666 北大路翼作品集立夏前後

野焼きする炎の中の田力男
春の闇カイジの心の声響く
白バイを包んでしまふ雪柳
ひそひそ話卒業式の挨拶に
力自慢酔うて集まる花の下
ふらここを漕ぐやう国が墜ちてゆく
水温む村に伝はる力石
月朧力石徹のダイエット
酢海鼠の歯ごたへに足す梅の味
卒業証書つけた折り目は戻らない
新任がやたら眼鏡に触れてゐる
スロットで指折ることも聖五月
野遊びや野球用語に死の多し
遠足のいただきますが馬鹿でかい
ふらここの中年が死を選ぶまで
ニラが歯に挟まりやすき御徒町
花びらと餌を幾度も間違へる
また飲んでしまひましたと花に詫ぶ
花の虚を啄みて鳥一鳴きす
椿までこぼれてライトアップの灯
鯉があらはれここにも花があると言ふ
ボートみな出払つてゐる花の昼
文学は憂鬱な酒花曇
夜桜よ僕は永遠を信じる
マニキュアを塗りてしばらく春惜しむ
春の虹頂上同士で呼び合へり
アンテナの立派な空家五月来る
風薫る小島太の鷲つ鼻
手の甲の消えない傷や菖蒲の香
いただいた筍がまだ玄関に
山彦にピー音入れても間に合はず

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