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【短編小説】「最後の手紙」
最後の手紙
【第1幕】 或る、春の日
或る、春の日
木埜誠也 著
1
気ぜわしい春が来た。春は出会いと別れが交錯する。入学式、卒業式、入社式。薄ピンク色の桜がセレモニーに華を添えている。しかしながら今年の祝典は、昨年から続くコロナ禍の影響で、時間も規模も縮小されていることが多いようだ。私が勤める会社でも今年度の入社式はオンラインで実施された。
会社では政府の「働き方改革」の大号令のもと
創作、という名のもとに
東京渋谷
精鋭のデザイナー連中が
17つもの公共トイレを創作した
誰もが快適に
それが日本のおもてなし
そう謳うデザイナーの「公共」に
ホームレスの方々への眼差しはない
排除アートという
グロテスクなコンセプトアート
さり気なく
創作、という名のもとに