初めての鬼　#毎週ショートショートnote


目が覚めた。
体を動かさなくてもわかる、未だ残る疲労、倦怠感ーーー。太陽が薄いカーテンを透かして寝不足の脳を灼く。

はっとして飛び起きた。寝坊した。
昨日は眠れず、ゲームをして夜更かししてしまった。
俺は今日から新社会鬼。初日から遅刻はまずい。
起きて5分で角を磨き、着替えて朝食も食べず家を出た。

若者の大半は、義務教育が終了した後は社会鬼になる。
その活動はというと、閻魔大王の配下として働く地獄業、「泣いた赤鬼」をはじめとする鬼関連作品の舞台、書籍、アニメ、メディア露出など多岐に渡る。
そして今日はその中の一つ、季節行事活動、節分だ。
それを見越してか入鬼式は2月3日、節分に行われる。
新入鬼員の初仕事は節分で人間に豆を投げられ退散する役がお決まりだ。

俺は正直社会鬼になりたくなかった。

俺達は角があるだけで人間と変わらない。最後に人間が勝つのは鬼側のお膳立てである。
なぜ鬼ばかり虐げられる？
もっと人間と共生する方法はないのか？と考えるほど眠れなくなった。
でも社会鬼になれば小さなことから変えられるかもしれない。
そんな小さな希望で俺は今日、社会鬼になる。

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