忍殺TRPGソロリプレイ【ウェルカム! アンディザイアード・ゲスト】その3

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はとあるソロシナリオをプレイした記録をテキストカラテナイズした読み物……いわゆるリプレイというやつだ。難しいことは考えなくても気楽に読めるよ。

 そして続き物でもある! 前回はこれだ。

 前回に引き続き、今回もまたイクサのパート。今度の主役はディスグレイスだ。果たしてどうなるか。早速行ってみよう。よろしくおねがいします。



◇廊下にて◇


 ミコー装束の女とミニ丈ワンピースの女が腕を組み廊下を歩く。傍から見れば親密な友人……下衆な勘ぐりを得意とするものであればネンゴロのアトモスフィアを感じ取ったやも知れぬ。

 だがこの場にそうした第三者は存在しない。いたとしても、方々から聞こえる悲鳴や銃声にも動じないことのほうを訝しむだろう。さもありなん。この二人はニンジャである。さらに言うのであれば、この喧騒から主人を守るのが彼女らの仕事なのだ。

「……屋内からの襲撃者なし。キールバック=サンとロイコクロリディウム=サンが撃退したということでしょうか」

「そうねェ……あの銃声からしてェ、入り口から来たのはクローンヤクザだろうからァ……ニンジャが二人もいれば充分じゃないィ?」

 ワンピース丈の女はミコー装束の女の耳元に囁く。間延びした、甘ったるい声。その目はサングラスの奥に隠れ、真意を見せない。ミコー装束の女はくすぐったそうに微笑し……すぐにそれを獰猛な笑みに切り替えた。

「まったく……わたくしとしてはしばらくこうしていてもいいのですけれど」

「わたしもォ。あなたとはナカヨシになれそうだものォ、ねぇえ、ディスグレイス=サン?」

「わたくしも同感ですよ、プリンセスビー=サン。イヤーッ!」

 KRAAASH! ミコー装束の女……ディスグレイスはしなだれかかるプリンセスビーの腰を抱き後方跳躍! それと同時、彼女らのいた横手の壁が破砕! 外から打ち込まれた何かが反対側の壁にめり込み、これも破壊!

 ディスグレイスは目を細める。唐突に破壊を撒き散らしたのは鎖に繋がれた鉄球だ。鎖の反対側は、瓦礫を蹴り崩しエントリーしたアンブッシュ者の脚に繋がれている。

 それはブレザー制服に上履きという、この場にそぐわぬ服装の症状であった。気怠げな眼差しに込められた敵意と、足だけでヨーヨーめいて鉄球を引き戻すその力。間違いなくニンジャである!

「ドーモ。可愛らしいお嬢さん。ディスグレイスです」「プリンセスビーですゥ」

「ドーモ。トリプルファイブです」

 ぞんざいにオジギを終えたトリプルファイブは、足元の鉄球を蹴り上げ、サッカーボールめいてリフティングする。そして眉間にしわを寄せディスグレイスらを睨んだ。

「ねぇ、アンタらもしかして護衛? ヂオハイ殺すのに邪魔なんだけど」

「それは仕方ありませんね。あなたのような乱暴者の邪魔をするのが今のわたくしの仕事ですもの……」

 微笑して答えるディスグレイスは緩やかにカラテを構える。その背に隠れるように、プリンセスビーがぴたりと寄り添った。トリプルファイブが目を細める。

「ま、なんでもいいや。アンタたちもまとめて殺せば済む話だもの」

「やだァ、コワイィ」

 わざとらしい怯えたような声。背中に押しつけられる柔らかな感覚に、ディスグレイスは苦笑した。このアトモスフィアでこのようなふざけた真似ができるという事実そのものが、彼女の実力を示している。

 ディスグレイスは囁いた。

選択肢①:プリンセスビーと協力して戦う

「プリンセスビー=サン。お手伝いしていただいても?」

「ウフ、オッケーよォ。一発くらいならァ、庇ってあげるわァ」

「そのお世話にはなりたくないですね……可能であれば生捕りにします」

「あらァ……そういうことォ? ホシガリなのねェ」

 プリンセスビーが身を離し、ディスグレイスの後方でカラテを構えた。KRASH! トリプルファイブがリフティングしていた鉄球を床に落とし、足を乗せる。

「……二人まとめてグチャグチャにぶっ潰す。ジゴクで好きなだけネンゴロしてなよ」

「ウフフ! さて、お手並み拝見……」

 ディスグレイスは微笑する。その瞳が妖しく輝いた。

ニンジャ名:ディスグレイス
【カラテ】:6(+1)
【ニューロン】:5
【ワザマエ】:4
【ジツ】:4(カナシバリ・ジツ)
【体力】:12
【精神力】:5 (-1)
【脚力】:4
【万札】:8
【名声】:5
【余暇】:2
持ち物など:
『★カナシバリ・マスタリー』
『★★★半神的存在』
『★★★不滅』
『ニンジャソウルの闇:ソウルの悲鳴』
オーガニック・スシ
▲バイオサイバネ腕(片腕)
▽吸血バイオ器官
○信心深い
◆プリンセスビー(種別:ニンジャ)	
カラテ      3		体力	4
ニューロン    8		精神力	8		
ワザマエ     2		脚力	2		
ジツ      4		万札	20	
◇ジツ(ムテキ・アティチュードLV3)
◇装備や特記事項					
【装備品】:タクティカルブランドワンピース:
      タクティカルニンジャスーツ読み替え:【体力】+1。
【スキル】:『時間差』『マルチターゲット』
      ★ムテキ・メイル
      ◉翻弄
◆トリプルファイブ(種別:ニンジャ)	
カラテ      8		体力	8
ニューロン    3		精神力	3		
ワザマエ     3		脚力	4		
ジツ      1		万札	3	
◇ジツ(近接武器系のソウル)
近接攻撃ダイス+1
◇装備や特記事項					
【アイテム】:鎖付き鉄球:『連続攻撃−1』、『ダメージ3』、『攻撃基本難易度:HARD』、
       『射撃基本難易度:HARD』、『連続側転難易度+2』『戦闘スタイル:強攻撃』、
       『戦闘スタイル:強攻撃選択時、近接攻撃ダイス+1』
       『近接攻撃リーチ+1』:敵も『近接攻撃リーチ+1』を持っていない限り、
                   敵はこの攻撃に対して『カウンターカラテ』を行えない。
【スキル】:◉邪悪なサディスト
      ○指名手配犯
プリンセスビー→ディスグレイス→トリプルファイブの順で行動


◇第二のイクサな◇


イヤーッ!」

 まず口火を切ったのはプリンセスビー! 床、天井、壁、すべてを駆使した立体的駆動でトリプルファイブに迫る!「イヤーッ!」繰り出されたチョップ突きをクロス腕で防御!

「あらァ、すっごォいィ」

 蠱惑的な笑みを残し、プリンセスビーが反動離脱。彼女に向けて鉄球を蹴り出そうとしたトリプルファイブはしかし、入れ違いに歩み寄るミコーの女に気づく。

「「イヤーッ!」」

 カラテシャウトが交錯! トリプルファイブは咄嗟に鉄球を蹴り上げ、ディスグレイスの瞳から放たれた妖光から視線を守った。「そういうジツかよ……ウッザ」毒づく彼女の前。鉄球がさらに高く上がる。間近にディスグレイスの姿。

 トリプルファイブは息を飲む。ワン・インチ距離に潜り込まれたから? 否! ディスグレイスの瞳の光がいまだ消えていないことを悟ったからだ!

「イヤーッ!」「ンアーッ!?」

 妖光が視界を満たし、ニューロンを揺さぶる! ディスグレイスは微笑した。元々得意とするカナシバリ・ジツ。リー先生の施術によるものか、すこぶる調子がよい。

 だがトリプルファイブもさるもの、歯を食いしばって耐え切った彼女は「離……れろ! イヤーッ!」垂直跳躍! ちょうど落下前だった鉄球にオーバーヘッドキック!

「おっと! イヤーッ!」

 頭部狙いの一撃に、ディスグレイスは右袖奥からバイオ触手を放出! 横合いを叩きつけて軌道を逸らす! KRAAASH! 叩きつけられた鉄球が廊下にめりこみ周囲の床を陥没させた!

「ウッフフ……コワイ、コワイ。とんだじゃじゃ馬……」

「……決めた。まずはアンタのふざけた顔を吹っ飛ばす」

 ジャラジャラジャラ! 鉄球が後方に飛んだトリプルファイブに引きずられ、舞い戻る!

『1ターン目』
プリンセスビー『◉翻弄』発動、【精神力】8→7
1, 1, 2, 2, 3, 4, 5, 6 成功(3)
トリプルファイブ回避
1, 1, 3, 4 成功
ディスグレイス『★カナシバリ・マスタリー』
2, 3, 3, 4, 5, 5, 6, 6, 6 成功
トリプルファイブ回避
2, 6, 6 回避
ディスグレイス『★カナシバリ・ジツ』発動
【精神力】4 → 3
1, 1, 2, 2, 2, 3, 3, 5, 6
トリプルファイブ回避
3 失敗! 【精神力】3→2
2, 3, 6 付随効果は回避
トリプルファイブ攻撃
4, 5, 6, 6, 6 サツバツ!
ディスグレイス回避
1. 2, 4, 4, 4, 5, 6 成功

「よ・そ・見・はァ……」

 耳元で囁かれる甘ったるい声。トリプルファイブは総毛立つ。いつのまにか迫っている。背後に。死が。

「ダ・メ・よォ? イヤーッ!」

「イヤーッ!」

 放たれたボトルカットネックチョップをトリプルファイブはブリッジ回避! 「イヤーッ!」「イヤーッ!」反撃の鉄球はあえなく宙を切る。プリンセスビーは既にディスグレイスの背後に側転移動済み!

「オミゴト」

「ドーモォ。次はアナタがいいところ見せてねェ」

「努力しますよ。イヤーッ!」

 ディスグレイスの目が光を放ち、ブリッジ体勢から復帰したトリプルファイブを狙う! 「ウッザ! イヤーッ!」KRASH! 鉄球を叩きつけて、即席の埃バリケード! 回避!

 ディスグレイスは微笑を消さない。目を細め、焦点を調整し……「イヤーッ!」収束させたカナシバリの光を放つ! 「イヤーッ!」煙の向こう、ちょうど狙いを定めていたトリプルファイブは危うくこれを回避!

「………アアアアアッ! イヤーッ!」

 苛立ちの叫びとともに放たれた鉄球を、ディスグレイスはわずかに横に動いて回避。質量が顔のすぐ横を唸りを上げて通過し、その髪を何本か散らした。

「ウッ……ゼェー! ンだよ、アンタ! ふざけやがってよォー!」

「あらあら。元気ですねえ」

「殺す! 絶対に殺す!」

 悪罵を撒き散らすトリプルファイブを、ディスグレイスは微笑して眺めた。愛しいものを見るような面持ちで。

『2ターン目』
プリンセスビー『◉翻弄』発動、【精神力】7→6
1, 2, 3, 3, 4, 5, 6, 6 サツバツ!
トリプルファイブ回避
1, 2, 3, 5, 5
ディスグレイス『★カナシバリ・マスタリー』
1, 1, 1, 2, 2, 3, 4, 5, 6 成功
トリプルファイブ回避
1, 6 
ディスグレイス『★カナシバリ・ジツ』発動
1, 1, 3, 4, 4, 5, 5, 5, 6 成功
トリプルファイブ回避
5
トリプルファイブ攻撃
3, 3, 5, 6, 6 サツバツ!
ディスグレイス回避
1, 2, 3, 4, 5, 5, 6

 そのワン・インチ距離、音も立てずにプリンセスビーが着地。怒りに顔を歪めるトリプルファイブへ笑いかけた。

「あらァ、そんな顔しちゃダメよォ。せっかくカワイイ顔してるのにィ……イヤーッ!」

「ウザッタイ! イヤーッ!」

 両目を狙ったサミングを、トリプルファイブは強引に振り払う! 微笑だけを残して去っていくプリンセスビーに鉄球を「イヤーッ!」「アアアッ! イヤーッ!」放てない! 強烈なカナシバリの光を防ぐため、片腕で目を覆う!

 その腕が、優しく払いのけられた。

「……エッ?」

 トリプルファイブは一瞬怒りを忘れた。ミコーの女がすぐそこにいる。妖しげなカナシバリの光を瞳に湛え……「イヤーッ!」「ンアーッ!?」視界を、そしてニューロンを焼かれ、トリプルファイブの身体から力が抜けた。ディスグレイスは微笑し、彼女を優しく抱きとめる。

『3ターン目』
プリンセスビー『◉翻弄』発動、【精神力】6→5
1, 2, 2, 2, 3, 5, 6, 6 サツバツ!
トリプルファイブ回避
1, 1, 4, 5, 5
ディスグレイス『★カナシバリ・マスタリー』
1, 1, 2, 2, 5, 6, 6, 6, 6 成功
トリプルファイブ回避
3, 5 
ディスグレイス『★カナシバリ・ジツ』発動
1, 2, 2, 3, 3, 5, 6, 6, 6 成功
トリプルファイブ回避
3 回避失敗 【精神力】2 → 1
2, 2, 4 付随効果発生:カナシバリ
トリプルファイブは『鎖付き鉄球』により攻撃基本難易度HARD、連続側転難易度+2
そのためカナシバリ状態では攻撃不能・逃亡不能と判断。イクサ終了とする

「チョージョー。今のはうまくいきました」

「あらァ……本当に生け捕りにしちゃうなんてねェ」

 後方で驚きと呆れの混じった声。ディスグレイスはプリンセスビーに構うことなく、トリプルファイブの顔を上げさせ「ムグッ!?」右袖から伸ばしたバイオ触手の一本をその口内に潜り込ませた。

「ンーッ!? ンンーッ! ンンーッ!」

「口内に仕込みの毒薬なし。組織に所属しているわけではなさそうですね」

「フリーランスの子かしらァ?」

「少し身体を『洗って』みますね」

 横から覗き込むプリンセスビーに、ディスグレイスは満面の笑みを向けた。そこから異様な寒気を覚えたトリプルファイブは身体を強張らせ「ンンーッ!?」突如、服のそこかしこから潜り込む異様な感覚に身悶えする!

「ウフ、カワイソォ」

 プリンセスビーは遠慮のない様子でトリプルファイブを眺める。すなわち、ディスグレイスのバイオ触手に全身を弄られている少女をだ。プライドの高い者であれば死を選んでもおかしくないほどの屈辱だろう。だが、口内に侵入されたバイオ触手のためにそれもできない。ナムアミダブツ!

「……爆発物の類もなし。フリーランスでしょうね」

 少女の柔肌を存分に楽しみつつ、ディスグレイスは結論付けた。そしてキッと睨みつけるトリプルファイブの視線に気づき、笑みを深くする。

「ウフフ! コワイ、コワイ……けれど、わたくしはあなたのような子が好きですよ。負けん気が強くて、じゃじゃ馬で……ええ、そうした子を『手懐け』られると思うと、ゾクゾクしてしまいます」

「気持ちはわからないでもないけどォ……護衛重点よォ?」

「もちろんわかっていますとも。なので手っ取り早く『キレイ』にします」

 トリプルファイブの瞳に一瞬、恐怖の色が浮かぶ。ディスグレイスはその様を愉しみ、顔を近づけた。そして……「イヤーッ!」「ンンーッ!?」

 眩い光が一瞬廊下を照らす。ディスグレイスはバイオ触手を引き抜き、離れる。後に残されたのはブレザー制服を乱された無力な少女。光のない瞳で見返してくる少女を、ディスグレイスは手招きした。少女はおとなしく、足枷と化した鎖付き鉄球を引きずって命令に従うのみ。

「では戻りましょう。手土産もできましたし」

「ウフ……アナタ、素敵だったわよォ」

 プリンセスビーが不意にディスグレイスの頬にくちづけをする。悪戯っぽい笑みを残して座敷に向かう彼女の後を、ディスグレイスはしめやかに追った。その背中を、抵抗の意思を綺麗に消されたトリプルファイブが続く。鉄球を引きずる重い音だけが辺りに残された。


【ウェルカム! アンディザイアード・ゲスト】その3おわり。その4へ続く

 


 

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