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青山塾の話③-2年目、イラストレーション科!

前置き


前回に引き続き青山塾のことを振り返っていきます。
 
2年目はイラストレーション科です。
なぜイラスト科にしたかというと木内先生が担任だからです。
青山塾に入る前から2年目はイラスト科かなと思っていました。
1年通って特に考えが変わることもありませんでした。
寧ろもっと木内先生の講評を受けたいと思いイラスト科へ行きたいという気持ちが高まっていきました。

イラスト科の特徴は課題講評の授業が多いことです。
授業の約半分が課題講評の授業です。つまり2週間で課題をやって講評されたら次の課題が発表されて……という感じです。
とても大変ですがやりがいはあります。
残念なのは出せなかった課題が多かったことです。
ベーシック科の時は皆勤だったので心残りになっています。
 
 今回は青山塾の紹介がないので描いた絵をもう少し詳しく解説していきます。
いい機会なので出せなかった課題も載せてみようと思います。

課題と絵の紹介

4月 最初の課題 写真の模写 木内先生

最初の課題は送られてきた写真をなるべくそのまま忠実に模写するというものです。
画材は自由です。僕は模写するならデジタルが一番楽だなと思ったのでProcreateで描くことにしました。

特に木にフォーカスして描きましょうとのことだった

ぱっと見フォトリアルを目指しました。
けっこうそれっぽいのではと思いつつ提出したのですがダメでした。
ブラシに頼ったのが良くなかったですね。
それっぽいのですが細かく見るとやっつけ感があります。ほかの人の絵を見てみるとフォトリアルでありながら良さがあるんですね。
楽しく描かないと見たときにそれが伝わってしまうと思いました。
そしてクラスメイトのレベルが高い!
ベーシック科の時も既にイラストの仕事をしている人はいましたが、
イラスト科には専業イラストレーターの人が少なくとも二人いました。
なかなか上手くいかない最初の講評でした。

5月 2回目の講評 写真を自分の絵にする 木内先生

困ったら風船を描きがち

二回目は同じ写真をもとに、構図に人を加え自分の絵にしてくださいというものでした。
これは木内先生のフィードバックを受け加筆したバージョンです。
このころからアクリル絵の具(リキテックス)をアクリルガッシュと併用しています。

5月 TIS公募

この時期TIS公募という公募に出す絵を描いていました。
気に入った絵を5枚ほど出したはずですが、描き下ろした絵を載せます。

珍しくハードエッジではない絵 アクリル絵の具を色々研究していた


特に課題がないと何を描けばいいのか分からないので、自分の短歌をもとに描いてみました。 
"不眠症でも夢を見るよビルの隙間とか昼の公園だとか"


この絵のシリーズのつもりで描いた 
色選びを失敗した


6月 少しレトロな空間 作田先生

少しレトロな空間を作る、赤を必ず使うというお題です。

これは結構よく描けたと思っています。
このころから風景だけではなく静物も描くのが好きになってきました。

6月 夏 井筒先生

夏というテーマでした。
2年目にもなると各先生の好みの絵というものがだいたい分かってきます。
井筒先生にウケる絵を描こうと思って描きました。

井筒先生からの評価はそれなりに良かったです。目論見は成功したということでしょうか。
僕はひねくれた人間なので真っすぐな絵を描くことに躊躇いがあります。
でも要望に応えられたのでイラストレーションとしては及第点だと思います。

7月 2050年の公共交通 木内先生

タクシーは公共交通らしい

2050年の公共交通を想像して描くという課題です。
架空の乗り物を考えることに苦労しました。

この課題はテーマに対して100点の回答を出せたような気がします。
木内先生のこんな授業を受けたので、SFっぽい車と田んぼという対比を描いてみました。
また自動運転ということを表すために登場人物にお酒を飲ましてみました。
説明することもなく先生に伝わっていたのでイラストレーションとして大成功だといえます。
お酒が好きでよかったです。
一方で人の顔が気に入らないので絵としてはまあまあだと思っています。

ラフ 字が汚い!誤字!


7月 家族の肖像 作田先生

見ている人(Point of view)が父で4人家族という設定だった
伝わらない……

人の顔を描けない、どう描きたいのか分からないという問題に直面した課題です。
やはり作田先生も顔が良くないと指摘していました。
でも「出しただけで偉い!」と自分を鼓舞していた気がします。
 

8月 ⼈物+αで状況を説明する 井筒先生

クライムサスペンスっぽい雰囲気を描きたかったはず

これもまた顔を描かなければいけない課題。
完成はしたものの大した絵でないと思って講評に出せませんでした。
自分を鼓舞しきれなかったようです。思い返すともったいないことをしました。
負けると分かっているのに試合に出るのは気が重いです。
いくらか勝算があればよかったのに。
でも顔を描くことから逃げずに偉い! 

9月 Transparency 木内先生

Transparencyというテーマでポスターを想定して描くという課題です。

青山塾で開催するギャラリー展という中間の展示に出した
またギャラリー展のポスターにも使ってもらえた

野球で例えるならホームランでしょうか。
完成度について木内先生もとっても褒めてくださいました。
ただしTransparencyというテーマが伝わるかという点では微妙なラインです。

ラフ
「ゲーミングPCって中が見えるようになってるよなー」というのが発想のもとだった 


9月 似たもの同士

そのまま描いてもつまらないのでありえないほど高い部屋からの視点にした
もしかしたらイラストとしてはノイズなのかもしれない

「似たもの同士」というタイトルで見た人が納得するような絵を描くという課題です。
スコリア丘とプリンを描いてみました。いい出来栄えだと思っています。
木内先生も褒めて下さいました。
そして「スコリア丘をもっとプリンに寄せて横にスプーンの形のような建造物を置いたりしてもいいのではないか?もっと遊べる余地がある」とアドバイスしてくださいました。
考えたこともなかったのでその言葉を聞いてハッとしました。

10月 自主製作 井筒先生

タイルっていいよね

自主製作の絵を講評する授業です。
自主製作※未発表作含むという場合もあります。
その場合は実質的にテーマなしで自由に新作を描くという課題になります(僕は絵のストックがないので)。

何が描きたいのかアイデアが出てこなくてとても苦労しました。
その結果何がいいのか分からなくなり結局提出できませんでした。 

10月 悼む人たち 木内先生

モノクロの挿絵を想定して、バーナード・マラマッドの「悼む人たち」という小説を読んでワンシーンを描く授業です。

アイデアスケッチ、明度設計と都度都度コメントをもらって仕上げるという形でした。

アイデアスケッチ
明度設計 2つしかできなかった
完成


12月 自分のスタイルを捨てる 大島依提亜さん

とても大変だった

「自分の絵のスタイル、技法、モチーフをいったん捨てて別の絵の方法を探してみる」という課題、大島依提亜さんのゲスト授業です。

僕は普段ハードエッジ、明度のコントラストが高い絵を描いていたので逆の絵を目指してみました。

新しい技法にも挑戦したいと思い、木版画を試してみることにしました。
ネットで調べた断片的なやり方をつなぎ合わせて試行錯誤したので、
不思議なマチエールのある絵ができました。
大島さんからは「(このやり方)可能性あるよ、やってみなよ」との言葉を頂きました。
木内先生も素晴らしいと言ってくださいました。
自分の絵はだいたい固まってきたのかなと思ったところで突然木版画という選択肢が現れます。

授業内の宿題を版画でやったもの


12月 心地の良い時間 西山寛紀さん

西山寛紀さんのゲスト授業。
心地の良い時間というテーマです。
試験的に木版画とアクリルガッシュを組み合わせてみました。

別のゲスト授業で名久井直子さんが「どうしてこの絵描いちゃったんだろうね」と仰っていましたが、その通りかもしれません。
この絵を描いている時、何故か気力がみなぎっていてずっと絵を描けるという状態でした。いい絵が描けた!とも思っていました。
でもイマイチですね。
やる気がありすぎるのも冷静さを欠いてしまうのかもしれません。

ストーブの中と投影している光が版画


1月 Zineを作る 作田先生

Zineを作る課題です。
絵は描きあがったんですが製本が間に合わず講評に出せずじまいです。
完成はさせましたが今のところ誰にも見せていません。

個人的に「楽しく、ラフを練り直したりせず勢いで」というテーマで作りました。
楽しく描けましたが、勢いで描くと良くない絵も生まれますね。
絵を描いた紙をそのまま製本してみました。


2月 リスの運送会社 木内先生

株式会社リスノ運送

リスの運送会社がテーマの課題です。
完成が間に合わず木内先生の課題で唯一提出できませんでした(後日授業の際に見ていただきました)。
 

3月 今までに描いたことがないもの

今まで描いたことがないものを描くという課題です。
この課題もアイデアラフ、明度設計、色彩設計、仕上がりと週を跨いで段階ごとにコメントをもらいます。
最後の課題だからと気合を入れたのですがまあまあだったと思っています。

アイデアラフ この中からモチーフは銃になった
アイデアラフ2 "銃"でいくつか
明度設計、色彩設計
完成


修了展

前回の記事ではあまり触れませんでしたが、青山塾では年度末に生徒たちが展示をします。
例年では1人1枚か2枚展示することができます。
とても楽しいです。
また最優秀作品賞が1つと優秀作品賞が3つ選出されます。

この絵も木版画
2枚展示した

嬉しかったのは展示の雰囲気を知れたことです。

絵をSNSに投稿すれば「いいね!」など数字がでます。当然いいねして下さる方が世界のどこかに存在しているということになります。
でもあまり実感がありません。
僕はギャラリーなど展示した経験もなかったので、本当に絵を見る人がいるという実感がありませんでした。

修了展では少しの時間ですが受付に立つ機会がありました。
展示に足を運んでくださる方々に接して感慨深いものがありました。

まとめ

僕の青山塾はこんな感じで終わりました。
まだまだ通いたい気持ちはあるんですが、もともと2年の予定だったのでとりあえず終わりです。

最後に青山塾に通って考えたことを書いていきます。

成長は忘れたころにやってくる?

7月ごろから木内先生が褒めて下さることが続きます。
素直に考えればいい絵を描けるようになったということでしょうか。
嬉しい反面どこか信じられないような現実感のない気持ちです。

1つ意識的に変えたことといえばアクリルガッシュでムラの少ない塗り方をするようになったということがあります。
僕はagoeraさんやYukiko Noritakeさんのような美しいムラに憧れがあります。
自分もいいムラを出そうと試行錯誤していたのですが上手くいっていませんでした。(使いどころが悪いというのもありますが)
そこでムラはいったん忘れてフラットに塗るということを始めました。
フラットに塗るのは慣れがいりますがコツを掴めば難しくありません。
(結局ムラへの憧れを捨てきれず木版画へと舵を切ることになりますが)

モチベーションについて

全体的にそうだったのですが、特にイラスト科は木内先生に褒められたいという一心で取り組んでいました。
講評で良い評をいただきたいという気持ちは自然だと思います。
でもあまり健全ではないと思います。

特定の誰かに褒められたいというのは長続きしません。
現に青山塾を修了した今木内先生の講評を受けることはできません。
他人に依らない自分だけのモチベーションを維持する方法を見つけることがこれからの課題です。

出せなかった課題

振り返ると出せていない課題が目立ちます。
褒められて変なプライドができたんでしょうか。
ダメ出しをされたくないという意識で講評に出せなかった絵が多かったと思います。とても良くないですね。
そもそも講評はダメ出しをされた方が得ることは多いと思います。

遅く描く

僕は筆が遅い方だと思います。
怠惰で集中力が低いというのもありますが締切に2週間あれば1週間半ほどラフを描いています。
これがとても良くないと思っていたんですが、悪いことばかりでもないと、この1年で思いました。

クオリティが同じであれば早く描けた方がいいのは当たり前です。
でもラフを練ることによってクオリティを確保できるなら一長一短でしょうか。

ダメ出しをしてくれる人は探してもいない

ありがたいことに絵を褒めて下さる人がいます。でもダメ出しをしてくれる人はいません。
あくまで建設的なダメ出しです。見当はずれな悪口ではありません。

褒めるのは作者を嬉しくさせます。
でもダメ出しは良かれと思ってコメントしても不快にさせる可能性があります。
僕を含め多くの人は、いいと思えばコメントし、そうではなかった場合は何も言いません。
一方で他人しか気づかない思い込みというものがあります。
この構造がとても危険です。
良くない点を誰も指摘してくれないので、いつか自分で気付くしかありません。
 
先生方は(それが仕事というのもあって)ダメ出しをきちんとしてくださいます。
経験とセンスのある的確なアドバイスです。これが教えていただくありがたさだと思います。
ちなみに先生によって講評の姿勢は違います。
ストレートにダメだねという先生もいらっしゃれば、オブラートに包んでここは自分的にはどうですか?と聞く先生もいらっしゃいます。 

最後に

以上で終わりです。
絵は独学で描けます。
明度や色の知識は本でも読めますし、ネットにもたくさんあります。
インターネットで絵を添削してくれるサービスというのもあります。
コースで通して勉強できるものもあります。

その上でイラストレーションスクール、青山塾の魅力は以下だと思います。

  • 年単位で先生が絵を見て下さる

  • クラスメイトがいる

やはり先生とインタラクティブということ、そしてどんな絵を描くか知った上で講評していただけることは大きいです。
「これからどういう方向で描いていくか」といった悩みもこれまでの絵を知った上で聞いていただけます。

クラスメイトがいるのは言うまでもありません。
同じくイラストレーターを目指し、切磋琢磨していける仲間は得難いものがあります。

最後に、先生方、スタッフの方々、クラスメイトのみなさん、本当にありがとうございました。
また最後まで読んで下さりありがとうございます。

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