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6月18日(火)18:00~19:00 台所おさん 柳家勧之助「ふたりらくご」兄よ弟よ・花緑ブラザーズ

筆名:Monica(江戸っ子メキシカンジャパニーズ、落語beginner)
職業: ベトナム在住八百屋、イベントプランナー(rakugoon)

早いもので梅雨、紫陽花の時期の六月です。ベトナムホーチミン市は大体年中暑いのですが、今は雨期の時期で夕方ごろにスコールの様な雨が降ります。「ふたりらくご」当日の渋谷も雨模様だったようです。梅雨や夏にぴったりの落語の噺がありますが、どんな噺がきけるのかは落語が始まるまでわからないワクワク感が、落語の醍醐味のひとつです。

柳家花緑師匠の一門で兄弟子おさん師匠、弟弟子勧之助師匠の「ふたりらくご」。おさん師匠は勧之助師匠のことを「二人きりだと緊張感が漂う。まるで付き合う前のカップルみたい笑。間に人がいると和気あいあいとなるけど、二人きりだと目も見られない不思議な兄弟」と言っています。一方、勘之助師匠はおさん師匠のモノマネをしながら「不思議な兄さんでございます」と言って、二人の関係性の面白さを感じさせました。

〇台所おさん師匠「馬の田楽」

おさん師匠のマクラは、歯医者に行った話や健康に気を付けているけどカップ焼きそばを食べている事など日常の話を淡々と語るもので、まるで親戚のおじいちゃんの話を聞いているかのようでした(その後、おさん師匠の歯は大丈夫なのかしら)。そして、1円玉を200枚持っていた子供が困らないように100円玉硬貨と交換した話もしていて、現代の日常生活の中での「落語っぽさ」を感じるほっこりしたエピソードも話していました。

「馬の田楽」のあらすじをちょこっと。
馬方(荷物を運ぶ人)が味噌樽を積んだ馬を連れて、商店にやってきます。馬を店の前にしっかりつなぎ、子どもたちには馬にわるさをしないよう頼んでから、店の中に入ります。面子で遊んでいた子供たちは時間が経つと、馬の股ぐらをくぐる遊びや、馬の尾を一本抜く遊びをはじめました。尻尾を引っ張ると、馬が驚いて歩き出してしまいます。うたた寝してしまった馬方。店から戻るとが馬がいなくなったことに気付き、子どもたちに尋ねますが、行方はわかりません。馬方は急いで馬を探しに出かけます。

おさん師匠は、落語にでてくる登場人物のような雰囲気を醸し出していて、おじいちゃんや子供の役がドンピシャでした!また、おさん師匠が演じる馬方が疲れている馬を労うような言葉がけと動作が見事で、馬を大切にしていて、労っている馬方の様子がしっかり伝わってきました。
落語を知らない人に落語をおすすめすると、「敷居が高い」「難しそう」と返ってくることが多いですが、おさん師匠の落語は親近感があり、より身近に楽しくきけるかと思いました。また、古典落語が得意、新作落語が得意、人情噺が得意と、色んな落語家さんがいると思いますが、勘之助師匠が仰っている通りおさん師匠は少し不思議でユニークな、体全体で落語を感じさせる「おかしみ」を体現する唯一無二な落語家さんだと思いました。
落語ってやっぱり面白い。

〇柳家勧之助師匠「佃祭」

勧之助師匠は、入門してから兄弟子おさん師匠から一通りのしきたり(礼儀作法、着物のたたみ方、太鼓など)を教えてもらった話をマクラでサクッと語り、「結構な機会をいただいてありがたいわけで私の方にもお付き合いいただいて。情けは人の為ならず・・・」とすぐに本題に入りました。マクラはいつもきくことができない落語家さんの面白いはなしが聞けるので楽しみにしているのですが、このサクッと本題に入るスタイルは逆に潔くて、かっこよさを感じさせました。

「佃祭」のあらすじをちょこっと。
神田お玉が池の小間物屋、次郎兵衛さんは佃祭りを楽しんだ後、渡し船に乗ろうとしますが、見知らぬ女に引き留められます。女は、五年前に奉公先でお金を失い身投げしようとしたところを次郎兵衛に助けられ、五両の金をもらったと話します。次郎兵衛はその話を思い出し、女の家に行くことにします。その間、渡し船が転覆し、乗っていた人々が溺れて亡くなります。女のおかげで命拾いをした次郎兵衛は、女とその夫である船頭に感謝され、その家に泊まります。一方、次郎兵衛の家では、彼が渡し船で溺れ死んだと思い込み大騒ぎになります。葬式の準備まで始めます。翌朝、次郎兵衛が無事に帰宅すると、家族や周囲の人々は驚きますが、次郎兵衛の話を聞いて納得し、喜びます。

勧之助師匠の声はとても安定していて、発声はトーンが同じで非常に聞きやすかったです。船頭さんの「ちゃきちゃき」した江戸っ子っぽい感じや、次郎兵衛さんの少し気品があり、人助けもできそうな懐の広さを感じさせる表現は見事だと思いました。勘之助師匠の真面目さが落語全体にも滲み出ていて、細やかな表現がありながらもテンポよく進む噺となっていました。
特に、噺の後半における次郎兵衛さんの周囲の人々のお悔やみの言葉、次郎兵衛さんが仲人をした夫婦ののろけ話の部分は、くすっと笑わされました。勢いが増してからの与太郎の泣きの演技や、彫り物の「たま命」、次郎兵衛さんが帰ってきたときの「ギャー」の三連発は、スタートの真面目さから一転し、劇的で愉快でした!
落語ってやっぱり面白い。

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