見出し画像

【検証】嘉田由紀子氏の困難女性支援法反対②

 2023年2月に【有本香チャンネル】に出演した嘉田由紀子氏の話の続きです。有本香氏と言えば、この前の東京15区選挙報道で知ったのですが、百田尚樹氏と河村たかし氏が代表を務める日本保守党の事務総長なんですね。

 さて、嘉田氏が番組内で困難女性支援法に反対した理由として語っていた内容は、2022年4月に自分のブログで述べているのと概ね同じでした。 

 嘉田氏はここで、資料を2点示して次のように書いています。

警察庁による統計(2018年)で見ると配偶者間の犯罪の中で、夫が妻を殺人したのは55.6%、逆に妻が夫を殺人したのは44.4%でした。配偶者間暴力では、夫から妻への暴力訴えが約3割であるのに、妻から夫への暴力も約2割あります。社会的に隠し切れない殺人が、実態としての配偶者間の暴力を表しているのではないかと想像します。

かだ由紀子 Facebook 2022年4月21日

 これらを根拠に「男性の被害者や困難者も増えている」のだから、憲法の両性平等理念に照らして、女性だけを支援対象と規定した「困難女性支援法」に反対したと、有本氏の番組でも誇らしげに語っていました。
 2点の資料は男女共同参画白書(2019年版)で公表されているものですが、ブログではわざわざ見づらい写メで示しています(国会議員だけが入手できる特別なデータであるかのように見せたいのか?)。

男女共同参画白書(2019年版)

 嘉田氏は、「配偶者間における犯罪(殺人,傷害,暴行)の被害者の男女別割合」のうち、「殺人」のデータのみに着目し、「夫が妻を殺人したのは55.6%、逆に妻が夫を殺人したのは44.4%」なので、夫⇒妻も暴力と、妻⇒夫の暴力は、同じぐらいの頻度で起きているのだと、番組でも強調していました。
 「殺人」以外の「総合」「傷害」「暴行」の棒グラフをみれば圧倒的に女性が被害者となる割合が高いことは一目瞭然ですが、それは男性が「男らしさ」の呪縛により被害届けを出さないため暗数になっているから信用できないデータなのだと説明していました。それに対し、殺人は暗数になりにくいので「社会的に隠し切れない殺人が、実態としての配偶者間の暴力を表している」ということらしいです。

 ちなみに嘉田氏は「殺人した」と、さも全てが既遂であるかのように説明していますが、この件数は既遂と未遂の両方を含む件数です。嘉田氏が示したものより新しい2021年版の男女共同参画白書には、既遂・未遂の内訳が載ってます。いずれにしろ「殺人」は全体の件数が少ないので、単年度ではなく何年か分をまとめたデータでみる必要があるでしょう。

男女共同参画白書(2021年版)

 一方、「傷害」「暴行」における女性被害者割合の圧倒的な多さ(9割以上)は、見た限り毎年一貫しています(嘉田氏は、男性被害は暗数になっているから意味がないと主張するのでしょうが)。

 番組では口頭で触れられただけでしたが、ブログ記事には内閣府が3年毎に実施しているアンケート調査「男女間における暴力に関する調査」から作成した「配偶者からの被害経験」も示しています。

男女共同参画白書 2019年版

 これを示して、「夫から妻への暴力訴えが約3割であるのに、妻から夫への暴力も約2割あります」と、何の何割なのかが全くわからない意味不明な説明をしています。おそらくアンケート回答者のうち、「配偶者からの暴力の被害経験」の有無を問われて「何度もあった」「1、2度あった」の合計値について述べ、夫⇒妻も暴力と、妻⇒夫の暴力は、同じぐらいの頻度で起きていると、ここでも言いたいようです。 しかし、「何度もあった」の回答割合だけで比べると、夫⇒妻(13.8%)と、妻⇒夫(4.8%)で明らかな差があることは全く無視されています。

 以上、総じて嘉田氏は、男性も女性からの配偶者暴力に同じぐらい苦しんでいるという、自らの主張に都合の良いデータだけを恣意的に示しているに過ぎません。学者を名乗る者としてあるまじき態度だと思います。しかし、有本氏の番組に関するSNS上での反応等を見ていると、リベラル派、女性、学者である嘉田氏が、データに基づいて「知られざる真相」を語ったしたとして礼賛されていました(男女共同参画白書に載っていることが「知られざる真相」って…)。
 だいたい、男性にも困難があるとして(そりゃあるでしょう)、なぜそのことが困難女性支援法に反対する理由になるのでしょう?国会議員なら、今の法律で解決できない領域があれば、その解決のための立法に力を尽くせばいいだけなのでは?嘉田氏はつい最近も自身のFacebookのコメントで、次のように述べています。

1昨年「困難女性を支援する法案」が国会でだされたのですが、非正規雇用、生活困難、自己肯定感の喪失など、現在の女性がかかえている問題の多くは男性にも共通します。それゆえ法案に「困難女性」という性をいれるのは、男女同権の日本国憲法に違反するのではないかとこの法案に反対しました。でも衆議院、参議院通じでこの法案に反対したのは私と私の同じ会派の永江たかこさんとふたりだけでした。「国権の最高機関」であるべき立法府が憲法を違反をしてはいけないと思います。いかがでしょうか。今、共同親権問題は、まさに男性が貶められ、女性は弱者としてのみ強調されているようです。憲法14条ですね。

嘉田由紀子 Facebook 2024年4月13日

 なんと、困難女性支援法は、法の下の平等を定めた憲法14条に反すると言いたいようです。

 この件があって、他にも嘉田氏が反対した大事な法案があるのか調べてみようと思い、参議院のホームページのどこをみても各議員の賛否の結果がわからないのでおかしいなと思っていたところ、以下の記事が。これじゃ有権者が議員の活動をチェックでいないじゃないですか(怒)!

 最後に。番組中、嘉田氏は、2021年5月の国会で「信頼が置ける書籍」と紹介した池田良子『実子誘拐ビジネスの闇』を、2023年2月の時点でも持ってきて紹介していました(国会では、その流れで、はすみとしこ『実子誘拐』にも言及)。池田良子氏は、有本香氏と並んでHanada2022年3月号に「【弱者ビジネスの闇】仁藤夢乃と赤いネットワーク」を執筆しているような人物です。

 嘉田氏はFBのコメント欄で今回の共同親権法案は「実子誘拐の合法化」だと、「実子誘拐」という言葉を何度も使って憤っていました。余力があればそのこともまた検証したいです。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?