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シブヤライブハウス散歩Vol.2 アフターコロナの新しい文化を渋谷から SHIBUYA TAKE OFF 7(後編)

1980年にオープンし、数多のアーティストを送り出し続けてきた「SHIBUYA TAKE OFF 7(テイクオフセブン)」。順調に歴史を重ねてきたTAKE OFF 7を襲ったのが、2020年のコロナ禍です。TAKE OFF 7は、大きな試練をどのように乗り越えたのでしょうか。Vol.1に続き、代表取締役の後藤正晴さんに教えていただきました。

中古カメラ購入から始まった、コロナ禍のライブハウス運営

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1990年代にクラブクアトロがオープンし、2000年代にはよしもと♾️ホールができるなど、TAKE OFF 7の一帯は若者向けカルチャーの発信の場であり続けています。開場を待つ人たちの列、ライブがはけた後にあちこちに集まり語り合う姿は、渋谷ならではの景色です。 そんな見慣れた街の景色が一変したのが2020年のコロナ禍です。4月には非常事態宣言が発令されて外出自粛が求められる中、多くのライブハウスや劇場が苦境に追い込まれました。 「止めるわけには行かなかったですね」 と、当時を振り返る後藤さん。ライブの売り上げは激減、でも従業員の生活は守らなければならない……後藤さんはすぐに無観客配信ライブの開催を決意しました。 「とはいえ誰も配信なんてやったことはありませんから、中古のカメラを何台か買ってきて、若いスタッフに勉強してもらって、それをみんなで教わって、手探りで配信ライブを始めました。」 同時期に始めたクラウドファンディングでは、デビュー当時からTAKE OFF7のステージに上っていたDREAMS COME TRUEのお二人からの支援とメッセージが寄せられるという、インターネット上の嬉しい再会も。届いたメッセージには、ドリカムの音楽を信じ続けてきたTAKE OFF 7スタッフへの感謝と、音楽という同じ夢を追う仲間としての熱い思いが綴られていました。 「メッセージをいただいて、ここが存続する意味を改めて感じました。むしろここから新しいことを始めていかないとな、という気持ちになりましたね」と後藤さんは当時を振り返ります。

TAKE OFF7が考える、ライブハウスのこれから

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コロナ禍にあっても歩みを止めず、常に新しい道を模索し続けてきたTAKE OFF 7。いま後藤さんが注力しているのが、海外から渋谷を訪れた人に向けた新しいコンテンツです。 「コロナで日本の音楽シーンは大きな痛手を受けましたが、一方でいま、日本のアーティストの発信に興味をもつ海外の若い人が増えています。そうした人たちに向け、Youtubeとは違う本物のライブが見られる、インバウンド向けのコンテンツを作っていきたいと思っています」 観光地を訪れるように、日本の音楽を体験できる。ライブハウスの新しい楽しみ方が生まれようとしています。

「和」の音楽を渋谷から発信する。渋谷和音祭スタート


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さて、ここで少々話が飛びますが、みなさんは小学校や中学校で「ソーラン節」を踊ったことはありませんか?運動会のソーラン節には何種類かありますが、その中に、ロック調が楽しい「南中ソーラン TAKiOのソーラン節」という一曲があります。同曲を作曲し、小中学校界に一大ソーラン節ブームを巻き起こした、民謡歌手で音楽家の伊藤多喜雄さんがプロデュースし、TAKE OFF7とタッグを組んだイベント「渋谷和音祭」が、4月17日から始まっています。 取材当日、リハーサルのためTAKE OFF 7を訪れていた伊藤さんに、渋谷との縁を話していただきました。 郷里の北海道から上京し、公園通りの小劇場 渋谷ジァンジァンを拠点に活動していた伊藤さん。伊藤さんは、「渋谷に来てから、音楽はもちろん、着るものひとつとっても大きく変わった」と言います。 「一緒に出ているプレイヤーやお客さんから影響を受けて、センスが磨かれていったんだと思います。その一方で、大都会でどんなふうに民謡をやっていくかということは、すごく考えました。昔からやっているように着物を着て歌おうとしても、街になじまないんですよ」 当時のTAKE OFF 7と渋谷ジァンジァンは通りをはさんだお向かい同士。TAKE OFF 7に並ぶ長蛇の列を見て羨ましく思うこともあった、と伊藤さんは言います。 「渋谷ジァンジァンには、地方から都会へ出てきた人が集まって故郷を懐かしむような、どこか土くさい雰囲気がありました。一方で、TAKE OFF7はギラギラのロックです。一歩入ったとたんに感じる空気がぜんぜん違いましたね。そして、両方に出演するうちに、どちらにも魅力があるし、その両方が共存できるのが渋谷の良さだと気づいたんです。そんな渋谷で育ってきたからこそ、渋谷から発信することを大事にしたい。他の街ではだめなんです。自分が育った渋谷という地、そしてTAKE OFF7から和のカルチャーと洋のカルチャーが融合され、世界に羽ばたくアーティストが生まれるステージを渋谷和音祭が担っていきたいと思っています」

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そんな伊藤さんの言葉に、後藤さんも応えます。 「動き続けることで知恵が生まれるし、新しいことを始めると、伊藤さんのように賛同してくれる人が現れます。そんな仲間たちと一緒に、危機が起きても「逆転の発想」で乗り越え、常に変化し続けてきたのがTAKE OFF 7の歴史です。コロナ禍を経て新たに得た配信技術を駆使し、インバウンド、グローバルマーケットの追い風を受けながら、前向きにチャレンジし続けていく。そんな思いが結実したアクションの第一弾が、渋谷和音祭なんです。」 現代の街になじむ「和」の音楽を追求し続けてきた伊藤さんと、多様なアーティストの発信を支え続けてきた後藤さん。二人のタッグによって、渋谷を舞台とした新たな文化が生まれようとしています。 infomation ライブハウスSHIBUYA TAKE OFF 7 〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町32-12 アソルティ渋谷B1F https://www.kox-radio.jp/takeoff7/

八田吏(はった・つかさ)

hattatsukasa
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ライター。産前産後の家庭と産前産後の家庭とサポートのプロをつなぐマッチングサイトMotherRingディレクター。。自宅から一番近い繁華街が渋谷なので、映画に行くのも友達とのお茶も、本や洋服などの買い物も、だいたい渋谷区内で完結しています。

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