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P-PBL教育の概要と特徴

第1回目はstudioあおの教育スタイルであるP-PBLの概要とその特徴について今までの教育と何が違うか改めて自分自身で考えてみたので、書いてみようと思います。

アクティブラーニング。最近はかなり聞き慣れた言葉ではないでしょうか。
受け身の授業から自発的に取り組めるような授業に。もうこれは多くの教育現場に導入され、当たり前の時代となってきています。

アクティブラーニングやAI学習に代わり、10年後の社会を見据えた上での新しい教育の形がP-PBL(Personalized-Project Based Learning)です。P-PBLとは生徒それぞれの興味・関心に沿ってプロジェクトを立て、実行していく中で学びを育むという教育方法です。

以下実際に僕が生徒と一緒に取り組んできたプロジェクトの一部です。
・イソギンチャクの研究
・小説執筆
・写真集作り
・変化球の故障リスクに関する研究
・ボードゲーム作り
などなど・・・

このP-PBL教育の特徴は大きく2つ。「多様化」と「自己決定」だと考えています。

まず「多様化」について。最近教育の世界で、よく似た言葉で「個別化」というのが注目されていますが、「多様化」と「個別化」は大きく異なります。


「個別化」は集団授業ではなく、個別指導のように生徒それぞれの能力に合わせた教育カリキュラムを提供するというもの。塾の個別指導塾やアプリでの受講も「個別化」の一種です。この「個別化」における生徒の学びの違いはスピード難易度です。つまり直線的に決められたカリキュラムでどこを学ぶかを生徒それぞれ変える教育が「個別化」です。


これに対し、「多様化」は生徒それぞれが学ぶ内容が異なります。生徒の興味・関心に沿ってプロジェクトを立てるため生徒の興味・関心の数だけ学びの数が増えていきます。つまり1本の直線でなく、生徒の数だけ学びの数と深さがあります。

個別化 多様化

時々教室の見学にいらっしゃった方に、「生徒の興味・関心は小中学生だとかなり限られるのではないか」と質問されることがあります。代表例はゲームでしょう。実際「好きなことは何?」と生徒に聞いたとき、小中学生の男の子で「ゲーム」と答える生徒はそこそこ多いです。では「ゲーム」と答えた彼らは全員同じ「ゲーム」のプロジェクト・同じ学びを行うのか。答えはもちろんNOです。

好きなことがゲームだとしても、「何のゲームが好きなのか」「ゲームのどういう所が好きなのか」は生徒によって大きく異なります。

自分「好きなゲームは何?」
生徒A「大乱(大乱闘スマッシュブラザーズ)!」
自分「自分もやったことある!どんなところが好きなの?」
生徒A「みんなで家に集まって勝負するところ」

自分「好きなゲームは何?」
生徒B「マイクラ(マインクラフト)!」
自分「あ、それ知ってる!最近みんなやってるよね!どんなところが好きなの?」
生徒B「戦ったり、建物作ったりすること」

この生徒AとBでは好きなことが同じでも、その中で何が好きか、どういうところが好きか、どこでやるのが好きか、いつやるのが好きか、など深掘るほど「好き」に違いがあることが分かります。

実際のP-PBL教室では、例えばスマブラが好きな生徒Aは、みんなでスマブラをより楽しむにはどうするか考え、e-sportsの大会を行うプロジェクトを立て、より盛り上がるための仕組み作りや、イベントの集客、運営に取り組みます。
一方マインクラフトが好きと答えた生徒Bは、その好きを深掘りすることで、「ゲーム」をプレイすることより、ものづくりに興味があることが分かります。プロジェクトでは、ゲームの中で“困った”を見つけ、困ったを解決する物作りに取り組むプロジェクトに挑みます。

プロジェクト例

また、「ゲーム」が好きな子は、ほとんどの場合「ゲーム」だけが好きなわけではありません。例えば、「ゲーム」と「動物」が好きだったり、「ゲーム」と「漫画」が好きだったりします。この好きを組み合わせることで、生徒が最もモチベーション高く取り組めるプロジェクトを作り、取り組むことができるのです。

同じ「好き」でも、細分化した結果、生徒それぞれが別のプロジェクトに取り組む。この「多様化」こそP-PBL教育の1つ目の特徴です。

2つ目の特徴は「自己決定」。
P-PBL教育では、自らが取り組むプロジェクト・学びを自分自身で決めます。
もちろん、取り組むプロジェクトを考える際は、スタッフから生徒に対して提案などは行いますが、最終的な意思決定は必ず生徒が行うようコミュニケーションを図ります。


学ぶ内容、取り組む内容を自分で決めるということはこれまでの小中学生に対する教育ではあまりないことです。学校に行けば1限目から5限目まで学ぶ内容が決められていますし、アクティブラーニングや従来のPBLでも大概取り組むプロジェクトは決められています。


自ら決めることは、生徒のプロジェクトや学びに対する責任感や愛着、延いてはモチベーションが高い状態で取り組むことが期待できます。仕事も指示されて取り組むより、自ら決めた仕事の方がモチベーション上がりますよね。


また、学ぶことが決められているということは「問い」が全て用意されているということです。近年文科省が力を入れ始めている「答えがない」問題にも「問い」は設定されています。

一方で、P-PBL教育において、取り組むプロジェクト・学びを決めるためには「問い」を見つける必要があります。この「問いを見つける」という力はP-PBL教育にて培う力、社会で活躍する上で最も重要です。自分が問いを見つけ、解決して初めて新たな「価値」が生まれる。これこそ社会人であるというのがstudioあおの考え方だと捉えています。「社会で活躍する人を育てる」という教育本来の意義や、現在の社会の変化を考えると、この「問いを立てる」という力、「自ら決める」を育むというのは、現在の教育のあるべき姿なのではないかと思っています。

ここまでお話してきた、「多様化」と「自己決定」という特徴を兼ね備えたP-PBL教育。僕は今、この新しい形の教育に携わることができていることを誇りに思うし、今後もっと多くの人に届けたいと考えています。

一方で、このスタイルが教育の究極形だとは全く思っていないです。社会が変化すればまた教育の姿は変わる必要があるし、P-PBL教育においても、どの時期から行うのが最適か、どのような形で多くの人に届けることができるのかなどまだまだ問題は山積みです。このような問題の解決策を考え、実装することで、僕自身も立派な社会人になりたいと思っています。

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