忍殺TRPGソロシナリオ【アンハッピー・リバースデイ】

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はニンジャスレイヤーTRPG……ダイスを振ってニンジャを作り、ダイスを振ってそのニンジャの生死を左右する……そうしたゲーム用に作成したシナリオとなります。ついでに言うと一人用だ。

 あなたのニンジャがどの組織に所属しているか……このソロシナリオではそんなことは問わない。だが一つだけ言っておく。このソロシナリオは基本的に作られたばかりのニンジャが対象だ。「エエーッ!? 俺はすでにいくつものシナリオをクリアしたニンジャを生み出したのに!」という方。そのニンジャを使っても構わないが、作中でそのニンジャが死ぬような目に遭ったという事実が付与される。それでもよければ挑戦させるといい。

 さて、注意書きはこの辺にして早速やってみよう。よろしくおねがいします。


◇ニンジャメイクタイムな◇


■ドーモ。モーターリッポータイです。あなたのニンジャ生活を全力でサポートしますよ。え? 心なし私が黄金に輝いて見える? そのようなこともあるかもしれませんね■
■そんな錯覚の話はさておいて、ここではこのシナリオに挑戦するニンジャを作成していきますよ。そんなに身構えなくても大丈夫! 五、六回ほどダイスを振るだけで、あなたはネオサイタマにあなただけのニンジャを解き放つことができるんです
■もちろん、既存のニンジャを使って挑戦するという方はこの章を飛ばしていただいて構いません。ではやってみましょう■
■まず6面ダイスを一回振ってください。その出目があなたのニンジャの【カラテ】値となります。【カラテ】はドアノブをねじり開けたり、敵に暴力を振るうときに使用します■
■メモはとりましたか? ではもう一回6面ダイスを振ってみましょう。その出目があなたのニンジャの【ニューロン】値になります。【ニューロン】はドアノブの電子ロックをハッキングしたり、敵の気配を察知したりするときに使用します。ジツを発動させるときにも関係してきますね■
■どんどんいきますよ。6面ダイスをさらに一回振ってください。そこで出た値があなたのニンジャの【ワザマエ】値になります。【ワザマエ】はドアノブをピッキングしたり、スリケンを投げたりするときに使います■
■次は少しだけ処理が複雑です。6面ダイスを振ってください。その出目から3を引いた数があなたのニンジャの【ジツ】値となります。出目が0以下になった場合、あなたのニンジャはジツを持ちません■
■ニンジャの【ジツ】値が1以上となった場合、どのようなジツを得たかをダイスで判定してみましょう。以下のような感じです。もし基本ルールブックを持っている方は、そちらを参照してもいいですね■
1: ムテキ・アティテュード…回避失敗時に発動可能。ダメージを低減する
2: ヘンゲヨーカイ・ジツ…攻撃前に発動可能。一時的に【カラテ】が強くなる
3: カトン・ジツ…攻撃時に発動可能。敵を炎で焼き尽くしまとめてダメージを与える
4: カラテミサイル…攻撃時に発動可能。【ジツ】値+1個の光弾を飛ばす
5: カナシバリ・ジツ…攻撃時に発動可能。相手の【精神力】にダメージを与え、動きを封じる
6: 上記の好きなジツを一つ選べる
■さて、以下のステータスはこれまでダイスで決めたステータスを基準に設定されます■
【体力】…【カラテ】と同値
【精神力】…【ニューロン】と同値
【脚力】…【カラテ】か【ワザマエ】、高いほうの値を半分にしたもの
■さて、これであなただけのニンジャが生まれました! ですが、もう一味足してみたいと思いませんか? 6面ダイスをもう一回振って、あなたのニンジャに鋼鉄の義肢や生体兵器を備え付けることができます! 出目次第で以下の装備を得られますよ■
1: テッコ…サイバネ腕。【カラテ】判定時にダイス+1個、回避ダイス+1個
2: ヒキャク…サイバネ脚。【脚力】+1、回避ダイス+1個
3: サイバネアイ…義眼。【ワザマエ】判定時にダイス+2個
4: 生体LAN端子…UNIXと自分を直結する器官。【ニューロン】判定時にダイス+1個、ハッキング時にさらに+2個
5: クロームハート…サイバネ心臓。【体力】+1、【精神力】+1
6: バイオサイバネ…片腕か頭部を異形へ置換。近接攻撃時のダメージ+1
■本来はこれらのサイバネをつける場合、カネがかかるんですけど……今回はローンのことは考えなくて結構です。だって……まあ、シナリオを始めればわかりますよ!■
■あと本来は最初から持っているアイテムもダイスで決められるんですが、これは今回省略します。なぜって? すぐわかりますよ■
■もしあなたがニンジャスレイヤーTRPGのプラグイン環境がいつでも読めるようでしたら、ダイスを二つ振ってこのニンジャの生い立ちを決めてもいいかもしれませんね。では長々とシツレイしました。早速ネオサイタマへダイブしていきましょう!■



◇オープニング◇


 ……身体中を襲う痛みを伴った違和感に、お前は呻き声を漏らしつつ覚醒した。なんとか立ち上がったお前は周囲を見やる。そこはサップーケイな小部屋。唯一の出入り口と思しきドアも硬く施錠されている。

 それにしても違和感がひどい。お前は自分の身体を見下ろし……愕然とする。纏うニンジャ装束はボロボロで、そこから覗く肌は死体めいて青ざめるか、あるいは腐敗の兆候を見せているではないか

 不意にお前のニューロンに電撃が走る。お前は理解した。理解してしまった。自分はなぜか死に……ゾンビーとして蘇ったのだと

 なぜこんなことになってしまったのか? 記憶が曖昧だ。いずれにせよ、こんな小部屋に閉じ込められてはいられない! お前は脱出を決意した!

■そういうわけです。あなたのニンジャに以下の特性を追加してください。これは概要ですので、プラグイン環境を参照できる方はジェノサイド=サンのデータを確認するとよいでしょう。■
『ゾンビーニンジャ』:
・【体力】を【カラテ】x2、もしくは【カラテ】+10で算出する
・【脚力】が-1される
・自身の行う【回避】難易度が+1される

『ネクロカラテ』
近接攻撃がダメージ1ではなくダメージ2となる


◇本編な◇


 ……お前はまず、棺めいて冷たくサップーケイな小部屋から脱出しなければならない。重い身体を引きずって扉の前に立ったお前はカラテを構えた。自分は腐ってもニンジャだ。ドアくらい【カラテ】でどうとでもできる!
【カラテ】判定……すなわち【カラテ】の値と同数のダイスを振って判定せよ。出目が4以上のダイスが一つでもあれば成功だ。失敗した場合、お前の【体力】は1減少する。だが一度失敗したからと言って諦めてはいけない。そもそもこの扉を破らなければ帰る家もないのだ! 成功するか【体力】が0になるまで判定を続けること
なお、【カラテ】に自信のないニンジャもいるだろう。どうしても成功したい場合は【精神力】を1消費して判定に自動成功することもできる。これは今後の判定にも適用可能だ。だがしかし【精神力】が0の場合出目6を要求される判定には自動成功が使えない。気をつけたまえ。
(判定に成功した場合)
「イヤーッ!」お前は渾身のカラテを放ち、閉ざされたドアを叩き壊すことに成功した! もはや長居は無用だ。この小部屋を出て外を目指したまえ!
(【体力】が0になるまで失敗し続けた場合)
「アバーッ……」ドアが想像よりも強固だったか、あるいはお前の腐った肉体では十全のカラテを発揮できなかったか。いずれにせよお前は力尽き、ドアの前に突っ伏すようにして倒れた。そのまま死体めいて動かなくなったお前が起き上がれるのはいつの日になるだろう。闇はなにも答えてはくれない(ゲームオーバー、キャラロスト)


◇◆◇◆◇


お前が小部屋の先の廊下に足を踏み出したそのときだ! ブガーブガーブガー! 廊下中を赤い光が満たし、ブザー音がけたたましく鳴り響く! 「ザッケンナコラー!」そして廊下の先から駆け込んできたのは一体のクローンヤクザ! その手にはカタナ!
 この緊迫した状況下、モータルであれば立ち竦みそのまま死を迎えていたかもしれない。しかしお前はニンジャで、かつ死んだ後だ。スリケンを投げてクローンヤクザを倒したまえ! つまり【ワザマエ】判定の時間だ。目標出目は4以上


(成功した場合)
アバーッ!?」クローンヤクザの額にスリケンが突き刺さる! 仰向けに倒れたクローンヤクザは当然死亡! その死骸を漁ったお前は、クロスカタナのエンブレムを発見する。つまり、この施設はソウカイヤのものか? なぜそんなところに自分が……? 疑問を深めつつも、お前はあてもなく歩き始めた。
 ……が、立ち去る前にお前は【万札】2かクローンヤクザの持っていたカタナのどちらかを選ぶことができる。脱出した後に役立つかもしれない。回収しておくとよい。


(失敗した場合)
スッゾオラー!」ナムサン! スリケンは空を切り、クローンヤクザがカタナを大上段に構える! 自分のもっとも高いステータスと同じ数のダイスを振って【回避】判定せよ。目標出目は4以上……なのだが、今のお前は動きの鈍いゾンビーだ。回避のためには目標出目5以上のダイスが求められる! 失敗すれば【体力】2を失ってしまうぞ。もし【体力】が0以下となれば爆発四散(キャラロスト)だ。
 回避に成功、あるいは耐え切ったお前は反撃のカラテでクローンヤクザを殺した。これ以上時間を費やしてはいられない。行くべきところもわからないが、とにかく移動せよ(アイテム入手なし)。


◆◇◆◇◆


 「アバー」「アケテー」「カーラッテ! カラテ! カーラッテ!」延々と続く廊下の左右、鉄の扉の向こうからは不明瞭な声が陰々と響く。お前と同じようにゾンビーになった連中だろうか? だが、ブザー音とレッドアラートは相変わらず続いている。関わっている暇はない!
 やがてお前が辿り着いたのは、研究室と思しき広い部屋。「アイエエエ!? 脱走被検体!? 脱走被検体ナンデ!?」お前を見て腰を抜かし失禁したのは白衣の男。その口ぶりからして自分になにが起こったのかを知っているらしい。
「アイエエエ! ここはリー先生の研究所です! ゾンビーニンジャ製造の実験を……アイエエエ!」少し脅してやると、研究員はあっさりと教えてくれた。お前は思案する。少なくともこんなところに用はない。
さて、お前は……
選択肢1:研究員にインタビューし、出口を教えてもらう(やや邪悪な行い)
選択肢2:近くのUNIXをハッキングし、研究所の構造図を把握する


(選択肢1を選んだ場合)
 まず【カラテ】判定せよ。「アバーッ!? 教える! 教えます! タスケテーッ!」その出目に関わらず、研究員は出口までの道筋を教えてくれる。【DKK】2を獲得し先に進め。
 ちなみに、さきの【カラテ】判定で出目6のダイスを二つ以上出した場合「アババババーッ!?」サツバツ! お前は力加減を間違えてしまい研究員をバラバラにしてしまった! まあ道はわかったからよしとしよう。残虐ボーナスとして【万札】3と、追加の【DKK】3を獲得し先に進め。


(選択肢2)
 お前は震える研究員をよそに近くにあったUNIXへと近づいた。【ニューロン】判定しハッキングに挑戦せよ。出目4以上のダイスが一つでもあれば成功だ。お前はUNIXから引き出した研究所の構造図を頭に入れ、出口へと向かう。
 失敗してしまった場合、シュバウン! UNIXに仕込まれた毒矢トラップが発動! 【回避】判定せよ。目標出目は(お前がゾンビーであることも加味して)6 ! 失敗すれば【体力】1減少。ゾンビーであったため、毒が効かなかったのが不幸中の幸いか。
 UNIXは強制シャットダウンされ、もはやハッキングは続行不可能。ではどうするか? ……お前は震える研究員に目を向けた(選択肢1へ)


◇◆◇◆◇


 ブガーブガーブガー……虚しく鳴り響くブザー音の中、お前はついに研究所とやらの出口に辿り着いた。もはや自由は目と鼻の先。だがお前は足を止める。前方より静かな足取りで近づいてくる影を認めたからだ。
 それは……ナムサン。藍色ニンジャ装束の女ニンジャである。胸元にはクロスカタナの意匠。口元に乱雑に巻きつけたマフラーが、外から入り込んだ風を受けてバサバサとはためく。その両腕に引っさげているのは、鈍く輝く二振りのデバ・ナイフ!
 お前はアイサツを繰り出す。いかなる状況であれ、ニンジャにとってアイサツは絶対。お前のような腐りかけた身体を引きずって自由を求めるゾンビーニンジャであってもだ。女はわずかに頭を動かし「ショートセンテンス」とだけ告げた。それがアイサツであると理解できたときには、その姿はお前のワン・インチ距離にある……!
 「キリステ!」デバ・ナイフによる三連撃! お前は【回避】判定をする必要がある……が、敵のカラテ一撃に対してそれぞれ判定をしなければならない。つまりどうなるか? お前は【回避】判定に用いるダイスを三分割し、三回判定を行わなくてはならない! 目標出目は(ゾンビー補正も加味して)5以上! 自動成功も可能だが、判定のうち一回だけ、かつ回避ダイスを一つ消費する必要がある。一回失敗するごとにお前は【体力】2を失う。つまり、最大で【体力】6を削り取られる可能性があるのだ。
 回避に成功、あるいは生き残った場合「イヤーッ!」お前はどうにかしてショートセンテンスから距離を取ることに成功! 追撃しようとしたショートセンテンスは「イヒヒィーッ! なんたるニンジャ反射神経! ショートセンテンス=サンのカラテを捌くとは!」天井スピーカーから聞こえた男の声に動きを止めた。


◇エンディングな◇


 「リー先生」ぼそりと呟いたその言葉は、どうやら自分へ声の主を紹介したものらしい。「ショートセンテンス=サンに処分してもらおうとしたが……これは研究価値がありそうだネェ! 君! すぐ研究所に戻りなさい! 私の方からソウカイヤへ紹介しよう!」狂喜したような声がスピーカーから躍る。
 お前はショートセンテンスを睨む。彼女はだらりと両腕を下げ、暗い目でお前を凝視していた。油断ならぬニンジャであることは先の切り結びで知れている。もし『リー先生』とやらの提案を蹴れば、ショートセンテンスは即座に襲いかかってくるだろう。お前は……
選択肢1:リー先生に従う
選択肢2:リー先生の言葉を突っぱねる


(選択肢1を選んだ場合)
 お前は不承不承に首を縦に振った。今の自分では、眼前のニンジャに爆発四散させられかねないらことを理解したからだ!「なんたる従順! 安心したまえ! 私はお前の味方だ。優しい父親だと思って身を任せたまえ!」 リー先生の喜びの声にうんざりしながら、お前は研究所へと踵を返した。(終わり)
リザルト:
・所属が【ソウカイヤ】に
・【万札】10と【余暇】2を獲得



(選択肢2を選んだ場合)
 
お前は勢いよく首を横に振った。理由は単純。気に食わなかったからだ!「なんと! しかしその反抗心すら高く評価したい! なにが望み」「キリステ!」なおも説得を続けようとしたリー先生の言葉を遮り、ショートセンテンスが斬りかかる!
 お前はまた敵の三連続攻撃を避ける必要がある……すなわちダイスを三分割しての【回避】判定だ。失敗すれば一撃ごとに【体力】2を失う!
 回避に成功、あるいは耐え切った場合もショートセンテンスはなおも攻撃を続けようと「アーッ! 待ちたまえショートセンテンス=サン! それも大事な研究材料なのだ! わかれ!」したところを、リー先生の悲鳴じみた言葉で静止させられる。今だ! 「イヤーッ!」お前は連続側転し、外へと飛び出した。
 ……吹きつける重金属酸性雨の中、お前はデスパレートに駆ける。向かうはかつての家か、それとも馴染みのバーか。自由こそ得たがネオサイタマでの暮らしは厳しくなるだろう。なんと呪われた再生の日であることか! (終わり)
リザルト:
・所属が【フリーランス】に
・【カラテ】【ニューロン】【ワザマエ】のうち好きな能力を+1。かつ、事前に『成長の壁1』を突破可能



◇後書きな◇


 いかがだっただろうか。ゾンビーニンジャを作り出せるなんかがあってもいいなあと思って作ってみたソロシナリオである。皆様のニンジャコレクションに新たな一人を加えられれば幸いだ。

 そしてショートセンテンス。彼女の能力などもそのうち公開してみたい。ハードコアが好みのプレイヤーさんは、実際に公開されたショートセンテンスとイクサをする……という楽しみ方ができるようになるかもだ。

 ではここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました! 気が向いたらまたやるよ!


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