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涙の数

涙の数を数えようと思ったけど
数え方がわからなくてやめた
背中にいつも穴が空いてるような気がして
風がびゅーびゅーと吹き抜ける

吹き抜けるけど胸には風は吹き抜けない
だとしたら背中を吹き抜けた風は
どこへいったんだろう
と考えたりもしたけど

そもそも風も背中の穴もとんだ勘違いで
そのとんだ勘違いを教えてくれた医者は
早くに死んだ
これはある友達が言ってたんだけど

とんだ勘違いというものが
実は勘違いではなくて
背中の穴も吹き抜ける風も
まんざらでもないらしい

背中の軋む音と
不確かな空気中のわずかな振動を
生ぬるい受験勉強の残骸と
緑色の部屋の中

カナリヤみたいに動く米粒と
百回の記念日
とりわけ重要なことでもないけど
今まで頑張ってきた結果の続き

よく頑張ってきたね
いつもありがとうございます
お尋ねしたいのですが
南向きの横顔と

冷んやりとした鉄道模型
パナマ運河の言葉の響き
カミソリの刃と横に流れる蒸気
極めて重要な会議

ふとした瞬間に
瞬間に音は消えていて
感覚を無くした後に初めて
自分のことを好きになれるはず

涙の数を数えようと思ったけど
数え方がわからなくてやめた
背中にいつも穴が空いてるような気がして
風がびゅーびゅーと吹き抜ける


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