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【邦画】おくりびと(2008)

監督:滝田洋二郎
出演:本木雅弘、広末涼子。山崎努、峰岸徹、余貴美子など
上映時間:2時間10分

2008年のアカデミー外国映画賞受賞作品「おくりびと」鑑賞しました。

先日「容疑者Xの献身」を観た後に、堤真一の日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を確信しチェックしたら、なんと「おくりびと」の山崎努でした。嘘やんと疑念を抱きつつも、気になったので鑑賞に至りました。

東京でチェロ演奏者として働き始めた小林大悟(本木雅弘)は、ある日自身の所属する楽団が突如解散し、夢を諦めて妻の美香(広末涼子)と共に実家の山形県酒田市に帰ることに。大悟の母は数年前、大悟が海外演奏旅行の最中に亡くなっており、父は大悟が6歳のころに女と駆け落ちして家を出ている。なので実家は空き家になっていた。

山形で職を探す大悟は「旅のお手伝い」とだけ書かれた広告を発見して、旅行代理店か何かだと思い会社を訪ねることに。するとそこは納棺会社であり、大悟は半ば強引に就職させられることに。妻には「冠婚葬祭の仕事」とだけ伝えてごまかすことに。

腐食した死体を取り扱ったりとハードな仕事内容に最初は苦戦するも、遺体をきれいに復元して遺族との最高の別れを演出する仕事にやりがいを感じていく。しかし仕事内容の世間体は悪く地元の友達には軽蔑され、遺族にも蔑ろに扱われ、ついには美香にもバレて彼女は実家に戻ることに。

素晴らしい作品でした!!テーマに重みがあり、メッセージ性も強く、とても考えさせられる内容でした。

まずは「死」にまつわる職業について。これは特にインドで生活する僕にとっても重要なテーマです。というのはヒンドゥー教ではカーストによっての職業分類が行われており、一番下のカーストの人は必然的に「穢れ」を扱う仕事に尽きます。そして穢れの最たる例が「死」で、最下層カーストの人たちはガンジス川の火葬場などで働きます。しかしこの映画をみて改めて考えさせられたのが「死って穢れなのか?」ということです。

答えは「ノー」です。特に社長(山崎努)の最初の納棺はとてもカッコよく美しく、愛情に満ち溢れていました。あれは惚れます。他国で活動する際には異宗教の尊重が大事で自分の価値観を押し付けるのは絶対にいけないことなのですが、このシーンは一度カースト制度を重視するヒンドゥー教徒の人にも見てもらいたいと思いました。彼らがこの作品をどう捉えるのか気になります。

では「死」とは何か?それは銭湯(鶴の湯)の常連客で火葬場職員の平田(笹野高史)が語っています。この問いに決まった答えなどないのですが、僕の中では過去一番しっくりきました。思想としても、別れを悲しむ気持ちを和らげる意味でもすごくいい言葉で、ずっと胸にしまっておきたいと思いました。

本木雅弘の演技も素晴らしい。大悟の人の良さや脆さをよく表現していました。どうやらこの作品は青木新門著の「納棺夫日記」がモデルになっており、それを読んだ本木雅弘が感動し青木宅を訪れ直接映画化の許可を得たとのこと。なので相当気合が入っていたことが伺えます。特に初めの納棺の所作はかなり洗練されており、1万回ぐらい納棺している本物の納棺師じゃないかと思わせるほどでした。

しかし舞台が富山から山形に変わったことや、本人の宗教観が反映されていないことから、別の作品としての公開になったそうです。死に対する著者の考えや宗教観、非常に気になります。ぜひ原作も読んでみたい!

そして大悟のキャラクターが良い!銭湯のおばちゃん(山下ツヤ子)が美香に話した内容が、彼のキャラクターを最も簡潔に表しています。ああいうやつだからこそみんな心配だし、応援したくなるのです。そしておばちゃんも言うまでもなく重要人物です。そして常連のおっちゃん(平田)も。美香も優しく気を遣える女性で、重いテーマの作品に一時の安らぎを与えてくれます。

印象に残ったシーンはやはり「石」。あんなの泣きます。号泣でした。そして納棺会社の事務員・上村が大悟に伝える言葉も凄く沁みました。この辺のシーンは涙なしでは見れません。もちろんその前のシーンもしっかり泣いています。

「おくりびと」は、死とは何か?という問いについて考えさせられる非常に重要な作品。日本人が観ても心を動かされること間違いなしですが、海外の人にとっても興味深いテーマ・作品に仕上がっており、アカデミー外国映画賞も納得です。日本が世界に誇れる作品の一つで間違いありません!


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