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地球の学びブログ ヤンバルクイナ


ヤンバルクイナ


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ヤンバルクイナ

ヤンバルクイナ Hypotaenidia okinawae


保全状況評価[1]ENDANGERED(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))

分類
:動物界 Animalia
:脊索動物門 Chordata
亜門:脊椎動物亜門 Vertebrata
:鳥綱 Aves
:ツル目 Gruiformes
:クイナ科 Rallidae:Hypotaenidia
:ヤンバルクイナ H. okinawae学名Hypotaenidia okinawae
(Yamashina & Mano, 1981)[1][2]シノニム

Rallus okinawae
Yamashina & Mano, 1981[3]

和名ヤンバルクイナ[3][4][5][6][7][8][9]英名Okinawa rail[1][2][3][5][6][8][9]

ヤンバルクイナ(山原水鶏[8]学名:Hypotaenidia okinawae)は、鳥綱ツル目クイナ科Hypotaenidia属に分類される鳥類

日本沖縄本島北部の山原(やんばる)地域のみに生息する固有種であり、1981年昭和56年)に発見された[10]和名は上記の生息地域の地名に由来し[4][7]、「やんばる地方に棲むクイナ」の意[11]ほとんど飛ぶことができない[11]

分布

沖縄本島北部(大宜味村国頭村東村)の固有種[5][7][9]

模式標本の産地(基準産地・タイプ産地・模式産地)はフエンチヂ岳[3]

発見の経緯

1981年の数年前から山階鳥類研究所の研究者らは沖縄本島北部に位置する山原地域で種不明のクイナ類を目撃していた[12]。1981年の調査で2羽を捕獲し(これらはいずれも形態の検討等の後に放鳥された)、その数ヶ月前に元々ヤンバルクイナの個体を知る玉城長正により入手された1羽の死骸(剥製標本)とあわせて検討された結果、学界に未知の新種であることが判明し、同年末に和名をヤンバルクイナ、学名をRallus okinawaeとして新種の記載論文が発表された[3]。この剥製標本がホロタイプ標本とされた。これは玉城長正(国頭村鳥獣保護員でヤンバルクイナの特徴を知る)が与那の道路際で発見した死骸が、玉城に新種らしき鳥の死骸確保を頼んでいた高校教諭の友利哲夫により剥製化され、山階鳥類研究所に寄贈されたものである[13][14]

この「発見」の後になって、本種が以前から、地元の人々にアガチアガチャ(「慌て者」の意)、ヤマドゥイ(「山の鳥」の意)等の名で知られていたことが明らかになった。友利は「やんばるの森に(沖縄本島に生息しないはずの)キジがいるらしい」という噂も耳にしたと回想している。また、鳥声録音家、野鳥愛好家、写真家ほかによって録音、羽毛の拾得、生態写真の撮影等がなされていたことも判明した[15]

形態

全長35センチメートル[5][9]。翼長15 - 16センチメートル[8]。翼開長48 - 50センチメートル[8]。体重340 - 430グラム[8]。上面は暗オリーブ褐色で、顔や喉は黒い[3][6]。耳孔を被う羽毛(耳羽)から、後方に向かう白い筋模様が入る[6][8]。眼先に白い斑点が入る[3][4]。頸部から腹部にかけての下面は黒く、白い横縞が入る[4][5][6][9]。尾羽基部の下面を被う羽毛(下尾筒)は黒褐色で、下尾筒の羽先は黄褐色がかった白色[3][4]。体重と比較して翼の面積は小型で、翼を動かす筋肉も貧弱[7]。初列風切内では第10初列風切が最も短い[3][5]

虹彩は赤い[8]眼瞼は赤橙色[3][4]。嘴は太い[5]の色彩は赤く[3][6][8][9]、先端が白い[4][5]。後肢は発達し太い[5][6]。後肢の色彩は赤い[3][5][6][8][9]

卵は長径5センチメートル、短径3.5センチメートル[5]。幼鳥は虹彩や嘴が褐色で、後肢は黄褐色[4]

分類

以前は旧ヤンバルクイナ属Gallirallusに分類されており、Clements Checklistでは2019年の時点(v2019)でもヤンバルクイナ属に分類されている[16]。一方でBirdLife Internationalでは2016年の時点で、IOC World Bird Listでは2021年の時点(v11.1)で、本種をHypotaenidia属に分類している[1][2]

1978年与那覇岳で山階鳥類研究所員に発見されてから、複数の目撃例があった[7]1981年に特別調査チームが編成され、6月に幼鳥、7月に成鳥が捕獲された[7]。発見後には現地での死骸の拾得や写真撮影、鳴き声の録音の事例があったことや後述するように方言名が存在することなども判明した[7]

生態

平地から標高500メートル以下にある主に下生えが繁茂した常緑広葉樹林に生息する[6]リュウキュウマツ林や採草地、海岸付近の民家周辺などで見られることもある[5]。夜間になると樹上で休むが[4][6][9]、これはヘビ類を避けるためだと考えられている[5][7]。ほとんど飛翔することはできず[6]、樹上6メートルの高さにいた個体がほぼ羽ばたかず約45度の角度で滑空した観察例がある[7]薄明薄暮時に鳴き声を挙げ[4]縄張りが隣接する個体同士で鳴き声を挙げ縄張りを主張する[9]

2016年に発表された31羽(そのうち交通事故で死亡した個体が16羽)の胃の内容物調査では、昆虫腹足綱ミミズ果実種子などが報告されている[17]。この調査では81 %の個体でバンダナマイマイBradybaena circulus(21個)、オキナワヤマタニシCyclophorus turgidus(14個)などの腹足綱(計59個)が発見された[17]。大型の腹足綱(巻貝類)は殻を割って軟体部のみを食べ、小型の巻貝類や殻が硬いヤマタニシ類は丸飲みにする(そのため胃の内容物調査では軟体部のみで消化されやすい大型腹足綱やミミズ類の割合が小さくなっている可能性が示唆されている)[17]アカメガシワキキョウランゴンズイホウロクイチゴヤマモモ、イヌビワ類などの植物質では果皮があまり消化されていなかったため、本種が種子散布者となっている可能性が示唆されている[17]。この調査対象となった交通事故死した個体では、アシジロヒラフシアリTechnomyrmex brunneusやオキナワハンミョウCicindela okinawana、アカメガシワなどのような道路などの開けた林縁に生息・自生する食物、ハナアブ類の幼虫のように有機汚濁の進んだ人為的な水場に生息する獲物を多く採食していたことが示唆されている[17]。別の胃の内容物調査ではシロアゴガエルヒメアマガエルが発見された例もある[17]。本種の全長よりも長い、全長58センチメートルのリュウキュウアオヘビを飲み込んだ個体の撮影・報告例がある[18]。林床で採食を行うが、浅い水中で採食を行うこともある[6]

外部寄生虫として、2005年に西銘岳で幼鳥2羽からシラミバエ科の一種Ornithoica exilisが採取された例がある[19]

繁殖様式は卵生で、3 - 5個の卵を産む[5][9]シダ植物や低木草本が繁茂した地表に、枯れ葉などを組み合わせた皿状のを作る[5]

人間との関係

森林伐採、農地開発、林道ダムの建設による生息地の破壊や分断、交通事故、側溝への雛の滑落による衰弱死、人為的に移入されたイヌノネコフイリマングースなどによる捕食などにより生息数は減少している[5][6][7][9]。増加したハシブトガラス、新たに移入されたタイワンスジオなどによる影響も懸念されている[5][9]。1996 - 2001年に本種の生態を利用して録音した鳴き声を再生して反応の有無により生息状況を確認する方法(プレイバック法)を用いた調査では、1985 - 1986年の調査と比較して分布の南限が10キロメートル北上して分布域が約25 %減少しているという結果が得られた[5][20]。特にマングースについては沖縄本島南部から分布が北上するのとヤンバルクイナの分布の南限が北上するのが極めてよく一致していることから[21]、本種の減少の主因であると考えられている[20][22]。2000年に大宜味村、2005年に東村ではほぼ見られなくなり、連続的に分布するのは国頭村に限られた[9]。1998年6月 - 2003年6月にかけて22羽の死亡報告例があり、そのうち16羽(年あたり平均3.4羽、死亡報告例の72.7 %)は交通事故が死因とされる[22]。5 - 6月に交通事故による死亡が多い傾向にあり、これは繁殖期と重複することから雛に餌を与えるために活発に活動している、または側溝に落下した雛の周囲で警戒している親鳥が交通事故に逢う可能性が高いことが示唆されている[22]。2017年の時点で沖縄県レッドリストでは、絶滅危惧IA類と判定されている[5]。5-6月に轢死による死亡例(ロードキル)が多いことも大きな問題で[23]、巣立つ前の幼鳥に餌を与えるため親鳥が活発化することが原因だと考えられている。1995-2014年までに、交通事故確認件数が312件(うち278件死亡)されており、そのうち5月が75件(うち死亡69件)、6月が63件(うち死亡55件)と44%がこの時期に集中している。また、特に近年交通事故認知件数は増加傾向にあり、1998-2004年は年間1-6件だったものが、2014年は47件(うち死亡43件)発生している[24]

2000年度から沖縄県(2001年度からは環境省も)によるを用いたマングースやネコの駆除・捕獲が進められているが[22]、完全駆除の目途はたっていない[9]。マングースについては環境省や沖縄県によって専門の作業員による捕獲、北上を防止するための柵の設置、探索犬の導入などの対策が進められている[5]。ネコについては地方自治体によって適正飼育条例が制定されたり、獣医師が中心となりマイクロチップを埋め込んだりするなどの対策が進められている[5]。1999年には「やんばる野生生物保護センター」が設置された[9]。2005年にNPOどうぶつたちの病院によって、「ヤンバルクイナ救急救命センター」の運営が開始された[5]。日本では1982年に、国の天然記念物に指定されている[5][9]1993年種の保存法施行に伴い、国内希少野生動植物種に指定されている[5]

ヤンバルクイナの生息数は、1985 - 1986年に約1,800羽[5][25]、2005年に約720羽[5]、2010年に845 - 1,350羽[9]、2014年に1,500羽と推定されている[5]。近年生息が確認できなかった大宜味村北部山中や東村高江での生息が確認されてきている。ただし、分布域も不連続で未だ安定生息とは言えない状況にある[要出典]。

2004年からは環境省で「ヤンバルクイナ保護増殖事業計画」が策定され、生態調査の実施や飼育下繁殖施設の建設が進められている[5][9]。2009年からは飼育下繁殖法を確立させる試みが進められている[5]。2015年時点の飼育個体数は68羽[5]。繁殖については、1998年に沖縄県名護市ネオパークオキナワにて、野外から保護された卵から初めて孵化に成功した他、2007年にNPO法人どうぶつたちの病院沖縄の施設[26]にて卵の救護による育成個体同士による自然孵化及び人工孵化、また、環境省がヤンバルクイナ飼育・繁殖施設にて、2012年に4羽の自然孵化に成功。また、2014-5年には、ヤンバルクイナ救命救急センター(NPO法人どうぶつたちの病院沖縄所有)にて飼育下繁殖個体同士からの第2世代のヒナ3羽の孵化に成功[27]している。


絶滅危惧IA類 (CR)(環境省レッドリスト)[9]

鳥類

絶滅(EX) 鳥類 カンムリツクシガモ
絶滅(EX) 鳥類 リュウキュウカラスバト
絶滅(EX) 鳥類 オガサワラカラスバト
絶滅(EX) 鳥類 ハシブトゴイ
絶滅(EX) 鳥類 マミジロクイナ
絶滅(EX) 鳥類 ダイトウノスリ
絶滅(EX) 鳥類 ミヤコショウビン
絶滅(EX) 鳥類 キタタキ
絶滅(EX) 鳥類 シマハヤブサ
絶滅(EX) 鳥類 ダイトウヤマガラ
絶滅(EX) 鳥類 メグロ
絶滅(EX) 鳥類 ダイトウミソサザイ
絶滅(EX) 鳥類 オガサワラガビチョウ
絶滅(EX) 鳥類 ウスアカヒゲ
絶滅(EX) 鳥類 オガサワラマシコ
絶滅危惧IA類(CR) 鳥類 ハクガン
絶滅危惧IA類(CR) 鳥類 シジュウカラガン
絶滅危惧IA類(CR) 鳥類 アカガシラカラスバト
絶滅危惧IA類(CR) 鳥類 オガサワラヒメミズナギドリ
絶滅危惧IA類(CR) 鳥類 クロコシジロウミツバメ
絶滅危惧IA類(CR) 鳥類 コウノトリ
絶滅危惧IA類(CR) 鳥類 チシマウガラス
絶滅危惧IA類(CR) 鳥類 オオヨシゴイ
絶滅危惧IA類(CR) 鳥類 トキ
絶滅危惧IA類(CR) 鳥類 ヤンバルクイナ
続きます。

今日は、ヤンバルクイナを見て頂きありがとうございます。
地球でうつくしく生きてください。
これからもよろしくお願いします。