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浦和レッズの2023年夏の移籍ウィンドウにおける補強戦略について

浦和レッズの2023年夏のウィンドウの補強戦略について、当時の戦力、状況から分析してみる。
今シーズンの頭から、どういう意図を持って誰を獲得したのか、筆者である私の主観100%で分析してみた。


編成に関わる制度的な条件

まずは選手編成に関わる、基本的な制度について振り返ってみる。
煩雑で偏執的でもある。

A契約

チーム編成には人数制限があり、そのうち最も大きなものがA契約枠である。日本の統一契約書方式の独自ルールとして、日本の高校生、大学生がプロ入りするとまずはC契約となり、C契約で一定の時間(J1なら450分)試合出場すると、AあるいはB契約を締結できるようになる。統一契約書に関係のない外国籍選手(海外でプロ契約をした後帰国した日本人選手も)などはA契約選手としてみなすようだ。
このうちJ1なら最低15人のA契約選手を抱えなければならないなどの制限があるが、チームに保有できるA契約選手は25人までと決まっている。
また、AFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)に出場するチームには25人に加え+2人分の枠が加算される。

「+2枠」

ただし、このACLでの増枠分というのは少し厄介で、なぜならACLに出れなくなれば減るためである。仮に25人以上の選手を必要だから抱えていたとして、ACLに出場できなくなれば契約を解除するなり放出するなりしなければならないのである。
安易に契約解除を選べば、違約金など別の問題が発生する。
25人は恒久的な保有枠、+2人は一時的な保有枠なのである。
結局+2枠については、ACL大会期間をカバーする期限付き移籍による獲得、あるいは自己血輸血による体力増強のようなイメージだが、ACLへ出場が決まったら戻ってくるという了承を選手本人と相手チームに得た上での育成型期限付き移籍などの形で活用するのが適当なのかと思われる。

ホームグロウン制度

自国(地域)出身の選手を優遇するホームグロウン制度というものがある。Jの場合これは満12歳〜21歳までの期間で、3シーズン以上自クラブに所属する選手を対象として、該当する選手をホームグロウン選手とするもの。一般的にはジュニアユース(U-15)、ユース(U-18)出身の選手であることが多いが、高卒で一つのクラブに3年間所属した選手も対象になる。
そのため例えば、作陽高校から浦和レッズに入り、新潟からシントトロイデンへ移籍した伊藤遼太郎も浦和レッズのホームグロウン扱いになるし、群馬の細貝萌、フランクフルトの長谷部誠、さらに先ごろ今シーズン限りでの引退を表明した札幌の小野伸二もホームグロウン選手として扱われる。期限付き移籍期間については、移籍元のチームで所属期間を加算するので、例えば浦和レッズでは1年間しかプレーしていない武田英寿も浦和レッズのホームグロウン選手となる。
ホームグロウン選手はA契約選手の枠にカウントされないので、有力なホームグロウン選手は人数的にはチームづくりの要になる。
また、J1の場合最低4人以上のホームグロウン選手を保有しなければならず、人数が足りない場合は罰則としてA契約枠からその不足人数分を差し引かれることになる。

外国籍選手

外国籍選手については、現在登録できる人数には制限がない。試合出場(ベンチも含めて)は同時に5人までとなっている。なお、Jリーグの場合、Jリーグ提携国(タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カタール)の選手の場合は外国籍選手扱いとはしないことになっている。
ACLの場合の試合出場枠は、2022大会では3人+アジア枠(AFCに所属している自国以外の国)1人、2023/24大会では5人+アジア枠1人、2024/25大会からは制限なしとなっている。

時期によるメンバーの移行状況

2023シーズン前の状況

2023シーズン前のメンバー

上記は2022シーズン終了直後の状況。A契約は21名、C契約は宮本優太、安居海渡、木原励、工藤孝太の4名で、うち宮本は2022シーズン中に条件を達成してシーズン途中でA契約に変更になっている(移行年はA契約枠にカウントされない)。
期限付き移籍中の選手については、興梠、杉本、金子、荻原、武田、藤原がA契約の条件を達成しており、荻原と武田についてはホームグロウンの条件を満たしている。


2023冬のウィンドウ後の状況

2023冬のウィンドウ後の状況

上記が冬のウィンドウが閉じた後の状況。ウィンドウが開く前のA契約の空き4枠にユンカー、江坂の移籍分を加えた6枠は、ホイブラーテン、カンテ、髙橋利樹、吉田舜、興梠慎三(荻原はホームグロウンなのでA契約枠に関わらない)の加入・復帰で5枠が埋まった状況。宮本は6月末に復帰することになっていたので、事実上25名枠は埋まった形に。


冬のウィンドウ時点でのフットボール本部の指向

冬のウィンドウで最も話題を呼んだのは Giorgos Giakoumakis(29)の獲得に向かったこと。2022シーズンの浦和は肝心なところで勝ち点を落として結果を出せずに終わっており、攻撃陣の補強自体は納得いくものの、私自身について言えば、例えばシーズン終盤に数試合だけ組んだリンセン、ユンカーのツートップのような形の連携を深めていけば、と思っていたので、ちょっと疑問に思っていた。

リンセン、ユンカーのツートップ形

しかし結果としてはユンカー、松尾が移籍した(移籍が容認された)ことでツートップ形は予想として的外れだったことがわかった。

4-2-3-1形

Giakoumakisが獲得できなかった(ロッテルダムへレッズのメディカルチェックを受けに行ったことは間違いないらしいので、アトランタが選手本人の指向として優勢だったのだとしても、ほんの1日、半日ほどアトランタのオファーが届くのが遅れていればレッズとの正式サインは終わっていただろうと思われる)代わりにカンテを獲得したことから、少なくともフットボール本部としてはあくまでも4-2-3-1形にこだわったことが伺える。
リンセンはもちろんフェイエノールトでもワントップを務めた生粋のFW、モーベルグも意外なファーストタッチの固さ(ボールが収まらない)、後ろからボールを繋いだ形から振り向いて前を向く、というようなシチュエーションは得意ではないが、前のスペースに出してやるばドリブル突破が見られる特徴があり、ニュアンスとしては中盤というよりはFW寄りの選手であるということから、フットボール本部としては、左右のウィングからのパスでワントップに点を取らせるというニュアンスよりも、3人のFW(的な選手)の連携で攻撃を組み立てるスリートップ形を指向していたのではないかと思われる。


新監督(マチェイ・スコルジャ)の指向

一方で新監督に就任したスコルジャ監督は、シーズンが進んでいく中でわかってきたのは、左右のウィングを味方との位置関係を意識させて、数的優位でボールを奪う形を作らせる、サイドバックと並んで重要なキャストとして位置付けていて、もちろんだからといってゴールを狙わなくてもいいわけではないのだが、意識として前(ゴール)だけを見ればいいのではなく、周囲の味方を見ることができる、単純化していえばMF的な選手を求めていることだ。
その中でもちろんACL決勝へ向けて短期間でチームを作らなければならないという制約もあり、プレシーズンキャンプ中にリンセン、シャルクの左サイドハーフは諦められ、シーズン当初は使われたモーベルグもシーズンが進むにつれ出場時間を減らすことになった。
そのあたりのフットボール本部と監督との間の結果的な「ズレ」が、チーム作りに時間をかけられないための監督サイドの妥協(つまり攻撃力はあるのがはっきりしているFW的な選手でチームを機能させることを諦めた)なのか、監督サイドが(MF的な選手を使いたいという)自らの理想に立ち返った結果なのか、その辺りはハッキリとはわからない。


2023夏のウィンドウ後の状況

2023夏のウィンドウ後の状況

夏のウィンドウでモーベルグ、松崎快、犬飼智也が抜け、中島翔哉、安部裕葵、エカニット・パンヤが加わって宮本が復帰、25枠が完全に埋まった形に。


2003夏のウィンドウの動き

そんな中でも、どうにかACL決勝を勝利し、夏のウィンドウを迎えた。ホセ・カンテが4試合目の、先発から60分以上出場した8/13の広島戦(つまり長い時間起用してやれば得点できるということ)から3試合連続でゴールし、後を追うようにリンセンにもゴールが生まれ始めたという後押しもあったが、結果として関根と大久保がメインになった両サイドハーフ、小泉の不調もあって安居が使われたトップ下(というよりも中央のハーフ)に、スコルジャ監督が本来求めた「(FWタイプではなく)得点力のあるMF(タイプの選手)」を補強対象として求めたのではないかということは容易に想像できる。
ただし、ポジショニングのセンスがありつつ得点力もあるというMFは、むしろ点だけ取ればいいFWよりも希少。この時期の補強の動きについて信憑性のある情報は広まっていないので、どういう動きがあったのかは実際のところわからないが、結果としては元A代表経験のある中島、安倍の2名とムアントン・ユナイテッドとの提携関係もありエカニットを獲得という結果になった。

A契約(25名)枠はいっぱいだったため、モーベルク、松崎、犬飼の移籍放出と新選手の獲得はある程度連携していたはずで、新たな選手を獲得するかどうかは、所属選手の移籍が成立するかどうかにも関連する。
リンセン、シャルクのオランダコンビにも移籍報道があったが、リンセンについては少なくともユトレヒトといわれた移籍先の情報が誤りであったのは現地のメディアの確認が取れている(ユトレヒト以外に動きがなかったのかはわからない)が、シャルクについては古巣のNACブレダでファンの間にシャルクを名指しでの待望論が出回っていたので、あるいは誰か別のもう一人の獲得が決まっていたら、シャルクが放出されていたのかも知れない。もちろん推測というか妄想に過ぎないが。

この時期、一つ特筆しなければならないのは、ヨーロッパ市場での「サウジアラビアマネー」の影響である。もちろんサウジの公的投資基金(PIF)が狙ったのは欧州クラブの超一流選手で、レッズが取れるような選手とはおそらく競合しない。が、彼らに選手を引き抜かれたクラブはまた別なクラブから必要な選手を獲得するわけで、例えば遠藤航がリバプールに移籍したことなども一つの例だが、移籍金が高額になったり、より上位のクラブと競合するようになったり、明確な証拠はないが間接的には影響しているはず。サウジと同じ「アジア」に移籍するならより高額な移籍金を要求される、ということもあるかもしれない。
また、サウジの上位クラブでそのような補強が行われたことにより、名古屋のマテウス・カストロや武漢三鎮のニコラエ・スタンチュが上位以外のサウジのクラブへ移籍するなど、移籍市場全体が活性化している。
そうした影響は、レッズにも選手獲得の面では不利を与えただろうと思われる。


補強結果の評価

夏のウィンドウでの獲得結果の評価

酒井の負傷で明らかになった右サイドバックの不足(馬渡、宮本の信頼不足)、大久保の負傷で明らかになった右サイドハーフの空白から始まる中盤の民族大移動、チームにフィットしきれていないタイミングでの中島の負傷、獲得時からわかっていたことだが安倍の治療とリハビリなどもあり、エカニットが徐々に使われ始めたのを除けば、まだ新戦力は活用された、補強は成功であった、とは言い難い。
ただし、そもそも負傷についてはその責任を強化部門に問うのはアンフェアだという気はする。
スコルジャ監督自身が新しい選手の起用についてはやや保守的というか慎重な姿勢を持っているようで、また選手の状態については過去にそうであったよりも非公開練習の多用や個別の選手取材体制の変化など、環境的にその情報が得られにくくなっていることもあり、例えば選手が使われていなかったとして、それが十分な能力を持っていないのか、あるいは単に信頼されていないだけなのか、怪我や不調によるものなのか、判断は難しくなっている。
その辺りを総合的に考えた場合、この夏のウィンドウの補強は、もちろんまだ結果を十分には上げていないので成功とは言えないものの、監督が望む方向の戦力を手に入れることができている、という点で少なくとも失敗、無為無策などと口をきわめて批判するほどではない、と私は判断している。

カンテ、リンセンが点を取り始めた時、彼らを(というか彼らを獲得した強化部門を〜レッズサポは選手には甘いのだ)批判していた人たちは、手のひらを返すことになった。私は恥をかくのが嫌なので、恥ずかしいことだが批判には慎重なのだ。

今後予想される補強方向

ついでにこの後予想される補強の方向を考えてみよう。
まずは一つ、それは現状で認識された穴・空白を埋めるためのものである。
例えば大久保独りきりの「左利きの右サイドハーフMF」、あるいは監督の信頼を得られる右利きの右サイドバック、伊藤敦樹不在の場合を埋めるBox to Box MF、いずれ来る「ポスト西川」の用意、その他。
選択によっては必ずしも必要でないし、必要性をその都度判断していくことになるだろう。
もう一つは、チームを成長させるためにさらに必要なものである。
現在の浦和レッズ、客観的に見れば一番の売りになるのは「強固な守備」ということになるだろう。この点は現状のショルツ、ホイブラーテン、岩波、さらにサイドバックの酒井、中盤の岩尾をはじめとした選手たちで支えられており、十分な実力を持っていると考えられるが、さらに上のレベルと相対したときに同じことが言えるかどうかはわからない。また、未だ十分とは言えない得点能力。今ディフェンス寄りに傾けているバランスを幾らかオフェンス寄りに調整することも必要になるだろうが、そうしたポジションでのタレントもわかりやすく必要になってくるだろう。Giakoumakisもあるいはそうだったのかも知れないし、中島翔哉やリンセンにはその辺りも期待している。
例えば伊東純也や三苫薫、鎌田大地、あるいはアーリング・ハーランド、キリアン・エムバペなどを獲得するのは現実的に難しい。サウジクラブの選手補強が一巡したように見える中、今後も同規模の選手補強が行われるかはわからないが、欧州からの、そして日本国内からも、効果的な補強は容易にはできなくなっていくかもしれない。
後発でただでさえ遅れているのに、十分な馬力(資金力)も持たずに「世界との差を詰めていこう」というのは、困難というより傲慢ですらあるが、それは理解しつつ、それでも夢は見ていきたい。


現状の戦力分析

戯れに各ポジションの戦力分析を。
氏名の後ろのカッコは年齢で、2023年の誕生日を迎えた時のもの。従って、読んだ日現在の年齢と合わない場合もあるし、同学年でも違う数字になっている場合もある。

GK

  • 西川 周作(37)

  • 牲川 歩見(29)

  • 吉田 舜(27)

in
なし
out
鈴木 彩艶(21)→シント=トロイデンVV(期限付き移籍)

「西川後」についてはおいおい考えていかなくてはいけないものの、彩艶の移籍を見越した冬のウィンドウでの吉田の獲得も含め、現状は計算通りと考えられる。
西川は問題なく計算できるし、ルヴァンなど限られた機会ながら出番を得ている牲川も、では優勝を争うチームの正GKとしてシーズン通して頼るのにふさわしいか、という観点ではともかく、バックアップとしては計算できる姿を見せている。


右サイドバック

  • 酒井 宏樹(33)

  • 明本 孝浩(25)

  • 荻原 拓也(24)

  • アレクサンダー・ショルツ(31)

  • 関根 貴大(28)

  • 馬渡 和彰(32)

  • 宮本 優太(24)

  • 堀内 陽太(19)

in
宮本 優太(24)←KMSKデインズ(期限付き移籍より復帰)
out
なし

本来キャプテンである酒井宏樹が絶対的なポジション。今シーズンもその位置付け自体は変わらないものの、稼働率が落ちている不安がある。スコルジャ監督は本職右サイドバックの馬渡や宮本ではなく、左サイドバックの明本や荻原を起用しており、守備力やポジショニングなのか、その選好の傾きは興味深い。
宮本は前リカルド・ロドリゲス監督には重用されていたので、結果論ではあるが短期的にはKMSKに移籍せず、シーズン頭から右サイドバックの控え一番手です、という顔でいた方が出番は多かったのではないか、という気はする。
いずれにせよ、明本が負傷した以上、荻原を右、という使い方には無理が出てくる(負荷が大きすぎるため)ので、今後馬渡や宮本を頼る必要はあるだろうという気はする。


センターバック

  • アレクサンダー・ショルツ(31)

  • マリウス・ホイブラーテン(28)

  • 岩波 拓也(29)

  • 知念 哲矢(26)

in
なし
out
犬飼智也(30)→柏レイソル(期限付き移籍)

チームの花形にして、戦力的な主力を担うポジション。ケガ・出場停止も少なく、冬のウィンドウで移籍話もあった(実際にキャンプから離脱した)岩波ですらルヴァンなどのミッドウィークの出場に限られるほど戦力的には充実している。


左サイドバック

  • 明本 孝浩(25)

  • 荻原 拓也(24)

  • 大畑 歩夢(22)

in
なし
out
なし

京都への期限付き移籍から復帰した荻原、パリ五輪を控えて出場機会を求めている大畑を擁しながらも明本がポジションを守るほど充実しているポジションだったが、前述した通り右サイドバックにも進出するようになり、明本の負傷もあって急に手薄さが見えてきたポジション。
それでも出場機会の少なさに不安はあるが大畑もおり、なんとかなってはいる。


守備的MF

  • 岩尾 憲(35)

  • 伊藤 敦樹(25)

  • 安居 海渡(23)

  • 柴戸 海(28)

  • 平野 佑一(27)

  • 堀内 陽太(19)

in
なし
out
なし

チームの背骨である岩尾、代表にも選ばれた新たなチームの顔・伊藤敦樹と並ぶ中心ポジション。監督の信頼も篤い安居も含め、人数的には充実している。
最年長の岩尾に負荷がかかりすぎな感はあるし、将来的には敦樹も海外等が考えられるなどのファクターもあるが、現状はとりあえず必要十分な陣容だろうか。


攻撃的MF

  • 小泉 佳穂(27)

  • 関根 貴大(28)

  • 安居 海渡(23)

  • 大久保 智昭(25)

  • 早川 隼平(18)

  • アレックス・シャルク(31)

  • 髙橋 利樹(25)

  • 中島 翔哉(29)

  • エカニット・パンヤ(24)

  • 安部 裕葵(24)

in
中島 翔哉(29)←アンタルヤスポル
安部 裕葵(24)←FCバルセロナ・アトレティック
エカニット・パンヤ(24)←ムアントン・ユナイテッド(期限付き移籍)
out
ダヴィド・モーベルグ(29)→アリス・テッサロニキ(期限付き移籍)
松崎 快(26)→ベガルタ仙台(期限付き移籍)

右サイドハーフ、トップ下、左サイドハーフのポジションを一括で。サイドハーフはトップ下と流動的に入れ替わることも多いし、トップ下もそのポジション名が示す位置ではなく、ほぼ下がり気味のFWのように振る舞っていたりするので、おおまかな分類で。
夏のウィンドウでは一番動きが大きかったポジション。基本は大久保、小泉、関根の組み合わせが多かったのだけれど、大久保が怪我をしたことで急遽工事中な状況になった。
大久保や関根はドリブル突破のプレーを期待できるが、大久保を欠いたあとはチームとしてのプレースタイルも変えざるをえなくなっており、人数は足りていても戦力的には足りていない感はある。


FW

  • ホセ・カンテ(33)

  • ブライアン・リンセン(33)

  • 興梠慎三(37)

  • アレックス・シャルク(31)

  • 髙橋 利樹(25)

in
なし
out
なし

いわゆるワントップ。局面によってはツートップとして起用されることもあるものの、それはビハインドで試合終盤を迎えた際のエマージェンシー的な起用のケースが多く、ゲームの頭からバランスを前のめりにして臨むことはあまりない印象がある。
冬のウィンドウでは Giorgos Giakoumakis(29) の獲得に向かったことが信憑性の高いメディアにも報じられており、彼を獲得できなかったことが報じられた(2023/01/31)後に獲得(2023/03/13)したのがホセ・カンテである。
2人の特徴としてある程度共通するのは、空中戦の強さなどで、実際に試合で企図されたプレーを見ても、後方からのロングボールを彼らのところで落として収めて欲しい、といった意図が感じられる。この点では熊本から獲得した髙橋利樹にも共通した特徴が見られ、すでにチームにいたリンセン(身長170cm。Giakoumakisが185cm、カンテが184cm、髙橋が182cmと並ぶと差がある。ただしリンセンはリンセンで空中戦には無類の強さを持っている)では物足りなかったものがあるのかも知れない。その手のプレーはかつては興梠(175cm)が得意としていたのだが。
ただし、実際にシーズンが進むと孤立したワントップに当てて収める、という戦術は相手DFのマークのキツさもあり、あまりうまくいかなかった感があり、むしろ右サイドバックの酒井を上げてその頭に合わせるか、大久保の前のスペースに落としてドリブルで前進させるような戦術を多用するようになる。
カンテはそれなりにプレッシングもかけ、戦術に忠実ということもあるのか多用された一方、サイドハーフとして使われたリンセンやシャルクはそのあたりが不十分と見られたか、起用機会も伸びず、ファンの間では不要論も囁かれた。
いずれにせよ、カンテやリンセンが点を取り出すにつれて雑音は消え、これからというところだったのだが、カンテが出場停止、リンセンとシャルクが怪我ということで、難しい局面を迎えてはいる。