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クリエイターが、映画「ルックバック」に惹きつけられてやまないのは何故か【しあの備忘録】

少し前から、クリエイターの仲間たちの中でよく「ルックバック」というワードを聞くようになっていた。

どうやら、映画だという。しかも、1時間という短い尺の。

観た人がみんな口を揃えで絶賛するから、どんなものなのかとずっと頭の隅で気になっていた。

とある日、運よく18時くらいから暇な時間ができた。しかも、表参道にいた。映画「ルックバック」は上映されている映画館が限られており、どこでも観れるというわけではないらしかったが、渋谷あたりでは公開されていると知っていた。

それで、えいっと勢いに任せて渋谷まで移動して、映画のチケットをネット予約したのだった。

以下、ネタバレ要素を含むため、まだ観ていない人は閲覧をお勧めしない。すでに観た人は、己の価値観と照らし合わせながら読み進めてほしい。

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前提、私はシンガーソングラッパーである。
パフォーマンスをする、パフォーマーであるという側面も持っているが、歌詞を考えて0から生み出していくというクリエイターの要素も強くある。

そういう人間のフィルターを通して観た「ルックバック」の感想であることをご承知おきいただきたい。

【クリエイターが、映画「ルックバック」に惹きつけられてやまないのは何故か】を、1個人の意見として書き留めていく。

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冒頭から、泣きそうだった。
涙腺というか、全身にゾワっとした鳥肌を感じる場面がたくさんあった。

たまに、「よくある話しの展開だった〜w」というような感想がXで流れてきたが、そんなことはあるしそんなことはない。

確かに、大枠だけで見れば、どこか既視感があるような内容なのかもしれない。だが、リアルなのだ。ひたすらにリアルで、本当に自分の記憶にあったのではないかと錯覚するくらいに共鳴してしまった。表現の仕方が、ごく丁寧だ。

印象に残っている場面は、多すぎて書ききれないが、つい頬が綻んでしまった場面が1つ。

藤野が京本の家をはじめて訪れた時、「藤野先生!!!」と彼女に呼ばれ。サインを書いて、なんでもないですって顔をして立ち去った。その後、少しずつ小走りになって、最後にはスキップになっていく。

その心の動きと、行動が、痛いくらいに刺さって。刺さって。
刺さりまくって涙が止まらないのであった。

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この物語は、クリエイターにとって、己の経験と照らし合わせながらみていくと、それぞれの人生のルックバックにもなりえる。

自分自身も、自分の人生の歩みに、自然と多くのことを照らしていた。

仲が良い友達に目標を否定されたことや、自分よりも圧倒的に強い者に出会った時の絶望。その絶望はスキルを磨くことでしか解消されていかないということ。承認の喜び。背中を預け合うことがいかに素晴らしいかということや、離れる時の離れ難さ。

等、これでもか!というほどの、景色がフラッシュバックした。
何年経っても、忘れられない言葉や思考の破片ってあるよね。

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この物語が、映画が、このように大ヒットと言われるくらいに人々に広まって。涙の嵐を呼んでいるというのは、この世界中に同じように、しんどい気持ちを持ちながらも、作り続けた人や、志を持った人や。

何かしらの近い、共鳴できる何かを持っている人がそれだけいるのだということで。そう思うと、この物語がヒットしたこと自体が嬉しい。どこか、君は一人ではないと言われているような心地がした。

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逆にいうと、「そんなに絵ばかりを描いていたら、中学に入ってキモがられるよ!」と、言う側だった人が観ていたとしても。自分が似た発言をしていたとしても、その人は自分が言ったことを思い出さないのではないかと思う。

その人にとっては、人生の中で重大な場面ではないから、さらっと流れているはずで。受け取る側にとっては重大な場面であるから、このようにざらっと残るのだ。だから、Xに「観て反省をした」というようなコメントがあまり流れてこないのは、そういう了見のためだと思う。

また、そうやって”親切心”をかざして、彼女に声をかけた同級生が、卒業以降の藤野の人生の中に一切顔を出さないというのもリアルだと思った。

親や家族が、売れっ子になっていった藤野に対して、同じような”心配”を言っているような場面がもうないというのもリアルだと思った。

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本当はもっと、藤野と京本が共に歩んでいる物語をみたかった。
みたかった。そうであって欲しかった。
京本がいなくなってしまったことは、心に大きな風穴をあけられた心地。

リアルだと感じている物語なだけに、ひどく痛かった。

だが、藤本さんがなぜこのような表現に至ったのかという背景を知った時に、スッと腑にも落ちた。

この痛さを、やるせなさを、忘れられないだろう。

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ここまで、心の赴くままに文字を書き連ねてきた。
放出に近い気持ちだ。

2000文字も書いたのに、ちっとも心の中の感情を全部伝えられていない気がする。言葉を尽くしても、尽くしきれていないという感覚。

それほどまでに、私にとってのルックバックは衝撃であった。
今後も心の隅に残るような作品になっていく、というか。
残しておきたいと思って、この文章をnoteに残す。

2024.7.18
しあ

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しあとは?

長崎生まれの福岡育ち、東京を中心に活動しているシンガーソングラッパー。6歳の頃から詩を書くのが好きで、18歳の時にラップに目覚めた。己の幸せのコップを満たして、溢れさせることを信念に、等身大の感情や価値観を楽曲を通して世に提示している。

2016年より活動開始。2019年リリースの1st single「Petrichor」はテレビ朝日系「BREAK OUT」にて取り上げられた。2021年12月に1st album 「WORLD OF SHEER」をリリース。2022年5月には「スシロー行きたい」が期間限定でスシロー全店でオンエアされた。2023年11月、『言語学的ラップの世界 / 川原繁人feat.Mummy-D,晋平太,TKda黒ぶち,しあ』を出版。また、エンタメ音楽イベント「せれんでぃぴぃてぃ」を主催している。
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