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マイナンバーシステムと日本のソフトウェア革命

2020年5月17日
この内容は、ケビン松永@Canary_Kunさんの「マイナンバーのシステム何なの?バカなの?という声に対して、ベンダーを弁護します」というTW(https://twitter.com/Canary_Kun/status/1261163563063734273?s=20) へのリツイートとして書き始めたものです。長くなったのでnoteにまとめました。

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俺はマイナンバーシステム開発のベンダーに同情を禁じ得ない。。
かつて業界の最下層のさらに末端でシステム開発をしていた俺からすると、設計段階で開発者がヤベって思うくらいシステム要件が複雑になると、出来上がったシステムは大抵バグだらけで、使いずらい、出来損ないみたいなものになってしまう。
だから俺は設計段階では、ミーティングを重ね必死に客を説得してシステム要件を開発の期間とマンパワーに見合うくらいにまでシンプルにするために全力を尽くした。その方が最終的にいいものが出来て、客にとっても開発側にとってもハッピーな結果になるという確信があったからだ。逆は皆にとって地獄だ。
俺のやり方が業界の常識や慣習を無視していると咎める自社の上司や先輩には、俺のやり方が受け入れられないのなら会社を辞めると言ったこともある(実際に辞めたことはない。皆暗い表情でしぶしぶ俺の要求を受け入れてくれた)。
でもその甲斐あって俺が開発するシステムは納期通りに完成して、使いやすくて、バグも少なく、最終的な客の評価も高いものが多かった。「次に我が社のシステムを発注する時には開発者として必ずあなたを指名する」とまで言ってくれた客もいて(多分国民の半分くらいが知ってる大企業のその担当者は、その後本当に結構デカいシステムを俺指名で発注してくれて驚いた。さすがに社交辞令だと思ったからだ)、涙が出るくらい嬉しかったものだ。

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1980年代はソフトウェア革命の時代と言われた。それまでの主力だった大型コンピューターやワードプロセッサー専用機が、ミニコンやパソコンに置き換えられ、そこでの主役はかつてのハードウェアではなく、ソフトウェアだった。PCのOSはマイクロソフト、アプリはロータス1-2-3、一太郎、ExcelやWordが日本中のPCにインストールされた時期だ。各業界にミニコンやPCを使った新しい業務システムがどんどん導入されて行った。まさにソフトウェア革命と言った感じ。
しかしここで日本は世界の標準と違うことをした。自社システムの個別の仕様にこだわるあまりシステム要件が複雑化し、汎用ソフトではなくそれぞれの会社が個別の特注システムを作ったのだ。いまや日本のお家芸となったガラパゴスという奴だ。時はバブル。企業は潤沢な資金を湯水のように使ってガラパゴスシステムの構築に精を出した。開発ベンダの技術者は連日仕事に終われ家に帰れない日々が続いた。
海外企業は、日本とは逆に汎用ソフトを社内に導入するため、システムに合わせて自社業務のスキームそのものを変更するという方法をとった。資金に余裕がないという事情もあったのだろう。
こだわりを捨てられず、効率を考慮した合理的な割り切りや妥協が出来ず、後で皆が泣きを見るという構図は、現在のマイナンバーシステムの混乱にもそっくりそのまま表れていると思う。

やがて日本ではバブルがはじけ会社の資金も乏しくなり、かつてのようにシステム開発やバージョンアップに使える予算も減った。汎用システムであれば開発元が勝手にバージョンアップを続け、それを手頃な価格でユーザーに提供する。コピーが簡単に出来るソフトウェアの偉大な利点だ。しかし特注システムだと個別に開発ベンダにその何10倍、何100倍の費用を払って発注をかけなければ、自社システムは永久に古いままだ。かくして日本の多くの企業には時代遅れのシステムがいつまでも残され、世界の進歩からおいて行かれることになった。

日本はその後に続くインターネット革命、スマホ革命でも世界の潮流においていかれ、そして今の日本の姿がある。

日本、本当に懲りない国だなあ。