航空チケットの値段を書き換えたはなし

20年以上前は、海外行きの往復航空チケットを買うと、現地で帰路のリコンファーム(予約の再確認)が必要でした。帰国何日か前に、現地の航空会社のオフィスに出向くわけです。

当時二十歳過ぎの僕は1ヶ月のインド旅行の終盤に、このリコンファームに出向きました。通常、数分で終わるものなのですが、このときはやけに時間がかかり、僕のチケットが何人もの手に渡り、ついにはサリーを着た女性スタッフから、こう言われました。

「このチケットは、どこで買いました? まあ、それはいいでしょう。料金がまちがっているから、あと○百ドル払ってください」

このエアラインではすべてのチケットに金額が手書きされており、彼女はそこをポンポンと指でたたいています。

本当のまちがいなのか、いいがかりなのかはわかりませんが、とにかくも、そのとき僕の残金は千円(日本円にして)を切っていたので、払えるわけもなく、抗議したとしても、こういう場合、主任みたいな中年男性がでてきて「じゃあ、半額で手を打とう」と言ってくるのがオチです。

しかし、インド旅行も慣れてくると、まったくあせりもしなくなります。僕は無言で立ち去ると、知人のインド人に電話して対策を尋ねました。

「ノープロブレム」

どんなときでも、彼はこう言ってくれます。まさに魔法の言葉。

その彼が「そのチケットを買った旅行代理店が怪しいね。でも、安心しろ、君はこうしたらいいだ」と言ってきたのは、「フィック」…、チケットの値段をボールペンで書きかえる、というものでした。もちろん、自分で!!

まさか…とは思いつつも、これがすんなり成功でした。しかも、窓口担当はさっきと同じ女性スタッフ。

「なあ、ジャパンよ(←安易ながら、当時インドでの僕の愛称)。 今も未来も、イージーに書きかえられるのだよ。ノープロブレム」

このチケット書き換えは、今思えば当時のインドでしか通用しない危険な行為?ではありますが、インド人の彼の言い放った「ノープロブレム」は、あれから数十年近くたった今も、僕の座右の名であったりするのです。

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