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6月17日(月)18:00~19:00 春風一刀 立川談吉「談吉イリュージョン」

筆名:miko 
ツイッターアカウント:https://twitter.com/miko_andola 接客と販売が好きすぎるアパレル社員。落語を聴き始めて丸4年とちょっと。落語と同じぐらい本も好き。落語会で本を読みながら静かに開演を待っている人に憧れている。好きな食べ物はあんこ。たいやきは頭から食べる派。運動神経皆無。そのためか、よく物にぶつかっている。
 
6月17日(月)18時~19時
「ふたりらくご 談吉イリュージョン」
春風一刀-最後の晩餐
立川談吉-ゆかり姫
 
 月曜日の18時開演。月曜日はなかなか休みづらい。定時で帰っても渋谷の会場まで18時にはたどり着けない。でもどうしても聴きたかったこの回!配信があって本当にありがたかったです。シブラクさんに感謝しながら会社を出てから帰宅までの間、早く配信が聴きたくてずっとソワソワ。
自宅にたどり着き、まずは心を落ち着かせ、準備万端で拝聴させていただきました。
 
会が始まる前にタツオさんからお客さまへの諸注意動画が。心から楽しむ空間作りには、みんなで協力しあうしか無いですものね。「どの公演でも楽しめるシブラク」とのフレーズに大きくうなずきます。
今回の「談吉イリュージョン」は創作落語の会。正直、どちらかというと古典の方が好きな私ですが、談吉さん、一刀さんの創作落語は絶対面白いと決まっているので、ワクワクと安心感を混ぜた不思議なふわふわした心持ちで開演を待ちます。
 

■春風一刀さん 最後の晩餐


 私が一刀さんの落語を初めてお聴きしたのはシブラクの創作らくごネタおろしの会「しゃべっちゃいなよ」。なので、私の中で一刀さんは「創作落語の人」というイメージだったんですよ。
*創作落語は新作とも呼ぶ方も多いのですが、シブラクさんでは「創作落語」という表記ですので、それに合わせて統一いたします。
 
シブラクでお聴きした落語がとても楽しかったので、一刀さんの落語をまた聴いてみたい!と後日伺った落語会でお聴きしたのが古典。それがもう素晴らしくて!!見事にイメージがくつがえされ、私の中で「創作落語の人」から「古典も創作落語も面白い人」というイメージになりました。創作落語が凄い人は古典も凄いんですね。
 
 高座に上がった一刀さん。軽やかなピンク色が綺麗な羽織り。「こんばんは!」と会場のお客さま、配信のお客さまにご挨拶&レスポンス。客席との距離を自然にじわりとつめてくれます。
 まくらは、人間の三大欲求について。どれが一番?と考えたとき、そのときの状況や条件によってかわるんじゃないか?という問いかけに、確かに!と思えるような事例に納得。そばが好きなのにそばアレルギーの一刀さんは(でもそばの所作上手すぎるんですけれど。)最後の晩餐として?一度そば食べてみたいそう。そこからするりと落語へ。
 
 部活の朝練に遅刻しそうになって、朝ご飯を食べずにきたのにお弁当まで忘れちゃった高校生らしき人物。(でもなぜか口調は何故か江戸っ子)じゃあ昨日の晩ご飯から食べてないの?と友達が聞くと、晩ご飯も今風の理由その①で食べてない。さらに今風の理由その②で学食にも行けず、昨晩からずっと何も口にしていないからお腹ペコペコとの事。かわいそうに思った友達が手元にある食べ物をとりあえず恵んであげようとするが、いらないと断ってしまう。その後、二人は「最後の晩餐何を食べるか?」という会話で盛り上がっていく。
登場人物が二人しか出てこないからなのか、なんとなく同じ教室内にいる二人の同級生の会話に聞き耳をたてているクラスメイトの気持ちになってしまい、会話の内容にするすると引き込まれていきます。近くにいるのに聴いてないふりして、じつはめちゃくちゃ聴いているこの感じ、なんだか楽しい。
 
 延々と「最後の晩餐」について熱く語る二人。そうそう、こういう架空の事についての会話って、段々本気になっちゃいますよね。そして、怒ったり笑ったり、テンション上がっていっちゃう感じがよくわかる。だんだん勝手に自分ルール作ったり、ジャッジしだしたりしちゃうのも!
さらにちっちゃな「あるあるネタ」や、「落語ネタ」をちょいちょい入れてくるから、おかげで、より一層二人の会話に気持ちが引き込まれてしまい、二人の会話に、「分かるー!」とか「あるよねー!」と、心の中で相槌打っていたはずが、ある料理の値段を聞いたとき、「安い!!」と、思わず心の声が実際に口から出てしまってびっくり!!思わず口を押さえちゃいましたよ。配信なのに。
いや、本当に配信で良かった…!と、胸をなで下ろしました。
サゲはいつのまにか脱がれていた羽織りと同じぐらい綺麗に決まり。さすがお見事!
時間もきっかり30分きっちり。すごいなあ。
 
 それにしても、18時という時間に、この引き込まれる「最後の晩餐」のお噺。会場のお客さま、めちゃくちゃお腹空いただろうなあと変な心配をしてしまいました。少なくとも私は絶対お腹鳴っちゃってたと思われます。それぐらい、登場人物である二人の会話を「同じ場所」で「一緒になって」聴いているような気持ちになるお噺でした。
 

■立川談吉さん ゆかり姫


 毎回とんでもない設定なのにその優しい口調で語られると、なんだか「そういうものなのかな」と、いつの間にか受け入れてしまう談吉さんの創作落語。その独特の世界観で、「創作落語の人」という印象が強いのですが、とある会で談吉さんの古典を聴いた時、私、息が出来なくなるほど笑っちゃって。苦しすぎて地上なのに溺れた?と思うほど。それぐらい面白かったんですよ。やっぱり創作落語が凄い人は古典も凄いんですよね。(大事なことは二回言う。)
 談志師匠からイリュージョンのお墨付きをいただいている談吉さん。会場にたどり着いたお客さまを「なかなかの勇者ですよ」と呼ぶ時点で、もうイリュージョンの世界がスタートしている気がします。談吉さんが何故イリュージョンをやっているか?というと楽しいからだそう。ネタおろしをする必要が無いのに毎度毎度、ネタおろししてくれているのも楽しいからなのでしょうか。
今回、ギリギリまでネタが出なくてオマージュするものを探したところ、たどり着いたのが日本最古のSFと言われている「竹取物語」。
おじいさんが川でひろってきた巻物をおばあさんが楽しそうに見ているところから物語が始まります。
 
とても仲がよさそうなおじいさんとおばあさん。だけど会話の内容はちょっと不思議でシュール。談吉さんはこんな風に不思議世界を少しずつ少しずつ聴かせていくことで、このヘンテコな世界をお客さまが当たり前のように受け入れられるように整えてくれているように感じます。
 
余談ですが、字の読めないおじいさんに代わって、巻物を説明してくれる博識なおばあさんがしれっと発するワードが全部、私のツボで。会が終わった後、そのワードを思い出しては笑っていました。
まじめな人の不思議な言動には、ふざけた人のそれよりもパワーがあるような気がするんですよね。そうか、だから真面目そうな談吉さんが演じてる時点でヘンテコワールドがより面白くなっちゃうのか!
 
また、談吉さんの落語はそのヘンテコさや面白さだけではなく、なんだか聴いているだけでニコニコしてしまう癒し成分があちらこちらに感じられます。竹取物語のオマージュですから、おじいさんは竹の中から女の子をみつけて家に連れて帰ってくるのですが、その女の子を見つめたり、抱きしめたりしながら「かわいいなあ」「かわいいですねぇ」と会話するおじいさんとおばあさんが本当に幸せそうで。もうそれだけでなんだか笑顔になってしまうんです。
 
女の子が生まれたら付けたいとおばあさんがずっと考えていた名前が「縁」と書いて「ゆかり」。そのゆかりという名前を連れて帰ってきた女の子につけ、おじいさんとおばあさんは大切に大切に育てていきます。ゆかりはたっぷりの愛情に育まれ、すくすく育っていくのですが、だんだんと顔つきがある動物になっていきます。(なるほど、それで「ゆかり」なのか!)それでも変わらずおじいさんとおばあさんはゆかりを大事に大事に育てていきます。成長したゆかりは絶世の○○○に。絶世の○○○??
なんだか、談吉さんに自分の想像力を試されている気がしました。そして、私は完全に敗北しました。
 
その後、絶世の○○○であるゆかりは、竹取物語のようにある場所に戻る為、連れて行かれるのですが、その乗り物が超絶かわいい。想像で悶絶しました。アカン。またここで談吉さんに自分の想像力を試されました。今度は違う意味で敗北しました。ダメだ。可愛すぎる。。。脳内が「かわいい」で埋め尽くされてしまいました。
ラストはおかしな事に?ちゃんとした昔話のような流れに収まっていき。伏線もしっかり回収。ちょっと待って?これ一日で作ったんですか??嘘でしょう???
 
そうか。談吉さんがもうイリュージョンそのものなんだ。
 
そばで一緒になって聴いているような親近感。
自分の想像力をフル活用した脳トレみたいな没入感。
本当にシブラクでしか味わえない特別な会でした。
楽しかったです!

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