自分史的なクリッピング史料ー文化欄ー

文化欄の不思議。特に日経の最終面がなぜ文化欄なのだろうか?とずっと思っていた。最近では日経はデータ・ドリブンの記事掲載が多いけど、経済専門誌的な新聞に文化欄は必要なのだろうか?とずっと思っている。勿論、名物連載である『私の履歴書』、『交友抄』などは経済界で活躍された人物氏、交友関係などが時には興味深くかつ簡単に読めることにはありがたさを感じていて、特にこの面の記事はほぼもれなくクリッピングしている。最近では教養主義が流行したこともあり、アートの紹介連載もここ数年よく読んでいる。アートは見るだけでなく、読むことによってその深みが染みてくるような気がする。

2006年12月12日 日経 文化 缶つぶし 狙え世界新
空き缶を踏みつぶして小ささを競うゲーム考案 阿部年雄(会社役員)

冒頭で阿部さんは、飲み干した缶ビールの空き缶を踏みつぶすことの世界新記録を狙っているという意気込みから始まる。我が家では分別ゴミの回収で空き缶を捨てる時には、時々原始的な缶つぶし機を使ってぺっしゃんこにして大量に捨てる時がある。平たくなってゴミ袋には結構な量がさばける。

さてそんな記録は阿部さんが考えた「缶つぶし」という単純なゲームで競うい合う。地面に置いたアルミ缶を踏みつぶして計測し、数値化したつぶれ具合を競うもの。ここまで読むだけでも、何と馬鹿らしい(ちょっと阿部さんには申し訳ないけど、スミマセン!)と少々嘲笑がもれる。

きっかけは1996年。シーカヤックの仲間とキャンプなどしていると飲んだ空き缶を持ち帰らなければならないので、これはかさばらないようにつぶした方がいいということで、これをゲームにすることがひらめいたとある。今でいえば何となくSDGs的なゲームだと思うけど、やはりアホらしい(度々スミマセン!)。

そしてこの発案されたゲームを1996年10月、三重県大紀町でのイベントでお披露目をした。そしてそのゲストに招いたジョージ・ミーガンさん(英国人冒険家)のアドバイスにより、何と国際CANつぶし協会まで創設してしまった。阿部さんはその会長を務めていらっしゃる(当時)と。Webで検索すると、2021年までの活動の様子がFBにあげられているけど、今でも活動は継続中なのだろうか?・・・。

ゲームは一辺90㎝の正方形の合板に、一辺50㎝の正三角形を描いた公式リングを使うとの説明。正三角形の底辺の両端を置いてさらにその頂点に空き缶を置いてゲームを行うとある。厳格(?)なルール・ゲーム作法。記録計測方法は、つぶした缶の高さと幅を測り、高さのミリ数の2倍に幅のミリ数を加えた数がポイントになって少ない方が勝ちとのこと。

ゼロにはならないけど、限りなくゼロに近づくとも言えないし、どのあたりが限界なのだろうかとふと考える。イメージはちょうちんを畳む要領でと。

さらに踏む足に力を入れようとするとバランスが崩れて転んでしまう人も出るという。この動作だけを想像するだけでも少々笑える。時折、缶をぺこぺことさせてつぶしやすくする人もいるらしいが、大抵失敗するらしい。雑念が入るからだと分析されている。

練習を重ねて機会を狙う人もいるというから、ご家庭での練習の様子は家人にどのような評価を受けているのだろうか。競技用の缶はなるべく同質となるように、硬さなどをみてなるべく揃えているとのこと。

缶の収集は、ドライブインレストラン協会の協力によるものというから、何か大きな仕掛けで不要な缶(ゴミ?)を集めることにも力が入っている。そして計測器。専用のものを開発。高級セラミック(缶を傷つけないように)まで施した厳格な計測器だ。現在(当時)では新たな電子式の計測器(高さと幅を自動で測れる)も開発中とあるから用意周到感があふれ出ている。

阿部さんは自分にも少々あきれ気味ながらも開きなおって、気持ちは真剣そのもの。環境にやさしいゲームとして認知もされこのゲームは、各地に支部(関東、近畿、中部、四国)も置くことにもなりそれは国内にとどまらず米国にも支部が誕生したとある。アメリカ人ってこういう素朴でちょっとアホらしいゲームが好きそうだなぁと私見。

その後は日韓国境線上で船の中でも実施されたという記述もあり、ここまでするのか?という所感。船酔いでゲームどころではなかったと。

記録の方は当然回を進めるに従って、数ポイントの差の争いに突入しているらしい。理論上は90ポイント台まで縮められるようだけど、滋賀県の消防士さんが112ポイントの世界記録を出して以来、しばらくそれを破る記録はなかったという。ところが阿部さん自身が世界新記録(107ポイント)を達成してしまった。

500ミリ缶で練習していたのが奏功したのか?などとおっしゃっているが、これもアホらしい分析に聞こえてしまう(本当にゴメンナサイ!)。言い出しっぺの自分が記録保持者ではばつが悪いので、その後初めての単独開催のイベントを計画していると結ばれている。

こうした素の一般人からの趣味の類の記事など、何か本当にニッチの世界が紹介されているだけでも、文化的というか、民俗的というか、でも実は何かとても大事な日常や文化伝承など、その内容を読むと一瞬面白い。その内容の吟味は読者それぞれでいいと思う。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?