IGLクイックスターターガイド

最近人にチーム活動とかIGLについて話す機会があって、自分が昔IGLについて勉強した時に何が分からないのか分からない状態だったことを思い出した。俺が当時参考にした資料とか最近調べたこと、俺や知り合いのプレイヤーが経験したことなんかをベースに「チーム活動やってみたい」とか「IGLやってみたい」って考えてる人に向けて実際にIGLがチームをどうやって動かしているのかをなんとなく理解できることを目標にこのnoteを書いていく。

アマチュアチームはIGLがコーチを兼任することになることが多いからコミュニケーションの取り方とかチーム活動そのものについての話も添えておく。

俺が当時チームでやってたのはCSGOだけどValorantみたいな他の爆破ルールのFPSでもほとんどそのままコンバートできると思う。一応間違いがないように調べたけどちゃんと校正してないから変なとこあったらおしえてね。





・Step1 覚悟を決める

前提としてIGLは貧乏くじみたいなもんだと思った方がいい。きついロールだけど誰かに褒められることもないし。
嫌々やっても続かないし向いてないと思ったらサクッとやめるのもあり。

しんどいけどやりがいがある。この言葉に惹かれたあなた、才能あります。

たまにデカい態度でめちゃくちゃなコールをする"自分のことを偉い”と思ってるタイプのIGLがいる。こいつは本当に癌。こういう人がいるチームに入っちゃったら適当な理由つけてさっさと抜けた方がいい。

これからIGLを目指すプレイヤーは自分の考えや発言が優先されるのは試合の中でだけということを肝に銘じて慎ましく生きよう。






・Step2 とにかく知識をインプット

自分とチームのゲーム理解度を上げるためにトップレベルの戦略から初見殺しのネタまでとにかくなんでもインプットしよう。こっちが知らないことやられてIGLが混乱するとチームの混乱につながる。これはよくない。

実際に全ての知識を吸収できるかって言われると正直無理な話なんだけど、自分に自信をつけるためというか、俺はちゃんと調べてるし大丈夫、みたいなメンタリティ的意味合いが大きいと思ってる。チーム同士の試合はメンタル勝負だし自信に繋がることはどんどんやった方がいい。





・Step3 IGLのスタイル,チームのスタイル


IGLのスタイル

とりあえずIGLとしてのプレイスタイルがまだ決まってない人向けに代表的なIGLのスタイルを3つに絞って、それぞれのいい点とよくない点を軽く紹介しておく。どれも一長一短で最強とかないから色々試そう。スタイルの名前はわりと適当につけたから気になる人はちゃんと調べてね。


・マクロだけタイプ

基本的にマクロ面のコールだけを行い実際にどう動くかはそれぞれに任せるスタイル。最強スタイル候補の筆頭。全盛期Astralis。


いいね
・展開が早い試合を作りやすく対策されづらい。
・IGLが撃ち合いに集中できる。
・IGLがどの役割でも機能する。

よくないね
・"チームに求める最低ライン"が一気に跳ね上がる。チームのほぼ全員がショットコールをすることになるしプロトコル共有の徹底が必要。
・チーム全体の引き出しが少なかったりメンタルが弱いと消極的な試合になりがち。
・精神的に未熟なやつがいるとシンプルに揉める。


・Entryタイプ

IGLが先頭に立って積極的に情報を取りにいったりスペースを作りにいくスタイル。この中だと一番モダンというか"流行り"って感じ。
エントリーのタイミングをIGLが主導することで攻撃のタイミングを合わせやすく、マップのコントロールに失敗した際もIGLが死ぬだけで済んだり得た情報、使わせたリソース、キルトレード込みでワースなことが多い。
※ここで言う"エントリー"とはゲーム内で用意されたロールに沿ったものではなく、実際に先頭を歩くプレイヤーのこと。

いいね
・チームメイトが強ければ強いほど輝く。
・エースプレイヤーのメンタルが安定しやすい。

よくないね
・撃ち合いの勝ち負けを気にする人だとかなりメンタルにくる。
・IGLが先に死ぬことが多いため2ndコーラー的なプレイヤーが必要。



・Lurkerタイプ

"Lurkerにやってほしいこと"をIGLが直接やるスタイル。最近あまり見ない気がする。
チームの中でIGLが一番上手いとか、キャリーできるタイプだと上手くいきやすい。

いいね
IGL自身がLurkして得た情報やアクションをシームレスにコールに乗っけることができる。
・IGLがマップを見る時間をある程度確保できるため、マクロに集中しやすくコールも修正しやすい。

よくないね
・IGLにかかる負担がクソでかい。Lurkerとしての才能やclutchシチュエーションへの強さも必要。
・刺さらなければクソBAIT野郎と化す。
・IGLがチームの本隊が離れることが多く試合中に感じていることにギャップが生まれやすい。



チームのスタイル

結成して日が浅いチームはプレイヤー間の相互理解が深まるまでスタイルとか深く考えないほうがいいと思う。参考にするチームはあって然るべきだけど最初から完成形を決めずとにかくなんでも試そう。そのうちなんかいいのが見つかる。

普段とは違うロールをプレイすると新しい発見があったりする。遊び程度でもたまにやってみると良いかもしれない。







・Step4 コール(指示,指令)

IGLが攻撃側で実際にどのようなコールをしているのかだけに絞って書く。あくまで俺の育った環境におけるIGLだってことは念を押しておきたい。防衛側は余裕ができたらそのうち。

ラウンド開始前の(Pre-Round)コール【テンプレート,ルール,アドリブ】

IGLはマップ毎にラウンドの序盤にどう動くかを予めチームで決めておいたテンプレートのようなものを用意している。よくあるテンプレートとしては、ベーシック、デフォルト、マップコントロール(育った環境で呼び方は異なる)など。
IGLはラウンド開始前に上記のテンプレをいじったり組み合わせたものを後述するルールと組み合わせることでチームがラウンドの序盤にどう動くかをコールし、チームはテンプレートの細かい部分の確認や調整をしながらラウンドをスタートする。

テンプレート

・ベーシックA,B(スタンダード)

チームにとって基本になる攻め方のこと。試合序盤のbuyラウンドでベーシックを仕掛けることで相手の反応を見るために使ったり、序盤に人数有利を作れたらリグループして実行するとか。ラッシュ用とかスロウ用とか何個かバリエーションを用意しておくと困らない。相手が対応できなければセットを擦りまくるのもアリだけどscrimだと練習相手としての質が落ちるからやりすぎ厳禁。
はてぶろの匿名ダイアリーにおもんないからAセットやめろみたいな怪文書が出る。

・デフォルト(ルーズスタイル)

いわゆる詰め待ち。ラウンドの起点をキルを狙うプレイヤーの判断に任せることになるため戦況をコントロールしにくい反面、こちらの動きを読まれにくく、相手に何かしらのアクションを期待できる状況を作ることもできる。
注意してほしいのはデフォルトはそれぞれが好き勝手にやっていいというわけではなく、規律が存在する。デフォルトのセオリーを感覚的に理解できない場合は"役に立ちそうな動画"に記載したFalleN神の5 ways to organize as Tの動画を見たりプロの試合から学ぼう。

正直、現代のFPSタイトルでデフォルトを単体で効果的に使うのはちょっと難しい気がする。コントロールとって高い位置でデフォルトやるとか何かプラスでやる必要があると思う。デフォルトをコールするのは簡単だけど一度何のためのデフォルトなのか考えてからコールしよう。

akioni神曰く、
デフォルトの本質は詰め待ち・存在感・情報・プレッシャー。防衛側がここいたら嫌だなと思うような場所にいるかもしれないし、いないかもしれない状況を作ることが重要。

・マップコントロール(エリアコントロール)

現代FPSの基本戦術。特定の地点を支配することで自分たちが有利な状況でラウンドを進めることができるようになる。ハイリスクハイリターンのじゃんけんみたいなもん。タイトルやマップ、状況によっては効果的でない場合もあってとりあえずコントロールをとれとは言い難い。

コントロールをとること自体を目的にしてしまうとそこから先で詰まってしまうしコントロールする範囲を広げるほどキルトレードをとりにくい。何のためにコントロールをとるのか、コントロールをとって何をやりたいのかを常にセットで考えたい。


ルール

チームの行動にある程度制約を設けること。ラウンドの組み立てやリソースを管理する上でとても重要。例えばアグレッシブなプレイヤーに少し抑え気味にプレイして欲しい際、「〇〇までとれたらOK、オールインはなし」というようなルールを設定することで一定の基準が生まれ、本人の主観が原因で起きる事故が減る。ラウンドの序盤に"既に負けている状態"を作らないようにする上でとても重要。


アドリブ

テンプレートやプロトコルを試合中に変更すること。
俺が育った環境ではテンプレートにないことをやったり何かしら条件を追加したりすることを特定の言葉にしていなかったので便宜上ここではアドリブとする。
アドリブをする際にどこまで細かくコールするかはIGLの匙加減。スムーズに実行できるかどうかはチーム全体のゲーム理解度次第。いきなりアドリブをやっても上手くいかないから慣れてきたらやってみる感じでいいと思う。


ラウンド中盤(Mid-Round)のコール

ラウンドの序盤から中盤にかけて起きたことを基に、攻め入るサイトや手順をコールすること。タイミングはIGLとシステム次第だから自分のチームと相談しよう。
ある程度は相手も人間やし読みを外してもしゃーないと思ってコールした方が精神衛生上良い。
相手のチームが使用したリソースを把握することはラウンドの勝敗に大きく関係する。IGLに慣れてきたらそういう部分にも挑戦していきたい。



ポストプラント(爆弾設置後)コール

爆弾設置後はなるべく簡単にコールしたり予め決めていることをリマインドする程度が丁度いい気がする。コールに絶対的な自信があるときを除いてIGLが死んでいるときは基本的に口を出さない方が大抵上手くいく気がする。とにかく生存しているプレイヤーが画面に集中できるコミュニケーションが大事。


コールのコツ

・うまくいかない時のことも頭の隅に入れておく。
・コールはハッキリ簡潔に。
・味方がうるさくてコールできないときは黙らせる。
・考えがまとまらないときは素直に時間が欲しいと言う。
・気になることがあってもチームに前を向かせるためなら嘘をつくことをためらわない(やりすぎに注意)。

akioni神からのありがたいお言葉
指揮官のいちばん大事な仕事はチームの迷いを拭い去ること。 指揮の内容が正しいかどうかは対人ゲームである以上ある程度運に左右される。 そこは求めても限界があると思う。 迷いをなくすことは簡単。 ゴールと道を決めればいいだけ。正しいかどうかじゃない決めるだけ。




・Step5 試合中のコミュニケーション


チームに求めるコミュニケーションの最低ラインとしては試合中にネガティブなことを言わない、何かやる時は宣言してから、死んだら生きている味方のノイズになるような報告はしない、この3つを徹底すればわりとなんとかなる。

チーム経験の浅いプレイヤー同士でチームを組む場合は、まずミニマップなしでも味方が見てる場所を把握できてる状態をなるべく維持することを目標に自分の行動を逐一報告するイメージでチームとコミュニケーションをとれるようになろう。いちいち喋るのは面倒かもしれないけど絶対やった方がいい。チームメイトが「おれ〇〇見てる」を当たり前に言えるようになれるといいね。

報告は正確で短くが理想。乱暴な言い方をするけど日本語は英語と比べて1音節ごとの情報量が少ないからコミュニケーション面で欧米のチームに後れを取ることが確定してしまっている。会話を短くすることができるなら英語のマップ名称を取り入れたり英語発音のコミュニケーションを取り入れるのもアリ。だらだら喋ってVCを濁らせないように注意しよう。

コミュニケーションのコツ

・なるべく短くハッキリと喋る。ちゃんと返事するのも大事。
・話したいことがあるけど生きている味方の邪魔になりそうな時はゲーム内のチームテキストチャットを使う。
・メンタルコントロールでため息をつきそうになったり何か言いたくなったらマイクをミュートにしてから発散する。
・特定の強いポジションはチームで共通の呼び方(名称)を作っておくと◎。
日本はある程度ゆとりのあるポジション名に裏とか左みたいな細かな位置を付け足すのが多い印象。NAもそんな感じ。EUは追加でそのポジションを有効的に使うプレイヤー名とか、ロシア語圏だとこの角は13。この窪みは11。みたいな感じで番号を振ったりしている。
・ 爆弾の解除をオン、解除をやめることをオフなど、短くなる言いかえはシンプルにアド。





・Step6 チームミーティング,反省会

必ずそうしなければいけないということでもないけど、ミーティングは目的を設定してから始めると話が進みやすい。ミーティングのやり方が分からないなら適当にネットで検索したことを参考にしていいと思う。
必要な資料を用意するのがめんどうな人はやってくれそうな人を見つけてやりがい搾取しよう。

リプレイを見るときのコツ

試合のリプレイを見るとき、だらっと試合を見ているだけだと時間がつぶれるだけで本当に何も得られない。漠然とした目標ではなく的を絞って見ることがとても大事。例えばプレイヤーXの防衛側のアプローチを見る、試合中のコールの意図を振り返る、など。マクロミクロに関わらず目的意識をはっきりさせた上でリプレイを見よう。

反省会

反省会のパッと思いつくやり方は二通りある。
一つはプレイヤー同士で意見をぶつけあって各々反省するやり方。言葉を間違えるとめちゃくちゃギスるから気を付けよう。反省会の着地点としては「お前のせいで負けた」ではなく「ここを改善できればもっと強くなれる」を厳守しよう。責任を追及することを目的にしないように注意。
コーチをつけることができないチームはだいたいこんな感じ。

もう一つはプレイヤーだけで話し合わずにそれぞれが感じたことを一旦コーチに預けて、コーチからの意見としてチーム全体で問題を共有するやり方。コーチはプレイヤーたちの意見から毒気を抜いて問題に対して適切な解決法を探らなきゃいけない。
プロアマ問わず全てのチームがコーチを欲している理由はコレに尽きる、と勝手に思っている。

チームメイトのミスを指摘する時は理論立てて指摘して納得してもらうまで根気強く粘らないといけない。がんばろう。

フルタイムならともかくアマチュアならチーム活動にストレスがないことが一番重要だと思う。色々やってくうちになんか良いのが見つかる。



・Step7 完璧を求めすぎない

チームのクオリティを上げることを考え始めるとキリがないしストレスで爆発する。完璧主義は自分を苦しめるしゲームが楽しくなくなる。人はミスを起こすものだと考えて自分たちの身の丈に合った目標を設定しよう。




おまけ

役に立ちそうな動画

CS:GOでマイナーリージョンから常勝時代を築いたFalleN神の神動画シリーズ(日本語字幕あり)。 この動画ではほとんどの5v5爆破fpsで応用が効く攻撃側のセオリーを中心に解説してくれている。内容はCSのMirageというマップの解説がメイン。一部内容が古いがかなり有用なのでシーズン1からの再生リストも併記しておく。


seizedが語るIGL論(英語字幕あり)


JAMEが語るリプレイの見方(英語字幕あり)
メインはNikoのdemoレビューだけどトッププロがリプレイをどう見ているかがよく分かる。チャンネル自体かなり有益なのでCSやる気勢必見。


役に立ちそうなツール

Valorant
Valoplant


CS:GO(CS2リリース後使えなくなる可能性大)
Scope.gg
KumaDemoViewer
CSGO Demo Manager
CSGOlens

ノート,メモ系
スマホ、タブレット、サブ画面で開いておけば作戦メモとして使えて便利。

Microsoft Whiteboard
(無限に広がる 無料で使える 共同編集ができる Windowsに最初から入っている アプリ版あり ブラウザ版あり)

Windowsのタスクバーを右クリックし”Windows Inkワークスペースボタンを表示”にチェックを入れるとタスクバーの右端にペンのアイコンが現れてすぐに使える。

Google Jamboard
操作がシンプル。共同編集ができる。使い勝手は微妙。

Concepts
無限に広がる イラスト系ソフト寄り 共同編集機能はなかった気がする。

Epic Pen
デスクトップ画面に線や文字を自由に書き込めるすごいソフト。一つの画面を共有して色々やりたいときに真価を発揮する。PRO版がめっちゃ便利。たまにセールやってる。


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