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2021.12.29 作り物解説したり今年の総括したり

鴫野エイカーです。画像はANYCOLOR株式会社さんからのお歳暮です。

ありがたいことにお仕事が増えてまいりました。特に年末は映像やっててよかった案件がいくつもありまして、クライアントご本人のみならず私までいい景色を見せてもらっています。何度でも言えることですが、数年前の私には考えられないような景色だ。


というわけで、11月後半~12月の制作物を解説します。どのくらい語っていいかはよく分からないので程々に。

※解説はどれも「映像を作った人の視点で解釈した内容」となっています。特定個人や団体の見方を代弁するものではないことをご了承ください。


【セプテンバーさん(来栖夏芽様Cover)】

マ~~~~~~ジで難産だった…
0から1を生み出すのにけっこうな時間をかけた映像です。個人的に思い入れのあるバンドの曲なのでちょっとだけ理想が高かったのかもしれない。というかこの曲の構成が特殊過ぎるんや…と、プロトタイプを考えては捨て、作っては捨てを繰り返していました。

まず音源を聴いたとき、その声の聴きやすさにビックリしまして。声を聴いてて全然疲れないんです。そのうえイラストと声と音の透明感が凄く、これはどうにかして前に出したいとモーションの充実感よりも質感重視という方向性で作ることにしました。青色の質感(特にサビの空の色)はこだわったポイントです。

結果としてこの質感重視メソッドは大ハマりしたようで。公開後、来栖さんが振り返り配信で「(過去私が作った映像に)キラキラ系のイメージがあったのでお願いしました」と仰られてまして。この方向にしてよかったと同時に、自分の得意な方向性について改めて考えるきっかけになりました。

余談ですが、音周り担当の快晴Pさんとは10月に公開された鬼KYOKANの時も間接的にご一緒させていただいたので「また貴方か!」となりました。


【スピラーレ(エリー・コニファー様Cover)】

3Dお披露目配信の最初の方でご使用いただきました。Tansaさんとの共同ディレクションで、私は主に後半の螺旋部分を作ったり映像全体の微調整をしました。去年作った「笑顔の花言葉」もそうだったのですが、大事なところでお任せいただけるといつも以上にやる気が出ます。出さなきゃ失礼では?

この映像はARIAが好きなTansaさんが張り切っていたのを覚えています。3D周りは本当にお世話になりました。私が担当していた後半部分で言うとサムネイルの選定にはこだわりました。選定基準は「時系列と配信内容に偏りが出ないように選ぶ」で、時折妙なサムネイルが出ていたのはそれも含めまんべんなく選んだからです。
映像前半の馬車に乗るリスナーさんが見ている景色とは対照的に、これまで見てきたエリーさんの軌跡を思い返しているというコンセプトでドリーミーな雰囲気にしています。リスナーさんの想像の世界は人によって形が違うので、「サムネイルを額縁で囲む」などの具体的なモチーフはあえて持たせずサムネイルのみを表示しています。

配信やイベントを通してエリーさんにはこれまで何度か救われているのですが、そのお返しができたような気分です。


【未来銀河と汽笛のメロディー】

やったー!!!!オリジナル曲だーー!!!!やったー!!!!!

ということで、やりたかったオリジナル曲の映像制作です。本当にありがとう。オリ曲は今年頭の「Summer is Over」以来です。

カバー曲とオリジナル曲の何が違うかって、曲のビジュアルイメージが既にあるかどうかなんですよね。オリジナル曲は一番最初のビジュアルイメージを決めていいので(たいていイラストレーターさんの作画に寄せますが)、既にイメージが存在するカバー曲とは訳が違うのです。仕事の充実感も責任感もオリジナル曲の方がはるかに強い。なので、「オリジナル曲を任せられる」というのはひとつの実力の指標だと捉えています(個人の見解です)。

この映像はイラストの内容とその順番に強い意味があるので、イラストの情報が最大限活きるつくりにしました。映像というより絵本を作っている感覚が近いかも。

そして何より嬉しかったのが、制作タイミングがちょうど星やキラキラの演出に対して自信を持ち始めていたタイミングだったということ。もとより夜や星が好きで、「セプテンバーさん」での一件と合わせて自分の得意な方向性が固まったイメージがあります。


【CGS2021】

去年に続き今年もやりました。やったのは以下2曲。

【Calc. / that】

最初の「initializing...」がやりたかった。
LEDモニターのまわりは真っ暗なので、黒バックの中に文字だけを映して「あの日見たサムネが動いて浮かんでいる…!」という古来からのファンを刺激する演出をやりたかった。結果バッチリハマってくれてテンションがガン上がりしました。

【初めての恋が終わる時 / Choucho】

雰囲気重視の正統派BGVです。色を作り込んだので、会場のLEDでちゃんと発色してくれるか心配でした。この曲は冒頭のテンポが遅く、後から速くなっていくのですがそのテンポが遅いところでは舞台照明パワーに任せあえて何も表示しない部分を設けてみました。結果として非常に締まった印象になってくれたと思います。

どちらの映像も「演者より目立ち過ぎない」をコンセプトにしたので、映像の動きの激しさは他の曲と比べてかなり控えめです。LEDをステージ空間の一部と捉えて、ステージ全体を映したときの見え方を意識して作りました。また「配信ライブだから映像全編はどう頑張っても映らんやろ」という思想があったので、映像全体を見ないと伝わらないような表現は省き1シーンごとの見え方に重点を置きました。蓋を開けてみれば他の制作者さんみんなバチバチのMV仕立てにされていて謎の場違い感を感じたりしましたが。

それまでVTuberさんとのお仕事が多かったのですが、界隈が変わるとこんなにも空気感が違うのかと改めて感じました。ただこの仕事に関してはもう少しちゃんと作れたな、もう少し気の利いた演出を考えられたな、という思いが強いです。ぶっちゃけ満足とは程遠い、反省点の多かった制作です。


【『人外教室の人間嫌い教師』告知PV】


KADOKAWA MF文庫Jが贈る新文芸小説

人外教室の人間嫌い教師 
ヒトマ先生、私たちに人間を教えてくれますか……? 
著:来栖夏芽/イラスト:泉彩

2022年2月25日発売!!!

カドカワストア等の各販売店にて予約受付中!!
よろしくお願いします!!!


来栖夏芽さんの作家デビュー告知PVを作らせていただきました。
いろいろ嬉しいお仕事。来栖さんがKADOKAWAから作家デビューという事実のデカさがまず純粋に嬉しいし、その第一報となる映像を私に任せてくださったのがまた嬉しい。

音楽関係以外で映像作るのはいつ振りだろうか。そもそも作ったことがあるのか。いずれにせよ、こういうちゃんとした人や会社が関わる仕事を任せていただけるのはクリエイター冥利に尽きます。またやらせてください。
撮影効果モリモリだったりOpticalFlares芸だったりとやってること自体はこれまでとあまり変わらないのですが、レイアウトの方に力を入れた意識があります。特に今回は音楽映像ではなく伝えたいことの99%が視覚情報なので「何に注目してほしいか」をいつも以上に考えました。映像のところどころに出てくる◇や〇のオブジェクトには視線誘導を促す意図があったりします。

そしてこちらも音周りは快晴Pさん&東山智有さん。また貴方か!と言いたいところですが、セプテンバーさんの映像は音からイメージを沸かせた箇所が多いのでこのPVも同じメンバーで作れて嬉しい気持ちのほうが強いです。


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あと、新しいポートフォリオサイトを作りました。

以前使ってたtumblrがめちゃめちゃ見づらかったのと、編集が面倒だったので新しく作り直しました。ちゃんと規則的にサムネイルが並んでいるだけではるかに見やすくなります。あとせっかくなので自分で自分の紹介文書いてアー写も撮りました。生意気な奴め。


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ついでに今年の総括もしちゃいますか。

今年は引っ越し等いろいろあってメリハリのありまくる一年でした。
これまでやったことのないようないい仕事をたくさんさせてもらった反面、インターネットで病んだ故の明確な停滞があったという印象です。今だから言えますが本当に映像を辞めようとしていました。
ただ、病んだ分成長はしているなというのは感じます。イロドリミドリ第4話みたいな界隈外のお仕事だったり人外教室PVみたいなやったことのないタイプの仕事も任せてくださっているのがその証拠だと思います。間違いなく、映像のボキャブラリーは去年に比べて増していると思う。

あと、「ちゃんとしたものを作る」という意識はかなり強くなったと思います。映像以前にコンテンツそのものの価値が高い仕事をさせてもらったことにより「人を動かすコンテンツを作っている」という責任意識が強くなりまして。視聴者だけでなく関係者も含めてです。そんな中で生半可な仕事をするのは失礼、恥ずかしくないようなものを作ろうという気持ちは強くなりました。
去年よりも映像をやっていくことに対する疑問が無くなっているというか、ここで腐るわけにはいかないというのが今の気持ちです。


以上、2021年の鴫野からお送りしました。よいお年を。



©Kurusu Natsume 2022 ©2022 ANYCOLOR, Inc/株式会社KADOKAWA刊

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