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気づきを得る体験のデザイン~教育ゲーム作りのポイント~

前回、前々回と、教育における、“気づきを得る体験のデザイン”についてお話してきました。

https://note.com/shiba_kyoiku/n/nb4e746cda087
【前々回の「校長先生のながーいお話」のポイント】
① 理想の教育は、経験や知識を積み上げた者が、若者に話すことで経験や知識を伝達するのではなく、気づきを得る体験をデザインすることで伝達することであること。
② 最も簡単に気づきを得る体験をデザインする方法は併走であること。

https://note.com/shiba_kyoiku/n/n21d9cac87c43
【前回の「気づきを得る体験のデザイン~アニメ・映画・ドラマ~」のポイント】
① アニメや映画、ドラマには良質な気づきを得られる土壌があること。
② その土壌から教育的価値を生むためには、感想や気づきを聞く“質問”が重要であること。
③ インプットと同時にアウトプットの機会を提供すること。

そして、今回は、ゲームについてお話したいと思います。

ゲームは、気づきを得る体験ができる絶好の場です。
理由は2つ。
1つ目は意思決定できることです。アニメでは、もし主人公に感情移入したとしても、主人公の意思決定には関われませんが、ゲームは自身のプレイで自分以外の人物をコントロールし、意思決定することができます。自分の意思決定に際して、ゲームでは必ずフィードバックが返ってくるので、プレイヤーは気づきを得ることができます。
例えば、ポケモンだと、何のポケモンを捕まえ、何を育てるのか。何の技を覚えさせて、バトルでは何の技を使うのか。意思決定の連続です。
そして、バトルの勝敗などを通じて、プレイヤーはフィードバックを得ることができ、自分のどの選択がよくて、どの選択が悪かったか、気づきを得ることができるのです。

2つ目は失敗し放題であること。実世界の人生では、死んでは終わりですが、ゲームの中では、仮に負けても、目の前が真っ暗になって、お金を取られて、気づいたらポケモンセンターに戻ってくることができます。死んでも終わらないのです。だから失敗し放題。現実世界ではできないようなリスクの高い意思決定をしやすい環境でもあります。
で、これは現実世界でも共通していることですが、失敗からの方が気づきや学びは大きいものです。つまり、たくさん失敗して、たくさん気づきを得ることができます。

このように見るといかにゲームが、気づきを得る体験ができる絶好のデザインとなっているかがお分かり頂けるかと思います。

となってくると、この“ゲーム”というのはぜひ教育現場にも導入したいものですよね。クリス・クロフォードという人によると、「ゲームは最も古く、伝統に裏付けられた教育の道具である。」とも言われています。ゲームと教育の研究は数多くなされていますしね。

実際僕もインターン先のstudioあおの全体授業で、ゲーム開発をし、ゲームを取り入れながら授業を行いました。
一番の力作は、最先端テクノロジーについて学ぶ「テクノロジーの授業」の際に作った「テクノロジーオセロ」というゲームです。このゲームは生徒からも、他のスタッフからも好評を頂いています。

そこで、以下では、僕がゲームを用いた授業を作っている時に押さえているポイントをいくつか挙げたいと思います。

① ゲームを通じて何を学んで欲しいかを考える
まず、ここはゲームを作る上での大前提です。ゲームを行うことが目的となってしまったら話になりません。授業の目的をまずは明確に設定し、その目的に沿ったゲーム作りを目指します。実際テクノロジーオセロを作る際も、上司と何度も授業の目的を確認しました。
ちなみにテクノロジーの授業の目的は「最先端テクノロジーが自分ごととなり、その活用方法について考えることができるようになるため」というものでした。

② ルール、ゴール、フィードバック、自発的な参加を設定する
ゲーム作りの肝は間違いなくここです。ルール、ゴール、フィードバック、自発的な参加は「Reality is broken」という本に書かれていたゲームの基本的な構成要素となる4つです。(この本はインターン先の社長のてつさんが自分に買って下さったのですが、めちゃくちゃ役だってます。ありがとうございます。)

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ゴール:プレイヤーが達成すべき具体的な成果のこと
ルール:プレイヤーがゴールに達する上での制約のこと
フィードバック:プレイヤーがどこまでゴールに近づいているかを表したもののこと
自発的な参加:ゴール、ルール、フィードバックを理解した上で、自分の意思で参加すること

(Jane McGongal(2011)「Reality is broken~幸せな未来は「ゲーム」が創る」より)

ゲームを作る際はこの4つを設定することに頭を使います。
自分が作ったゲームを例にすると、テクノロジーオセロでは、ゴールは”4チームの中で最も多くマスを獲得すること”。
ルールは長くなりすぎるので割愛。
フィードバックは、現在所持している技術やお金、獲得したマスによって得ることができます。
そして、ちゃっかり大事な自発的な参加。studioあおでの全体授業は基本的に自主参加です。授業の実施日時と、授業概要だけ告知し、受けたい人だけが集まって、授業に参加します。ここは、実際学校となると難しい所ではありますが、自発的にゲームに参加するからこそ、studioあおの生徒はモチベーションが高い状態で授業に参加してくれているのだと思います。
授業を作る側にとっても、生徒が自発的に授業に参加する権利を持っている以上、面白く、役立つコンテンツを作らないと生徒が集まってくれなくないですからね。両者のモチベーション向上に役立っている仕組みだと思います。

長くなるのでと割愛したルールについてですが、実はここがゲーム作りの難しいポイント。ルールがゲームの世界を形作ります。
僕が思うルールを作るコツは構成要素を洗い出すことです。これは作るゲーム全てに当てはまる訳ではないのですが、非常に意識しているポイントです。ゲームの世界の変数を決める構成要素を洗い出すのです。例えばテクノロジーオセロを作る際には、まず最先端テクノロジーにまつわる社会の構成要素を洗い出しました。企業、人、お金、時間、技術。その中から、ゲームに活用できそうなものを変数として抽出し、要素同士相互のバランス調整を行うのです。(←ここはテストプレイを繰り返しながら調整します。)

③ ゲームをアウトプットの場と位置づける
これは生徒に知識の獲得を目的にしたゲームにのみ当てはまります。ゲームを通じて知識の獲得ができることはもちろん理想的ではありますが、ゲームを作る上で非常にハードルが高いです。
そこで、ゲームをアウトプットの場と位置づけ、ゲームが始まる前にインプットとなる授業を行うのです。アウトプットを前提としたインプットは、インプット効率を上げることが期待できますし、ゲームに勝ちたい生徒の集中力が変わります。

④ 最後に振り返りの時間を用意する
ゲームが終わった後にゲームの振り返りを行います。「ゲームやってみてどうだった?」と生徒に聞いてみたり、アンケートを取ってみるのもいいと思います。これにより、ゲームから学んだことを思い出したり、整理する機会をつくります。授業の目的達成のためには必ず確保したい時間です。(ゲームが盛り上がり過ぎて僕はしょっちゅうこの振り返りの時間がなくなります。自戒も込めて笑)

こんな感じで教育にゲームを取り入れながら生徒自身が気づきを得る体験を提供していきたいなあと思っています。

相変わらずオチが弱く短い…汗

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