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シブヤコミュニティ散歩 No.7 本のあるところに人が集まる。まちライブラリー@Atlya参宮橋

いま、誰でも自由に始められる私設図書館「まちライブラリー」の取り組みが、全国各地で広まっています。「まちライブラリー」とは、オフィスや学校、カフェの一角や自宅など、好きな場所を決めて「まちライブラリー」として開放、有志が本を寄贈し、自由に人が集まって本を楽しめる場所として育てていく仕組みです。
まちライブラリーに取り組んでいるAtlya参宮橋で、その可能性に迫るイベントがあると聞き、おじゃましてきました。


中学生による演劇「ビブリオドラマ」

イベントは、久喜市立太東中学校ゲキ部による演劇「ビブリオドラマ2024」からスタートしました。
ビブリオドラマとは、文字通り「<本>のドラマ」。本がある場所で演じられることを想定した、本に関する演劇を指すのだそうです。ゲキ部の部活指導員サイトウトシオさんが始めた取り組みですが、もともとは部内で行っていた活動から始まったとのこと。
「もともと、部員たちがそれぞれ好きな本を持ち寄って、本の内容を演じて伝える、ということをやっていたんです。」
とサイトウさん。日頃から本に親しみ、本の世界をよりよく表現したいという思いが演劇の形に結実したというそのプロセス自体が、まるでひとつの物語のようです。

中学生の真摯な演技に、会場の雰囲気がひとつに

今回のビブリオドラマの舞台は「七つ森」という森の奥にあるふしぎな図書館。図書館司書に扮した部員たちが、5つの本の世界に分け入りながら、図書館に隠された謎を解き明かしていく、というのが大まかなストーリーです。妖怪とのふれあいを描いたドラマ、特攻隊への志願という重いテーマに挑んだドラマが次々と演じられ、次第に本の世界に引き込まれていきます。

本と演劇の一体感が楽しい「ビブリオ・ドラマ」

最後に演じられた「ちいさなハチドリのちいさないってき」は、中南米アンデス地方に伝わる民話をもとにした物語。山火事を消そうと、仲間から笑われながらも諦めず、ひとすくいずつ水を運びつづけるハチドリを演じる部員さんの姿から、「小さなひとりの存在が世界を変えうる力を持っている」というメッセージが伝わってきて、ぐっと来ました。よく響く声、身体いっぱいを使っての表現に、心が揺り動かされます。

「個」が主役になるまちライブラリーの取り組み

続いては、まちライブラリーの創始者、礒井純充さんと、Atlya参宮橋の井尾
さわこさん、渋谷新聞の副代表、鏡晋吾さんによる鼎談が行われました。
テーマは「地域が作る、学生が作る、多世代で作る次世代に繋ぐまちライブラリーの可能性」。

(左から)井尾さん、礒井さん、鏡さんによる鼎談

「さっきの演劇のなかに、まちライブラリーの要素が全部入っています」と礒井さん。いまや全国に1,150箇所もあるというまちライブラリーの6割が個人による運営で、中には8歳のお子さんが始めた、という例もあるのだとか。

まちライブラリーの成り立ちについて語る礒井さん

「こういうものがほしいと思ったら、まず自分で動いてみてほしい。個人のもつ力というのは強い。まちライブラリーを支えているのは、そうした個人の力です」
礒井さんのお話に、さっきの演劇でみた、山火事を消そうと一すくいの水を運び続けたハチドリの姿が重なってきます。

井尾さんによるレクチャーの後、個人ワークへ

鼎談に続いて井尾さんによるミニワークショップ「自分の願いと繋がる対話的ワークショップ」。
演劇と鼎談を通じ、「わたし個人の力ってなんだろう・・」という問いが浮かんできたところへ、主語がぐっと「自分」に切り替わります。観客から主体へとさりげなくガイドしてもらうような感覚になりました。

ワークを通じて語り合いも深まります

「植本」で自分のとっておき本を紹介&書架へ寄贈

イベント終了後には、おいしいランチを食べながらの交流会と、まちライブラリーへの植本が行われました。
「植本」とは、自分が持ち寄った本を紹介しながら、まちライブラリーの書架へと納めること。植本された本は、まちライブラリーを訪れると読むことができます。

「植本」中の、渋谷新聞 鏡さん

本があるところに人が集まり、なにか新しいことが生まれる。まちライブラリーの可能性は、これからどんどん広がっていきそうです。

店舗情報

Atlya参宮橋
https://atlya-co.com/

住所
東京都渋谷区代々木4-50-13-1F
TEL&FAXTEL:03-6276-6777
営業時間【月~土・祝】10:00 am – 18:00 pm
企画・運営You be You株式会社

ライタープロフィール

八田吏(はった・つかさ)
シブヤ散歩新聞副編集長。ライター/ディレクター。産前産後の家庭と産前産後の家庭とサポートのプロをつなぐマッチングサイトMotherRingディレクター。自宅から一番近い繁華街が渋谷なので、映画に行くのも友達とのお茶も、本や洋服などの買い物も、だいたい渋谷区内で完結しています。



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