別に何者にもならなくても。

 3人の母になった私は最近よく思う。もう別に何者にもならなくてもいいんじゃないかと。私は4年制大学の観光系学科の出身だけど、卒業後は在学中にハマったカフェを自分でも開いてみたくて某コーヒーチェーンの正社員として就職。

 あ、その前にあったかぁ…。子供向け英会話教室の飛び込み営業の仕事。この仕事は4年の年明けになってもどこからも内定もらえなくて、焦って決めちゃったんだよなぁ…。思えばここがいけなかったのかもしれない。

 4人兄弟の長女で、大学進学したのは私と末の弟だけ。今となれば大学にかかる費用もなんとなくわかるから言えるのだけど、奨学金を借りて交通費は自腹でお願いね、は兄弟の人数が多い我が家では当たり前の負担だったんだ。去年35歳で108万の奨学金を返し終えて、やっとそれに気づいた。

 去年放映された櫻井君のドラマでも題材として扱われていたけど、奨学金って借りる本人に充分な説明をせずに親の意向で決めてしまっていることが多いんじゃないかな。私だって、いきなり申込書を出してきた父に「ここに借りなきゃいけない理由を書いて。」なんて淡々と言われて渋々マス目を埋めたっけ。

   「そういえば、奨学金ってオレが頼んだんだっけ…?」

このシーンを見た直後、私は固まってしまった。間違いなく、このセリフ一言に日本の教育費問題の全てが詰まっている。

 月々7千ちょっとの返済でも、正直奨学金の負担は結構重い。正社員で自宅通いであればそこまでキツくないと思うけど、一度雇用が不安定な環境に陥ってしまうと自宅通いでも支払いが大変になってしまう。

 108万もあったら、今頃マンションの頭金にでも充てられてたのかなーとぼんやり思う。基本は親が大好きな私だけど、充分な説明もせずに奨学金を借りさせた親を恨めしく思う時もある。なんだったら「教育費充分に貯められなくてごめんね。でもこれは少しずつでも返していく借金だからしっかり働くんだよ。」とでも言ってほしかった。言うと言わないのとではその後の過ごし方がぐんと違ってきたと思う。

 奨学金というとんちんかんな制度を設けるよりも、国がもっと補助金を惜しみなく出して最初にかかる学費そのものを下げてほしい。

 全てを奨学金のせいにはできないけど、結局私は「大卒にもかかわらず、専門的な職にも就けないなんて…。」と時々母から痛いところをチクリと突かれる。せっかく奨学金も返し終えて、もうそのことは心の中に葬り去っておこうと思ったのになぁ。

 3人の母になった私は、最近特によく思う。別に名の知れるような何者なんかにならなくたっていいと。心と体が健康であればどんな仕事だってできるし、AIにとって代わられるくらいの仕事なら、むしろ逆方向の人と対面する仕事をしなさいと言いたい。そこで自分なりのスパイスを加えればいい。    PCがあまり得意でない私は、体を動かす仕事でお金と健康寿命を得て、3人の子供を奨学金なしで進学させることが夢。

 何者かになれなくても、大事な人の心の拠り所にでもなれれば、生きている価値は十二分にある。それでいいのだっ☆(*^_^*)

   

 

 



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