住宅ローンの元利均等方式での返済に対する計算例

$${A}$$円の住宅を購入するために月利$${P}$$で$${N}$$ヶ月のフルローンを組んで元利均等方式で毎月$${X}$$円を返済するとしよう。

本稿の目標は$${X}$$を$${A, P, N}$$の式で表すことである。

以降、本稿では元利均等方式での返済例を扱うことに注意されたい。

返済を漸化式する

$${n}$$ヶ月後に残っている負債を$${A_n}$$とするとする。ただし、$${A_0=A}$$とする。

このとき、$${n\geqq 1}$$に対して、次の漸化式が成り立つ:

$$
A_n = A_{n-1} (1+P)-X
$$

この漸化式を解くと次の一般項が得られる:

$$
A_n = \frac{X+(1+P)^n(AP-X)}{P}
$$

返済公式

$${N}$$ヶ月でローンの返済が終わることから$${A_N=0}$$が成り立つ。
したがって、

$$
\frac{X+(1+P)^N(AP-X)}{P}=0
$$

となるので、これを$${X}$$について解くと

$$
X=\frac{(1+P)^NAP}{(1+P)^N-1}
$$

が得られる($${X,A, P, N}$$はそれぞれ、月支払額、物件価格、ローン年率、ローン月数を表している)。これを本稿では返済公式と呼ぶことにする。

計算例

さて、返済公式を使った計算を例をみよう。
3000万円の物件を年利1.8パーセントの35年ローンで購入するとしよう。
このとき$${A=30000000, P=0.0015, N=420}$$である。
(年利1.8パーセントは月利0.15パーセントであることに注意)
このとき、おおよそ$${X=96327}$$である。
つまり、約9.7万円の支払いが毎月必要である。
毎月96327円の支払いを35年(=420ヶ月)払い続けると総額は約4000万円(より正確には40457340円)となる。したがって、3000万円の物件に対して利子は約1000万円ということになる。

ところで、何とかして同じ3000万円の物件に対して年利1.5パーセントの35年ローンが組めたとしたら支払い総額はどれくらい変わるのだろうか。
返済公式を使って計算すると年利1.5パーセントの場合毎月おおよそ91855円の支払いが必要である。この支払いを35年間続けたとすると総額はおおよそ38579100円となる。したがって、年利1.8パーセントの場合と比べれば支払い総額は約1878240円(=約180万円)少なくなる。塵も積もれば山となるというわけである。

返済公式の逆引き

返済公式を変形すれば次の等式が得られる:

$$
A=\frac{((1+P)^N-1)X}{(1+P)^NP}
$$

これは、月支払額、ローン月率、ローン月数から、購入可能な物件価格の最大値を逆引きする式である。
例えば、毎月8万円、年率1.8パーセントの35年ローンであれば、物件価格は約24915026円(=約2491万円)が最大値であることが分かる。

先に毎月の支払い額の目標を決めてから物件を探したいという人には、上記の逆引き公式が便利かもしれない。


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