N. benthamianaの葉を用いた外来遺伝子の一過的発現法
タンパク質の植物細胞内局在を早く解析したい、あるタンパク質Aと別のタンパク質Bの植物細胞内での結合、複合体の形成および局在を解析したい場合、N. benthamianaの葉を用いたAgrobacterium infiltration法が便利です(オリジナルの方法;Voinnet et al., 2003, 例:Hanano and Goto., 2011)。
ここでは、その方法について紹介します。
<試薬>
Infiltration medium:
10 mM MES
10 mL MgCl2(MgSO4でも可)
NaOHでpH 5.6に合わせる。
直前に、0.15 mM acetosyringone stock(150 mg/mL in DMF, -4 ºC or -20 ºC保存)を加える(final, 150-300 nM )
0.5 M stock MES-NaOH (pH 5.6) と 1M MgCl2を作っておくとよい。
0.5 M stock MES-NaOH (pH 5.6) を400 µL
1M MgCl2を200 µL
0.15 mM acetosyringone stock 40 µL
/20 mL Water
<Agrobacterium>
目的のコンストラクトを導入したアグロバクテリウム
例)細胞内局在を解析する場合、35Sプロモーターの下流にGFP融合タンパク質、相互作用を解析する場合、N末YFP融合タンパク質A、C末YFP融合タンパク質Bをコードするコンストラクトをそれぞれ別々に導入したアグロバクテリウム。
導入遺伝子のサイレンシングを防ぐために、サイレンシング抑制因子であるp19をもつアグロバクテリウム。
Hanano の論文では、35S::TFL1-cYFPコンストラクトを導入した菌、35S::nYFP-FDコンストラクトを導入した菌、p19コンストラクトを導入した菌を同時にinfiltrationしました。
<方法>
1. 目的のコンストラクトを持ったAgrobacteriumを適切な抗生物質を含むYEBもしくはLBプレート上で生育させます。
LBA4404は2-3日、EHA105やGV3101は1-2日でコロニーが出現します。
2. 実験の1日前に、2 mLの適切な抗生物質を含むYEB液体培地にAgrobacteriumを植菌します。
(少し多めに掻き取って植え継ぐ)
3. 3-4週間生育した2つの大きな若い葉を持つN. benthamiana植物を選び、それらに水をスプレーして気孔を開かせます。
(このプロセスは省略可)
4. 1晩培養したagrobacteriumを4,500 rpm, 10 min, RTで集菌します。
5. 沈殿を1 mLのinfiltration mediumに溶かします
6. OD600を測定して、OD = 1.0まで希釈します。
7. 4-5 h RTで培養します。
8. agrobacteriumをODが0.1になるように希釈します。
この段階でp19を1:1で混合します。
2つのコンストラクトを同時に導入したい場合には、2種類のアグロバクテリウムを培養し、1:1に混合したmixを作製します。そのmixにさらにp19を1:1で加えて、インフィルトレーションに使用します。
9. 1 mLのプラスティックシリンジで葉の裏側からAgrobacterium溶液を注入します。
10. 葉の内部に感染液が広がっていく様子が見えたらOK
11. 同じ感染を少なくとも2枚の葉で行います。
12. 2-5日後に蛍光顕微鏡で観察します。
estradiol誘導型プロモーターの下流に蛍光タンパク質をコードする遺伝子を融合してN. benthamianaの葉に導入した例
<参考文献>
Arabidopsis TERMINAL FLOWER 1 is involved in the regulation of flowering time and inflorescence development through transcription repression
Hanano and Goto., Plant Cell (2011) 23, 3172-3184
Agrobacterium infiltration of N. benthamiana for transient gene expression
Voinnet et al., Plant J (2003) 33, 949-956 (この論文はRetractされていますが、Agrobacterium infiltration法は使えます)
追記 2024年9月
あくまで私たちのクローンの場合ですが、p19なしでも発現を観察することはできました。
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