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墓地の「名刺受け」が刺さりまくる

10月、友人たちと谷中の朝倉彫塑館へ行った帰り
ついでに谷中霊園の牧野富太郎のお墓を見に行ったときの事だった。

「日本の植物学の父」立派な墓石だ。


その横に見慣れない石柱が

ポストみたい

よく見ると「御名刺受(?)」と彫ってある。
あ、これ名刺受けか!

モノリスみたいだ!
背面、中には石ころ。

背面に回ってみると四角い穴が開いている。
スリットから入れた名刺はここに溜まるのか。
蓋は朽ちて無くなっている?もう使われることは無くなったのだろうか…。
名刺を交換する機会自体が減ったからな。

名刺、無くなりはしないけど社会的な意味合いは薄れていって
今後は年賀状のような位置に切り替わるのだろうな。
この「名刺受け」も墓地という半永久的に残る場所において
存在意味を失ってゆくのは想像に容易い。

普及とともに発生し、
衰退とともに影でひっそりと存在価値が無くなるもの。
私はそういうものに愛着を持ってしまう性質なのである。

12月24日
再び谷中霊園へやってきた。

考現学の調査目的ではなく、ただ鑑賞目的で。
なかなか趣深いモノがたくさんあったのだ。


1、形を鑑賞する

オーソドックスな「モノリスタイプ」
比較的新しいもの(20~30年前)でよく見られるもの。
よく休み時間を共にするクラスメイトのような存在。


丸っこくてかわいいし黒の大理石がカッコイイ。
学年差を越えて先輩後輩から信頼されるスポーツマンタイプ。


モダンデザイン。
本人は真面目なんだけど、周りから変わりもの扱いされるタイプ。
飼育委員。


ひさしタイプ。温厚で笑顔が絶えない。幼馴染キャラ。


名刺受界の人気者、屋根型。
存在感もあるし安心する。高嶺の花ヒロイン。
スタイルが良い。


2、個性を鑑賞する

「やられた!」って思ったよ。
遊び心があって好きだ。


緩やかなアールがモダンでセクシー。


鬼太郎の妖怪ポストみたいな可愛らしさ。


屋根盛りすぎてつい口元が緩む。
屋根型はバラエティーに富んでいる。


ゴールドライタンを彷彿させる変形ロボ型。
あのおもちゃ再販してくれないかなー。


重々しさを排除したレトロポップなデザイン。
今の流行りに時間差で乗ってる。


よく見ると5角形だ!
シンプルだからこそこだわりを感じる。


何をモチーフにしたかわからないけど最高に好き!
素晴らしい!オンリーワン賞!


3、ロケーションを鑑賞する

外柵一体型のオーソドックスなデザイン。
密集地でよくみられるタイプ。


外柵一体型。
前面に堂々と出て、名刺が入るのをずっと待ち続けているのだ……


外柵一体型で特殊なタイプ!
思い切ったねぇ!


巻き込み型。気持ちの良い収まり!


墓石のスペースにひっそりと控えめ。
前の会社で飼ってたネコを思い出した。
冬になるとPCとPCの間に挟まって暖を取ってたんだよな。


一見普通の外柵一体型に見えるが…↓
立地の形に合わせて菱形になってるの!


4、時代を鑑賞する

設置された年代を特定したかったのだけれど、
代々使用されている墓地は特定が困難。
墓石に刻まれた年代や途中で設置するのが難しい外柵型、
「受刺名」のように右から彫られているものから推測するしかない…
こちらの名刺受けは昭和18年には作られていたようだ。
こちらは明治35年から昭和41年と幅はあるが
かなり古いもの(恐らく戦前)だと思われる。


年代を特定できるものは見つけられなかったけれどとても古い時代のようだ。
裏は風化が始まっていた。
朽ちて撤去されたものもあるのだろうな…。


消えゆく名刺受けへの感傷に浸りながら歩いていると
真新しい名刺受けを見つけて興奮する!
しかもめちゃくちゃカッコいいぞ!!
名刺受けのバトンが未来につながった!
後ろ姿も凛々しい。
こんな蓋だったのね。


いやー楽しかった!
しかし谷中墓地は広いから半分も回れなかったんじゃないかな。
名刺受け鑑賞は楽しいのでオススメですよ~。
※観賞するときは静かに、お墓参りの邪魔にならないようにしましょう。


帰るときに見つけた名刺受け。
塀から顔を出して通りをのぞいているようだ。
本日はお邪魔しました。

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