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6月14日(金)18:00~19:00 五明樓玉の輔 橘家圓太郎 「ふたりらくご」兄よ弟よ・小朝ブラザーズ

文:高祐(こう・たすく) Twitter:@TskKoh 2024年の目標は「ご機嫌に過ごす、自分をご機嫌にする」

サンキュータツオさん特選兄弟会。同じ一門先に入った弟子と後から入った弟子の関係を兄弟と呼びならすらしい。しかも玉の輔師匠も圓太郎師匠も師匠のところに住み込んだ内弟子、師匠の春風亭小朝師匠は若くして真打になられていて、しかもお二人が内弟子時代は独り身だったというから、師匠も交えて濃い関係があるのだろう。すぐ喧嘩になる玉の輔師匠と圓太郎師匠に、小朝師匠はボクシンググローブを買って与えたらしい。そんな間柄って面白すぎる。
そんな濃密な関係がうかがわれたのが二人の師匠の話の流れだった。

五明樓玉の輔師匠「佐々木政談」

まくらで昔語りをしつつ、かつてのとある席亭の無茶振りを挙げて、「裁判をやったら勝てますよ!」と言ってはいったのが裁判の話題。アメリカの(くだらない)裁判の例を挙げてから、さらりと本題「佐々木政談」に入っていく。この噺は江戸時代に裁きを行った佐々木信濃守の話だから、自然な流れがとても格好が良かった、たとえ多少下ネタが混じっていたとしても!
この佐々木政談という噺自体、子供の賢さが、噺の中でちゃんと扱われている、大人に煙たがられない感じで扱われていて気持ちがいい。それが特に、佐々木信濃守と、桶屋のせがれのしろきち(四郎吉)のテンポのいいやりとりで表されていて、信濃守の問いかけに思わずこれどう返すんだろう?と聞く側も毎度思ってしまう。どんな回答だったかを思い出す暇を与えず、小気味よく楽しませてくれる玉の輔師匠の凄さを感じた。しかも凄さは全く表面上は見せないのに!(単なる下ネタも展開するおじさんに見えるのに!)

橘家圓太郎師匠「かんしゃく」

「怒りん坊なキャラクター」と当渋谷らくごで紹介されているが、世の中のあらゆることに関心を持っているから、あらゆることに腹の虫がうずき出す、圓太郎師匠はそんな感じの「怒りん坊」だ。世の中に蔓延する「なんとかハラスメント」に腹を立て(るふりをしつつ)、ハラスメントの話題からさりげなく前の玉の輔師匠の裁判の話に繋げてきた。今はハラスメントや差別を想起させる噺はあまり好まれなくなっているとのこと。そこを十分説明した上で、あえてXXハラスメント満載の本編「かんしゃく」に突入する。この流れのスムーズさよ。
かんしゃくもちのお金持ちの旦那が、帰ってくるなり奥さんや召使いたちに、「仕事がなっていない!」と言って怒鳴り散らす。それに耐えきれなくなった結婚したての奥さんは、実家に帰るが、これを諭すお父さんの慈悲深さよ。現代の感覚からすると、この旦那のかんしゃくはガマンするにはちょっと、、というレベルに聞こえるが、この父上の訥々とした口ぶりで諭されると、はいわかりましたと言ってしまうだろう。
かんしゃくもちはかんしゃく起こすことが一つの楽しみなのだろう。が、度の過ぎたかんしゃくは大抵誰かにとっては迷惑だ。上の者のかんしゃくっぷりを笑っていられる時代は過ぎてしまったのかもしれない。そうなのか…。

あえて探す気はなかったこの兄弟弟子の共通点だが、もしあげるとしたら、枕にも噺にも無駄と思える間(ま)がない、ということかもしれない。かっこいい。

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