弾が殺到する。キールバックは眉間にしわを寄せ、右足を踏み出し半身に構えた。その頬、肩、腰。すれすれのところを銃弾が通過し、彼女のキモノをズタズタにしていく。
SPIT!「ザッケンナグワーッ!?」不意にクローンヤクザの一体が喉を撃ち抜かれ死亡!SPIT! SPIT!「「グワーッ!?」」今度は二体! それぞれ心臓と右眼を撃ち抜かれ死亡! SPIT! SPIT! SPIT! SPIT!「「「「アバーッ!?」」」」
ニンジャ動体視力をお持ちの読者であれば捉えることができるだろう。キールバックが口をすぼめると同時、奇妙な破裂音とともに噴出させているのは無色透明の水滴弾だ。喉に仕込んだバイオサイバネによる生体弾である!
SPIT!「グワーッ!」SPIT!「グワーッ!」SPIT!「グワーッ!」SPIT!「グワーッ!」SPIT!「グワーッ!」SPIT!「グワーッ!」SPIT!「グワーッ!」SPIT!「グワーッ!」飛来する弾丸を最小限の動きで回避し、キールバックは冷徹に、一体一体クローンヤクザを射抜いていく。
SPIT!「グワーッ!」……最後の一体が倒れる頃には、キールバックのキモノはもはや見るも無残な有様となっていた。残されたのは、身体のラインを浮き立たせるラバースーツめいたニンジャ装束のみ。彼女のバストは平坦である。
(お姉さまは無事かしら……いえ、いえ。駄目よ、キールバック。今、まず守るべきはビホルダー=サン!)
ザンシンしていたキールバックは両頬を叩き、色つきの風めいて座敷へと舞い戻る。「美辞樽」を取り巻く敵意を感じ、彼女の心は小さく震えた。
【ウェルカム! アンディザイアード・ゲスト】その1終わり。その2に続く。
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