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シブヤ朝な朝な散歩 No.18 明治神宮を歩いて楠をめぐる

代々木公園の隣にある明治神宮。みなさんは訪れたことがありますか。 明治天皇と昭憲皇太后を祀る明治神宮は、2020年に鎮座百年を迎えました。関東大震災や東京大空襲よりも前に建立されたのですね。今回は、たくさんの海外からの観光客のみなさんが吸い込まれていく明治神宮の中を散歩してみたいと思います。

境内の禁止事項には「生き物」がたくさん

原宿駅を出て明治神宮入口のおしゃれなカフェの前を通り過ぎると、「一の鳥居」が見えてきました。たくさんの人が、鳥居をくぐっています。あまり立ち止まる人はいませんが、鳥居の横には『定』の看板が。明治神宮のルールのようです。近づいてみてみると、こんな文字が。 一 車馬ヲ乗入ルコト 一 魚鳥ヲ捕ルコト 一 竹木ヲ伐ルコト 右境内ニ於テ禁止ス 大正九年十一月一日 明治神宮 なんだか現代よりもずっと、生き物が近くにあるような気がする「禁止事項」なのでした。

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さて一の鳥居に礼をして参道を歩いていくと、両脇にたくさんの樽が。左手には、フランスから贈られたワインの樽。右手には、日本酒の樽。興味深いのは樽の向きです。ワイン樽って横に倒して置くけれど、日本酒の樽は縦に置くのですね。2種類の樽がこんなに近くに並んでいるのを見たのは初めてなので、なぜ向きが違うのだろう?と新鮮な気持ちで写真を撮りました。 帰宅してインターネットで調べてみると、確かなことはわかりませんでしたが、ワインの樽は干し穴(酒を充填、排出する穴)を胴の真ん中の一番ふくらんだところにあけることにより、補填しやすいのだそうです。日本酒の樽は長期保存用ではないので、そもそも目的が違うのかもしれません。 それにしても、並んだ樽って、壮観ですね。

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夫婦楠だけではない、明治神宮の楠の森

酒樽に挟まれた参道を進んでいくと、折れ曲がった道の先に、二の鳥居がありました。取材の日は、降り続いた雨が止んで、すっきりとした青空が広がっていました。明治神宮建立当初からこの敷地を守っている鎮守の森が、雄々しく鳥居を囲んでいます。 この、社殿を取り囲む樹木はそのほとんどが全国から奉献された献木なのだそう。明治神宮のホームページを覗くと、照葉樹を中心にした森を作り上げた当時の専門家たちの奮闘も見えてきました。何を植えたら「永遠の杜」になるか、明治時代の日本人が、サステナブルな森をイメージして造営した森に、じんわりと感動しました。

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明治神宮と言えば「夫婦楠」も有名ですね。上の写真、本殿の左側にある、しめ縄のついた二本の楠が「夫婦楠」です。楠は、椎や樫などと並ぶ代表的な照葉樹です。先ほどの鳥居の手前にも、枝を大きく広げて太陽の光を得ようとする楠の大木が並んでいました。 このあと、いつもなら本殿に背を向けて元来た道を戻るところなのですが、参宮橋方面に向かう左手の鳥居を抜けて、原宿駅まで鎮守の森の中の道を迂回してみることにしました。どんな樹々が植えられているのか、確かめながら歩いてみようと思ったのです。するとそこには、都会のど真ん中とは思えない景色が広がっていました。 照葉樹の森らしく、陽の光に向かって葉の重なりを避けるような枝の広がり。まるで隣の木との間に透明な壁があるかのようにお互いの領域を侵食しない楠。長い樹齢を感じさせる逞しい幹がこれでもかと天に向かうその根元には、シダ類の若芽が群を成していました。100年前にイメージされた永遠の杜が、しっかりと、自然の力でマネージされていました。

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創りたい未来に向かって今を作る

「東京に永遠の杜を」。そう願った明治神宮建立当時の日本人たちの願いと努力の結晶である鎮守の森。当時造営に関わった人々がこの世を去っても、こんなに豊かに生命を感じさせる森が残っていることを考えると、わたしたちの生きる今が100年後の未来を作るということが夢物語ではないのだと実感します。 東京はこれからも再開発が続くでしょう。その度に、森との共生の問題が持ち上がります。大切なのは、今を生きるわたしたちが100年後にどのような世界を残したいか、それを実現するには何が必要なのか、しっかりと検討し実行していくことなのだと思います。 以下の記事もぜひご覧ください。 『明治神宮の森: 林学者や造園家によるナショナルプロジェクト』(nippon.comより)

得原藍(えはら・あい)


aiehara
aiehara

理学療法士/一般社団法人 School of Movement ディレクター。ISIS編集学校師範。子育てをしながら運動科学の専門家として、身体と環境と生活の関係を考える日々を送る。 たのしいマイニチのために人生編集中。 <note>https://note.com/textbox/

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