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【洋画】カサブランカ(1942)

監督:マイケル・カーティス
出演:ハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン、ポール・ヘンリード、クロード・レインズ、コンラート・ファイトなど
上映時間:1時間42分

「カサブランカ」2度目の鑑賞。

第二次世界大戦中の1941年、フランスはナチス率いるドイツ軍に国を占領され、多くの人は戦禍を逃れるためにモロッコ・カサブランカから中立国のポルトガルを経由して、アメリカへの亡命を図っていた。しかしカサブランカからポルトガルへ飛び立てる人は少なく、多くの人はカサブランカで出国ビザの配給を待っていた。

アメリカ人のリック(ハンフリー・ボガート)は、パリ陥落後にフランスを追われ、カサブランカでバーを経営していた。そこにラズロ(ポール・ヘンリード)という反ナチス地下組織の重要人物がやってくる。彼は女性と一緒にやってくるのだが、その女性はリックがかつてパリで恋仲にあり、パリ陥落後に理由も言わずに去っていったイルザ(イングリッド・バーグマン)という女性だった。

彼らは結婚しており、二人でアメリカへの亡命を図っていた。しかしラズロがカサブランカにいるという情報はナチスに知れ渡っていて、出国の許可が下りず、イルザ一人なら出国できるという状況だった。イルザとの再会に苦しむリック。しかし彼は偶然にも出国許可証を持っており、もしそれをラズロに渡せば彼らは共に亡命できるのだが・・・

ちょっと衝撃的でした。誰もが知る名作で今更なんですが、映画に対する根本的な見方を変えるほどの作品でした。ストーリーラインに全くの無駄がなくて、全体的に静かながらも心を完全に奪われます。これを芸術と呼ばずして何が芸術なんだと。

構成としては最初の30分は伏線です。前回鑑賞した際は恐らくこの時間で脱落してしまったのかなと。内容も多少複雑で、分かりやすく視覚に訴えかけるようなシーンもないのでこの時間は若干しんどい。でもここは必死についていって欲しい!!

そしてイルザが店にやって来てからすべてが動き始めます。ここからは一瞬たりとも目を離せません。イルザを二度見するピアニストのサム、しばらくして彼のもとにやってくるイルザ、リックの居場所を聞くがごまかすサム、サムに「As Time Goes By(時の過ぎゆくままに)」をリクエストするイルザ、歌におびき寄せられてやってくるリック。この一連の流れマジで痺れます!!

「時の過ぎゆくままに」のノスタルジックさと、リックとイルザの過去を仄めかしているような歌詞。。本作のテーマ曲でもあるこの歌は、まさに「カサブランカ」を象徴する曲となっています。

キャラクター設定も秀逸。特にリック!男前で寡黙で知性があり、言葉選びは天下一品。ルノー署長も言うように女性だったら絶対に惚れてしまいます。これだけなら僕のようなモテない男性視聴者から嫌われそうですが実は人情家な一面があり、そのせいで自身が損をする傾向にあります。そのような要素があるので、サムやルノー署長など男性からも好かれますし、僕ら童貞たちも彼の気持ち寄り添うことができます。

しかも彼の寡黙な性格が故に、セリフには直接的な表現がほとんどなく、彼の意図する事柄はすべてサブテキスト(心の中のセリフ)で届けられています。いい脚本はより少ないセリフで、より多く伝えるといいますが、この映画はまさに最たる例です。登場人物の心情の揺れ動きと、それを視聴者に推測させるところがこの映画の醍醐味です。

あとシンプルにイルザ役のイングリッド・バーグマンが美人すぎる!特に初めてレストランに入ってきたシーンの衝撃よ。ヒロインの美しさがストーリーにより説得力をもたらしています。

あと全体的にセリフが美しい。英語版も相当ですが、日本語字幕は過去類を見ないほどの素晴らしさです。あの名セリフ「君の瞳に乾杯」は「Here's looking at you, kid」と言っており、英語では「瞳」という言葉が入っていません。つまり直訳すると「君に乾杯」になってしまうのです。ただ前述のとおりこの作品のセリフには含みの部分が多く、直訳だと言葉の美しさが失われてしまいます。その含みの部分を、日本語字幕でも見事に表現しています。この仕事はプロすぎる!!

「カサブランカ」は第二次世界大戦中の愛の物語を描いた芸術作品。ストーリーに一切の無駄はなく、過剰な演出もなし。それでこれだけ観客を魅了できるのですから、現代の進歩した映像技術やダイナミックなシーンって実は必要ないのかも?なんて思わせてくれる作品です。まさに映画・物語の原点!

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