初見&原作未読時点での『トラペジウム』感想「東ゆうが魅力的すぎる」

5/13に初見したところ滅茶苦茶刺さりました。
刺さりすぎてここ数日トラペジウムのことしか考えられないため、一回全てを吐き出しておきます。一回しか見てないし原作も未読なため読み違いもあるかもしれないけど、それも味ということで今後の答え合わせのためにも残し置きます。
①の「前提」まではほぼネタバレ無いので未見で見ようか迷ってる方は読んでください。逆にもう見ていて背景に興味ない人は①飛ばしてください。
ちなみにあらすじ(話の流れを書いただけの部分)は書きません。①以外は見てる前提で書きます。

①前提-見る前に摂取した事前情報と執筆時の現状

通っていた映画『ポールプリンセス』の上映前CMで見たのが最初だったと思います。

「東西南北から一人ずつ集めて」が意味不明(範囲も不明だったので北海道から沖縄まで集めるんか?集まるの大変じゃない?)っていうのと星街すいせいさんの曲がいいなってくらいの感想でした。映画館でしか見てないので。
その後公開されて、『ポールプリンセス』作画キャラデザ担当のkotonoさんのこれ

を見て「これ、見たほうがいいな?」と思い見に行きました。CMもうろ覚えなので、つまり「東西南北の美少女を集めてアイドルグループをしようとする・東ゆう(主人公か?)がなんか失敗する・星街すいせいさんの歌が良さそう(このときまだ歌詞を知らない)」くらいの情報で、「星街すいせいさんの歌と、計画こねくり回し系美少女」を期待して見に行った感じ次第です。そしてこれは完全に正解でした。
その後ドはまりしたものの過剰摂取は危険/初見の感想を大事にしようと2回目と原作はまだ/公式youtubeの本編映像は見ないで(中身出しまくってるみたいでびっくりしました)、星街すいせいさんの主題歌(もはやタイトルすらネタバレに感じる)だけをyoutube公式でループしつづけている状態です。

②見た

超良かったです。
ここから先は見てない人は見ないでほしいです。









見てない人いませんね?










超よかったです(2回目)。

③東ゆうは「なんもない」

冒頭電車の中での計画ノートを見るシーンでこれが主人公で東ゆう、他の制服の子が降りるところで降りることで事前情報からスカウトしに行く(一人で)んだろうなというところで、オープニングに入ったはず。映画の「主題歌」というのはだいたいエンディングであって、テレビアニメの映画化でもないのにオープニングアニメが入ることがまず他作品との違いを感じました。この中では東ゆうはほとんど一人で居て、アイドルものなのにグループのライブやなんかの映像はほとんどありません。サビに入ると(うろ覚え)冒頭より幼い(小学生か?)東ゆうが、一人でエレベーターに乗ったり歩いたりしてる画ののちテレビでアイドルを見て魅せられたことが分かります。また、主題歌『なんもない』の歌詞がかなり聞きとりやすく、「なんにもないんだろう」を繰り返しています。つまり、特になにか夢中なこともなければ友達もいない(なんもない)中で光り輝くアイドルという存在に出会ってそれだけが彼女の中で光になった、ということが冒頭に示されていると解釈しました。これはその直後東高の制服=在籍をバカにされる=デザインが良くないだけでなく偏差値その他格の低い高校に通っている=勉強やスポーツができるわけでもない、ということでも示されます。さらに、自宅にいるシーンがかなりあり、リビングのシーンではほぼ常に母親が映っているのに対し父親は全く映っておらず、いない可能性があると思います。OPの映像からはとくに小学生期の孤独が描かれているので、その頃に離婚ないし死別で片方の親と離れたとなるとかなりの喪失感があってしかるべきです。このように、東ゆうは物語開始時点では少なくとも自覚的には「なんもない」と感じている、ひいては唯一ある"アイドルへ憧れ"しか寄る辺がない状態であったといえます。私としてはこれ自体がこの物語のほとんどすべてだったと感じています。憧れること自体は了解可能ですが、この渇望こそが公式で狂気と言われ仲間に引かれるまでの強い気持ちになった、周囲に目を向けなかった原因だと思います。これを失ったら本当になにもなくなってしまうので。
この辺アニメで言うと明日のジョーや『KING OF PRISM』のヒロ様にも通じますね。持たざる者の"熱"そのものは鉄板だと思います。
また、そんなに憧れている"アイドル"にもオーディション全部落ちるという形で「なんもない」を突きつけられています。これによって地力(ニンジャスレイヤーでいうカラテ)では勝てず、搦め手(ジツ、フーリンカザン)が必要であると思い込んでいる、ひいては劣等感と他者への心の壁の厚さへと繋がっているように思います。
ちなみに最近の出来事とかと絡めると、女性に接点のないおじさんが少し優しい言葉をかけた若い女性に本気で夢中になったりストーカー化するのも他にチャンスのあると感じられる人がいないからだと言われたりしていますね。急に醜い話になりましたが根っこは近い気がします。

④東ゆうは未熟なだけ

「悪」の定義が難しく決まりません。インターネットには「嫌な奴が報われる話で気分がよくない」的な感想がたまにあり、正直そのストレートな感性は羨ましいとすら思います。
まず、東ゆうは西南北を騙したり陥れたりはしていません。
くるみ(西)が人前に立つのが苦手なことや蘭子(南)にストイックさがないことなんかはあのくらい一緒にいればすぐわかりそう、とくに前者はほぼ最初から観測できていたはずなので、見てみぬふりしてアイドルをしてもらっていたのだと思います。この間、少なくとも描写としてはくるみ他西南北に嘘の予定を教えて来たくないところを来させたり、アイドルデビューを隠したり、騙すことによって他人を都合よく動かそうとはしていません。メンバー集め当初「友達になりたい」と言っていたのが完全に嘘かどうかは微妙なところで、実際に泊まりで遊んだり、他メンバーが無理になったのを受け入れたり、再結成するわけではないのに再度集まれたことを喜んだりしており仲間とは思っていたのだと思います。多くの「当初の計画が失敗してリベンジする」物語では、失敗ののちに一回目で得られたものと残ったものと機転から再挑戦して勝利を得るものですが、この作品では仲間との再集合(再結成ではない)が物語の好転として描かれており、明らかに「"友情"が一回目の挑戦で得られたもの」とされています。
同様に他の人を敢えて陥れたりもしていません。SNSのコメント数やファンレターの数(個々のコメントでなく束の厚さでしか表現されていないのがいいよね)の差に思うところがある描写はありながら、他人を落として自分を上げる描写はなく(裏アカも呟かなかった)、ひたすらダンスや歌を努力しているさまだけが描かれています。キャリーされている自覚がありチームが無ければやっていけないという自信のなさからの打算も大いにありますが、他グループを叩いてる描写もありません。東ゆうに、他人に対しての悪意はないように思われます。
作中での良くない行いは大きく二つ、「自分(チーム)に都合の悪いことが起きた時に感情を直接ぶつけてしまう」ことと「勝手に話を進めてしまう」ことです。前者は素直さに通じる(何が優しさだよキック大好き)のですが作中ではアイドルになりたいの気持ちが強すぎる&西南北と共有できていないため全員とぶつかってしまう結果となっています。おそらくこれまで友達もあまりいなかったことから、「上手な人との衝突の仕方」がわからないんじゃないかと思います。後者は、上記のようにメンバーがアイドルに向いていないことを薄々気づいていたが故の行動だと思っています。西南北はそれぞれ自己主張が強くないタイプですが、城のテレビ紹介の際にくるみが欠席したなど、それぞれ嫌だと言わずに避ける方向にあるため学習した果てになし崩しで巻き込むようになったように思います。周りのみんなも衝突しないようにしてるのを悪く言うと利用してるってことですね。余計衝突しがたくなって間を取ることができずアイドルグループとしては完全な破局に至ってしまいました。
加えて、幼少期から孤立しがちだった成育歴っぽいので高校生(くるみや蘭子より下の高1です)時点で他人との関わりが少なく同年代と比較しても成長の機会に恵まれなかった可能性が高いです。のちに「幼稚だった」とモノローグが入っており、作品内の出来事を通して他者との関わり方や感情の表し方、困難から目をそらしても解決にならないことを学んだものと思います。つまり成長物語の文脈であって、「根本的にクズ」みたいなものではないはずです。


⑤東ゆうと『トラペジウム』の魅力

書きたいことが終わってきました。③と④をまとめると、
なんにもなくてアイドルへの渇望だけで生きている少女が人との関わり方が分からない中でひたむきに努力するもその未熟さで失敗し、しかし失敗によって人との関わりや友情を得る」という話です。東ゆうにあったのは渇望と劣等感からくる「行動力」「プロデュース力」、そしてそれらによって得られた「運と人脈(ここは不可分)」です。いきなりお蝶夫人を引き当てて一番器と財力のでかい蘭子をゲットしたのは完全に運ですし目をかけてくれたADの古賀さんも有難い存在ですが、まず行動したからこそ彼女らを含め東西南北の仲間、大人になっても続く友情を得られたわけです。このひたむきさこそが彼女とこの作品の最大の魅力だと思います。ほかにも(視聴者視点では)計画がうまくいったときの「こっそりガッツポーズ」や舌打ちなど良くも悪くもまっすぐな感情表現も魅力的ですね。たぶん4人で遊んでるときも喜怒哀楽がけっこう出てて一緒に居る分に楽しかったんじゃないかな~~。東ゆうに魅力を感じられ、悪い所を納得できるかどうかがこの作品の面白い/受け入れられないを分けてるのかなと思います。私にはよかったので、明日以降2回目や原作を摂取しようと思います。原作で全然解釈と違ったらどうしようと思いますが、まあこんなところで。


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