ただの感想文です(感想文?) #永遠なるものたち

#永遠なるものたち #永遠なるものたち読書感想文

読書感想文を書く。
最後に読書感想文を書いたのはおそらく高校生の時だから、何十年ぶりということになる。光陰矢の如し。めまいがする。くらくら。
読書感想文というと、真っ先にアイドル活動をしていた高校三年間、毎年同じ読書感想文を学校に提出していたアイドルのことを思い出す。「毎年先生が違うから同じってバレない。大丈夫!」と笑顔で言っていた。そういうとこだよ!と言いたかったが、そういうとこが魅力でもあるとも思う。
話が脱線した。
正直言うと感想を人に伝えるのが苦手だ。
何故苦手なのだろう。
ヲタクが推しに勢い込んでライブパフォーマンスやテレビ出演時のトークを絶賛しているのを見たことがある。
とんちんかんなことでも推しはニコニコ聞いてくれてありがとう!嬉しい!と言ってくれたりしている。

が、しかし、本当か?
という思いが脳内の片隅に薄いもやのように沸き起こるのである。

その感想がどんなにトンチンカンなものであってもファンが喜んでくれているのだと推しが見て取れば、それはありがとうと言ってくれるだろう。
しかし、推しにとってものすごく思い入れがある大切なことについて、全然見当違いな感想を言ってしまったら?やだ、コワイ。
はたまたこちらの熱量にドン引きされてしまったら?やだ、キモいから。

私はこういうつもりで頑張ったのに全然伝わってない!と烈火のごとく怒れたら?
怒られるならまだいい。がっかりさせてしまったらどうしよう?あたふた。そんなつもりじゃないんだ!そんなこと絶対したくないんだ!
悲しみの余り落涙させてしまったら?これはもう絶望だ。
いや何で感想言って泣くほど悲しませるんだよ?どんな感想なんだ?そんなことを感じて口にしてしまうのであれば、それはもう人間失格だ。今すぐミジンコからやりなおせ!

ねえ、シマさんさあ、いつも私のおっぱい右から触るけど、たまには左から触ってみたら?
いや、君には左の乳房はないのだが?と口に出すのが正しいのかどうか、この場合どう返すのが適切なのか、彼女は何故そんな言葉を私に投げかけるのか、私にどんなことを言ってほしいのか?
そんなこと私にわかるわけないじゃないか。世の中はわからないことだらけだ。(フィクションです)

何年か前にこう口にしたことがある。
「自分のこともわからないのに、他人のことなんかわかるわけないだろう」
直後「いや!他人というのは自分以外のすべての人のことで!」と早口で言ったが時既にお寿司いや遅し。
何というだめ人間。(フィクションです)

……なんだっけ?
一体全体どうして私はこんなことを書いているのだっけ?
ああ、そうそう読書感想文だった。
話が脱線するにも程がある。
推しが出した本のヲタクの読書感想文。
……多分おもんない。というか多分キモい。いやきっとキモい。もう既にヲタク関係なしにキモい。
というわけで一般の人は読まないでください(読まねーよ!)。

軌道修正。

この度、銀河いち尊い姫乃たまさんがご本を出版されました。
『永遠なるものたち』という素敵な書名のエッセイです。
内容もとても素晴らしいです。
ヲタク以外の一般の人も買ってください!
あ、直前に一般の人は読まないでくださいって書いてたわ。まあこのnoteは誰も読まないので何の影響もなくノープロブレムです。
では読書感想文を始めましょう。

この本には「はじめに」という前書きがあるんですよ。1行目に『股下三角』が出てきます。さすがです。キャッチー。え?
猥褻な感じがするこの単語をものすごく真面目な文体で真面目に扱っています。文章に限らずこのギャップが姫乃たまさんのひとつの特徴で魅力だと思います。
"私なんかの手に入らないものや、行くことのできない場所にも憧れます。私がいない世界に強く心惹かれるのです。"と書かれています。いやいやいや、"なんか”って。姫乃たまさんで私なんか扱いだったら、私なんかどうしたらいいんでしょう?私なんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかなんかですか?いやもっとなんかな気がします。
閑話休題。
ヲタクに言わせれば逆ですね。ヲタクは姫乃たまのいる世界に行きたい。でもそれは叶わない。ヲタクはヲタクでしかないからです。ヲタクは姫乃たまが立っているステージに観客として行くか、姫乃たまが歌っているCD/サブスクを聴くか、姫乃たまが書いた本の読者になることでしか姫乃たまのいる世界を感じることができない。ステージに立っていない姫乃たま、トークで話されない姫乃たま、文章に書かれていない姫乃たま、純粋なプライベートの姫乃たま(それはもう姫乃たまではなく寺田○○)。それこそがヲタクが行くことのできない永遠なるものたちです。
おっ、何かいいこと言った気がする。これでもう読書感想文終わってもいいんじゃないかしら。
ってまえがきしか触れてねえ!後26章+あとがき!
気が向いたら続きを書きますね。

気が向きました!
この本には彼女の子供の頃のエピソードがとても鮮明に、まるで昨日あったことのようにくっきりと高解像度で書かれているのですよ。私には子供の頃の記憶がダビングを繰り返したVHSのようなぼやんとしたものしかないので正直驚きます。
先日、2023年2月23日(木曜日 祝日)に芳林堂書店高田馬場店で開催された『<ない>ものを見つめるということ 姫乃たまさん『永遠なるものたち』(晶文社)発売記念トーク&サイン会 ~ゲストに角田光代さんをお迎えして~』で、角田光代さんも「003 私の東京」のこの描写を感嘆していました。"カウンターの下にはお酒のポスターが貼られていて、四隅のセロハンテープが乾燥して褐色になっていました。指先で触れるとカリカリした感触が伝わってきます。"
どうですか?自分の子供の頃の記憶でこんなリアルな描写できますか?私なんかなんかなんか(略)、そもそも覚えてもないですよ。
ここだけじゃないんですよね。他にもたくさん子供の頃のリアルで鮮明な描写が出てくる。コワイ。ちゃう!スゴい。
本当にね、スゴい文章を書く人なんですよ姫乃たまさんは。確か日本一のプロインタビューアーでお馴染み吉田豪も周縁漫画界(姫乃たまインタビュー集)の帯で「とりあえずボクよりも文章は確実に巧いです!」って書いてましたね。おいっ!とりあえずって何だ!
とりあえず、ただいま2月28日20時8分で、締め切りまで時間がありませんので、各章の感想メモを挙げておきます。

001 知らない家の窓灯り
知らない家の窓灯りに憧れる気持ちが私にもあって、一緒だ!と嬉しく思いました。夕方の知らない道で家の中の夕飯の匂いがすると、その家にはどんな人がいてどんな暮らしをしているのだろうととてもワクワクします。
もっともそれは姫乃たまさんのように自分がいないことへの憧れではなく、自分の知らない自分とは違う人の暮らしに対する興味、好奇心であって私なんかなんかなんか(略)所詮俗物なのですが、ちょっとわかる気がして嬉しかったです。

002 夏休みのラジオ
"ラジオは近しい人には内緒で、その代わりどこか自分からは遠い人たちと繋がっているような心地よさがあったのです。"
小学生だった姫乃たまさんが特別なものとして大切にラジオを聴いている姿を思い浮かべて微笑ましく思います。ヲタクの感想です。はい、キモい。

003 私の東京
極々個人的な感想ですが、これを読んで東京らしい高級レストランにとてもとても行きたくなりました。

004 SWIMMER
"【追記】SWIMMERはその後2020年に復活。SWIMMERが休止している間、私はひとり暮らしを始めました。その後、「結婚が華やかな幸福の象徴」だなんてすっかり忘れた頃にふと結婚。あの日飼った猫の小物入れは、いまでも本棚に飾られています。"
追記が最高にいい。人生だなと思いました。人生をやっていきましょう。

005 代々木1-54ビル
行ってみたくなりました。しかし、もうそれはありません。
しかし、Googleマップのストリートビューに過去の写真が残っていました。
勝手に思い描いていた代々木1-54ビルはもっとボロボロなイメージで、それよりはまともなビルの姿だったけど、ここであのような時間が流れていたのだと思うとちょっと羨ましくときめきます。私はそこにいなかったし、このビルも今はないけれど、こうしてちょっとだけでもその姿を見てその頃に思いを馳せることができて嬉しくなる、そんな話でした。

006 レズ風俗
照、れ、る、の、で。
自分が女性だったらもっといろんなあれこれな感想を自然に書けるような気がするけれども。
誕生日にレズ風俗に仕事で行ったよ、と言う話をどう受け止めていいのかよくわからかったけど、この話を読めば、よい体験だったんだな、素敵な時間を過ごしたんだな、と腑に落ちます。よかったです。
照れるので以上です。

007 運命
奇跡のような4日間。映画を観ているようだと思いました。誰かとこんなに瞬間的に意気投合したことはないけれど、何だか自分も疑似体験させて貰えたような気になりました。その後、連絡を取らない二人、それくらいこの4日間が本当に特別なものだったんでしょうね。

008 コンタクトレンズ
"まだ勇気がなくて眼鏡をかけている自分が、まだまだ子供だなあと感じられるのでした。"と締めに書いていた彼女がもう30歳人妻で感無量です。

009 ダイエット
有機体(フルキャスト)に通じる読後感でした。姫乃たまさんのベースにある考えなんでしょうね。

010 なくしもの
ここに書かれている感情が繊細できれいで尊く、ヲタクがうかつに触れてはいけないと思いました。
(この本全体に言えることでもありますが)

011 心の傷
"しばらく雨の日が続いたので、久しぶりの晴れの日にあてどもなく歩いていたら、電信柱に貼られた広告が連日の雨によれて破れていて、ふとあの昼休みのことを思い出しました。"
この書き出しは文学ですよね。
"それでも私は生きていて、生きていると心はまた傷つきます。
でも傷があるからこそ、私は自分らしくいられるのです。"
これから先、生きていて傷つくことがあったら、この2行を必ず思い出そうと心にそっとメモしました。

012 祖母と友人
"ふたりはもう、いつでもどこでも会いに行ける、大酒飲みの若いふたりではなくなっていました。"
時の流れ、老いていくこと、切ないです。

013 おじいちゃんの自転車
"春はベランダに突然現れて、いつも私を驚かせます。"
驚きました私も。素敵すぎる書き出しです。
ちなみにここまで読んで寝落ちしたのですが、知り合いに「ハル」という名前のねこを飼っている人がいて、そのせいか、うとうとしながら夢うつつでこんな妄想を見ました。
生まれ育った実家の2階にいると物干しに出る窓に「ハル」が外からお手々(前脚)の肉球を押し当て、
「にゃ~(ハルだにゃ~)、にゃ~(開けてにゃ~)、にゃ~(遊びに来たにゃ~)」と鳴きました。
というどうでもいいことを感想文に書いておきます。
祖父の配達について行ったときの描写に臨場感がありすぎて、自分にもそんな体験があったような気になりました。私に祖父はいなかったのでそのような体験はありません。

014 猫の死に際
ねこよねこよねこよ、一緒にいてくれてありがとうと伝えさせておくれ、その最後を見届けさせておくれ、とねこ好きの私は思います。
でも誰にも死に際を見せたくないというのはちょっとだけわかるとも思います。

015 冬の様子
冒頭の"冬のはじまりの匂いを何て言いましょう。"で衝撃を受けました。
私も子供の頃から冬の始まりの匂いが大好きで、その匂いを感じると「冬が来た!今日から冬だ!」とテンション爆上がりだったからです。
このことをこれまで何人かの人に話してみたことがあるのですが、あまり共感は得られず、自分だけの変わった感覚かな?と思っていたらまさかの推しと同じとは!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
嬉しさのあまり取り乱したことをお詫び申し上げます。

016 人生
小学四年生のときに立てた人生の川のフラッグ、自分の人生にそのようなフラッグはあるかと考えてみました。
ありませんでした。チンタラポンタラ生きてきました。随分遠くまで来てしまいました。反省はしていません。

017 紫陽花と友人
原稿から逃げ友人とスパに行き、そのスパに一緒に来ていたデリヘル経営者の奥さんとのエピソードが交錯する短編映画のようなエッセイ。
人との距離感が大人で素敵です。でも、だから、ちょっと切ない。

018 忘れられない恋
イタリア人はパワフルだなあと思ったらイラン人だった。
鬱なたまさんの周りの登場人物がユニーク過ぎてコントラスト比がすごいです。

019 骨折
骨折してリハビリをする描写がとてもリアルです。自分の骨折体験によりリハビリ室で居合わせた人たちを通じ痛みの存在を感じることができるようになったのですね。私は大けがも大病もしたことがなく、入院経験がありません。このまま入院せずに済ませたいです。

020 弟持ち長女
冒頭の弟が生まれる前のエピソードを読んで、ねこのようだと思いました。
初めて姫乃たまさんを見たときからずっと思っていることですが、やっぱりたまさんは前世がねこなのでは。にゃー。
この章の後半の内容にこれは思いの外重い話なのだと姿勢を正しました。

021 偏頭痛
気を失ったことはありませんが、同様の症状を私も小学生の頃から経験していて、何か重大な病気ではないかと家族にも心配されていました。しかし、家で取っていた新聞の医療・健康連載に閃輝暗点が紹介されていて、それだと知ることができました。閃輝暗点の症状が出た場合、極力ギラギラした歯車のようなものから目を逸らし、ゆっくり深呼吸する。鎮痛剤を飲む、できれば早退して寝るという対処方法をとるようになりました。学校で教師に閃輝暗点の症状が出ているのでまもなくヒドい頭痛と嘔吐に襲われるので帰りたいですと正直に言っても閃輝暗点が理解されずに早退させてもらえず、発症して学校で苦しむということを経験してからは、閃輝暗点の症状が出たら速やかにヒドい頭痛で吐きそうですとウソをついて早退するようになり、ウソでも帰れるという気づきを得たことを懐かしく思い出しました。

022 コーマワーク
昏睡状態の疑似体験で泣いている女性たちを見て自分と同じだと思ったら、その女性達が「昏睡状態になってみて癒やされた」「現実に戻りたくない」と言いだし驚くたまさん、そして読んでいた私。
実習で無意識が人と繋がる体験をします。興味深いです。

023 ダイアログ・イン・ザ・ダーク
体験の感想を話すときに様々な感情がバラバラに流れ込んできて泣いてしまう正直な繊細さ、その時に話したかったことをこのエッセイで書き綴り、最後に、寄り添いたいではなく、その一歩手前ぐらい「私は居るよ」という態度でいたいと書く誠実さ。そういう人なのです。大好きです。

024 登山
いつもの帰り道が少し素敵な道に感じる、登山もいいものかも知れない、そう思わせてくれました。

025 喪失と再生
私は地下アイドル時代の姫乃たまさんを知らない、2019年9月30日からのヲタクです。ただ言えるのは、永遠に姫乃たまさん推しです。

026 身体
子供のときのエピソードがとても鮮明です。
まだ時計が読めなかった頃、母親に「20分だけ寝かせて」と時計を渡された話や初めて自分の手の平の汗を見た記憶、姫乃たまは書く人だ、作家だと本当に思います。

姫乃たまさんがこれまで生きてきた記録でもある本書を読んで、30歳になった彼女がこれからどんな風に生きていくのか、どんな表現を見せてくれるのかとても楽しみです。
きっとずっと文章は書き続けてくれると勝手に思っています。そしてそれを読み続けることができると。そうであれば、まだ来ていない未来がちょっと、いやかなり幸せだなと思います。

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