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「ひとりらくご」青森落語、笑いと泣きの人生劇場 ★配信あり8月13日(火)18:00~19:00 三遊亭青森  #シブラク

筆名:Monica(江戸っ子メキシカンジャパニーズ、落語beginner)

職業: ベトナム在住八百屋、イベントプランナー(rakugoon)


待望のシブラク!今回は三遊亭青森さんの「ひとりらくご」という事で、青森さんのどんな噺が聞けるのだろうかとワクワク!ベトナム在住のため渋谷の会場には行けないので、生配信で落語を楽しめる機会に本当に感謝です!


初の「ひとりらくご」で1時間まるまる青森さんの時間。本人も少し緊張されているのでしょうか。冒頭で、一人で1時間の会を見に来て下さるお客さんがいるとは頭が下がります、と仰っていました。配信視聴者数は90名を超えていたようで、青森さんの人気ぶりを物語っています。


本題に入る前のマクラでは、青森さんならではの独創的な発想で、革新的なルールが加えられた競技としてのジャンケンについて熱く語っていました。ジャンケンという現代的なネタにも関わらず、落語的な展開、落語的な語りぶりにくすくすっと思わず笑いがこぼれました。結局、革新的なジャンケンは賛同を得られなかったというオチでした(私も賛同しかねます笑)。


本題では、青森さんが「やりたい話があるんです」と前置きし、以前後編だけネタおろしで披露した噺をせっかく1時間あるので全編通してやってみたいと仰ってました。私は初めてこの噺をきく機会となりましたが、青森さんの語りと相まって、この噺自体のストーリーの秀逸さに驚かされました。「闇夜の梅」のあらすじを今回は丁寧に。


浅草にある紙問屋甲州屋の娘・お梅は、生真面目な奉公人・粂之助と静かに愛を育んでおり、将来を共にすることを夢見ていました。しかし、身分の違いや周囲の目を恐れた甲州屋の女将は、二人の仲を裂こうとします。粂之助は遠方の寺に預けられ、お梅との接触を絶たれてしまいます。お梅は想いを募らせ、ある夜、家を出て粂之助のいるお寺を探しにいきました。途中、お寺の門番だという男と出会い、寺まで案内されることとなったようです。翌日、植木屋九平と名乗る男が寺を訪れ、お梅が粂之助のことを探しているといって、粂之助に駆け落ちの話を持ちかけます。そして、その計画を実行するために、寺の修繕費を盗むことを粂之助に提案します。

物語は急展開を見せ、お梅が惨殺されたという知らせが入ります。甲州屋の番頭は粂之助を犯人だと疑い始めます。深い悲しみに打ちひしがれる粂之助は、愛する人を失った絶望感と、濡れ衣を着せられた怒りに震えます。九平が残していったお梅の巾着をもっていた粂之助は犯人だとされ、兄である寺の和尚にも散々罵倒されてしまい、自害をしようとするまでに至ります。するとそこに九平がやってきて、自らの正体が明かします。九平は実は「穴釣り三次」という泥棒で、粂之助の兄・和尚の弟だったのです。三次は自分がお梅を騙して殺害したこと、そして粂之助を陥れようとしたことを告白します。物語はもう少しつづく。。


青森さんの語りは絶品で、「二つ目」とは思えない熟練の技を感じさせました。低く落ち着いた声で始まる語り口は、きく人の心を静かに包み込み、高揚感溢れる声は、物語のクライマックスを盛り上げて、きく人の心を揺さぶりました。身振り・手振りは控えめながらも、巧みな声色と抑揚・醸し出す雰囲気で、目の前に鮮やかな情景を描かせることができます。青森さん、すごい凄すぎる!


登場人物たちの個性豊かな描写も完璧でした。粂之助、お梅、女将さん、お頭、いじわるな番頭、和尚、九平(三次)と七人もの登場人物を見事に表現していました。粂之助の生真面目な性格・葛藤に満ちた感情、お梅の家を出て必死な様子、お頭の正義感の強さ・面倒見の良さ、女将さんの悲しくてもしっかりしなくてはならない様子が、青森さんの語りを通してよく伝わってきました。更に、青森さんがきっと得意なのだろうなと感じる、いじわるな番頭さんと九平の腹黒さ!!いじわるな番頭さんの口調とどこか悪意にみちた笑顔には、こちらが嫌な気分になり、「いじわるなやつ!」と言いたる程に感情移入してしまいます。そして、九平が寺のお金を持ち出すように仕向ける時は、早くお金を準備して早くお梅さんの元にいかなくちゃ、まさか騙そうとしているとは思いもよらない、きいている私もそんな気持ちになりました。

物語が佳境に入ると、青森さんの語りはさらに力強さを増し、和尚の怒りと悲しみなど複雑な感情の起伏を見事に表現していました。今まで穏やかだった和尚の対粂之助だけでなく、人生そのものに対する怒りと悲しみの入り混じった叫びは聞いていて胸が痛くなりました。そして九平(三次)も実の弟をかばうように自分の罪と生い立ちを告白して人生の覚悟を決めた様子と、家族の物語に驚かされました。最後の決め台詞で番頭に言い放った時も「二度と俺の弟に手を出すなよ」という迫力を感じました。これらの色んな感情の起伏を青森さんは見事に表現しており1時間という時間でしたが、一瞬も気が抜けない展開であっという間に感じました。青森さんの巧みな語り口に導かれ、私は登場人物たちの喜怒哀楽を一緒に体験し、心の底から楽しませてもらいました。


噺が終わった後、お客様の発展と無病息災と、日本の未来と、更には世界の平和、加えて青森さんの出世と沢山の願いを込めて三拍子にて締めくくられました。他の落語会、落語家さんとは一味も二味も違っていて、ユニークな落語家さんだなと強く感じました。もっともっと青森さんの落語が見てみたいです!次回の公演が今から待ち遠しくてなりません。


落語ってやっぱり面白い。

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