忍殺TRPGソロリプレイ【カシマシ・ニンジャズ・ゴー・ダウン・エンシェント・トレイル】その1

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかながソロシナリオを遊んだ際の結果をテキストカラテナイズしたもの……俗にリプレイなどと呼ばれるやつです。気楽に読めるよ。

 今回挑戦したのはT1000G=サンの「不明遺跡探索」です。

 挑戦者が複数でも大丈夫とのことだったので、複数で挑みます。メンバーは……オープニング中で発表しよう。

 ではやってみよう。よろしくおねがいします。



◇オープニングな◇

 ある日のこと。トコロザワ・ピラーはソウカイヤスカウト部門オフィスの一角、打ち合わせスペースに三人のニンジャが集まっていた。

 そのうちの一人……キールバックは眼前に座るくたびれたヤクザスーツ姿の男を見つめ、口を開く。

「本日は……どのようなご用件ですか? アベレージ=サン」

「そう硬くなるな。大した話じゃない」

 ヤクザスーツのニンジャ……アベレージは面倒そうに答え、キールバックの隣に座る三人目を見やる。ゴシックニンジャ装束の少女は、その視線を受けてびくりと身体を跳ねさせた。

「そろそろチェインドッグ=サンも慣れてきたころだと思ってな。一つ、ちょっとした仕事を頼みたい」

「仕事ですか。お言葉ですけど……」

「最後まで聞け。なにも暗殺ミッションだのを発令しようってわけじゃないんだ。……最近はソウカイニンジャも増えているしな。適材適所を考える余裕もある」

 (その分、あなたの仕事も増えているわけですね)彼の目元の隈を見てとりつつ、キールバックはその言葉を飲み込んだ。アベレージは『お姉さま』……もといディスグレイスとほぼ同期のニンジャであり、親交も深い。ある程度の礼儀は保つべきだ。

 そして横に座る後輩のチェインドッグを膝でつつく。「キャンッ」驚いたように声を漏らした彼女が、涙目で見返してきた。どうやら意図が伝わっていない。キールバックは溜息をつき、代わりに質問する。

「で、そのミッションの内容は?」

「ネオサイタマ郊外にある遺跡の探索。ま、お嬢様にはちょうどいいだろう」

「い、遺跡、ですか」

 ようやくチェインドッグが会話に参加した。アベレージとも初対面ではないが、彼女は臆病であり、人見知りであり、度を超えて奥ゆかしい性質の持ち主だ。これでも相当の進歩であった。

 キールバックは思案する。もし『お姉さま』がいれば、どのように反応していただろうか? 彼女は今プライベートな理由で岡山県に出向いている。あそこはIRCすら満足に繋がらない辺境なので意見も仰げないのだが……もしいたのなら、きっと難色を示すのではないだろうか。

「それにしても、この子……もとい彼女一人では荷が重いのでは? 予期せぬトラブルに遭遇したとき、冷静に対処できないかと思います」

「本人を前にそこまで言えるのもまあ美徳だな……なにも一人で行けとは言わんよ。お前がついていってもいいんだ」

「成る程」

 それならばまだわかる。キールバックは小さく頷き、自分とアベレージを交互に見ているチェインドッグへと視線を向けた。相変わらず状況がわかっていない。

「なんならもう一人誘ってもいい。なにしろミヤモト・マサシのレリックが眠っているかもしれないらしくてな。ある程度の予算は出るだろう」

「……その時はご連絡します。他には?」

「ない。準備ができたら向かってくれ」

「ヨロコンデー」

 キールバックは立ち上がり、オジギ。チェインドッグも慌てた様子でそれに倣った。


■挑戦者がエントリーな■
ニンジャ名:キールバック
【カラテ】:3          【体力】:3/3
【ニューロン】:5       【精神力】:5/5
【ワザマエ】:7          【脚力】:5
【ジツ】:2(カナシバリ)   【万札】:2
近接攻撃ダイス:4
遠隔攻撃ダイス:8
回避ダイス:8

【特筆事項】:
【名声】:4

【装備品】:
▲バイオサイバネヘッド(軽度)
▽生体弾

【スキル】:
●連射2
●疾駆
◉スリケン急所破壊
○信心深い
ニンジャ名:チェインドッグ
【カラテ】:2        【体力】:2/2
【ニューロン】:4       【精神力】:4/4
【ワザマエ】:5       【脚力】:3
【ジツ】:3(キネシス)   【万札】:0
近接攻撃ダイス:3
遠隔攻撃ダイス:6
回避ダイス:5

【特筆事項】:
【名声】:2

【装備品】:
▲バイオサイバネヘッド(軽度)

【スキル】:
○実家のカネ


◇◆◇◆◇


「うーん……」

 ところ変わって休憩スペース。携帯IRC端末に送られてきたミッション内容を緊張した様子で読み解いているチェインドッグを尻目に、キールバックは背もたれへ体重をかけた。彼女のバストは平坦である。

「ど、どうしたの? キールバック=サン」

「三人目をどうするか迷っています」

 端的に答え、思案に戻る。その様子を見て機嫌を損ねたと勘違いしたのか、チェインドッグがわずかに涙目になった。いつもおどおどとしている彼女を見るたびキールバックは思わず呆れてしまう。そして『お姉さま』の言葉を思い出すのだ。

(……あの子にとってはあなたが『お姉さん』なのだから。しっかり面倒を見てあげるのですよ……)

 (わかっています。お姉さま)脳内に浮かぶディスグレイスに律儀に返答し、三度思案に戻る。チェインドッグはもちろん、キールバックもそこまでカラテに長けたニンジャではない。彼女らの専門はスリケンだ。万全を期し、もう一人加えるとしたら、やはり前線で戦えるような……

「ヤッホー! なにしてんの?」

 不意に耳に飛び込んできた朗らかな声に、キールバックは渋面を作った。遺憾ながら聴き慣れた声だ。

 顔を上げると軽やかな足取りでこちらにやってくるセーラー服の少女あり。無論、職場見学にやってきた女学生などではない。オモチ・シリコンのカバーすらない剥き出しのサイバネ脚や腰に下げたカタナからもそれは明白だ。

 彼女の名はシャープキラー。同じ屋根の下に暮らす同居人であり、警戒するべき危険ニンジャでもある。

「キールバック=サンはともかく、チェインドッグ=サンがこんなとこにいるなんて珍しいね。というか私たち、初めて顔合わせしたんじゃない? アハハ!」

「アイエッ、ど、ドーモ……」

 チェインドッグがおどおどとアイサツし、助けを求めるかのようにこちらを見つめてくる。キールバックはこっそりと溜息をついた……チェインドッグのニンジャ第六感は確かである。このニンジャが油断ならぬ手合いであることを直感的にわかっているらしい。

「で? そういうあなたはこんなところでなに油売ってるんです?」

「ン? 散歩すると楽しいんだよ、トコロザワ・ピラー。ニンジャもたくさんいるしね」

 ウインクとともに返ってきた答えにキールバックは眉間のしわを深くする。本当に理由がないのか、それとも誤魔化しか。シャープキラーが笑顔の裏でなにを考えているかなどわからない。

 だからこそ警戒すべきなのだ。いかなる調査経路を使ったか、ディスグレイスが辿り着くより早くアジトに踏み入っていたことすらある女だ。なにをしでかすかもわからない。

「で? 二人はなにしてんの?」

「あなたには関係な「あ、あの。私、ミッション受けることになって」

 突っぱねようとしたキールバックより早く、チェインドッグが答える。キールバックは危うく舌打ちするところだった……この子はどうにも素直すぎる。

 案の定、シャープキラーは興味を示したらしい。ごく自然な動作でチェインドッグの横の席に座った彼女は、親しげな様子でその目を覗き込んだ。

「ヘェー、ミッション! なにするの?」

「え、エット……遺跡の、探索? ミヤモト・マサシの……エット……」

「ああ、レリック探索ね。いいなー、面白そう」

 シャープキラーが微笑する。嫌な予感を覚えたキールバックは口を挟もうと「さ、三人くらいまでならまとめて受けてもいいって……」「ホント? じゃあ私も一緒に行っていいかな?」キールバックは「え、エット……い、いいよ!」机に突っ伏した。

 シャープキラーは横目でキールバックを見やり、ニヤニヤと笑う。その顔が非常に腹立たしかった。この女のことだ。ニンジャ聴力で持って盗み聞きしていたに違いない。そして素直なチェインドッグを利用する形で一枚噛んできたのだ……!

「よっし、決まり! いざとなったら私がカラテでなんとかするからさ、安心してよ」

「……まずお前を信頼することが難しいんですけど。なんですか、いつもはフラフラどこかをほっつき歩いてるクセして」

「ンー、今後のため? キールバック=サンとかともミッション一緒にやるかもしれないからさ。ほら、ディスグレイス=サンも昇格するし」

「へ?」

 さも当然のように出された新情報にキールバックは目を丸くする。シャープキラーは不思議そうに首を傾げた。

「あれ、知らない? 最近スカウト部門に……筆頭補佐だったかな……新しい役職ができるとかで、ディスグレイス=サンがその候補になってるの。なんかニュービーの世話だのなんだのをする専門の役職なんだって」

「……初耳です。それを誰から……?」

 まさか、お姉さまが自分よりも先にこの女に昇進の知らせを? 一瞬過ぎる不安に気づいたのか否か、シャープキラーは朗らかに笑った。

「エー? ソニックブーム=サンとかアベレージ=サンとか。私、スカウト部門の人ともナカヨシだからね」

「そ、そうですか……ソニックブーム=サンから!?」

「……あんなコワイ人と、よくお話できますね……?」

「アハハ! 適当にあしらわれてるだけだけどね!」

 二人の驚愕の視線を集めて、シャープキラーは朗らかに笑った。そして机に身を乗り出す。

「で、その遺跡ってどこにあるの? 岡山県?」

「え、エット……ね、ネオサイタマの郊外、だったかな……」

「ア、そうなの? 意外と近いな……向こうでディスグレイス=サンと合流できるかなーってちょっと思ってたのに」

「そうだったらお前は絶対に連れて行きませんからね」

 キールバックは言い切った。『お姉さま』がこの女子高生めいたニンジャになんらかの不安を覚えているのは、側から見ていてもよくわかる。

 ……とはいえ、カラテがあるのは事実。ここは最前線で働いてもらい、なにかあったらこいつを犠牲にして撤退しよう。キールバックは状況判断し、この胡乱な女子高生ニンジャがついてくる事実を無理やり受け入れたのだった。


◆さらに挑戦者のエントリーな◆
ニンジャ名:シャープキラー
【カラテ】:5(+1)      【体力】:6/6
【ニューロン】:5(-1)       【精神力】:4/4
【ワザマエ】:4(+1)       【脚力】:4
【ジツ】:1(カラテミサイル)   【万札】:9
近接攻撃ダイス:7
遠隔攻撃ダイス:5
回避ダイス:7

【特筆事項】:
【名声】:3

【装備品】:
カタナ
▶︎ヒキャク
▷ブースターカラテ・ユニット

【スキル】:
○キラーマシーン教育

【カシマシ・ニンジャズ・ゴー・ダウン・エンシェント・トレイル】その1おわり。その2へ続く

 



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