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The Girl(s) take the next step.

 2017年2月22日、[ガーリーホープ]白菊ほたるが登場しました。今回の衣装は先行した[ガーリーポッシブ]岡崎泰葉と同様の意匠であり、エピソード名や内容からも、彼女たちのユニット「GIRLS BE NEXT STEP」(以下GBNS)の共通衣装であると言っていいでしょう。今後、松尾千鶴、関裕美、(そして森久保乃々)のガーリー衣装での登場が予想され、各プロデューサーたちの間で期待されています。



 今回はそれを受けて、「ガーリーポッシブ」岡崎泰葉の話をしようと思います。

 まず、エピソード名の「ポッシブ」ですが、これは「possible」の日本語読みとします。意味はご存じのように、可能性、出来る、起こりうる、ということになります。これは関裕美、松尾千鶴、白菊ほたるの3人のユニット「GIRLS BE」とも共通するモチーフであり、つまり、泰葉さん/GBNS/女の子には、なんだって出来るし、なんだって起こりうるよ、ということ。
 そして現時点では憶測に過ぎませんが、共通衣装では彼女たちが望んでいたことが特技名になるのではないかと考えています。
 泰葉さんが「フレンドステップ」。
 ほたるちゃんが「ポジティブステップ」。
 一歩を踏み出してまで手に入れたかったものが、「友達」と「肯定」であると考えると、彼女たちのこれまでがどのようなものであったかが伺えて感慨深いものがあります。
 また一方でエピソード名は、「彼女がもともと持っていたけれど、自分では気がついていなかったもの」ではないかと思います。


 泰葉さんは以前、自分を人形のようなものだと思っていました。(2013年のひな祭りアイドルサバイバルでの「私は人形じゃない…!」は、泰葉さんを代表する印象深い発言でもあります。)
 自分は誰かに言われたことをやるだけの存在であり、自分なんていうものはなく、やりたいこともなく、空っぽで、空虚。でも、そんなのは嫌だと思って、新たな一歩を踏み出した。そう泰葉さんは思っているでしょうし、彼女の中では事実そうなんでしょう。
 けれど、そもそも泰葉さんがそのようなものだなんて、おそらく誰も思っていなかったはずなんです。彼女はずっと努力を続けてきて、技術を磨き続けてきた。「誰かに言われたことを完璧にこなせるように」。とんでもないことです。
 事実ぷちデレラでは、オーディションに参加した際、「なんで貴方がわざわざオーディションを受けるんだ」と驚かれる「岡崎泰葉」の評価の高さが伺えるエピソードも存在します。
 子役からモデルになったとはいえ、ただの一度も退くことなく一線で戦い続けてきた「岡崎泰葉」の実力は、事実として、泰葉さん自身が考えているよりもはるかに高いところにある。
 しかし前述のように、泰葉さん自身の自己評価は思いの外低いものでした。磨き続けてきた技術と経験に対する自負はあるのに、自分自身への評価の低さ、自信の無さがかいま見える。おそらくは初期衝動がないままに、仕事を始め、続けてしまったことから生じた「穴」に嵌まってしまったということだったのではないでしょうか。この自己評価のアンバランスさは、泰葉さんの命題のひとつでもありました。

 以前、岡崎泰葉というアイドルは、シンデレラではなくいばら姫であると書いたことがあります。
 魔法に出会って、輝く場所へと向かうシンデレラガールズの多くのアイドルと違い、彼女ははじめから輝く場所にいる、祝福を受けたお姫様であり、逆に魔法によって眠らされているんだと。
 だからわたしたちは、泰葉さんにかけられた魔法を解いてあげなければいけない。
 彼女を守るいばらを散らし、眠っている普通の女の子を起こしてあげないといけない。

「ねぇお嬢さん。どうしてそんな顔でひとりでいるの。見てごらん。貴方を縛るものなんて何一つないじゃないか。貴方はなんだってできるし、どこへだって行けるよ」

 泰葉さんの(最初の)物語は、彼女がほんとうの彼女自身に出会うまでを描いたものだと言えます。自分を縛り、自分を苛み、自分を傷つけるものが、実は自分自身だったと気がつくまでの物語。彼女には最初から敵なんていなかったというお話。
 だから、プロデューサーがやったことは、泰葉さんの好きにやってもらうことでした。思うとおりにやって、ただただ楽しんでもらうこと。それは泰葉さんへの信頼があった上でのことだと考えられますが、彼女が望むなら、どこへだって行けるし、なんだってできるということに気づいてもらうことでもありました。

 アイドルとして小さな一歩を踏み出して、様々な活動を続けてきた結果、泰葉さんは、過去と向き合い、過去を受け入れ、今の自分自身をフラットに認識するに至りました。
 そうして改めて踏み出した「あらたな一歩」は、泰葉さん自身も、わたし/わたしたちも、多くのファンからも、つまり誰からも祝福されるものになりました。泰葉さんは自分のこれまでが間違っていなかったと確信を得ることが、「自分で望んで」「頑張ってきたこと」を認めることができたんです。
 はじまりは確かに親に言われたからでした。望んで始めたことではなかった。けれどそれを続けてきたのは、誰かに言われたからではなく、自分自身がやりたいから。だからわたしは頑張ってきたんだと。だからこれからも、わたしはこの場所で頑張って行くんだと。だってそれは、それこそは、わたしがほんとうにやりたいことだから。


 泰葉さんにとって夢は叶えるべき目標です。言ってみれば挑戦する課題に過ぎません。なぜならこれまでも求められたことには応えて、叶えてきたからです。
 誰か一人でも信じてくれる人がいるなら、なんだってやってみせる。夢は、叶う。わたしはあなたと、みんなと、夢を叶える。望んで、一緒に努力すれば、それは必ず成し遂げられるんだ。
 岡崎泰葉にとっての「夢」、それはつまり、「可能性」の別名にほかなりません。

 『シンデレラガールズ』は、普通の女の子だって輝ける/輝いている、という場所です。女の子にはなんだって起こりうるし、何にだってなれるし、どこへだって行ける。女の子はみんなお姫様なんだ。諦めず歩みを止めない限り、必ず自分らしく輝く場所へたどり着ける。
 一方で、泰葉さんの望みは「普通の女の子」になることです。
 これまでは魔法を解いて、輝く場所から降ろしてあげることが ---- つまり他のアイドルとは真逆のルートを辿ることが ---- 彼女の望みを叶える道なのではないかと考えていました。
 しかし、そうではなかった。前述のように岡崎泰葉は、自分で勝手に「そうではない」と思い込んでいただけで、実はもともとどこへだっていけたし、なんだってできた。
 それはつまり、岡崎泰葉は(これまでもずっと)普通の女の子だったということに他なりません。そして「普通の女の子」は「どこへだっていける」し「なんだってできる」。それが『シンデレラガールズ』です。それならば ----。
 そうです、お話はひとまわりして、わたしは/わたしたちは今こそこう言うことができるんです。


「だから」

「岡崎泰葉は」

「どこへだっていけるし、なんだってできる。」


 魔法はもう、解けていたんだ。



 さて、それじゃあ、次は、どこへ行こうか?





 最後に補足を少々。
 今回の話のもうひとつ重要な点は、この構造がGBNSというユニットにも当てはまるということです。
 彼女たちが望むものは、実はとっくに彼女たちは持っている。でも、その事に彼女たち自身は気がついていない。
 泰葉さんは可能性。ほたるちゃんは希望。千鶴は素直さ。関ちゃんは可愛らしさ。
 みんな、どこにでもいる、かわいくて、素敵な、「普通」の女の子たちです。だからこそみんな、どこへだって行けるし、なんにだってなれる。彼女(たち)はなにも特別ではない。「だから」、彼女(たち)には「なんだって起こる」。
 GBNSは悪い意味で特別だと思っていた自分達が、なにも特別ではないのだと気がつくことで始まるユニットだと言えます。
 だからこそ、これまで普通の女の子に、君だって(誰だって)特別なんだと伝え続けてきたシンデレラガールズというステージの新しい展開に、彼女たちほどふさわしいユニットはないと私は考えています。

 君は特別ではない。
 だからこそ素晴らしいんだ。
 諦めず歩みを止めない君に幸いを。
 次の、光輝くステージは、彼女たちのものであると。

 岡崎泰葉さんと、GBNSを皆様よろしくお願いいたします‼

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