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東京會舘のクッキー

きょうは朝から打ち合わせへ。

朝の通勤ラッシュの電車内、不快指数がはんぱなかった。むわっと湿気がこもる中、ぎゅうぎゅうに知らない人同士の汗ばんだ肌が密着するのが辛くて上体を反らして耐え忍んだ。

うちの父は毎朝五時起きで二時間かけて通勤している。一度も文句を言わずこんな中を通勤してるのってとんでもなくすごいことだな、と思った。




たまに打ち合わせなどで都心のオフィス街に行くと、普段家にこもりきりでなかなか見る機会がないからいろいろと観察してしまう。

お昼休みは皆どんなものを食べに行ってるのかとか、OLさんたちのファッションとか、サラリーマンの髪型や社員証のかけ方、オフィスのインテリアとか。

と同時に、自分がいかに社会から遠く離れて生きているかを突きつけられる。もういい歳した大人なのに社会性が育たぬまま、いろいろなことに無知のまま大人になってしまったなぁと感じる。

名刺交換は何度やっても慣れず、前の人のやり方をきょろきょろと伺ってしまう。名刺をもらう時は「頂戴いたします」って言うこととか、打ち合わせ中はもらった名刺を名刺入れの上に載せておくか机に並べておくこととか。
ぼーっとしてたらうっかり忘れてしまいそうなことも社会の人たちは当たり前に的確にこなしている。そんな気がするのだ。

だから会社に訪問する打ち合わせは毎回ちょっと緊張する。失礼がないように、恥をかかないように肩に力が入る。


今回の打ち合わせは前回が4時間、今回が3時間に及ぶ長丁場で、毎回サーバーに入れたアイスティーとアイスコーヒー、やまほどのお菓子をたくさん用意してくれていた。
おしゃれな包装紙に包まれたチョコレートや、どら焼き、クッキー、えびせんべいまでよりどりみどりだ。その心遣いがとてもありがたく、嬉しかった。


こういう時、訪問先で出された飲み物はいただくことはあっても今までの経験上大体皆お菓子は手をつけないことが多かった。

わたしは生粋のキョロ充(常に周囲を気にして様子を伺う人を指す俗語)なので、「それが大人や社会の暗黙のルールってやつなのか…」と思っていた。そこにお菓子があるのに、まるでそこにないような振る舞いをするのが大人なのか、と。


けれど、今回の打ち合わせ先ではありがたいことに毎回「どうぞどうぞ!遠慮せずお召し上がりください!」と猛プッシュしてきてくれた。それならばわーいと遠慮なくいただいた。わたしはむしゃむしゃとお菓子を食べ、コーヒーもアイスティーもおかわりした。

その中で出されたあるクッキーが、打ち合わせしながらちょっと「おっ」と思ってしまうくらいおいしかった。

一見シンプルでクラシカルな雰囲気のクッキー。特に何か変わったものが入っているわけではなく、超王道のクッキーだ。
だけど、猛烈においしい。直球ストレートにものすごくおいしい。

サクホロな食感、鼻を抜ける豊かなバターの香り。そうそうこういうのがいいんだよと言いたくなるほど、行き過ぎも不足もない100点満点のクッキーだった。

思わずわたしが「このクッキーすごいおいしいですね」と言うと、「ああ!東京會舘のクッキーです。ここのクッキーは丸の内界隈で働く人の王道手土産なんですよ。偉い人に謝りに行く時に、よく持って行ったりします」と笑い混じりに取引先の方が答えてくれた。




謝罪しに行く時の、王道手土産。
そりゃこんなおいしいクッキーをもらったら、たしかに大抵のことは許してしまいそうだとわたしは納得した。


打ち合わせが終わり、残ったお菓子を「余っても困るのでどうぞお持ち帰りください〜!」と言ってたくさん待たせてくれた。
家に帰ってからもそのクッキーを食べながら改めて「やっぱりものすごくうまい…」と感心したのだった。

ネットで検索してみると、たしかに東京會舘のクッキーは「秘書が選ぶ絶対に間違いない訪問先への手土産!」みたいな特集に選ばれたりしていた。
フリーの漫画家が会社に謝罪しに訪問する機会なんてそうそうないことだが、わたしも誰かに謝りに行くときは東京會舘のクッキーを持っていこうと思った。


これは余談なのだけど、さっき「そこにお菓子があるのに、まるでそこにないような振る舞いをするのが大人」と書いた。話題に取り上げるほどでもない些細なこと、別に特段話すようなことがないものでも、自分は結構いちいち気になってしまうタイプだと思う。
それがお菓子ひとつであってもどこのものなんだろうとか、どういう歴史を持つお店なんだろうと興味が湧く。

今回の打ち合わせは、クライアントの方と代理店の方と自分を合わせて計7人の方が同席していたのだけど、帰りのエレベーターの中で「アイスティーおいしくて飲みすぎちゃってすみません!わたしばっかり飲んじゃいましたー」「あれタリーズのアイスティーなんですけど、何気にめっちゃおいしいんですよね」「あとあのどら焼きもおいしかった!しっとりもちもち…」「ここのチョコレートもすごいおいしくて、結構変わったフレーバーがあったりして面白いんですよ」と大人7人でワイワイとあの場にあったお菓子やお茶の話で盛り上がった。それがすごくすごく…なんかよかった。

仕事の話をしてる時は真面目な社会人モード(?)だけど、こういう隙間時間におしゃべりする話の議題が同じ目線だ!ってことがとてもうれしかった。

違う世界に住んでると思ってた大人な人たちと、子どもの頃からたいして思考が成長していない自分が分かち合えた喜びというか。なんていうのかな。うーんなんだか上手く言えないけど、うまく伝わってほしい。笑


という、どうでもよすぎるけどわたしの中ではどうでもよくないお話なのでした。



この日は仕事が終わらなくて超睡眠不足で行ったから、慣れない通勤ラッシュにどっと疲れてしまい帰宅後はメイクだけ落として即爆睡。


スキンケアするための体力がもう残されてなくて化粧水スプレーを顔にばばっと吹きかけて保湿クリームを乱雑にぺぺっと塗って力尽きた。
このキュレルのスプレー、本当に優秀。




もう何本も使ってるけど、疲れすぎてちゃんとスキンケアする余裕ない時とか、風呂上がりのボディケアが面倒な時とかとても便利で助けられている。
これだけとりあえず全身にぱーって振っておけばしっとりと肌の治安が保たれる…
一生愛す。


おわり。

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