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【「渋谷らくご」青森×青森7月15日(月祝)17:00~19:00春風亭朝枝 三遊亭青森 柳家さん花 三遊亭青森 #シブラク】

文:かわいまりこ

青森×青森

スケジュールで、青森×青森を見た時、
これはミスなのか? と思ったが、
2席やるとのこと。
何かが起こるのではないかという期待が高まる。新作と古典の組み合わせも、
連続物もいろんな可能性があるって考えると、
恐るべしな噺家さんだな。
さて、どんな夜になるだろう。

◆春風亭朝枝 『呑める』
朝枝さん、出囃子がかかってから、
出てくるまでに少し時間がかかった気がする。
観客側的には少し待たされたような感覚だけれど、ご本人はスーッと背中を丸めてでてきて、
スッと高座に座っておじぎをして、
川の水が流れていくようにサラサラとはなし始めて、よどみがない。
その流れにいつのまにか身を任せることになっている感じ。
なんだか、、不思議な空気の人だ。
語り口だけ聞いていると、見た目と口調がアンバランスに見えてきて、
頭がバグる感じになる人だな。
そんな印象の朝枝さんは『呑める』を。
どうにかやって口癖を言わせようとするも、
なかなかひっかからない相手に
一生懸命に立ちまわる姿が愛おしい。
なんとか成功するけれど、
結局自分も己の口癖を言ってしまって、
あちゃちゃってなっておわる、
なんとも平和な噺だ。

落語って不思議だなと思うのは、
噺家さんが大事にしたいところとか、
面白くしたいところとか、
そーゆーのが本当にいろいろあって、
そこに個性が出てくる。
あんまり好きじゃないなーと思っていた噺も、
急に好きなったりするほど、印象が変わるのだ。
だから、あの噺家さんがこの噺をしたら
どーゆー風に展開していくんだろうか? 
といろんな人の落語を聞いてみたくなるんだよなぁ。
そんなふうに思っている間に、
朝枝さんは自分の役目を粛々と終わらせて、
出てきたと同じように、
スーッと高座を降りていかれた。
◆三遊亭青森 『千両みかん』
青森さんの一席目。
客席の照明が暗いような?
気のせいかと思ったが、メモがとれないくらい暗いので、やはり照明は朝枝さんのときよりも暗いようだ。
まっくらな客席、
高座からはどんな風に見えるんだろう?
観客の顔、最前の方はぼんやりみえるのだろうか? それとも、暗闇に向かって話している感じなんだろうか。なんだか、余計なことばかり考えてしまうな。これは青森さんの時はいつものことなのだろうか?
暗くすることで、より噺に没入するための仕掛けなのかと頭の片隅で考えるが、
暗すぎて、レビュー用の忘れなメモが取れないな…なんてことを考えつつ、
メモなど必要ないくらいに集中しろや! 
といわれたようでもあり、全集中。

嘘か本当かわからないけれど、5分くらい早く降りてきた朝枝さんのせいで、
話すことないのに無理やり話していますと、まずは天気について。
そして、次にあがるさん花さんとゴッホについて楽屋で話をしたとのこと。なんだか、とっても盛り上がったっぽい。楽しそう。
ゴッホについて語る青森さん。通常は観る側が選ぶけど、ゴッホはゴッホの絵にこちらが選ばれてしまうのだそう。なんだか哲学的な話にもきこえてきた。
ゴッホのすこさについて語ったあとに、ネタに。

『千両みかん』は若旦那が伏せってしまうくらい、恋焦がれるみかんを必死で探す噺。
いまと違って、季節のものはその季節のときにしか手に入らない時代のこと。
みかんを食べたくて伏せるってどゆことよ!?
と思うが、手に入れたいのに手に入らない、
どうしようもなく渇望してもどうにもならないってたしかに苦しいよなと。
どうにか折り合いつけて生きていくこともできるのだろうけど、それが出来ない激しさ。
そして、そんな若旦那を必死で助けようとする人々。
呆れてしまいそうになるけれど、
死ぬってことがもっと身近に感じられていたからこそ、必死になっていたのかも、、なんて勝手に思いを馳せる。
青森さんの誠実さのようなものを感じた一席でした。

◆柳家さん花 『棒鱈』
青森さんとのゴッホの話について、
さん花さんからより詳細に。
こーゆーのはタイミングが合わないと
聞けないので、とても楽しい。
炎の落語家って自己紹介に書いてる青森さんは、絶対にゴッホが好きに違いないと思って、
どちらが落語界のゴッホか戦うつもりできたって、めっちゃアツいな!
すんなり青森さんが譲ってくれて、
わたしがゴッホですと言った顔が誇らしげ。
ゴッホのひまわりに呪われてしまったさん花さん。
ご自身の名前「さん花」が「サンフラワー」で英語での意味は『ひまわり』になると気付いて、やはりゴッホと俺は繋がっている!と!
テンション高くて面白い。
でも、好きなものとなにかしら関連があるって気付いたら、運命感じちゃう気持ち、めちゃわかる!ゴッホへの熱い気持ちを伝えてくれた
さん花さんのネタは『棒鱈』。
びっくりするくらい似合ってる! 
「あんちぇ?」って訛るのと声と
たまらなく面白い。
最初から最後まで完成されてる!? と興奮して、ずっと笑いっぱなしだった。
酔っ払いを諫めていたかと思いきや、
「行ってこい」って急に低い声で発するところの
緩急も素晴らしかったな。
そして、話と何も関係はないけれど、
さん花さんがもはや大仏様に見えてきた。
あの大きな身体から発せられる、ちょっと高めで優しい声は癖になるなぁ。
これからますます気になる存在になっていきそう。
同じゴッホに呪われた人間として応援していきたい。

◆三遊亭青森 『宗悦殺し』
再びの青森さん。
さん花さんが少し早くおりてきた。ということで、一席目と同じように、暑いですねっていう話から。
ミネラル大事ですからね、
水分とミネラル摂取しましょう。と繰り返えされる面白さにクスクス笑っていたら、
まさかの宗悦殺し。
『え! うそ!?』と思いながらも
ワクワクが止まらない。
どんな宗悦殺しが聞けるんだろう!
しかし、2席とも古典とは思わなかった。
宗悦殺し、とても、丁寧にはなされていた印象。
怪談噺になるのだろうから、
時期もあってチョイスされたのだろうか。
けっこう難しい噺なのではないかな?と思うので、凄いなーと思いつつ、きけて嬉しい。
圓朝の噺って表現が大変そうな気がするので、
演出とか、もっと変わっていくのか、
どうなっていくのか気になる。
続きも是非ともききたいな。
誤植じゃない、青森×青森。
朝枝さん、さん花さん、青森さん。
3人とも見た目だけいうとちょっと強面系だけど、みんななにかしらのギャップがあって
そこがまた落語に良い影響を及ぼしているんだろうなーと。

そうそう、青森さんは師匠が白鳥さん。
師匠と同じで羽織を着ていないスタイルなんだなー。そういうところで師弟なのを思い出した。
炎の落語家たち(朝枝さんも巻き込んでしまおう)が、これからの落語界を担っていくのだろうなと思える、そんな、今宵も実にたのしい渋谷らくごでした。


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