忍殺TRPGソロリプレイ【ハウス・オブ・イーヴィル・スピリッツ】#6

◇前置き◇

 ドーモ。しかなです。当記事はしかながニンジャスレイヤーTRPGのシナリオを遊んだ結果をもとにしたテキストカラテ……いわゆるリプレイとなります。気楽に読めるよ。

 そして続き物でもある。前回はこちら。

 フーリンカザンを得たムシメヅルを激闘の末に下したディスグレイスたち。あとは地下一階の探索だ。よろしくおねがいします。



◇救出、そして撤収◇

画像1

 地下の薄暗い寝室、ベッドの上。遠くに聞こえるカラテシャウトにトコダ・ユタンポは震えていた。

 騒霊騒ぎをなんとか解決し、屋敷の売却でローンを返済できてホッとしたのも束の間。また怪奇現象がぶり返し、屋敷を買い取った客が毎日のようにクレームを入れてくる。追い詰められて向かってみればまたニンジャ!

 ムシメヅルと名乗ったそのニンジャは、少なくともポルダーガイストよりは暴力的ではなかった。不幸中の幸いだ。もっとも幸運には程遠い。この地と相性がいいことを一方的に捲し立てたこの女ニンジャは、おぞましい数の虫とともに屋敷の権利を自分に譲渡するよう迫ってきたのだ。

 数日が経ち、いよいよニューロンが限界を迎えそうになったそのとき……ムシメヅルが急いだ様子でドージョーへと向かっていった。そしてあのカラテシャウトだ。彼女が何かと闘っていることは明白。誰かはわからないが……ニンジャと互角にやりあえるのはニンジャしかいないだろう。

 やがて訪れる沈黙。小さく床を軋ませてやってくる気配を感じたり、ユタンポは身を縮こまらせた。

「……アイエッ!?」

 ゆっくりとドアを開けて現れたのは……ムシメヅルである。ユタンポは身を引いた。彼女にではない。彼女に巻きつくタコめいた触手に対してだ!

 彼女に続いて入室したミコー装束の女が、金色に輝く瞳でユタンポを見やる。そしてうっすらと微笑した。

「あぁ、貴女がユタンポ=サン? ドーモ。はじめまして。ディスグレイスです」

「あ、アイエエエ……!」

 返事の代わりに漏れたのは悲鳴だ。闇に慣れたユタンポの目は、ムシメヅルを縛る触手がミコーの右袖から伸びている事実を目撃してしまったのである。彼女は失禁しかけた。

「ニンジャ……またニンジャなの……!? ナンデ……!」

「別に貴女をどうこうするつもりはありませんよ。むしろわたくしは貴女の味方です。この屋敷の怪奇現象を解決するためにやってきたのですから」

「エ……?」

「そしてその用も先ほど済みました。この子、いただいていきますがよろしいですね?」

「な、なあディスグレイス=サン。私は全面的に貴女に降伏したんだぞ? そろそろ離してくれてもよくはないかな?」

 必死に笑みを浮かべ、ムシメヅル。ディスグレイスはそれに満面の笑みを返した。

「嫌です」

「ナンデ!?」

「だってずいぶんと手こずらされましたもの。少しくらい役得があってもいいじゃありませんか」

「仕事と両立できる趣味をお持ちとは、よいことですな」

 飛び込んできた第三の声に、ユタンポはおそるおそる振り向いた。いつの間にか、ミコーの隣に老紳士めいたニンジャが立っている。

「ドーモ。エスコートです。ディスグレイス=サン、撤収の準備をすべきかと。そろそろマッポが駆けつける頃合いです」

「……まあ、ジゴクマサカー=サンとも激しくやり合いましたからね。仕方ありません。ところでユタンポ=サン」

「は、ハイ!?」

 金の瞳に一瞥され、ユタンポは身を跳ねさせる。ディスグレイスはややシリアスな面持ちで言った。

「この屋敷、立地的にもニンジャに狙われやすい土地であるようです。対策をするべきかと思います」

「対策って……そ、そんなこと言われても!」

「そこでこれを。困ったことがあったら、こちらに電話してくださいな。お安く解決して差し上げます」

 ごく自然に渡されたメモの切れ端には、電話番号と思しき数字の羅列。問い返すよりも早く、ニンジャたちはぞろぞろと部屋を後にしようとしていた。ふとミコーが止まり、振り返る。

「そうそう。二階に貴女のご友人が来ています。リクヨ=サン、だったかしら」

「エッ……」

「心配していたようですから、顔を見せに行ってあげなさい。それでは」

 呆然とするユタンポを置いて、ニンジャたちは今度こそ去っていった。訪れたときと同様、唐突に。

■ちゃっかりトレジャー回収■
トロ粉末
【万札】11→16
誰かのオカルト書物(マキモノ×2相当)
ユタンポ=サンの財布はそっとしておきました




◇エピローグ、あるいはリザルト◇

 ……数日後! ツチノコ・ストリート、グレアリング・オロチ・ヤクザクラン事務所応接間!

「テメェにいいニュースと悪いニュースがある。どっちから聞きたい?」

「……ええと……では、その。いいニュースから」

 ぶらりと訪れたソニックブームは、開口一番そう言い放った。ディスグレイスは面食らいつつも、おずおずと返す。

 ソニックブームは眉間にシワを寄せたまま、淡々と言葉を続けた。

「ミノタ=サンの件だが、無事に話がついた。怪奇現象の張本人をテメェが引っ張ってこれたのが効いたな。二度と怪奇現象なんぞ起こらねェ……納得させるのも楽だったぜ。手間賃を口座に振り込んでおいたから確認しとけ」

「は、はぁ……アリガトゴザイマス」

■リザルトな■
【万札】16→56、両名の【名声】+1
【余暇】4日獲得

 その知らせを聞いてもディスグレイスは戦々恐々としてきた。あからさまにソニックブームの機嫌が悪いからだ。ごくりと唾を飲んでから、彼女は口を開く。

「で、その……悪いニュースとは」

「あの爺さん、ここまでやらせておいて結局あの屋敷を手放すんだとよ」

「はぁ!?」

 反射的に頓狂な声を上げたディスグレイスは慌てて己の口を塞ぐ。そのシツレイを気にした様子もなく、ソニックブームが深く溜息をつく。

「二度もニンジャに襲われる屋敷など呪われているに違いない。だから手を引かせてもらおうと思うのです……だとよ。ッたく、無駄な時間使わせやがるぜ」

「ど、同感ですけれど……悪いニュースというのはそれで終わりですか?」

「俺様にとっちゃまだ続く。テメェにとってどうかは知らねえがな。ミノタ=サン、よりによってあの屋敷をユウジョウ価格で売りつけてきやがったんだよ」

 うんざりとした様子で呟くソニックブーム。ディスグレイスはあんぐりと口を開けた。泣く子も黙る『あの』スカウト部門筆頭に、そこまで図々しい真似ができるとは。

 ソニックブームが仕切り直すようにソファへ座り直す。

「で、ここからが本題だ。テメェにスカウト成功報酬のボーナスが出てる。ミノタ=サンのユウジョウ価格を賄えるくらいのな」

「……ええと」

「テメェもジツには熱入れてるクチだろ。だいたいヤクザクランのオヤブンがいつまでもアパートの一室に住み込みってのも締まらねェだろうが。エエッ?」

 おおよそ話は飲み込めた。ディスグレイスは睨み殺すようなソニックブームの視線から目を逸らし……小さく頷いてみせるのだった。

■追加リザルトな■
アジト『幽霊屋敷』獲得

 

【ハウス・オブ・イーヴィル・スピリッツ】終わり



◇後書き◇

 そんなわけで、(元)幽霊屋敷をアジトとして獲得することとしました。当初はスカウトしたニンジャの数で万札ボーナスを出そうとも思いましたが、アジト獲得するならやりすぎになりそうなのでなしになった。

 ポルダーガイスト爆発四散後という前提があったため、スウォーム・ルームとムシメヅルという改変を用意して挑んだシナリオとなった。ムシメヅルはそれなりにニュービー用のボスとして仕上げられたのではないかと思う。スウォームの処理が少し面倒なのがたまに傷だけど。

 ともあれ、ここまで読んでくださった皆様方。ありがとうございました! 気が向いたらまたやるよ!

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