忍殺TRPGソロシナリオ【ベビーシッター・オブ・ザ・デッド】その1

◇前置きな◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかなが遊んだソロシナリオの結果をテキストカラテナイズして誕生したソロリプレイ記事となります。気軽に読めるよ。

 今回挑戦させていただくのは、海中劣=サンの【ニンジャの育児】です。

 単なる育児ならニンジャの出番はないわけで、さてどうなるか。

 今回の挑戦者はこいつ。最近いろいろドタバタさせているディスグレイスです。

ニンジャ名:ディスグレイス
【カラテ】:5
【ニューロン】:5
【ワザマエ】:4
【ジツ】:3(カナシバリ・ジツ)
【体力】:6
【精神力】:4
【脚力】:3
【万札】:15
【名声】:5
【余暇】:5
持ち物など:
オーガニック・スシ
▲バイオサイバネ腕(片腕)
▽吸血バイオ器官
○信心深い

 引っ越し手伝いもあり余暇がたまっているのですが、また性懲りもなく無休でミッションを受けた彼女。果たして……?

 まあやってみよう。よろしくお願いします。



◇オープニングな◇

 焦りすぎた。新たな仕事場に向かうディスグレイスがまず考えたのはそれだった。改造ミコー装束に身を包む彼女のバストは豊満である。

 ニュービー研修を引き受けた流れでなぜか参加することとなったノミカイ。珍しく対面で上司たるソニックブームと話すいい機会。そこで彼女は……飲み慣れぬサケをいくらか入れていたせいもあるが……半ば冗談でミッションのおねだりなどをしてしまったのだ(同席していた同僚には大いに引かれた)。

 飲みの席である。一笑に付されて終わりだと思っていた。が、ソニックブームはサケに飲まれないタイプだったらしい。なんとかアジトに帰り着いて眠っていた矢先、ディスグレイスはミッション受領を知らせるアラームに叩き起こされた。

 そして向かうよう命じられたのが……

「オヤ? ようやく来たようだネェ!」

「ドーモ。ディスグレイスです……」

 稀代のニンジャサイエンス研究者、リー・アラキの秘密ラボなのだった。こちらを見る目はギラギラと精力的な輝きを湛え、その白衣には薬品や血液の染みがそこかしこについている。

 ソウカイヤ首領、ラオモト・カンにその才能を買われた彼はソウカイニンジャの間でも有名だ。絶対に関わりたくない人物として。

「では付いてきたまえ!」

 大仰な身振りで急かされ、ディスグレイスは渋々と後に続く。「ヤメロー! ヤメロー! ヤメ……アバッ、アババババーッ!?」どこかから響いてきた悲鳴と絶叫に、心の底からげんなりとする。ここにおいてはモータルもニンジャに優劣などない。どちらも必要不可欠な……実験材料である。

 やがて辿り着いたのは、大きな鉄扉だ。

「では、とっととこの中に入ってくれたまえ!」

 そう指示され、ディスグレイスはたじろぎを隠せない。先ほどの悲鳴はここの奥から聞こえてはこなかったか? もっとも、リー先生はそのあたりを気にかけるつもりは毛頭なさそうだった。ぎょろりと彼女へ振り返る。

「……ン? 何をモタモタしてるのかネェ? 君をゾンビーにするつもりなど無い! 手間をかけさせないでほしい!」

 そして勢い良く両指を鳴らす! すると!「ドッソイ!」どこからともなく現れたのは完全防護服を着込んだスモトリ作業員だ。彼はのそのそとディスグレイスに近づき、その背を押そうと

「ああ、ハイハイ。行きます。行きますよ。……ハァ……」

 さすがに荒っぽく投げ込まれるのは勘弁だった。頭が痛い。これから待ち受ける仕事だけではなく、昨日摂取したアルカホールによるものだ。彼女は下戸なのである。

 バタム! 背後で勢いよく扉が閉まり、周囲が暗闇に包まれる。思わずカラテ警戒した彼女の横顔を、壁埋め込み式モニターが照らし出した。

『イヒヒーッ! ではその更に奥にある扉に入りなさい!』

 扉。奥を見やる。ディスグレイスが放り込まれたのは短い廊下めいた空間であり、背後の扉とリー先生の顔が映るモニターを除けば『奥にある扉』以外に目新しいものはない。金庫めいてバルブで施錠された、物々しい扉以外は。

 さて、いったいどんなろくでもない仕事が待ち受けていることやら。彼女は左腕一つで……右袖は虚しく揺れるだけだ。隻腕なのである………バルブを回転させ、ゆっくりと扉を押し開けた。

 そして目に飛び込んできた風景に目を丸くした。

「……これは?」

 小さな滑り台。天井から下がる動物のモビール。ぬいぐるみや数字の描かれたカラフルな積み木の詰まった大きなおもちゃ箱。先ほどまでの忌まわしい空間とは程遠い……まるで子供部屋だ。いや、秘密ラボにこのような部屋があること自体が忌まわしいのかもしれない。

「あら」

 ディスグレイスはふと部屋の奥にあるベッドを見やる。それと同時、やはり壁に埋め込まれていたモニターが点灯し、嬉しげなリー先生の顔を映し出した。

『イヒヒーッ! 気付いたようだネェ! それは敵ではない! アイサツをしなさい!』

「アイサツ?」

 思わず問い返していた。つまり知的存在か。あのベッドの影に隠れているなにかは? ディスグレイスはゆっくりとベッドに接近、カラテを構えつつもその裏を覗き込み……絶句した。

「……、、………!………。。ムゲ……?……ロェ…。。、、……」

 ナ……ナムアミダブツ! ”それ”を果たしてどう形容すべきだろうか? ディスグレイスとしては”それ”がなにやら子供サイズの血の塊としか映らない。手足があるようにも見えぬ。目と思しき二つの小さな丸い穴がこちらを見、口と思しき小さな丸い穴からなにかわけのわからぬ呻きを発している。

 口の端を引きつらせつつも、彼女はなんとかアイサツを繰り出した。

「ド……ドーモ。はじめまして。ディスグレイスです」

「…ニギ……。…。…。、、。……リゥ……」

 わずかに”それ”が身震いした。オジギのつもりなのだろうか? アイサツとしても聞き取れないし、わずかに聞き取れた部分からも意味があるとは思えない。

 モニターの向こうでリー先生が狂笑した。

『イヒヒーッ! では今回君のするべきことを教えよう! それを育てたまえ!』

「育て……ハイ?」

『それは私の作ったゾンビーニンジャの1つだ! だが如何せん未熟でネェー! 廃棄するか別の実験材料に回そうかと思っていたが……ある閃きが我が脳髄にむしゃぶりついた! すなわち、ニンジャに育てさせてはどうかとネェ―!』

「は、はぁ……結構なアイデアですね。はい」

 ディスグレイスは曖昧に首肯しつつ、足元ににじりよってきた”それ”を見下ろす。育てる。これを。……なにをどうしろと?

『君のニンジャ教育力の高さはソニックブーム=サンから聞いている! そこには当分生活できるだけの食料やなんならUNIXなどの娯楽もあるからネェー! 君のカラテを、知識を! 存分にそれに与えてくれたまえ! では頼んだネェー!』

「えっ、泊まり込みなんですか!?」

 ブツン! ディスグレイスの叫びは暗転したモニターに遮られリー先生には届かない。情けなく伸ばされたディスグレイスの手が、やがて力なく下された。

「……、、、、……ソォゾ………。。……、、。、、。。…。……ァァ……」

 ノイズめいた囁きと異臭が届く。ディスグレイスはうんざりとしながら、足元からこちらを見上げる”それ”を見た。何を言っているかもわからないし、そもそもこれが成長するものなのかすら定かではない。それでもやるしかないのだ。


◇観察な◇

 不明瞭な呻きを漏らすその血塊じみたゾンビーニンジャを爪先で少しつつきつつ、ディスグレイスは目を細める。ひとまずはこのゾンビーニンジャの現在の能力を見定める必要があろう。されるがままにゼリーめいて震える”それ”を、彼女は凝視した。

初期ステータス判定な
(三面ダイスがないため、六面ダイスの出目を半分にしています)

ニンジャ名:???
【カラテ】1d6/2 → 5/2 → 3
【ニューロン】1d6/2 → 3/2 → 2
【ワザマエ】1d6/2 → 5/2 → 3
【体力】6
【精神力】2
【脚力】1
『ネクロカラテ』
『ゾンビーニンジャ』

「……存外、悪くはないのかもしれませんが」

「……? ァム……! キ……」

「しかし……なにから手をつけたものやら」

 屈みこんで”それ”を覗き込みつつ、ディスグレイスは思案する。果たしてこの手足すらないニンジャに、まず何を叩き込んだものか。


【ベビーシッター・オブ・ザ・デッド】その1終わり。その2へ続く。





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