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日曜の公園、ベンチでたこ焼き

この記事は別のブログに書いていたものを
こちらに移動させたものです。


すっかり春だ。
日記の本題に入る前に、ちょっとだけ今までの話を。


この一年、わたしは自分でもどうしちゃったんだろうってくらい何も生み出せない日々を送っていた。

びっくりするほど気力も創作意欲も湧かなくて、「枯渇」という言葉がぴったりの日々。
今までもネタが出てこないとかはよくあったけど、ここまでの枯れっぷりは今までなかった。

机に向かってペンを握っても、作業の場所を変えてみても何も頭に浮かんでこない。何を描けばいいのか、一体自分が何を表現したいのかもわからない。描く意味があるのかさえ。誰が面白いと思ってそれを読むんだろう?面白いものが描けるような引き出しも深みも、今の自分にはない。わたしが描こうとするものは必ず誰かがもうすでに描いてあって世に出ている気がする。

そんなことを考えながら、何かに夢中になることも没頭することもなく、ただただ虚しく時間が過ぎていった。

それでも世の中はまわっていて、自分以外の人たちが着実に前を進んでいく様子を見ていると、置いてきぼりというより「自分ではもう追いつけないんだな」と思った。

だらだら自堕落に過ごしているくせに、身体と思考は疲れやすくて、寝ている時間だけが何も考えないでいられた。
起きてまず最初に思うことと、寝る前に目を閉じて思うことは、またやってくる非生産で終わる一日のこと。

何も生み出していなくてもお腹はすくし、税金も家賃もスマホ代も発生する。生きているだけで容赦なくお金はかかる。やらなくちゃいけないことは山ほどあるのに何もできない。

久しぶりに会う家族に「仕事は順調か?」と聞かれたら「順調だよ」と答えるけど、いつもどこか後ろめたさがあった。
はっきりとした悩みの種があるわけではない。ただ何もできていない自分が情けなくて、どこかに消えてしまいたくなるのだ。

この枯れきった状態が半年くらい過ぎた頃、いつまで続くかわからない不安と焦りで押しつぶされそうになって気分転換になりそうなことを色々やった。

旅行にも行ったし、引っ越しもした。
壮大な自然やおいしいものはまちがいなくわたしの心身を癒してくれたし、新しい街も新しい部屋もすごく気に入った。
それでも肝心な部分だけはどうすることもできなかった。

わたしはいっそ、この状況に身をまかせてみようと決めた。無理に何かしようとしない。状況を変えようとしない。こういう自分をただ受け止める。それは解決の策としてではなく、そうすることが楽だったから。

どこまで自堕落なんだと思うけど、もはやそれしか選択肢がなかった。自信なんてものはとっくに尽きていたし、正直「ああもうわたしオワコンなんだなー」と思っていた。

何も生み出せない自分になんの価値があるのか見出せず、信じて寄り添ってくれてた人たちとも話すのが辛くなってきて離れ、期待を裏切るような形をとってしまった。

自分が悪いのに誰かに呆れられることは怖くて、信用を取り戻したくてももうすべて手遅れなんだと夜な夜な悔やんだ。「自分は何もない人間」この紛れもない事実だけがただただ苦しかった。つい最近までこういう状態がずっと続いていた。

そしてこの間の日曜日の話。
コーヒーを買いにいきがてら、天気がよかったので公園を散歩することにした。ちょうど桜が開花したばかりで子ども連れの家族やレジャーシートを広げて宴会している人たちで賑わっていた。

そのまぶしい景色を見て「日曜日の公園には愛と希望が詰まっているなぁ」と思った。

移動販売で来ていた屋台のたこ焼きを買い、わたしは池の向かいにあるベンチに座った。日差しはあたたかく、顔にあたる風はちょっとつめたい。こどもの笑い声と、わいわい賑わう人の声。鳥のさえずり、反射した木がゆらゆら映る池の水面。何を考えるわけでもなく、ただぼーっとそこで過ごし、ゆっくりたこ焼きを食べた。

その時ふと「ああもう大丈夫かもなあ」と思った。

何が大丈夫なのかはわからない。うまく言えないけど、なぜだか「満ちた」と感じたのだ。

たこ焼きを食べ終えて、くるりの「愛の太陽」を聴きながらまたしばらくただぼーっとしながら、陽の光を浴びた。前の日、友人が誘ってくれて行ったライブでくるりが新曲ですと言って歌っていた曲だ。初めて聴いた時からこの曲が好きになった。
そして、今日の天気とこの景色になんてぴったりな曲なんだろうと思った。

「そこはかとない心の隙間 太陽が射してくるだろう」

「何も見えない 何も感じない そんなことは未だないくせに」

「みちは続く ただそれだけで歩いていける」


いい歌だな。ほんとそうだ。
何も生み出せなくなった自分でも、何も感じない日はこれまで一日たりともなかったはず。

面白いと思ってもらえるかとか追いつけないとか第三者の存在がいつも意識の中にあったけど、たとえ何も生み出せないわたしでも毎日何かしら思うし、考えることがあった。それをまた描いてみたい。感情をちゃんと言葉にかえて残していきたい。そんな気持ちになった。


春がきてくれてうれしいな。今年は花粉がちょっとつらいけど、春って生命力やはじまりの希望に満ちてる感じがしてとても好きだ。独特なせつなさがあるのもいい。


まずは60点くらいの調子でいこう。55点でもいい。

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